片翼の撃墜王 外伝集   作:DX鶏がらスープ

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でもね、マヤちゃん。

…天才でも失敗することはあるんだよ?




ナイスネイチャのドキドキ♥告白大作戦!! 大失敗?

「おいしいですわ!パクパクですわ!」

 

「…えっと、その…」

 

「…はっ!

…ご、ごほん。失礼しました」

 

注文のケーキが来た瞬間に、一瞬でパクパクお嬢様へと変貌したマックイーンさんは、自分の失態に気づくや否や、さもおしとやかで瀟洒なお嬢様という顔をして、しれっとトレーナーさんの方に向き直る。

 

しかし

 

「あっ、そっちのほっぺにクリームついてるよ?」

 

「え?あっ、ホントですわ。

ありがとうございます、ネイチャさんのトレーナーさん」

 

それでもほっぺについたクリームは誤魔化せない。それをトレーナーさんに指摘されたマックイーンさんは、少し恥ずかしそうにそれを自身で拭い、トレーナーさんに、お礼を言う。

 

「いえいえ。それよりどうだい?そのケーキは?」

 

「えぇ、素晴らしい代物ですわ。

ライアンやドーベルにも食べさせてあげたいくらいですわ」

 

「それなら良かった」

 

そしてケーキの感想を彼女に聞き、そこからも取り留めのない雑談が続く。

その様子はまさに長年連れ添ったおしどり夫婦。とても微笑ましく絵になる構図だったから…

 

(…)

 

(…)

 

テイオーとマーベラスは、目の前に置かれたケーキには目もくれず、心配そうな顔でこちらをチラチラ見ている。

 

そしてマヤノは

 

「…あっ、これ本当に美味しい!」

 

そう言いながら、マックイーンさんの頼んだケーキを自分も頼み、モグモグと幸せそうな顔で食べている。

 

で、アタシはと言えば…

 

(…トレーナーさん)

 

テイオーとマーベラス、そしてマヤノと一緒に、トレーナーさん達の席からは少し離れた席に座って、二人の様子を観察していたのだが...

 

(…やっぱり、トレーナーさんは…)

 

そう思うと胸が苦しくなり、アタシは両手を握りしめる。

 

そう、アタシ達は結局午前中ずっと二人の様子を物陰から隠れて見ていた。

 

どうやら何かの買い物が目的らしく、色々な店を二人で回って、あれこれと意見を出し合っていたのだが…

 

(…アタシの…アタシのことなんか…)

 

その様子があまりにも楽しそうで、おまけに普段通りの不幸体質を発動し、なぜか道端に落ちていたバナナを踏んで滑った勢いで近くにいた大型犬のお尻を蹴りあげ、全力ダッシュで逃げるトレーナーさんを追うマックイーンさんも、なんだかまんざらでもなさそうだったから...

 

目の前がじんわりと涙で滲む。

 

…最初は、告白したアタシのことを放置して別の女の子に会うトレーナーさんや、そんなトレーナーさんと一緒に外出を楽しむマックイーンさんに怒っていたんだけど、そんな様子を見ていると、段々アタシは自分に自身がなくなってきて…

 

それどころか、二人の様子を見ていると、もしかしたら本当はアタシなんかよりも、マックイーンさんの方がトレーナーさんの隣には相応しいんじゃないか、なんてことも思ってきちゃって…

 

(アタシは…)

 

どうすれば良いのかわからなくなって、アタシがぎゅっと目を瞑った、まさにその時だった。

 

「ふぅ、ご馳走様。

それじゃあマックイーンさん、悪いんだけどさっきの店に戻っても良いかな?」

 

そうトレーナーさんが立ち上がりながら言い

 

「はぁ、まったくようやくですの?

悩むのは良いですが、もう少し早く決められなかったんですの?」

 

なんて呆れたように言うマックイーンさんに

 

「あはは、それはおっしゃる通りで。

…でも、大切なものだからね。ちゃんと納得できるまで選びたかったんだ。

なんせ…」

 

そこで一旦言葉を区切ると、トレーナーさんは続ける

 

「…大切な人にあげる大事なプレゼントだからね」

 

「…!」

 

アタシが息を飲む中、そんなことを言いながらウインクするトレーナーさんに

 

「…それもそうですわね。

先の言葉を訂正いたしますわ。

…それではネイチャさんのトレーナーさん、早速行きましょう。

善は急げですわ!」

 

なんて立ち上がりながらマックイーンさんも微笑むものだから…

 

 

 

ガタッ

 

 

 

「…え?」

 

