個性泥棒のヒーローアカデミア   作:M.T.

15 / 131
個性泥棒の障害物競走

「スターーーーーート!!」

 

ミッドナイトが掛け声を上げた瞬間だった。

 

「え!?」

 

紡は、合図と同時にゲート上部に糸を張り巡らせ他の生徒達の頭上を滑るように飛んでいった。

 

「最初の篩」

 

紡がそう言った瞬間、地面が凍る。

 

「轟か」

 

(ここで揉めて体力ロスすんのも嫌だし、少し後ろ走っとこ。先頭ほど不利になる障害物とかもあるだろうし)

 

紡は、後ろで凍りついて寒がる生徒達の声をBGMに粘着糸を使って轟を追う形でコースの縁を走った。

 

(後ろを走ってるのは…糸巻か。まあアイツには避けられて当然だな)

 

轟は、後ろから一定の距離を保って追いかけてくる紡を気にしつつも先頭を走っていた。

するとここでプレゼントマイクの実況が入る。

 

『さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!』

 

「無理矢理呼んだんだろうが…」

 

プレゼントマイクがハイテンションで実況すると、相澤は不機嫌そうに言った。

 

 

 

「甘いわ、お二人共!」

 

轟と紡が振り向くと、クラスメイト達が他の生徒の上を通って猛スピードで追い越していた。

 

「そう上手く行かせねえよ舐めプがぁ!!」

 

(舐めプ…あたしの事?)

 

紡は、爆豪の台詞に少しカチンとしつつも前へ進んだ。

 

「俺も負けてられねぇな…!」

 

一方、B組の出雲も溶かした金属を靴の裏から出して滑るように移動し轟の氷を突破していた。

 

「みんな結構頑張ってるな。こりゃ舐めてたら足掬われるわ」

 

「クラス連中は当然として、思ったより避けられたな…」

 

「お前らの裏の裏をかいてやったぜ!ざまあねえってんだ!喰らえオイラの必殺、GRAPE…」

 

峰田が頭の球体を投げようとした、その時だった。

 

 

 

ドゴォッ

 

「峰田君!!」

 

突然ロボットに殴られた峰田は、回転しながら飛んでいった。

 

『ターゲット…大量!』

 

「入試の仮想(ヴィラン)!?」

 

目の前には、0ポイントロボットが大量に並んでいた。

するとここで再びプレゼントマイクが実況する。

 

『さあいきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ!!』

 

「入試ん時の0ポイント(ヴィラン)じゃねぇか!!!」

 

「マジか!ヒーロー科あんなんと戦ったの!?」

 

「多すぎて通れねえ!!」

 

普通科の生徒達は、0ポイント(ヴィラン)を前にして立ち止まっていた。

だが紡は違った。

紡は、大量の巨大ロボットを見上げてはしていたが足を止めなかった。

 

「へー、懐かしいな。しかも今回は大量ときたか。…けどお生憎様」

 

紡は、両手から糸を出すとロボットの頭に糸を貼り付け上へ跳び上がると同時に糸を引っ込めた。

すると紡の身体は猛スピードで上へと飛んでいき、紡は空中で糸を放出してうまくロボットの頭上に着地した。

 

「超・得意分野」

 

紡は、ロボットの頭上を飛び石の要領で渡っていく。

 

「ほいほいっと、お先に失礼〜♪」

 

『1ーA糸巻!!器用にロボットの上を飛び跳ねて攻略ーーーー!!カッケェ!!まるで忍者だァーーー!!』

 

そして、糸を使って最後尾のロボットの背後に着地した。

だがその直後、轟がロボットを凍らせて第一関門を突破した。

すると轟が通り終わった次の瞬間、凍りついたロボットが崩れた。

 

『またしても1ーA!轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!すげぇな!!二抜けだ!!コイツらアレだな、もうなんか…ズリィな!!』

 

「えげつねぇなアイツ。第一関門はさっさとクリアしといて正解だった」

 

紡は、轟の後ろを追いかけつつ引いていた。

第一関門を難なく突破した轟と紡は、さらに走っていく。

ロボット達が足止めをしていたおかげで、二人は3位以下に大きく差をつけて先頭を走っていた。

 

『第一種目は障害物競走!!この特設スタジアムの外周を一周してゴールだぜ!!ルールはコースアウトさえしなけりゃ何でもアリの残虐チキンレースだ!!各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!』

 

凍りついて崩れたロボットの下には、誰かが下敷きになっていた。

 

「お、おい!誰か下敷きになったぞ!!死んだんじゃねえか!?死ぬのかこの体育祭!!?」

 

だが、ロボットの表面がベコベコと動き、直後その下から切島が飛び出す。

 

「死ぬかぁー!!」

 

『1ーA切島潰されてたー!!』

 

