ウマ娘はゲームからハマったので、ぶっちゃけアニメ見てないし、なんなら競馬の事も全然知らねぇ。
けど、なんか書きてぇ。
よし、1話で終わらせよう。
そういう話。
アイマスのキャラは出てこないのでクロスオーバータグは付けてません。
というか、その為の1話完結なのです......
主人公は設定上、競馬経験ゼロ、ウマ娘はインストールして「映像すげー」ってなったまま放置、くらいの知識という事にしておいてください。
俺はプロデューサーである。
あぁ、いや......
ん、いや、待てよ?
職業的にはフリーターだったんだから、プロデューサーだったというのも正確ではないのか?
まぁ兎に角、俺はプロデューサーだったのだ、THEiDOLM@STERの。熱心な。
アーケードも、据え置きも、ソシャゲもやった。ライブも行ったし、アニメの円盤も揃えたし、当然映画も見に行った。
なけなしのバイト代の殆どを推し達に貢いだ。時には生活費まで削った。
だからだろう。
不摂生を繰り返した体はボロボロだったのだ。
当たり前である。
飯を食うよりも、推しのカードを引き当てる事を優先したのだから。
栄養失調寸前の体で、フラフラとしながら俺は外に出た。
今日から始まるという、コンビニとアイマスのコラボキャンペーンの為だ。
クリアファイルを貰うついでに栄養のある食べ物も買ってしまおう。そんな魂胆だった。
グラリ――
目眩がして、脚をもつれさせて、それでも何とか踏みとどまって......
――おっとおっと、ホントにそろそろヤバいかもなぁ
そんな風に、朦朧とした頭で呑気に考えていた俺は、今、自分が立ち止まっている場所が車道だなんて思ってもみなかった。
右手から迫るトラックが甲高いブレーキ音を立てる中、俺は――
△ △ △
気づけば、何もかも真っ白い空間に居た。
そこに居るのは、俺と立派な白髭を蓄えた威厳のあるお爺さん。
「お主は死んだ」
俺は死んだらしい。
まぁ、そりゃあ元々限界に近い体だったのを、トラックにトドメを刺されたんだから、当然だろう。
ん?トラック?
「トラックに轢かれて死んだ奴は転生させるのが決まりじゃ。よく分からん風潮だがの」
よくあるやつじゃん。
「なんか転生先とか、ちょっとしたチートとかなら融通利くけど、どうする?」
転生先...チート......
こ、これはまさか!?
アイマス、デレマス、ミリマス、シャニマス。
ゲーム時空?アニメ時空?
全部統合した何でもあり世界?
何だっていい!!
彼女達を画面越しじゃなく、直接この目で見られるならば、何だっていいんだ!!
天海春香を。如月千早を。星井美希を。
島村卯月を。渋谷凛を。本田未央を。
春日未来を。最上静香を。伊吹翼を。
櫻木真乃を。風野灯織を。八宮めぐるを。
この手で輝かせる事が出来るなら、俺はこの死を歓迎しよう!!
「彼女達が光輝くあの世界で――」
「ふむ」
「星へと至るその手助けが出来る、そんな人間になりたい――」
「ほほぅ、なるほど......
天海春香を、お茶の間の全てを笑顔にするアイドルへ。
如月千早を、圧倒的な歌唱力で世界を魅了するアイドルへ。
星井美希を、誰もが憧れるようなキラキラ光るアイドルへ。
真も、響も、伊織も、雪歩も、貴音も、やよいも、亜美も、真美も、あずささんも、律子さんも、小鳥さんだって!!
これから始まるんだ。
俺の輝かしい第2の人生が――――
「うむ、では行ってこい。安心せい、お主にはとびっきりの
うん?
トレーナー??
プロデューサーじゃなくて......???