「…あら?ネイチャさん?」

 

アタシが立ち上がると共に、トレーナーさんとマックイーンさんがこちらを向く。それなりに距離は空いていたはずだけど、本当にたまたま二人はアタシのたてた物音に気づいたらしく、きょとんとした顔でこちらを見ている。

 

「ネ、ネイチャ?」

 

「えっ、えっとえっと…」

 

そして、それを見てマズイと思ったのか、テイオーとマーベラスはあわあわしている。

そしてマヤノも

 

「…あ…」

 

瞬時に何が起こったのかを悟ったのだろう。

口に入れたフォークをそのままに、顔が真っ青になっている。

 

でも、今はそんなことどうでも良くて…

 

「ち、違うんだネイチャ!これは…」

 

そう言って慌てて近づいてくるトレーナーさんに

 

 

 

「来ないで!」

 

 

 

そう叫ぶ。

その瞬間トレーナーさんも、戸惑うマックイーンさんも、事態をどうにかしようとしていたテイオーやマーベラス、寸前に口を開きかけたマヤノの動きも止まる。

 

周囲にいた何事かと騒ぐ人達の動きも止まり、一瞬世界が静寂に包まれる

 

そして…

 

 

「…わかりました、トレーナーさん。

アナタにした先日の告白の返事は、とてもよく…」

 

そうポツリと呟く。

 

「…でも、だからと言ってアタシは別に怒っていないんですよ?

…まぁ、最初から考えればムリな話だったんですよ。

アタシみたいな万年3位のモブキャラが、トレーナーさんみたいな良い人を射止めるなんて。

…分不相応だったんですよ。

たはは…」

 

そう言ってアタシはひきつった顔で必死に笑顔をつくる。

 

「…と言うわけでトレーナーさん、出過ぎたマネをしてしまい申し訳ありませんでした。

…アタシの身勝手な行動で、困らせてしまったことは、本当に申し訳ないと思っています」

 

でも…

 

「…でも、それでもアタシはトレーナーさんのことが好きだから…

…例えアタシがあなたの隣にいることが出来なくても、あなたが笑っていてさえくれれば、アタシは幸せだから…」

 

言葉が震える。必死で取り繕った笑顔の仮面の下から、ポロポロと滴が滴り落ちる。

 

「…ネイチャさん、あなた…」

 

そこでマックイーンさんが息を飲む気配がしたが、それでもアタシは続ける。

 

「…だから、トレーナーさん。今まで本当に、本当にありがとうございました。

あなたと一緒に過ごした日々は、アタシにとって、宝石みたいにキラキラしていて…とっても、とっても大切な、かけがえのないものでした。

だから…」

 

そしてアタシは微笑む

 

「…だから、サヨナラ。

トレーナーさん。

…マックイーンさんは本当に良い人です。

…まぁ、たまに食べ過ぎて体重計の上で顔を真っ青にしてることもありますが…それでもきっとトレーナーさんを幸せにしてくれるはずです」

 

だから…

 

「…だから、トレーナーさん…マック、イーンさん、と…」

 

…これからは、どうぞお幸せに…

 

続く言葉が発音出来ない。

目の前は涙でいっぱいで、完全に歪んでしまってまったく見えない。

自分が今どんな顔をしているのかすら、アタシにはもう全然分かんないから…

 

「ま、待って下さいネイチャさん!あなたは何か深刻な誤解を…」

 

そう言って近づいてくるマックイーンさんの声なんか、もう聞きたくもなくて…

 

「…っ!」

 

アタシはその場でくるりと後ろを向くと、一目散に駆け出す。

 

「ネ、ネイチャちゃん!」

 

そんなアタシに、その場で一番早く体勢を立て直したマヤノが手を伸ばすが…

 

「触らないで!」

 

「!!」

 

その手をピシャリと払い除け、アタシは走る。

 

「ネイチャ!」

 

「ま、待ってネイチャ!」

 

テイオーとマーベラスも追いかけようとしたみたいだけど、その姿もすぐに遠くなっていく。

 

もうアタシ達がいた喫茶店は、すでに後方のはるか彼方だ。

 

(…あぁ、なんだアタシって意外と逃げウマ娘の才能あるじゃん)

 

そんな下らないことが、ふと頭の片隅をよぎるが、それでもアタシは止まらないし、止まる気もない。

 

気が付けば、そこは知らない場所で、もう自分でもどこにむかって走ってるのかすら分からない。

 

だから

 

(…~!!)

