女帝の独占力   作:明石しじま

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#11 影遠く。然れど遠からずして

「……何でソフトクリーム持ってんの?」

 グラウンド端のベンチに座って、レース用のメモ帳を見直していたアタシの元にトレーナーがやってきた。てかこれから走るって時に何呑気に食べてんのよ。

 

「エアグルーヴに強制的に差し入れられてな」

「は?」

 

 どういう事なのか。意味が分からないのでトレーナーから事の顛末を聞いた。

 

 

「……ふーん。イライラしていたのかな? 災難だったね」

「俺も、何がしたかったのかよく分からんよ。急いで食うからちょっと待ってて。むりやり口に突っ込まれたから歯が痛えんだわ」

 必死に甘い物を急いで食べている姿。……これが子供なら可愛らしいものだけど、大人だと見方が変わるものだなぁ。悪い意味で。

 

「メジロドーベル、教えてくれよ。ウマ娘ってそうしたくなる習性があるのか?」

「……糖分とりすぎで頭おかしくなったの? そんな愉快な習性、ホントにあると思ってる? 仮にもしあったらトレーナーだったらとっくに学んでるでしょ」

 

 トレーナーが最後のコーンを口に放り込みながら変な質問をしてきた。呆れてそう答えると、トレーナーが反論してくる。

 

「そうでもないぞ。俺らが学ぶお前たちウマ娘の生態ってのは、所詮教科書の文でしかない。結局他者理解ってのはコミュニケーションをしなきゃ本当の所は分からないだろう? 種族も性別も違う俺らは、地道にそれを積み重ねて理解していくしか無いんだよ。ウマ娘の機微ってのを本当の理解することなんてできないんだけどな」

「分かった分かった。アンタがあれこれ考えてアタシ達と接しているのはよく分かったから」

 

 めんどくさい。アタシは走りたいから戻ってきたのであって、アリストテレスよろしく他者と議論するために来たのではない。

 この妙に理屈っぽい所はトレーナーの性なのか、将又ただのこの人の個性なのか。几帳面な先輩には合ってると言えるのかもしれないが。

 

「そんな気にしなくてもいいでしょ。日によって機嫌が移り変わるのはアンタにだってあるでしょ?」

「……不機嫌なアイツは腐る程見てきたがこういう発散の仕方は初だったんだぞ」

 

 いやそんな暗い顔で言わなくても。腐る程って言葉が重いよなんか。

 

「じゃあ発散の仕方に変化をつけたかったんじゃない?」

「そんな部屋の模様替えするみたいなノリですることか?」

 

 一々言い返してくるトレーナーにこれ以上付き合う気が失せたアタシは、半ば無視するように手元の紙に目を落とすことにした。そんな気になるなら、もう直接先輩に聞けばいいじゃないかと思う。

 

「……思春期なのかね」

「あ、それで片付けちゃうの?」

 

 アタシの態度を察したのか、トレーナーも諦めたように話を終わらせた。というか、あーだこーだと悩んでた割にそんな雑な結論でいいのか。いやアタシは関係ないから別にいいんだけど。

 

 

(あ、そうだ)

 アタシは、とあるお礼をトレーナーに言っていなかったのを思い出した。

 

「ねぇ。この前は勉強みてくれて、その……ありがと。流石に教職なだけあるね、分かりやすかった」

 

 

 実は最近、今までの授業の分かんなかった所や少し先の範囲をトレーナーから教えてもらっていたのだ。

 一応自宅で自学はしていたのだが、所詮は自学。効率面ではかなわない。進んだ範囲まで教えてもらったのは補習で走る時間が取れなくなったら嫌だから。

 ライアンにみてもらおうとも思ったが彼女の筋トレの時間を奪うのも悪い。

 そんな訳で半ばダメ元でトレーナーに頼んでみたのだが、意外にも快諾してくれたのだ。それからちょくちょく個別指導の様な形で色々教えてもらっている。

 

