女帝の独占力   作:明石しじま

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#6 七転八倒入学式、上から見るか下から見るか[後編]

 あれから数日が経ち着々と新入生を迎え入れる準備が整ってきた。

 長いようで短かった準備期間を終えて、明日はいよいよ入学式本番。

 会場の設営もスケジュール通りにこなし新入生向けの資料も全て完成した。

 手伝いを任されていた者たちは続々と担当分を終わらせて一足先に解放感を味わっている。残る者たちもリハーサルや機器の調整など仕上げが中心で雰囲気は和やかだ。

 

 そしてやることが無くなればもう残るはトレーニングしかないとばかりに、早速練習を再開している者も出てきて式典に使わないエリアでは今までとは別の賑わいが生まれてきている。

 

 中にはこれまでの鬱憤を晴らすように無茶苦茶なペースで走り切り、トレーナーに怒られている者さえいる始末だ。

 

 そんな周りの様子を見て、焦りが全くないといえば嘘になるがここで焦ってはいけない。

 たった1日の差を過剰に恐れ、負荷をかけるのは新人がやりがちなミスだ。

 変にペースを崩さずに、ここはエアグルーヴの地力を信じるしかない。

 

 

「とはいえ……やっぱり休みが少なかったな。桜花賞が終わったら少し休ませよう」 

 

 改めてスケジュール帳を確認してみても、やはり過密すぎていた。

 手伝ったとはいえ所詮一人の人間ができる仕事量などたかが知れている。

 レース後をいつもより長めに休暇日に設定したので、これで友達と遊びにでも行ってくれればいいが。

 

 予定を調整したりトレーニング内容の見直しをしていると、数回ノックが響いた。ドアが開き、たづなさんが顔を出してくる。

 

「失礼します、トレーナーさん。少しお仕事をお願いしたいのですが」

 

「あ、はい。今行きます」

 

 

 一方の俺も今日もいくつか雑用を抱えている。たづなさんの用事を済ませたら向かってしまうとするか。

 

 ──────────

 

 

 

「エアグルーヴのトレーナー、今日も手伝っているのだね」

 

「そうですね」

 

 

 活き活きと動き回るその様子に思わず微笑を浮かべてしまう。最早名物となりつつある色んな所に出向いているトレーナーの様子を生徒会室から眺める。

 窓を見ると今はカワカミプリンセスと一緒に机を運んでいるようだ。

 最も、トレーナーが精々2個くらいしか運べていないのに対して、合計8個もの机を運んでいるカワカミの手伝いが果たして必要なのかという疑問はあれど、本人たちは楽しそうなのでまぁ良いのだろう。

 

 一方、近くに座っているエアグルーヴは、窓を一瞥したかと思えば再び顔をそっぽ向ける。

 その行動だけだと一見特に興味が無い相手にやるそれだが、彼女は眉間にしわが寄ったり元に戻ったりを繰り返しており、何かしら心が動いているようだった。

 しかも少しすると再び窓を見やっている。

 

 

「しかし君のトレーナーも体力があるな。午前もずっと働きづめだろうに、勤勉なのだな」

「そうなんですかね。むしろあれで気を紛らわしているように見えます」

 

 

 そんな様子に気にせずに少し彼を褒めてみると、エアグルーヴはそれは間違っているとばかりに自分の見解を伝えた。 

 

「あいつは大人しそうな見た目の割に、時々よく分からないことを突然やりだしますから。みっともないマネをやりださないか気が気でないです」 

 

 

 だがそう続ける様子はまるで、彼氏が自分の友達から褒められたときに『いや実は彼にもこういうところがあるんだよ』と周りが知らないちょっとした一面を話し出す彼女のように見えた。

 そんなシーンをこの前恋愛ドラマで見たのだ。

 そのことを思い出して適当なことを言ってみた。

 

 

 

「もしかして、妬いていたりするか? 他の娘にばっか構っているトレーナーに」

 

 

 

「……会長までそんなことを言わないでください。トレセン学園の生徒として、レースに出るための契約という、一つの過程を踏んだ結果に過ぎません」

 

 おお、思ったより硬い反応が返ってきた。やはり堅物だなエアグルーヴは。

 