 

走る 走る 走る

 

胸の中で、怒りと悲しみと愛しさと切なさと…その他多種多様なあらゆる感情が乱れ狂う。

 

ダメだってわかってるのに、もう終わったことだってわかってるのに、トレーナーさんとの楽しかった日々が、思い出が、頭から離れない!

むしろ、どんどんどんどん、普段忘れていたようなことまで含めて、止めどなく胸の中から溢れてくる!

それを止めることが出来ない!

 

…だから

 

「うわぁぁぁぁぁぁああああんっっっ!!」

 

アタシは叫ぶ。走りながら叫ぶ。声よ枯れろと、涙よ尽きろと、そして…この思いよ消えろと、そうして叫ぶ。

走って走って、叫んで叫ぶ。

 

そうやって少しでも、この悲しみを、嘆きを、痛みを、和らげられたら、ってアタシは思うから…

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「ネ、ネイ…」

 

「トレーナーさん、すぐネイチャちゃんの後を追って!早く!!」

 

ネイチャちゃんが飛び出して行き、呆然とするネイチャちゃんのトレーナーちゃんに、マヤは大声で叫ぶ。そして、

 

「テイオーちゃんと、マベちんも!急いでネイチャちゃんを探して!!」

 

「…!

了解!!」

 

「…マ、マーベラス☆!!」

 

固まっていた2人にも渇を入れて、立ち上がらせる。最後に、

 

「マックイーンさんも!

巻き込んでホントにごめんなさいだけど!お願い!ネイチャちゃんのために協力して!!」

 

そう言って、立ち尽くしてたマックイーンさんに、マヤは頭を下げる

 

なんてこと!

マヤはまた失敗しちゃった!

マヤがわかるからって、他の人にもわかるわけじゃないことなんて、ずっと前からわかってたのに!

 

頭を下げるマヤを、マックイーンさんはじっと見つめている。

 

だからこそ、マヤはこの騒動の責任をとらなくちゃいけない。

もとはと言えば、これはマヤが提案したことだ。

それならば、何よりもその責任はマヤにある。それに…

 

(こんな結末で二人を終わらせちゃいけない!!)

 

そうマヤは、他ならぬマヤは知ってるんだ!

好きな人と結ばれないってことがどれだけ辛いことか、悲しいことか、初恋だって気が付く前にトレーナーちゃんが死んじゃったマヤは、それを誰よりも知ってたはずだったんだ!だから!!

 

「お願い!マックイーンさん!!」

 

何も言わないマックイーンさんに重ねてマヤは頼み込む。

例えこの後軽蔑されても良い!なんてののしられても良い!

それでも!

 

「お願い!ネイチャちゃんに、マヤみたいな思いを絶対にさせたくないの!!」

 

あんな悲しい思いを、絶対に他の人にさせちゃいけない!あんな思いをするのは、マヤが最後で良い!!

 

だから!!

 

「…頭を上げてください、マヤノトップガンさん」

 

そこでマックイーンさんにそう言われ、マヤは顔を上げる。

するとマックイーンさんは、マヤの目をまっすぐに見つめて…

 

「…ひとつだけ聞かせてください。貴方はネイチャさんのためを思って、こういう行動をしたんですのね?」

 

そう聞いてくるから

 

「うん!

結局失敗しちゃったけど…

それでもマヤ達は、ネイチャちゃんの不安を取り除いてあげたかったの!!」

 

そうマヤもマックイーンさんの目をまっすぐに見つめて答える。

 

しばしの沈黙

 

やがて…

 

「…わかりましたわ。それだけ聞ければ十分ですわ」

 

そう言って、マックイーンさんは立ち上がる。そして

 

「…まぁ、今回のことは少なからず私にも責任がありますしね。

私も協力させていただきます」

 

そうマヤに微笑んでくれたから…

 

「マックイーンさん!ありがとう!!」

 

嬉しさのあまり、マヤはマックイーンさんに抱きつく

 

「ちょ、ちょっと!こんなことしてる場合ではないでしょう!マヤノさん!」

 

「あっ、ごめん」

 

でも、すぐにマックイーンさんに諭されてマヤは離れる。

 

だけど

 

「ふふっ…」

 

「?」

 

「いえ、これまであまり話したことがありませんでしたけど、友達思いの良い人なんですのね?マヤノさん

 

…テイオーさんが命懸けでもあなたを救おうとするわけですわ」

 

そう言うと、

 

「…改めまして、マヤノトップガンさん。

私はメジロマックイーン。

誇り高きメジロ家のウマ娘にして、ネイチャさんのお友達ですわ

…ですから」

 

そう言って、スカートの端をつまんで優雅にお辞儀をすると、

 