「どういたしまして。流石に大学受験対策とかだったらちとキツいが、教科書レベルだったら一応教えられるからな。……それに『ト、トレーナー……勉強、教えて……』って涙目で言われちゃあなぁ。流石に手を差し伸べないわけにはいかないだろう」

「うん、助かったよ……って、はぁ!? 何それ、大嘘じゃん! アタシそんな言い方してない!」

 

 

 すると周りから生暖かい視線を感じる。気づけばアタシ達周りだけやたら騒がしかったらしい。もうアタシは泣く泣くこれ以上の抗議ができないまま沈黙するしかなかった。

 

(もう折角目立たないよう端っこにいたのに! トレーナーのバカ!)

 

 心の中の恨み節に気づかぬまま、トレーナーは隣であくびをしながら先輩のアップが終わるのを待っていた。

 

 

 仕方なくアタシも大人しくもう一度ストレッチをする。

 

(いち、に。いち、に)

 アタシの膝も、振り返ってみると最初は情けなくバキボキと音を鳴らしていたものだが、今ではすっかりしなやかに動いてくれている。お陰で春よりも大分足が軽くなった。

 初日なんて、膝が鳴ったアタシを見たトレーナーが、それを見て笑っていたものだ。ああ最悪。

 

 上半身を回しながら、数ヶ月前の、復学してすぐの事をふと思い出す。

 久々の校舎に少し迷いながら辿り着いた新しい教室。逃げるように突然居なくなってしまったアタシを、皆は受け入れてくれるのだろうかという不安があった。

 だけどそんな思いを抱えながら入室したアタシを、クラスのみんなは思った以上にすんなりと暖かく迎えてくれた。……というかすんなりしすぎて最初の一言が「あ、おひさー」だったのは流石に軽すぎてビックリした。アタシの緊張かえして。まぁお陰でアタシもそれ以上緊張すること無く馴染めたのだが。

 

 目立たなくしていたアタシだったが、時が経ち模擬レースの時期が終わったあたりから状況が一変。トレーナーについて四方八方から質問攻めを受けるハメになった。

 

「ねぇねぇ、トレーナーさんってどんな人なの!?」

「あーあ。私もそろそろいいトレーナー捕まえないとなぁ。ねー何かコツとかないの?」

 

 トレーナーというのは、そんな彼氏の様なノリで探すものじゃない気もするが……とはいえ彼女たちの気持ちは分かる。一見軽い口調で隠しているが、皆次第に大きくなっていく焦る気持ちを抱えているのだ。

 

 アタシがいるクラスではまだ3分の1ほどがトレーナーがついていない。所属トレーナーの数が絶対的に足りていないとはいえ、つい最近まで一緒に燻っていた身としてはどうにか出来ないのか、と思う。

 結局トレーナーがつかなかったウマ娘達は、教官所属で練習に励むことになる。教官にしごかれながら友達と部活感覚で走る生活。それはそれで楽しいものだろう。だがそうしている皆は、口に出さないだけで思いは抱えているハズだ。

 

『これが、中央に来てまで私がやりたかったことなのだろうか』という、現状への不満が。

 

 ……だからといって、悩むクラスメイト達にアタシがアドバイスをする事なんか出来ない。

 だってアタシ自身何でトレーナーから選ばれたのかもいまいち良く分かってないのだから。

 

「それは、きっと順位関係なく貴方の走りに光るものを見つけてくれたんだと思うよ。それって何だか運命的で、素敵じゃない!」

 

 苦し紛れにそう言い訳したアタシに対してクラスの誰かがそう言ってきた事が記憶に残っている。特にある言葉が、その後も普段の日々の中で繰り返し反芻されている。

 

 

(運命。運命。……運命、か)

 

 

『運命』。アスリートとして地道な努力を積み重ねるべきアタシ達が使うべき言葉ではないかもしれない。だが三女神の噂といい、この学園にはオカルティックな噂やジンクスも多いのだ。

