一応書いておきますが、
マックイーンにその気はないです
ただマヤノは勿論、ネイチャやマーベラスですら気づけなかったテイオーの思いにただ一人気付けたのは、やっぱり一番長く本気でぶつかり合ってきたライバルだからこそでしょうね
…そして、テイオーに関しても、彼女以外にそういう感情を向けているわけではありません。
むしろ作中の出来事がなければ、あんなことにはならなかったでしょう。
作者は恋は病気だと思っています。
いつどこでかかるか分からない。
そして、だからこそ、その相手もまた選べない。
…巡り合わせ、としか言いようがないです。
......
?年後
光陰矢の如しとは良く言ったもので、月日は飛ぶように移り変わっていく。
だからこそ、かつて少女だったボクも、気が付けばあっという間に学園を卒業し、大学に入学、そしてそこから就職にまでこぎつけているというのだから感慨深い。
…あの頃は、早く大人になりたいって思っていたのに、気が付くと心より先に体が大人になっている。
本当に時間が経つのは早いものであるから…
「…キミが天国に行ったのも、もう何年前になるのやら」
墓前に花を供えたボクは、そう苦笑する。
そして、そんなボクに応えるかのように、ボクの横を心地よい風が通りすぎていく。
だからこそ、思い出すのは今日まで過ごしてきた日々、ボクらがこれまでに辿ってきた軌跡だ。
あれから…ボクがトレセン学園を卒業してから、本当に沢山のことがあった。
例えばネイチャが正式に自分のトレーナーと婚約したり、マーベラスが「真のマーベラスを探してくる!」なんていう訳の分からない置き手紙を残して世界へと旅立ったりと、本当に様々なことがあった。
かくいうボクも、トレセン学園を卒業した後は、自分の現役時代のような、ケガで夢を諦めるウマ娘を生まないために医者になっているのだから、ここまで本当に色々あったとしか言えない。
そして、その中でボク達は大なり小なり様々な変化を強いられてきた。
でも、それはある意味当たり前の話ではある。
諸行無常盛者必衰
この世に一瞬でも同じ姿を止めているものなんて一つもない。
全てのものは移り変わる、それこそがこの世の絶対普遍のルールである。
だからこそ、歩んできた道のりの途中で、ボク達は様々なものに出会い、そしてその中で様々なものを得て、そして様々なものを失ってここまで来た。
それは多分大人になるということ。
無垢で、何も知らなかった少女だったボク達は、時の流れの中で現実を知り、色んなものを見て、あの頃持っていた多くのものを失う中で、それでも同じくらい多くのものを得て、少しずつ変わっていく。
ボクは墓前に手を合わせて、目をつむる
…恐らく、こうして今キミの前にいるボクは、キミが知っている人間とは少し違う。
そして、次に会うときはもう少しだけ違っている筈だし、その次はさらにもう少しだけ違う人間になっているだろう。
…この世を去り、時の流れから切り離されてしまったキミが知っているボク、トウカイテイオーというウマ娘は、厳密な意味ではもういない。
だって万物が流転するこの世界において、変わらないものなんてないから。
だからこそ、きっとボクはこれからも変わり続けるし、それを止めることなんて絶対に出来ない。
(…だけどね)
目を開ける。
すると、そこにあるのは一つの墓石。
それは、以前に来たときと同じように、まるでずっと昔からそこにあるかのように、静かに佇んでいたから…
「…それでもね、ボクはキミのことが好きだったこと、後悔してないよ」
そう言って、ボクはその場で立ち上がると、荷物を纏める。
そして、帰り支度を整えてから、一度だけ振り返る。
「…だからさ、また会いに来るよ」
そして、最後にそれだけ言って、ボクはお墓に背を向けて歩き出す。力強く明日へ向かって一歩を踏み出す。
…そうだ、確かに万物は流転する。変わらないものなんてない。これは真理だ。
でも、ボクは例外がないわけではないと思う。
それは、既に終わったものだ。
変化とはすなわち過程であり、また万物の変化は始まりから終わりまでの一方向にしか進まない。
それならば、終わりまで行き着いたもの、すなわち変化しきったものは、もうそれ以上変化しない。永遠なのだ。だとしたら…
(きっと…)
ボクは頭上を見上げる。
するとそこには、どこまでも果てなく広がる、そんな青空が広がっているから…
…あの日終わった恋は、きっとそこにある。
例え報われなくても、あの日ボクが全力で恋していた、その事実だけはきっと永遠だから…
(…だからね、マヤノ)
ボクは空に手を伸ばす。
当然のことながらその手は何も掴まない。
それでも、ボクがこの手を空に伸ばしたことだけは、誰にも否定できない事実で…
そして、どんなにちっぽけな距離であっても、それでも伸ばした分だけ確実にボクの手が空に近づいたのもまた、事実だったから…
(…ボクはこれからも走っていくよ)
それこそ、地の果てまで
例え道がなくなっても、それでも自分の足で。
それがボク、キミが信じてくれた、サイキョームテキのトウカイテイオーだから…
見上げた空は、どこまでも青々と、そして天高く広がっていたのだった。
以上で短編集4作目終了です。
…具体的なエピソードについては、この短編集を書き始めてから考えたのですが、
実は設定と大体の経緯自体は、裏設定としてかなり早い段階から存在しました。
ですから、今回はそれに焦点をあててみたのですが…
演出上の問題もありましたが、公表がギリギリになってしまい申し訳ありませんでした。
…さて、次はいよいよこの作品の主人公でもあるマヤちゃんの短編へと移行します。
そして、これを書き終えた後は、もう一つだけ、以前の偽劇場版予告位のスケールの短編を書いて、ひとまずはこの短編集を締めさせていただきます。
ですから、この短編集もあと少しです。
読者の皆さま方にも、あともう少しだけ「片翼の撃墜王」、
その物語世界にお付き合いいただけると嬉しいです。