虹の結晶片はあまり貯まっていません。
ただ、仮に集まった場合、
今手元には1凸状態のSSRマヤちゃんと3凸状態の力飯があるんですよね…
育成のことを考えるならば力飯一択なんですけど、
敬虔なマヤちゃん教徒としては、推しと一緒にトレーニングしたいから
マヤちゃんに突っ込むのもやぶさかではない…
…ガチャでどっちも完凸すれば悩む必要なんてないんだけどな~
(ガチャ画面をチラチラ)
「お、おい!どこに連れて行くつもりなんだよ!?」
腕を引かれながら走る俺に、その張本人、マヤ…ちゃんサンタ(そう呼ばないとすねる)は「いーからいーから♡」としか言わない。
だから、俺は自身の愛バに引きずられるようにして、誰もいない校舎内を走る。
あの後…いきなり謎のサンタ服で押し掛けてきたマヤは、「トレーナーちゃんにプレゼントがあるの!!」
という一点張りで俺を強引に連れ出した。そして、今もこうしてされるがままになっているという訳なのだが…
「いい加減目的地くらい…」
教えてくれないか?
そういいかけた瞬間だった
「よしっ!到着!!」
そう言ってマヤが足を止める。
だからこそ、息を切らしながらも、俺もまた周りを見回すと…
「…グラウンド?」
そこはトレセン学園のグラウンド
そして、多分俺とマヤだけしかいないだろうという予想に反して、たくさんのウマ娘達、そしてそれに紛れてちらほらと何人かのトレーナーがいたから…
「こ、これは一体…」
…なんなんだ?
そう一瞬困惑した時だった。
「あ!始まるよ!!トレーナーちゃん!!」
そんな声をかけられ、
思わずマヤの指差す方向を見た俺の目に飛び込んできたのは…
「Ladies and Gentlemen!!
おめぇら!今夜はよくここに集まってくれた!!」
そう言ってマイクをひっ掴み、叫ぶサンタ服のゴルシと
「みんな~!今日は来てくれてありがと~!!マーベラス☆」
と手を振る、これまたサンタ服のマーベラス。
そんなトレセン学園でも屈指のやべぇ二人が、どこから持ってきたのか、マイクを手にグラウンドの中心に特設されたお立ち台の上にのって、何やら騒いでいるものだから…
「…お、おいマヤ…これは…」
…本当マジで、一体何なんだ?
そう聞きかけた、その瞬間だった
「それじゃあ皆!行くぜ!!…マーベラス!!」
「マーベラス☆」
そんなゴルシの掛け声にあわせて、マーベラスが手に持っていたライトを振る。
すると…
わあああぁぁぁぁぁぁっっ!!
「んなっ!?」
それに合わせて、空から星が流れる。
そして…
「もういっちょ!!」
「マーベラス★」
もう一度マーベラスがライトを振ると、また星が流れる。
そしてその後も何度もマーベラスがライトを振り、その度に空には輝く軌跡を残しながら、星が流れていったから…
「わぁ…」
隣で目をキラキラさせながら夜空を見上げるマヤに、しかし俺も声をかけることが出来ない。
何故なら…
(…すげぇ…)
俺もまた、目の前の光景から目を離せないから。
まさに圧巻。
そんなあまりの光景に、思わず息を飲む
空には、無数の流れ星。
光の尾を残しながら、半ば交通渋滞気味に、たくさんの星が空を流れていく
それはまさに、宝石箱を引っくり返した、なんて比喩がこれ以上ないほどにふさわしい光景。
色とりどりの、そして大小様々なたくさん光
まるで空を洗い流さんばかりの煌めく光の洪水
そんなあまりにも非現実的、それでいて夢のような光景で…
(…)
人は本当に感情が極まったとき、何も言えなくなる
それを自身の体で俺はこれ以上ないほどに体感する。
そして
(…?これは…)
そんな無茶苦茶な、それでいてあまりにも美しい星空の下、何故かまだ雪が降っている
しんしんと積もる雪は、しかし…
(…ははっ)
それを見て、俺は思わず笑ってしまう。
何故ならそれがあまりにも美しかったから。
そう、それはあまりにも非現実的で、それでいて美しすぎるコラボレーション
満天の星空の下、静かに降り注ぐ雪
無数の天の光の下、それでも静かにあたりを照らす、小さな小さな氷の結晶
キラキラと、星の光と共に天から落ちてくる、そんな矛盾の固まりは、あまりにも儚く、そしてあまりにも幻想的だったから…
.......................
.................
.........