 というかよくよく思い返してみればトレーナーとの出会い方は模擬レースよりもっと前、学食の時なのだ。契約した時ですら気づかなかったが。

 そんな、我ながらよく分からないきっかけだったが、事実だけ客観的に見ると、確かにドラマティックとも言えるのかもしれない。登場人物を美男美女に変えてしまえば、まるでアタシがよく読む少女漫画みたいじゃないか。

 

 教室でそう思ったアタシは、いつものアイディアが閃いた時の癖で、制服のポケットの中に入れているメモ帳にささっと走り書きをした。

 趣味で書いている少女漫画。今までは人様に見せられるような出来ではないが、ゆくゆくは同人誌として出してみたい、と思う。

 マックイーンやライアンにも秘密にしている趣味だが。だってこんな趣味バレたら生きていけない。恥ずかしすぎる。

 

 だが一点問題がある。

 

 仮に漫画としてこの状況をあてはめてみるとトレーナーが王子様ポジションになってしまうのだ。

 

(あの人が? ……いやいや、ないない)

 

 無駄にアタシに馴れ馴れしいこんなヤツが王子様なんて。走りや勉強の面倒をみてくれているのは感謝しているがそれとこれとはまた別だ。

 自らの思いつきを否定したところで、グラウンドの向こうがザワつき始めた。

 その声たちを背に、一人こちらに向かって歩いてくる影。

 

 

「……? 今日はやけに騒がしいな」

 いつも以上に集中した、凛々しい顔つきをしているエアグルーヴ先輩。

 入院から明けたエアグルーヴ先輩は今日から本格的に練習に復帰するのだ。

 

 

 以前お見舞いに行った時に話はしていたが、改めてテレビの前にいた存在とこうして隣でストレッチをしている事が信じられなかった。

(ああ、やっぱ空気が変わるな)

 今までのトレーナーとの練習が気が抜けていたとかでは無く、先輩が生み出す空気が特別張りがある。すごい、G1ともなるとここまでの空気を生み出せるのか。

 周りの関係ないウマ娘たちもあてられているのかグラウンド一帯が異様な雰囲気に包まれている気がする。浮き足立つ体を抑える。

 

「メジロドーベル。ちょっといいか?」

 周りに気を取られていた私にトレーナーが話しかけてきた。

 

「何?」

「お前も知っている通り、今日からエアグルーヴも復帰する。悪いが、暫くの間は今までしていた様につきっきりにはしてやれないだろう」

「うん、だろうね。分かってる」

 

 まだOP戦にも出ていない私と、ティアラ路線のウマ娘たちが夢見るオークスの舞台に挑む先輩。どちらを優先するかなんて考えるまでもないだろう。

 

「特に初日だから、俺も今日はあいつに専念したい。今日は昨日と同じメニューをこなしてくれ。メニューはこの紙に書いてある」

 受け取った紙を見ると昨日までやっていた調整用のメニューが書いてある。

 

「ああ、何だ。くれるんだったら態々アタシが書き写す必要なかったね」

 トレーナーが来る前まで読んでいたメモ帳の中身を少し見せる。今までやっていたメニューを思い出しながら書いていたのだ。

 

「……驚いた。熱心なんだな」

「そんな事ないよ。……あ、あのさ。……熱心ついでに、一つ頼みたいことがあるんだけど」

 

 実は先輩が帰ってくる日を知ってから、トライしてみたい事がアタシの中に一つあった。こちらに顔を向けたトレーナーに、一つ提案をする。

 

「……あのさ。アタシも、先輩と同じメニューで、一緒に走ってみたい」

 

 しかし、トレーナーは渋い顔をする。

 

「それは……良くない」

 トレーナーが言葉を続ける。

 

「お前のメニューだって、開始時期にしちゃあ負担は重い方だ。別にぬるくしてるわけじゃない。そこから更に練習のレベルを引き上げても怪我に繋がるだけだ。そりゃあ、あいつもまだブランクがあるさ。その分強度は抑えている。それでもとても、お前にさせるような練習じゃあないよ」

