トレセン学園のトレーナーとウマ娘のささやかな日常   作:中司春菜

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併走もしくは併せウマとは

名称の通りふたり以上のウマ娘が同時にコースを走ることで行うトレーニングである。
複数で走ることでレースの勘を養ったり、やる気アップや逆にやる気過剰にならないようにするのが目的になる。

当然のことながら複数のウマ娘がいないと出来ないトレーニングであり、もしもトレーナーの元に一人しかウマ娘がいなかったならどうするかというと。


併走トレーニングのその後に

とある日のチームフェーリスの部室。トレーナーがチームメンバーたちとミーティングしている。

「さて、いつも同じメンバーで併走とかしてもマンネリ化するからというわけで、後輩トレーナーさんのところから来てもらいました」

そういうと白毛と黒鹿毛のウマ娘、そしてそのトレーナーが現れた。

「こんにちは、桐生院葵です。今日はハッピーミークのことよろしくお願いします」

「……よろしく……」

白毛のウマ娘が平坦な口調であいさつする。次に、

「うちのトウカ、あぁユメミトウカとのトレーニングよろしく頼む」

「初めましてユメミトウカです。今日は先輩方の胸を借りる気で頑張ります」

仲良くジャージ姿のトレーナーと黒鹿毛のウマ娘があいさつをする。

「それでは準備運動した後、ダッシュを10本、そのあと併走トレーニング。ふたりの併せ役はネイチャとスカイにお願いしますね。で、最後に模擬レースをした後クールダウンして今日のトレーニングは終了です」 

 

そして練習は順調に進み、

「お疲れ様でしたー!」

夕闇迫るトレセン学園の練習コース。チームフェーリスのメンバーと合同練習したふたりのトレーナーが指導する二人のウマ娘の声である。もっともふたりの片割れユメミトウカはともかくハッピーミークの声はあまり聞こえなかったが。

「では、解散。疲れを残さないようゆっくり体を休めてください。あとスカイ、宿題出てるそうですね。他の子もですが忘れずにやるように」

「トレーナーさん、なんでセイちゃんだけ!」

3人のトレーナーはそれぞれの担当ウマ娘に声をかけるとトレーナー室に引き上げるべく歩き出す。

「先輩、今日は併走に模擬レースまでしてもらってありがとうございます。どうしてもふたりきりだとやれることに制限が多くて」

ユメミトウカの担当トレーナーがジャージ姿のまま他の2人に頭を軽く下げ礼を言う。表情こそ落ち着いてそうなのだが、体のあちこちから今日のトレーニングに手ごたえを感じた喜びがもれ出てるのはご愛敬。

「お二人ともありがとうございます。ところでこの後カラオケでも行きませんか?」

とお出かけを提案してきたのはハッピーミークの担当トレーナーこと桐生院葵。名門トレーナー一族の出で育成能力そのものは高いのだが、それ以外に関してはいろいろと箱入りお嬢様だったのか勉強漬けだったのか、あちこち抜けがあり担当ウマ娘との関係構築に四苦八苦中。空回りしたり、ついトレーニングについて考えが行ってしまったり。カラオケもミークと一緒に楽しむ為に趣味を作るといういささか本末転倒というか主客転倒というか冠履顛倒というべきかな発想で通いだしたばかりだ。

「それでは行くお店はこちらで抑えましょう」

「お付き合いしますよ」

フェーリスのトレーナーとユメミトウカのトレーナーが返事を返す。

「ありがとうございます!」

 

こうしてフェーリスのトレーナーが連れて来たのは商店街裏のバー。不思議がってる2人をそのままにドアを開けて、

「ママさん、今晩は」

「ネイちゃんのトレーナーさん、いらっしゃい。個室の方は開いてるから」

「ありがとうございます」

そしてふたりを手招きする。

「このお店は?」

「ネイちゃん?もしかしてナイスネイチャさんのことですか?」

「そうネイチャはここの商店街の人たちと仲良くてね、その商店街の人たちが仕事上がりに集まる店なのよ、ここ。でネイチャつながりでこの店のことを知ってる訳」

さすがにここでネイチャの手料理をいただいた件は伏せておくトレーナー。

「ママ、悪いけど今日はお酒なしで。料理の方だけお願い」

「わかったわ、何にしとく」

「そうですね」

3人とも注文すると、さっそくカラオケに

「それじゃあ1曲目は私が」

とフェーリスのトレーナーは猫大好きな歌を歌い始める。ぶれないトレーナーである。

「次は私が」

と相変わらず童謡を歌い上げる桐生院トレーナー。他にも歌えるはずなのだが、経験値不足のせいかその発想がないのだろう。

そして3人目、ユメミトウカのトレーナーがアカペラで歌い始める。競争ウマ娘として最初に習う曲を。

「ライブで歌う曲では」

「いや、練習でも歌うでしょうに、それに一般人も関係なしに歌う人は歌いますよ。知名度的に言えばこの曲より他の曲の方が多そうですが」

それにカラオケマシンに収録されてるのだから。

「では私も」

と桐生院トレーナーによるウィニングライブ曲メドレーが始まるのでした。

 

その数日後、教室にて。

「ミークちゃん、元気なくない?なにかあった?」

「昨日、トレーナーからカラオケに誘われまして」

「そうなんだー、ふたりで遊びに行けて良かったね。って、じゃあなんでその表情?」

「カラオケに、ウィニングライブの曲が入ってまして」

「あ、入ってるねー。あたしもたまに歌うよ」

「気がつけばウィニングライブのトレーニングになってました……」

「あー、それは……」

聞いた子も微妙な表情になるのでした。




おまけ:オリジナルウマ娘設定
ユメミトウカ (トレセン学園中等部所属:デヴュー前)
黒鹿毛のつややかなロングヘアに、細身だが意外と凹凸のある肢体をしたやや小柄なウマ娘。
名前を漢字で書くと夢見藤花、桜の異称である夢見草及び藤の花という二つの花の名前から来ている。そのため左耳に桜と藤をモチーフにした飾りをつけている。
レース適性は芝の中距離から長距離、マイルは走れないことはない程度、追込みが得意だが差しも使える、少し長めのスパートとラストの末脚で勝利を目指している。

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