「あはは、そう怒るな。最初は『貴様になど、練習メニューを作る以上の役割は求めておらん』などと言っていたのに、少しは受け入れているようで安心したよ」

 

「か、からかわないでください」

 

 

「だが、彼と組んで半年経ったがどうだ、パートナーとは良いものだろう?一人で黙々とこなすより、よっぽど成長できるはずだ」

 

 

 私もトレーナーが着くまでは長かったので、つい実感をこめて言ってしまう。

 正しく”理想”を求めて出来るだけのことをした。

 怒ったような顔をしないこと。

 困っている者を見捨てないこと。

 レースでは絶対強者であり続けること。

 名乗るのも躊躇う二つ名を掲げ、ウマ娘の幸福のためにあらゆる努力をしていたが、錫杖に成らんとするトレーナーは中々現れなかったのだ。

 

 トレーナーは選抜レースの戦績だけで決まるものではない。何か運命的な巡り合わせが必要なのだと、今になって思う。

 

 

 そして無事その運命に出会えた我々は、一体どれだけ幸福なのだろう。

 

 

 そんな思いもこめた私の言葉を、重苦しい顔を受け止めたエアグルーヴは、

 

「……ええ、そうですね。彼のお陰で勝てたのは事実です。誰かがいてくれるというのは案外悪くないかもしれません」

 

 少し素直な感情を浮かべて、そう応えた。

 

 

 

 だがああ言ってもまだちらっちらっと視線を外に向けている。

 もう直接提案するかと、ため息をこぼしながら再び話しかけた。

 

「そんなに気になるのならここに呼べばいいじゃないか。後輩たちが噂していたよ。彼もエアグルーヴを心配していたのだろう?」

「いやでも……我々の仕事は勝手が分かっていないと手伝うのも難しいですし……」

 

 ……何をそんなにもじもじしているんだらしくもない。

 

「だから学んでもらえばいいじゃないか。あれだけやる気があるみたいだし、我々が教えつつできることからやってもらえばいい。たった一日だけだが、君のことももう少し理解してくれるのではないか?」

 

「……そうですね、無駄に心配そうな顔を向けられるのもうんざりしてきたところです。確かに、いっそ手伝わせた方があいつも満足するかもしれませんね」

 

 やっと納得したのか、自分に言い聞かせるようにそう言うと手元の固定電話をいじり始めた。

 

 

 

 ──────────

 

 

 机を運び終えた俺は、「ありがとうございましたですわー!!」と、ヴォンヴォンと腕を振って空気を切り裂いているカワカミプリンセスと別れて再び雑用を行っていた。

 結局今日までエアグルーヴに頼られることは無かったが、今回の期間を通して色んなウマ娘やトレーナーとも交流ができたような気がする。

 

 

 これで事前に頼まれていた仕事は終えた。

 色んなところに出向くという雑用ならではの利点のおかげで、今ではどこで何の作業をやっているのか何となく分かるようになってきた。

 次はどこに向かおうか、と自動販売機の前で休んでいると、ポケットの中のスマホが震えだした。

 

 着信を見ると生徒会室からのようだ。通話をオンにして耳元にあてる。

 

「はい、もしもし」 

『おい、トレーナー』

 

 いきなり不躾な声が聞こえてきた。どうやらエアグルーヴのようだ。

 

「どうした?」

 

  

 

『……えっと……その……だな……』

 

 

 

 え、なにもじもじしてんの? 

 

 しばらく言葉を選んでいるような声を聞いていると、突然打って変わってハッキリした声が耳に入ってきた。

 

『やあ、エアグルーヴのトレーナー君。突然すまないね』

「あ、会長さん、どうもどうも、何かありましたか?」

 

 今度はシンボリルドルフの声だ。まぁ生徒会室だし二人ともいるよね。

 

 

『いやね、どうやらこの副会長は君を手元に置いておきたいらしくてね、ただ一緒に居るのも気恥ずかしいからついでに生徒会の仕事を君に教えてあげたいそう

 

 

 ここで先程よりひと際大きいノイズが走り、びっくりして耳を離してしまった。

 

 