「…どうどう?トレーナーちゃん!とっても綺麗だったでしょ?」
そう嬉しそうに隣ではしゃぐ愛バに
「…あぁ、そうだな」
そう俺も微笑む。
そして、それを見てご機嫌な様子のマヤを尻目に、俺は手に持ったカップラーメンを啜る。
寒空の下、手に持ったそれから立ち上る湯気が、
いまだ星の降る夜に上って消えていく
…あれから
結局突然始まったゴルシとマーベラスの天体ショーから、俺とマヤは機会をみてこっそりと抜け出した。
何故なら、会場のグラウンドよりも、もっとそれを楽しめる特等席を、俺達は知っていたからで…
「あっ!また流れたよトレーナーちゃん!!」
「…おいおい。あんまりはしゃいで落ちるなよ?」
ただでさえ、雪降って足元悪いんだから
そう言って貯水槽の上で興奮するマヤに、俺は苦笑しながらも注意する。
しかし、とうのマヤは目の前で繰り広げられる世紀の天体ショーに夢中なようで、
目をキラキラさせながらそれに見入っている。
それを見ていると、そのあまりにも楽しそうな様子に水を差すのも何だか悪い気がしてくる。
だから、俺は隣で同じくカップラーメンを啜る自身の愛バを横目で見る
満天の星が輝く夜、隣にいる人物の姿位は容易に見て取れる
隣りに座るマヤは、時々「うわぁ~!!」とか「すっご~い!!」とか言いながら、耳をぴょこぴょこさせたり、尻尾をぶんぶん振り回したりしている。
そんな年相応の少女の姿は、本人に言うと絶対に怒るだろうが、
実に子供っぽいもので、だけど…
「…ん?どうしたの、トレーナーちゃん?」
「…いや」
なんでもないさ
そう言って俺はカップラーメンを啜る
…そう
だけど、真っ赤なサンタ服に身を包み、
目の前の光景に無邪気にはしゃぐその姿は、実にらしいものだ。
いつもオトナになりたいと背伸びしがちな彼女だが、
そんな光景を見ていると、こちらも少しほほえましい気分になってくる。
どうかこのまま健やかに…なんて考えてしまうのは、少しこの子を子ども扱いしすぎだろうか?
と、思わず苦笑してしまう俺を、隣でマヤは不思議そうに眺めている。
だから…
「…で?説明してくれるか?
マヤちゃんサンタさん?」
そう言って、改めて俺はマヤに向き直る。
するとマヤもまた、それを見て真面目な顔になる。
そして俺が尋ねたのは…
「…どうして、今日俺を連れ出したんだ?」
そんな、シンプルかつ純粋な疑問だ。
…勘違いしないでほしいんだが、別に俺は特に怒っていない。
元々今日を休みにしたのは俺なんだし、その1日をどう過ごそうが、それはマヤの自由だ。
…流石に明日に響くようなことをされると非常に困るが…これでもマヤは、いくつもの戦いを勝ち抜いてきた歴戦のウマ娘。そこに関しては特に心配していない。
故に、俺は今日のマヤの行動に関しては特に気にしていなかったし、だからこそ、いきなり連れ出されてビックリした位で…
どうして急に?
俺が抱いている疑問は、たったそれだけ。だから、それを目の前の愛バに直接聞いてみたんだが…
「…だって今日はクリスマスイブだから」
返ってきたのはそんな返答で
「…最近トレーナーちゃん、いつもよりも、スッゴく頑張ってくれてるでしょ?
明日マヤがブライアンさんに勝てるように、頑張って色々マヤのこと手伝ってくれてるでしょ?
それはスッゴく嬉しいし、とっても感謝してる。
…でもね?」
そう言いながら俺を見つめるマヤの目は
「…それでも、最近トレーナーちゃんあんまり休んでないでしょ?
怖い顔ばっかりしてる。だから…」
確かに、こちらを心配そうに見ていたから…
わあああぁぁぁぁぁぁっっ!!
グラウンドでは、まだゴルシとマーベラスのショーは続いているらしい。
こちらにまで聞こえてくる歓声を尻目に、マヤは続ける。
「…さっきも言ったけど、マヤはトレーナーちゃんが頑張ってくれること自体にはとっても感謝してるんだよ?
でも、最近のトレーナーちゃんはすっごく張り詰めてる。
いつものトレーナーちゃんらしくない。
だから…」
そう言ってこちらを見るマヤは
「だから、せめて今夜は、トレーナーちゃんに笑ってほしかったんだ。
…勿論すっごくワガママなこと言ってるのはわかってるよ?
それでも…」
普段の天真爛漫っぷりが嘘のように
「…明日の有マ記念に挑む、その前に、もう一度だけマヤは、トレーナーちゃんの笑顔が見たかったんだ…」
しゅん、とした様子で…もしかしたら怒られるかも…そんな風にちょっと不安そうにしながらも、俺の質問にそう答えてくれたものだから…
「…はぁぁぁぁぁ…」
俺は特大のため息をつく。
そして、そんな俺を見て
「ご、ごめんね、トレーナーちゃん。やっぱり…」
…迷惑だったよね?