「
「ちょっ!!まっ!!ちがっ―――」
△ △ △
あれから21年が経った。
この世界に生まれ落ちて数年の間は、本当に一縷の望みを託して、あらゆる情報を漁りまくった。
結果、765プロも、961プロも、346プロも、283プロも、315プロだって無かった。
そして何より決定的だったのは、この世界にもTHEiDOLM@STERというゲームが存在していた事だ。しかも、キャラクターのうち数名が
ここはアイマス世界ではない。確実に。
そして、ここはウマ娘の居る世界だ。
街を見渡せば馬耳の......もといウマ耳の生えた美少女が闊歩している。テレビをつければ国民的娯楽であるウマ娘レースが映されている。通った学校ではウマ娘とも友達になれた。
もう、疑う余地も無く、ここはウマ娘の世界である。
だがしかし、俺はこの世界に対してそう悲観してもいなかったのである。
確かに俺はTHEiDOLM@STERを愛していた。
では、他のアニメやゲームを全く触れなかったのか?
否、否である。
1番金を落としたのがアイマスなだけであって、それ以外にも好きな作品は山ほど存在した。
ウマ娘に関しても、ゲームをかるーく触った程度のライトな層ではあるが、決して嫌っていた訳では無い。
何より、あの神様が言っていた「トレーナーとしての才能」、それが俺の心を満たしてくれたのである。
俺はこの世界にやってきてから、とある才能に目覚めた。
それは「才能を光として捉えられる力」である。
感覚的なものなので、あくまで「捉えられる」としか言いようが無いが、才能に溢れる存在を目にすると、俺はえも言われぬ幸福感に包まれる。
特にそれはウマ娘に対して強く感じられ、ウマ娘であれば、具体的にどこが強いのか、どうすれば伸びるのか、まで解るのである。
これまでの人生で出会ったウマ娘数人には中央トレセンへの進学を勧め、実際にその子達はレースで活躍している。
こんな能力を持っていると気づいた時点で、ウマ娘と関わる仕事に就きたいという思いは大きくなっていた。
しかし、決定的な転機となったのは幼い時分、父に連れられて見に行った日本ダービーだった。
もはや名前すらも覚えていないが、あの時ダービーの冠を被った彼女、観客席とウィナーズサークルという距離があっても目が焼かれるかと思うほどの才能を見せつけた彼女。
あの光に魅せられた俺は、その時ハッキリと「トレーナーになろう」という夢を抱いたのだった。
それから俺の邁進の日々が始まった。
とはいえ、勉学は前世分の余裕があり、トレーナー業の才能は神様の折り紙付き。試験に合格する為の努力こそしたが、高校卒業後の3年間をトレーナー養成校で過ごした俺は、無事に中央トレーナー資格試験を現役合格した。
そして今日、俺はトレセン学園の門を潜ったのだ。
△ △ △
「ぜんっぜんスカウト受けてくれない......」
トレセン学園所属の新人トレーナーとなって数日が経った...のだが、先程独りごちた通り、担当は未だに決まっていなかった。
ウマ娘の才能が解る俺にとしては――本当に酷い話だとは分かっているが――
どうしても、惹き付けられる方へ、惹き付けられる方へと向かってしまう。
しかしながら、そんな明らかな有望ウマ娘に集まるのは当然俺だけではない。
沢山の先輩トレーナーに囲まれたウマ娘達の中に、俺のような新人のペーペーを選ぶ奇特な者は居なかった、という訳である。
基本的に、新人トレーナーには2つの選択肢がある。
1つは現在の俺のように「新人トレーナーである」という不利を背負ってでも担当ウマ娘を探す道。
2つ目は、チーム持ちの先輩トレーナーの誰かに師事し、サブトレーナーとして活動する道。
実を言うと、サブトレにならないかと誘われてはいるのだ。昔の友人が所属しているチームのトレーナーさんに、だ。
ひっじょーにありがたい。
そして更にありがたい事に、自分の担当ウマ娘を持ちたいという気持ちもしっかりと理解してくれているという事だ。......まぁトレーナーという生き物は得てしてそうなのだろうが。
そういう訳で、ある一定の期間までスカウトを粘って、それでダメなようなら来なさいと言ってもらっているのである。
そして、その期間の最終日が――今日だ。
いやぁ、流石に1年目から担当を持つ、というのは無理があったか...