「轟のヤロウ!わざと倒れるタイミングで!俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

 

すると、またロボットの表面がベコベコと動く。

 

「A組のヤロウは本当嫌な奴ばかりだな…!俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

 

「B組の奴!!」

 

B組の鉄哲も切島同様飛び出した。

 

『B組鉄哲も潰されてたー!!ウケる!!』

 

「あのー…俺もいるんすけど…」

 

今度は、ロボットの側面がグニグニと動く。

すると、動いていた部分が溶けて穴が空き中からドロドロに溶けた金属に塗れた出雲が出てくる。

 

「危なかったー…ぶつかる寸前に溶かして衝撃軽減してなきゃ死んでたぜ」

 

「あ、お前は!!」

 

『B組出雲も潰されてたー!!三人目ーー!!腹痛えー!!』

 

潰される心配がない三人は、轟と紡を追いかけていった。

 

「良いなアイツら…潰される心配なく突破できる」

 

「とりあえず俺らは一時協力して道拓くぞ!」

 

他の生徒達も、次々と第一関門を突破していく。

だが紡と轟は、既に3位以下を大きく離して先へ進んでいた。

すると長い階段を駆け登ったところで次の障害物が現れる。

次の関門は、深い崖にいくつかの狭い足場があり足場間にロープがかけられているステージだった。

 

『オイオイ第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!! それが嫌なら這いつくばりな!!ザ・フォーーール!!!』

 

「さっきより簡単な気が…」

 

紡は、思わずボソッと呟く。

糸を使って飛べる紡には、第二関門は楽勝すぎたのだ。

だが、次の関門の事を考えてか一直線に攻略する事はせず飛び石の要領で地道にクリアしていった。

第二関門を攻略中に轟に差をつけられ途中で勢いをつけてきた爆豪に抜かれた。

 

「どーだざまぁみろホウキ頭ァ!!」

 

だが、それも含めて紡の計算通りだった。

 

(まだ先頭はくれてやるよ。最終関門で一気にぶっちぎってやる)

 

こうして、轟、爆豪、紡の三人は4位以下に大きく差をつけ駆け抜けていった。

 

『さあ先頭三人は難なく突破してんぞ!!』

 

「クッソー、やっぱ速えなA組!俺も負けてられっかよ!」

 

出雲も文句を垂れつつ第二関門を突破していた。

他の生徒達も、それぞれ個性を使って第二関門を突破していく。

 

『先頭が一抜けて下は団子状態!!上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずに突き進め!!そして早くも最終関門!!かくしてその実態はーーーー…一面地雷源!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!ちなみに地雷の威力は大したことねぇが、音と見た目は派手だから失禁瀕死だぜ!!』

 

それを聞いた紡は、ピタリと足を止める。

 

(やっぱりな。最後は先頭ほど不利な障害物にしてると思ったよ。まあ糸使えば簡単にクリア出来るけど、それをやると…)

 

「はっはぁ俺はーー関係ねーーー!!!テメェ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねぇよ!!」

 

爆豪が両手を爆発させて飛び、轟を追い抜いた。

紡は、最終関門のスタート地点で立ち止まってそれを見ていた。

 

(ああなる。…さて、そろそろ『アレ』やるか)

 

『ここで先頭が変わったーー!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!後続もスパートかけてきた!!!だが引っ張り合いながらも…先頭二人がリードかぁ!!!?』

 

轟と爆豪がトップ争いをしている間紡はというと最終関門のスタート地点から動いていなかったので7位、8位とどんどん順位が下がっていく。

だが、お構いなしに何かを準備するとクラウチングスタートの姿勢を取った。

 

「地雷が爆発するなら、前二人が邪魔してくるなら、その前にぶっちぎるまで」

 

紡は、目を瞑って貯めた電気を脚に集中させる。

そして…

 

「『雷翔(ライショウ)』」

 

 

 

 

ドォオ…ン!!!

 

 

 

「「!!?」」

 

最終関門のスタート地点が一瞬青白く光ったかと思うと、その直後ゴール地点に一つの影が現れる。

さらに次の瞬間…

 

 

 

 

ドゴオオオオオオオォン!!!!!