「…一緒に私達の友達を探しに行きましょう?マヤノさん」

 

そう微笑んでくれるから、

 

「…うん!よろしくね!マックイーンちゃん!!」

 

そうマヤも微笑み返す。そして、マヤ達もまた、料金を払ってから喫茶店から飛び出す

 

(…ごめんね、ネイチャちゃん)

 

道中でマヤは思う。

マヤは本気でネイチャちゃんに幸せになってほしくて、だから今回の企画を提案したんだけど…

 

(…まさかこんなことになっちゃうなんて…)

 

マヤ自身への不甲斐なさと、悔しさに歯噛みする。

でも…

 

(…絶対に、このままじゃ終わらせないから…)

 

だから

 

(…待ってて!ネイチャちゃん!!)

 

そう思いながら、マヤは町を走る

 

 

 

 

…休日でも勤勉な太陽とはいえ、不眠不休で働けるわけではない。

 

菜の花や

月は東に

日は西に

 

江戸時代の俳人がその歌に読んだように、勤勉な太陽とてやがては沈み、そして次は月の仕事の時間がやってくる。

 

それは決して太陽が永久機関ではないことの証。

古代エジプトにおいて、夜太陽は蛇に飲み込まれて一度死に、また朝に復活して昇るとされていたが、それはすなわち、エネルギーを失った太陽は、時間をかけて天空から失墜してくると言うことなのだ。

 

故に、日は落ちる。

中天まで上っていた働き者の太陽も、流石に体力が尽きたのか、次第に西の空へと落ちていく。

そして、それに伴い光の屈折率が変わることにより、空の色もそれに伴って次第に変わっていく。

 

そんな1日の仕事を終えた太陽が、ゆっくりと帰宅し、空もまた月が仕事をするために相応しい舞台へと変わっていくのを尻目に、少女達は走り回るのだった。

 

 




…おかしい。

作者はどシリアスな本編では出来なかった、
ウマ娘達のほのぼのした日々を書きたくて、
短編を書き始めたはずなのだ。



例えば、

(例)アプリ版正月イベント

「トレーナーちゃん!すっごいおせち料理だね!!
 どれから食べる?」

「まぁ待て、マヤ。
 こういうのはスマートかつエレガントな食べ方というものがあってだな。
 まずはこの…」

「あ!この栗きんとん美味しそう!!
 いっただき!!」

「…って人の話を聞けよ!!
 あぁー!!それ俺の好物だったのにー!!」

「そうなの?ごめんねトレーナーちゃん。
 でもこういうのは早い者勝ちだって、ゴールドシップちゃん言ってたよ?(モグモグ)」

「…おのれ、あの残念美人ウマ娘め…
 うちのマヤになんて余計なことを…ってマヤ?」

「…むー…」

「?どうしたんだ…ってちょっ!!」

「…マヤの前で別のウマ娘をほめる、
 悪いトレーナーちゃんのおせちなんて、
 こうです(手当たり次第におせちを取り始める)」

「ま、待て待て待て待て!お願いだから待って下さい!マヤさん!!
 …って、あ~!!すでになくなってるぅ!!」

「…ごちそうさま(おせちの箱は空)」

「Nooooooooooo!!」

「ほら、トレーナーちゃん。行くよ」

「せ、せっかく久しぶりにまともなご飯にありつけると思ったのに…(ガクッ)」

「もうなくなっちゃったんだから、泣き言言わないの」

「ヨヨヨ…」

「…ここに来る前にお雑煮の炊き出しやってたでしょ?代わりにあっちに行こ?」

「ぐぅぅ…だがまあお雑煮も悪くはない。
 あれもまた、伝統的な正月料理と言えばそうだろう。
 それで新年を始めるというのもまたデキる男の正月には悪くない…

 …フハハハハハハハハハ!
 
 良い!良いぞマヤ!では早速行こう!!
 今度こそ、スマートでエレガントなお雑煮の食べ方というものを…「ふふっ」…マヤ?」

「…ううん、何でもないよ。
 トレーナーちゃんはいつも楽しそうだなって♪」

「?」

「ほら!早く行くよトレーナーちゃん!!
 早く来ないと、またトレーナーちゃんのお雑煮も全部食べちゃうよ?」

「げ!?待ってくださいマヤさん!それは、それだけはマジでやめてぇぇぇっっっ!!」

「あははは!!」



…みたいな

それがどうしてネイチャさんがこんなにも曇っているんだ。
作者には潜在的な愉悦部の才能でもあるんでしょうか…(白目)

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