そんな気持ちでトレーニング中のウマ娘を見つめている――と。
「あの娘......光が曇ってる?」
ターフの練習コースを一生懸命に走る――けど、いまいちスピードが出ていない、そんな娘がいる。
彼女からは強い才能を感じるが、その光が今はくすんでいるように感じられた。
――もったいない
そんな感想が心の底から溢れてくる。
「君――!」
「え、は、はい!」
何を言うかも考えず、咄嗟の思いで声を掛けてしまった。
声を掛けられた女の子は、ビクリと肩を震わせてから、ゆっくりと減速してコチラに歩いてきてくれる。
俺の方もその娘の方へと歩きながら、何を口にすればいいのかと考えるが――何も出てこない...
こういう時は、思ったことをそのまま口にするのが吉!!
「君は......君は何をそんなに悩んでいるんだ?」
「えっ......と、別に悩んでなんか......」
「そんな訳ない! 悩んでない娘は、そんな貼り付けただけの笑みなんて浮かべない。君の笑顔は、
っと、トレーニング中のウマ娘やトレーナーから白い目で見られている。
このまま注目を浴びたって得はないだろう。
俺の言葉に感じる所があったのか、俯きがちに何か考えている様子だった眼前のウマ娘も、周囲の視線にようやく気がついたのか少し困った表情をしていた。
「ひ、ひとまず場所を移そう...」
△ △ △
専用のトレーナー室などまだ持っていない俺が、ゆっくり話を出来る場所として選んだのは、誰も使っていないレッスン室だった。
本来の用途以外で使うのは褒められた事ではないが、いくつか空いた部屋があったから、今すぐ迷惑になるという事もないだろう。ちょっと位はお目こぼしいただきたいものだ。
「ファル子はね、ウマドルになりたいの」
そうして腰を落ち着けたツインテールのウマ娘――スマートファルコンは、おずおずと自分の夢を語ってくれた。
ウマ娘のアイドル、ウマドルとして輝きたい。
それが彼女の願いだった。
幼い頃からアイドルが好きだった彼女は、偶然見に行ったウマ娘のレース、そのウィニングライブで自分の夢を見つけた。
沢山の観客の前で、センターとして歌って踊って輝きたい。ファンに希望と感動を与えたい。
だが、奇しくも、彼女の脚は――
「ダート適性しかなかった、と......」
「うん......勿論、ダートを馬鹿にしたりはしないよ? ダートを走るみんなだって、本当にキラキラ輝いてると思う。でも......」
ダートのレースの注目度は低い。
スターウマ娘と呼ばれる娘達はみな芝を走るウマ娘だ。
G1の数だって、芝とダートでは圧倒的に芝の方が多い。
それではどうしても、彼女が望む観客の海は臨めない。
ダートを走るウマ娘に「トップウマ娘」への道は開かれない。
だが......そんなのは......
「なぁ、もし良かったらさ、ここで1曲歌ってみてくれないか」
「え?い、いきなり、ここで...?」
「あぁ、うん、確かに唐突な感じは否めないけどさ......少し、思うところがあって、それを確かめたいんだ。俺をファンだと思って、1曲...お願いできないかな?」
いまいちどういう事か分からないといった表情ながらも、おもむろに立ち上がったスマートファルコンはレッスン室に据え置きされたスピーカーから踊れる曲をチョイスして再生する。
明るくてノリのいいその曲は、可愛らしい雰囲気のスマートファルコンにピッタリの選曲だ。
イントロに合わせて跳ね回る彼女の肢体には、その指先にまで魂が篭っている。
「―――――♪」
歌い出し。
違和感なく紡がれた第一声は、俺の心をいとも容易く引き寄せる。
決して歌が上手い訳では無い。
勿論下手ではないが、それだけで食って行けるようなホンモノと比べてしまえば粗が目立つ。
だが、それは魅力がないという事とイコールではないのだ。
俺は上手い歌を聴きに来た訳でも、上手いダンスを見に来た訳でもない。
そう思わせる力を彼女は持っている。
Bメロに入り、曲調が変わる。
可愛らしいだけだったAメロから、ミステリアスな雰囲気へ。
妖艶な表情を纏ったスマートファルコンが伏し目がちに俺を見る。それだけで俺の心臓はドキリと跳ね上がり、サビへの期待感が否が応にも掻き立てられた。
「―――――♪」
そしてサビ――弾ける。
パフォーマンスが始まってから1番の輝きが、スマートファルコン、彼女自身をガツンと俺にぶつけて来た。
しなやかに動く手足に、可憐な笑顔。
――あっ、今、目が合った!