 

 

 

ステージに設置されていた地雷が一気に大爆発を起こした。

するとその直後、ゴール地点から一つの影が現れる。

その影は轟でも爆豪でもなく、緑谷だった。

 

『おおっとここで一位と二位ががゴーーール!!!なんと地雷原即クリア!!イレイザーヘッド、お前のクラスすげぇな!!どういう教育してんだ!?一着1ーA糸巻紡!!そして二着!!同じく1ーA!!緑谷出久ーーーーー!!!』

 

ゴール地点には、電気を纏っている紡とボロボロの緑谷がいた。

紡は二つ目の個性『伝導』で貯めた超高圧電流を一気に解き放ち地雷が爆発する前にゴールしていた。

この二週間個性を徹底的に鍛え上げる事で個性の使い方を効率化し、最小限の消費で最大限の威力を出せるようになったのだ。

そして紡が地雷を踏みながら一直線に走った事を瞬時に理解した緑谷は、持っていたロボットの破片で身体をガードしつつ連続で起こる爆発の威力を利用して前へ進みゴールした。

二人がゴールした後、三位以下が次々とゴールする。

 

「ハァ…ハァッ、また…クソっ…!クソがっ…!!!」

 

爆豪は、悔しそうに地面を睨んでいた。

 

『さあ続々とゴールインだ!順位等は後程まとめるからとりあえずお疲れ!!』

 

「デクくん…!凄いねぇ!」

 

「この個性で遅れをとるとは…やはりまだまだだ僕…俺は…!」

 

麗日と飯田が緑谷に話しかけてくる。

 

「麗日さん、飯田君!」

 

「二位凄いね!悔しいよちくしょー!」

 

「いやぁ…あれはたまたま…」

 

麗日に詰め寄られた緑谷は、顔を真っ赤にしていた。

一方、紡は脚の調子を確かめていた。

 

(ん、大丈夫。出力50%で走ったけどまだまだ余裕)

 

それぞれゴールし終え振り返っていると、順位が発表された。

 

1位 糸巻紡(A組)

2位 緑谷出久(A組)

3位 轟焦凍(A組)

4位 爆豪勝己(A組)

5位 塩崎茨(B組)

6位 骨抜柔造(B組)

7位 飯田天哉(A組)

8位 常闇踏陰(A組)

9位 瀬呂範太(A組)

10位 切島鋭児郎(A組)

11位 鉄哲徹鐵(B組)

12位 尾白猿夫(A組)

13位 泡瀬洋雪(B組)

14位 蛙吹梅雨(A組)

15位 障子目蔵(A組)

16位 砂藤力道(A組)

17位 麗日お茶子(A組)

18位 八百万百(A組)

19位 峰田実(A組)

20位 出雲芽流斗(B組)

21位 芦戸三奈(A組)

22位 口田甲司(A組)

23位 耳郎響香(A組)

24位 回原旋(B組)

25位 円場硬成(B組)

26位 上鳴電気(A組)

27位 凡戸固次郎(B組)

28位 柳レイ子(B組)

29位 心操人使(普通科)

30位 拳藤一佳(B組)

31位 宍田獣郎太(B組)

32位 黒色支配(B組)

33位 小大唯(B組)

34位 鱗飛竜(B組)

35位 庄田二連撃(B組)

36位 小森希乃子(B組)

37位 鎌切尖(B組)

38位 物間寧人(B組)

39位 角取ポニー(B組)

40位 葉隠透(A組)

41位 取蔭切奈(B組)

42位 吹出漫我(B組)

43位 発目明(サポート科)

44位 青山優雅(A組)

 

「予選通過は上位44名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!!そしていよいよ本選よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!気張りなさい!!!」

 

「うす」

 

上位44名の顔がプロジェクターで投影される。

ミッドナイトが言うと、紡は気を引き締めた。

 

「さーて、第二種目よ!!私はもう知ってるけど〜〜〜…何かしら!!?言ってる側からコレよ!!!!」

 

ミッドナイトがプロジェクターを指差すと、そこには『騎馬戦』と表示されていた。

 

「騎馬戦…!」

 

「個人種目じゃないけどどうするんだろ」

 

紡が言っていると、画面が切り替わる。

 

「参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが… 先程の結果に従い各自にポイントが振り当てられる事!」

 

「入試みたいなポイント稼ぎ方式か。わかりやすいぜ」

 

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

 

「アンタら私が喋ってんのにすぐ言うね!!!」

 

A組の生徒達が喋っていると、ミッドナイトがピシャンと鞭を打って黙らせた。

 

「ええそうよ!!そして与えられるポイントは下から5ずつ!44位が5ポイント、43位が10ポイント…といった具合よ。そして…1位に与えられるポイントは、1000万!!!!」

 

「は?」

 

それを聞いた紡はピタリと固まる。

そして、周りの紡を見る目が明らかに変わった。

 

「上位の奴ほど狙われちゃう…下克上サバイバルよ!!!」

 

「…マジかい」

 

(さて、どうしたものか)

 

紡は、ふざけているとしか思えないポイントの割り振りに、思わず天を仰ぐしかなかった。

 

 

 

 

 




原作では42位までが騎馬戦参加でしたが、本作では44位までにしてます。
ビリビリつむつむを描きました。
良かったら見て下さい♪


【挿絵表示】

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告