 

 違う。アタシは、別に今のメニューに不満を持っているわけじゃないのだ。

「分かってる。アタシも別についていけるなんて思ってない。でも同じ距離を走る先輩として、どんな練習をするのかを見ておきたいんだ」

 

 トレーナーに体のいい言葉で説得する。

 純粋にレース前にはどんな練習をするのかという興味。ここで経験しておくことで何か新しいことを掴めるのではないかという期待。……ここで憧れの先輩に、少しでも良い所を見せたいというミーハーじみた願望。そんな思いは隠しておく。

 

「うーーん……でもなぁ……」

「良いではないか、何事も挑戦だ」

「先輩」

 それでも反応に乏しいトレーナーを黙って見ていた先輩が、ふとこちらにやってきて話に入ってきた。

 

「エアグルーヴ。だがそれでこいつに何かあったら」

「そうならない為に管理者たる貴様が居るんだろうが。それとも出る杭を打つ様な真似をするつもりなのか?」

 

 話し合いの末、最終的にはトレーナーが折れた。そしてそのまま、一人分増えた道具を取りに一旦倉庫に戻って行った。

 二人でいる間に、助け舟を出してくれた先輩にお礼を言わなければ。

 

「ありがとうございます。説得を手伝ってくれて」

「あやつに言った通りだ。せっかくやる気になっているならそれを無下にするのもどうかと思ってな」

 

「おーい、おまたせ。そろそろ始めるぞ」

 戻ってきたトレーナーの言葉に反応した先輩が立ち上がる。

 そのまま立ち上がるついでに、アタシに最後に忠告した。

 

「だが、言っておく。ドーベル。ついていけなくなったら『自分の判断』で抜けろ。いいな?」

 

 その言葉の意味はそこから1時間足らずでとくと思い知らされる事になる。この時のアタシはよく分かっていなかったが。

 

 


 

「はぁっ……はぁっ…………」

 鉛の様に重い体。泥の様に上がらない足。それでも必死に動かしているのに思ったように前へ出ない。呼吸をするのも一苦労なほどに筋肉が疲れている。息が熱い。喉の奥が乾いて、とても嫌な感じがする。このまま呼吸を繰り返せば血の味がしてしまいそうだ。

 先輩よりもいっぱい休憩を貰っている筈なのに、なぜあの人はまだ走っていられるんだ。

 

「ペースが乱れてるぞ! 姿勢を崩すな」

「……くぅっ! あああ!」

 トレーナーは先輩に強い口調で指示をしている。言われた先輩もその言葉に鞭打つように速度を上げた。

(練習中になると雰囲気変わるんだな。あの人も。……あんな顔初めてみた)

 

 やっているメニューは、体幹トレーニング。タイヤ引き。ラダー。坂路。

 内容自体はそう特殊なものではなかった。

 だが違ったのはそのかかってくる負荷。今もただのランでは無く、バカみたいに重い蹄鉄をつけながらランをしている。

 

 体力が尽きたアタシの状況はトレーナーはも気づいているだろう。仏頂面を作って、何でもないような顔をしているが先程から頻繁にこっちを見ているのが丸わかりだ。

 だがそんなトレーナーとは対象的に、先輩は残酷なまでに一切こちらを見ることなく前だけを見て練習を続けている。

 

 足を止めるな。食らいつけ。これは、自分で望んだ事なのだ。

 

 先程まで何十回とそうしていた様に、必死に折れそうな心を、己を鼓舞する。……が、もう限界が目の前まで来ていた。

 

 

 

(……ああ、もう、だめだぁ)

 

 諦めたアタシは、ゆっくりと体の重心を左側へ傾けて、コースの外へ体を持っていった。

 最後に一瞬だけ、周りを見回す。

 

(うん、ここは邪魔にはならなさそうだ)

 頭の端っこで冷静にそれだけを確認すると、全身から力が抜けていって最後には地面へと体を預けていった。

 

 