『はぁはぁ……すまん、会長が変なことを言った。貴様がいろんなところをフラフラしているから他の生徒に迷惑をかけていないか気に障って仕方ない。そんなに働きたいのであればこちらの仕事を教えてやってもやぶさかではないというだけだ』

 

 

 エアグルーヴがやたら焦った声でまくしたててきた。早口すぎて細かいところはよく聞き取れなかったが、要するに仕事を教えてくれるそうだ。

 

「手伝わせてくれるのか! 是非お願いしたい」

「今から生徒会室へ向かえばいいんだな? すぐ行くよ」

 

 普通に他の生徒みたいに気軽に仕事を投げてくれれば良かったのだが、思ったより本格的に手伝うみたいだ。

 思っていた形とは少し違うが、まぁいい。

 意気揚々と電話を切って立ち上がった。

 

 あ、でもその前に何か差し入れでも買っときたい。先に購買部へ寄るとするか。

 

 

 

 ────────────

 

「会長、なんてことを言うのですか!」

 

 電話を切るなり、エアグルーヴが顔を真っ赤にして反論してきた。

 彼女は普段私の言葉にこうも強く言葉をぶつけることなどそうない。

 この反応がなんだか新鮮で、微笑ましくすら思う。

 

 

「違うのかい?」

「違います! あの言い方では私があいつの傍に居たいかのようじゃないですか!」

 

「ふふ、すまない。つい後輩の手助けをしてやりたくてな」

「君も言っていたじゃないか。彼は君の負担を減らしてやりたいんだろう? そんなことしなくても既に満足だというメッセージも伝えてあげればいいじゃないか」

 

 

「満足などしておりません。私もあいつも、学園にいる間は今に甘んじるつもりはありません。常に上を目指して貰わねば困ります」

 

「ほう、”共に”目指すつもりでいる程には認めているということだな」

 

「……揚げ足取りは止めてください。少なくとも契約している間は中途半端な足取りでは意味がないではありませんか。それは会長も同じの筈です」

 

「……あぁ、そうだな。その通りだ。つい興が乗ってしまってな」

 

 私が何か言う度にエアグルーヴが困った顔が珍しくてついつい面白がってしまったが、レースにあたる我々の姿勢にまで脱線してしまった。

 そろそろこの話はやめにするか。

 

 

「まぁ感謝が気恥ずかしいのなら、例えば次の桜花賞への決意とかでもいい。なにか自分の意志を改めて伝えてみることを勧めるよ。普段の日々の中では言いにくいだろう?」

「……善処します」

 

 

 それから暫くするとドアを叩く音が響き、彼女のトレーナーが入室してきた。

 さて、エアグルーヴはどんな言葉をかけるのか、仕事をしながら見守らせてもらうとするか。

 

 

 

 

 

「これを、左端の番号に沿って順番を直してもらいたい。それと一緒にこの記入例と間違っていないかも確かめてくれ」

「分かった。このファイルに入れて、最後に理事長室に持っていくんだよな」

「ああ、その通りだ。これが終わったら次はエクセルを使った仕事を教えたい。飲み込みが早くてありがたいよ。まさしく挙一反三といったところだな」

「……」

 

 

 

 あれから約1時間後。

 今彼の横に椅子を置き、作業の流れを説明しているのは彼の担当たる女帝では無く皇帝の方だった。

 

 

 

 ―ちょっと待ってほしい。なぜ私が教えることになっているんだ。

 

 

 

 いや違うんだ。

 最初は私も、エアグルーヴに任せようとしたのだ。

 というか話の流れ的に言うまでもなくそうするのが当たり前だ。

 自分で言っておいて彼女のお株を奪うわけないだろうサイコパスか私は。

 

 

 だが任せてからのエアグルーヴが問題だったのだ。

 異様に空回っていた。それはもう空回っていた。

 そこまで重要度の高いことは割り振っていないにも関わらず、このままでは支障をきたすだろう、交代する方がましだと判断せざるを得ないほどに酷かった。

 

 

 

『早速だが、書き仕事は手に負担がくる。このペンを使え』

『……これ筆ペンじゃない?』『あっ』

 

 