俺はもう、彼女の一挙手一投足...いや、飛び散る汗にすら目を離せずにいた。
凄い。
やっぱり間違ってなかった。
俺が彼女に感じたとびきりの才能は、間違いなんかじゃなかった。
ダートを力強く踏みしめる才能?
――違う。
ハヤブサのようなスピード?
――そうじゃない。
海を割ってもおかしくないパワー?
――否。
影すら踏ませない逃げの才能?
――断じて否だ。
勿論、これらの才能はある。
ウマ娘として、ダートで圧倒的な強さを見せつけられるだけの才能はある。
それは間違いない。
才能の輝きがくすんで見えたのも、ダートの適性が高いのに悩みながら芝で走っていたからだ。
だが、
勿体ないと感じたのは、芝かダートか、そんな事でアイドルとしての才能が発揮されずに終わってしまうという事だ。
そして、その才能はこのライブで確かに示された。
これならば――
スマートファルコンがサビを歌い終えて、決めポーズを取った時、俺は見渡す限りのペンライトの海を幻視していた。
放心状態から戻った俺は、力の限りに拍手をする。
スマートファルコンはその様子にホッとしたようだった。
「どう...だった?」
「最高だった!」
おずおずとそんな事を聞いてくるスマートファルコンに、俺の率直な感想を聞かせてやると、心底嬉しそうな顔をしてくれる。
「うれしい...ありがとう☆ まだ、芝かダートか、踏ん切りは付かないけど、ちょっとスッキリは出来た気がする......ね、ねぇ、トレーナーさん、もしよかったら......」
何か言いたそうにしているスマートファルコンを見て、わざと遮って言葉を紡ぐ。
そこから先はコチラから言わせて貰いたいものだ。
「スマートファルコン!」
「え、は、はい!」
「俺には...悔しいけど、君を芝で勝たせてやる事はできない」
「あ......そうだよね」と見るからに落ち込んでしまうスマートファルコン。
だが、俺はそんな彼女の肩を掴み、目を合わさせて話し続ける。
「日本のダートは確かに、芝より注目度が低い。それも紛うことなき事実だ」
驚いたような、至近距離にある異性の顔に照れているような表情をしていたスマートファルコンだったが、俺の顔が真剣そのものであるという事に気がついて、気を引き締めた。
「だが、
「えっ?」
「ウマ娘のファン達がダートを見ないって言うなら、スマートファルコンを見にこさせればいい。ダートレースを見に来た観客の前で君が踊るんじゃない。君を見に来たファンの前でダートレースが開催されるんだ!」
「そ、そんな事...」
「できる! 俺なら――俺と君ならできる! さっきのライブを見て、俺はそう確信したんだ」
俺は1度スマートファルコンの体を離して、右手を突き出した。
戸惑うスマートファルコンの目を見つめて、覚悟を決めて言葉を吐き出す。
「俺は君を絶対に、トップウマドルにしてみせる! なぁに、トップアイドルを育てるだなんて、前世で何度だってやってきた!」
「うん......うん! トレーナーさん! ダートでトップウマドル! これから一緒に頑張ろうねっ!」
俺の手をギュッと握りしめるスマートファルコン。
誰をも魅了する笑顔を、今この瞬間は、俺にだけ向けてくれる。
なんて嬉しい事だ――そして、この笑顔をもっともっと多くの人に、俺の手で届けられるかもしれない、その事のなんとワクワクする事か!!
「あぁ、よろしくな!......だが1つ、訂正して貰わなくてはならないことがある」
「えっ!? なになに?」
「スマートファルコン、いや、ファル子よ、俺の事は、トレーナーさんではなく、プロデューサーさんと呼べぇ!!」
「ぷっ、あはははは! うん、分かったっ☆ よろしくね、プロデューサーさんっ!」
そういう訳で、俺はこれから
――ウマ娘の世界に飛ばされたけど、プロデューサーとしてやっていこうと思う。