(もたなかった。とても、とてももたなかった)

 

 目が開かない。周りが静かだ。練習真っ只中なグラウンドが静かな訳はないのに。

 アタシの耳が仕事をしていないのだろう。今アタシの体で仕事をしているのは、まだ酸素が足りないとばかりに動き続ける肺と全身の汗腺くらいだ。

 

 ……先輩の姿は、余りにも遠かった。ラン中は一回も追いつけず周回遅れで追いつかれてばかり。

 

 正直、憧れの存在と練習が出来ることに、色めき立っていたと認めざるを得ない。顔に出ないように取り繕ってはいたが、ずっと今日の練習を待ち望んでいたのだ。

 

 先輩が最後に言った言葉の意味をここでようやく理解した。

 続けるも諦めるも自己責任。遅い側に合わせる事はしないから引き際は自分で決めろ、という忠告だったのだ。

 

 冷たい、とは思わない。先輩の練習に邪魔している側はこっちだ。でも少し自分の状況を再確認して、心が傷んだのもまた事実。 

 

 こうして休んでいる間も、天から降る強い日差しが痛い。目を閉じているのに視界が真っ赤になる。

 日陰に移動しなければ。そう思っているのに足が上がらない。

 

 そのまま倒れ込んでいると、足音がした。

 するとさっきまで真っ赤になっていた視界が突然ふっと暗くなった。ゆっくりと目を開くと、トレーナーの手があった。

 

「お前のタオルとスポドリ、置いとくぞ。あと動きたくないのは分かるがここでは休むな。日陰にいけ。このままだと熱中症になるぞ」

「…………うん」

 相槌をするのが精一杯だったが、アタシがちゃんと反応を返したからかトレーナーの顔がふっと緩む。

 

「……早く、戻った方が、いいんじゃない? 先輩、待ってんでしょ」

「お前の無事を確認したらな」

 

「……バカだと、思った? アタシの、事」

「まさか本当にぶっ倒れるまで続けるとは。そういう意味ではバカかもしれんな。でも嬉しかったぞ。お前も熱い一面があるんだって分かったからな」

「……うるさい」

 

 

「二人って、練習になるとああなるんだね」

「……普段はもうちょっと大人しいぞ? 今日はちょっとピリピリしてるかもな」

 

「しょうがない、よ。早く走りたくて、ウズウズしてるんだよ。あんな事言っといて、早々に倒れたアタシが言っても説得力無いか」

「いや、きっとそうなんだろうな。俺もそう思うよ」

 

 

「おい! 早く戻ってこい!」

 今もまだ走っている先輩が怒っている。あの様子だとアタシが抜けた事に気づいてもいないかもしれない。

 

 

「行きなよ。ちゃんと、向こうで休むからさ」

 トレーナーが持ってきてくれたドリンクのお陰で息も整ってきた。もう少ししたら、動けるだろう。

 

「分かった分かった。……お前には期待してるんだからな。自分で自分を壊すようなことはするなよー?」

 そう言ってトレーナーが去っていった。

 

 

(良い所どころか、カッコ悪い所見せちゃったな。……トレーナーにも)

 

「……ああ……くそっ」

 アタシは初めての本格的な練習。あの人は本番前の追い込み。今までの蓄積もある。しかもあの人は同世代の中でも突出した成績を持っている。大勢が納得するであろう、体のいい言い訳はいくらでも思いつく。……だが。

 

「くやしいなあ」

 

 不思議と湧いてくる敗北感。無念さ。

 こんなアタシにも自信の欠片でも芽生えたということか。我ながら烏滸がましくて可笑しなるような『飢え』の感覚。

 だが、悔しさはあれど後悔は無い。アタシはまだ始まったばかりだ。未来は負けてばかりになるかもしれない。でも最後には、あの先輩の影に追いつけるように。

 

 今日感じた事は忘れないようにしよう。

 アタシはゆっくりと立ち上がって、体を冷やしに行きながらそんな小さな決意をしたのだった。


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