『…………そこにこれを押せ。他の書類が混ざっていたら弾け』

『そこって? ……ああここか。……ちなみに他の書類ってどう判断するんだ』

『見ればわかるだろうたわけ』『ええ……』

 

 

『たわけ! その書類とそれとでは担当が違うではないか! 混ぜるな!』

『え? 担当の話とか初耳なんだが……』

 

 

『エ、エアグルーヴ。この書類の数字は右詰めにしなきゃいけないんじゃないか?』

『……その通りだ。訂正印はどこだったか……』

 

 

 横目で見てても見ていられない程に波長が合っていなくて流石にトレーナーが可哀そうになる。

 挙句の果てには社会人経験があるトレーナーに逆にミスを指摘される始末だ。

 一応フォローしておくと彼女は普段こんな教え下手ではない。

 何をどこまで伝えれば相手が理解できるかをちゃんと把握した上で仕事を割り振れるハズなのだ。

 

 結局私に交代した後もエアグルーヴはそわそわとこちらの様子を気にしていた。何なのだ。

 長らく彼女といるが今が一番よく分からんぞ。

 

 

 

 だが何だかんだと作業を続けていたらようやく切りのいいところまで終わった。

 一旦休もうと私が告げるとエアグルーヴも立ち上がり、花を摘みに行くと言い残して退室した。

 

 結局仕事を教えながらこなすのに手一杯で日頃の感謝とかそういうのを伝える空気でも無くなってしまったな。

 戻ってきた後も今日の様子ではもう厳しいだろう。

 今日は意外な一面がよく見れる日だ。

 ナリタブライアンとかが見たらいつもの仏頂面で一週間は冷やかすに違いない。

 

 しかしなんでこんなに余裕がなくなっているのだろう。

 だがそういえば、所謂渉外にあたる仕事は私やその担当の生徒会員がやっていてエアグルーヴが大人と関わることはそう多くなかったな。

 これからはそういう仕事も経験として任せてみてもいいかもしれない。

 

 

「今日のエアグルーヴ、調子悪そうだ」

 

 そんなことを思っているとトレーナーが気の抜けた顔でそう呟いていた。

 いや調子が悪いの一言では済まないぞ。初めて見たぞこんないっぱいいっぱいになってるの。

 

 訂正しようか悩んでいると、こちらに向き直って何やら紙袋を差し出してきた。

 

「あ、そうだ。差し入れ買ってきたんです。生徒会のみんなで食べてください」

 

 どうやらトレーナーは律儀にもお土産を持ってきてくれたらしい。

 来客じゃないんだからそう気を使わなくていいのだがな。

 

「これは態々すまないね。ありがたく頂こう」

「そうだ、どうせだからお茶にしてしまおうか」

 

「あ、手伝いますよ」

 

「いや、久々にこういうのもやってみたくなってね。是非座っててくれ」

 

 私はそう言って人数分のお茶を用意しつつ雑談を挟めた。

 

 

「先程の電話は失礼した。冗談めいた言い方をしてしまったが、エアグルーヴが働いてばっかの君を心配していたのは本当だ。彼女がここまで不器用な一面があるとは思わなかったが……」

「そうだったんですね。でも働いてばかりなのはあなた達の方だと思いますよ」

 

 

「……さっきから気になっていたのだが、私に対して敬語は要らないよ。私も一生徒でしかない」

 

 立場上、敬語を使われることも多いが流石にこの状況で、しかもトレーナーから言われると落ち着かない。

 その旨を伝えるとトレーナーは気まずそうに笑う。

 

 

「……そうか、ああいやすまない。シンボリルドルフはなにせスターのような存在だし、エアグルーヴが世話になっているものだから、ついね」

 

「ありがとう。だけどアスリートとして、エアグルーヴが世話になっているのはこちらこそだ。……というのもなんだか変な言い方になってしまうな、お互い親でも無いのに」

「あはは、正しくその通りだ」

 

 

「俺は今日で仕事は終わりだが、君たちは明日も人前に出たりするんだろう? 頑張ってくれ。職員席から見てるよ」

「ああ、ありがとう。万全の状態で挑むよ。今日でリラックスして臨むことの大事さがよく分かったしな」

 