そう言いかけたのであろう、マヤの続きを
「…あー、違う。違うから」
手を振って遮る。
そして改めて、今度は体ごとマヤのほうに向き合った俺は
「俺の方こそ…すまん。マヤ」
そう言って頭を下げる。
それに対して
「そ、そんな!頭を上げてよ、トレーナーちゃん!!」
そう言ってマヤは慌てるが
「…いや、謝らせてくれ」
そう言って俺は頭を下げ続ける。
何故なら…
(自分の愛バに、こんな顔させるなんて…)
トレーナー失格だ。
そんな申し訳なさと罪悪感が、胸の内から溢れてくるから。
…なるほど、確かに最近忙しかったのは事実だ。だけど、それで自分の愛バに心配をかけるようでは本末転倒だ。だからこそ…
「…ごめん、マヤ。
心配かけちゃって」
俺はマヤに謝罪する。
トレーナーなのに、いらん心配を愛バにかけせてしまったこと、それを直接謝罪する。
そして…
「…そして、ありがとう、マヤ。
最高のクリスマスプレゼントだったよ」
そう言って、俺はマヤに微笑む。
こんな俺を、少しでも楽しませようとしてくれたマヤに、心からの感謝を伝える。
だから、そんな俺を見たマヤは…
「……うん!…うん!!
トレーナーちゃんが喜んでくれて、ホントに良かった!!」
そう言ってまた笑顔を浮かべてくれる。まるで向日葵のような、底抜けに明るく、そして暖かい笑顔を。
「…!」
それを見て、俺は少しだけドキッとする
なぜならそれは…
冬の空気で少しだけ赤くなった顔に浮かべた笑顔は…
目尻に少しだけ安堵の涙を浮かべたその笑顔は…
なぜだか妙にキラキラして見えたから…
…だからなのか?
(…)
スッ…
俺は自然と顔を横に反らす。
…そんな愛バの笑顔を、俺は何故か直視することが出来なかったから…
そして…
「…まっ、まだまだおこちゃまなお前にしては、結構趣味の良いプレゼントだったと思うぜ?」
そう、はぐらかすと
「ぶー!トレーナーちゃんったらヒドーイ!!」
とマヤも頬を膨らませる。
だからそんなマヤに軽く謝りながら、そしてマヤの方は少し憤慨しながら、俺達は貯水槽の上でカップラーメンを啜る。
本格的な冬の寒空に、俺達が手に持っているカップラーメンの湯気が溶けていく。
12月の夜空は凍えるような寒さで、しかしゴルシやマーベラスのお陰で随分と愉快な光景になっている。
そして、そんな煌めく夜、しんしんと降り積もる雪の中で、相棒と一緒に食べる安物のカップラーメンは、どうしてか、やけに暖かくて…
(…ま、たまにはこんなクリスマスも)
悪くはないかな?
そんなことを考えているときだった
「…まったく…トレーナーちゃんは本当に失礼だよね?
でも…」
そう言って、隣で少しだけムスッとしながらカップ麺を啜っていたマヤは、最初から背負っていた白い袋に手を突っ込んで中身をごそごそと漁ると…
「今のマヤは、皆に夢を配るマヤちゃんサンタさんだからね!
そんないじわるなトレーナーちゃんにも、特別にプレゼントをあげちゃいます!」
そう言って、何枚かの輪ゴムで纏められた紙切れを差し出してきたから…
「…さっきのがプレゼントじゃなかったのか?」
そう驚く俺に
「違うよ?
あれは途中まで一緒にクリスマスパーティーしてたゴルシちゃん達の余興。
ホントのクリスマスプレゼントはこっち!」
そう言ってその紙切れの束を俺に押し付けてくる。
だからそれを受け取り、そこに書かれていた内容を確認すると…
「…『マヤと一回デート券』?」
書かれていたのは、そんな丸くて可愛らしい文字。
そして
「ふふん!マヤは明日絶対勝つからね!!
それを使えば、トレーナーちゃんは三冠ウマ娘をも越える、最強のウマ娘のお姉さんと、いつでもオトナなデートが出来るんだよ!嬉しいでしょ!!」
そんなふうに胸を張って自信満々に語るマヤの姿。
だから、それが何だか可笑しくてたまらなかったから
「あ!なにその反応!!」
「ふふ…
いや、すまんマヤ」
つい笑ってしまった俺を見て、マヤは「もう!トレーナーちゃんのバカ!!マヤ知らない!!」と口を尖らせてそっぽを向く
だが、俺はそんなちんちくりんな、それでいて大切な相棒の贈り物に、胸が暖かくなる。
これからも、この子を支えていこう、そう改めて思う。
だからこそ…
「…それじゃあ俺もお返ししないとな」
そう言って懐から一つの小さな袋を取り出す
「…え?」
そうして驚き振り返るマヤに
「…一応今日はイブだからな。本当は明日渡す予定だったんだけど…」
そう言いながら
「まぁ、せっかくプレゼントをもらっちまったからな。
予定よりちょっと早いが、俺もクリスマスプレゼントだ」
そう言って俺はマヤに、袋を渡す。
そして
「あ、開けても良い?トレーナーちゃん?」
そう目をキラキラさせながらこちらを見るマヤに
「あぁ、勿論」
そう言って頷く。
かくして、マヤが開けた袋の中から出てきたのは…
次回で完結です!