 そうしてトレーナーと談笑を交わしつお茶の用意ができた。

 こうして面と向かってしっかり話すのは初めてだが、少し彼の誠実な人となりが分かったような気がする。

 さあ、エアグルーヴが帰ってきたら休憩して、それから最後の大詰めをしよう。

 そして明日を迎えるとしよう。

 

 

 

「ちなみに中身は何だろうか」

 

「あ、東京ばな奈です」「……Ne〇Daysにでも行ってきたのか?」

 

 

 

 ……一つ訂正。彼のセンスはよく分からなかった。

 

 

 

 

 ──────────

 

 春の朝はまだ寒く、曇りがかった朝だ。年度の始まりを飾るには少し寂しい天気だが雨が降らなかっただけまだマシだろう。

 昔に比べれば友達の結婚式などで着る機会が増えたとはいえ、中々礼服というものは慣れない。

 特にトレーナーの服装なんて普段はそこまでカッチリとしておらず、学外の人間と関わる日でなければワイシャツの上にブルゾンを羽織る程度なのだ。

 

 この日の予定は午前に式典を行い、午後に後片付けをして終わり次第レースに向けてのトレーニングを本格的に再開させるという流れだった。

 自分たち職員は体育館の左端、来賓席の後ろに位置している場所だった。

 

 

「いくつになっても、お偉いさんの話は眠たくなっちゃいますね」

「あはは、分かります」

 

 小声で隣席の同僚と軽い雑談をしつつ式が始まるのを待つ。

 

 

 

 しかし開始時間になっても始まらず、5分経過してもそのままだった。

 時々行われる全校朝会等ならともかく、厳正に行うはずの入学式で遅れてしまうなどそうない。

 何やらトラブルが起きていたようだとこの時は漠然とそう思うだけだった。

 

 

 この時はまだ、()()なるなんてことになるとは思うはずもなかったのだ。

 

 

 周囲の生徒たちもかすかにざわつきはじめる。

 職員席の方では、流石に私語を挟んだりはしないもののステージの方を心配そうに見る姿が目立ち始めた。

 

 

 

『現在機器トラブルのため、開始が少々遅れております。大変申し訳ありませんが、少々お待ちください』

 

 

 

 司会係の生徒がアナウンスを入れたことで、私語は一旦落ち着きを見せるが大丈夫だろうか。

 なんだろう、さっきから何か嫌な予感がする。

 

 だめだ。居ても立っても居られない。

 俺が行ったところで何にもならないだろうが、こっそりと抜け出すことにした。

 

 

 

 外は相変わらず曇り空。

 朝新入生たちが通ってきた中庭には色とりどりの草花が咲いているが、どうにも今は見る気にならない。

 トイレの振りをして会場の外に出て、そのまま体育館をぐるりと回る。

 何事もなく、裏口にあるドアまでたどり着く。

 

 くそ、なんなんださっきから。無性にドアを開けたくない。

 この胸騒ぎは気圧のせいか。そうであってほしい。

 だがここまできたらもう進むしかない。

 勢いよくドアを開け、裏手に入り込んだ。

 

 

「関係者だ。一体どうしたんだ?」

「あ、エアグルーヴさんの……ちょうどよかった! エアグルーヴさんが!」

 

 

 慌てて駆け寄ってきたのは幼い顔立ちの生徒。

 腕に運営係と書かれた腕章がある。どうやら生徒会員の一人のようだ。

 

 その生徒の後ろに小さな人だかりができている。

 その集団にじっと目をこらす。誰かの周りを生徒たちが囲っているようだ。

 

 垂れた長めのウマ耳。

 普段は真っ直ぐ整えられた、汗に濡れた黒髪。

 その間から見える赤いアイシャドウ。

 

 その中心がだれかが分かった。分かってしまった。

 

 

 

「エッ…エアグルーヴ!?」

 

 

 

 

 その輪の中にいたのは椅子に倒れこみ顔を真っ白にさせたエアグルーヴだった。




アプリにメジロドーベルがやってきましたねうれしいうれしい

ところでこの小説にもドーベルは出てきているんですが、参考資料代としてガチャを経費で落とせませんか?ああ無理ですか

……170連かかりました!(血涙)
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