「パパ!パパ!」
「どうした?イチリュウ」
「このパパの隣で笑ってる人がママ?」
「そうだな。この時の写真は『高松宮記念』だったかな?」
「ねぇねぇ!ママとの思い出聞きたい!」
俺は思い出を語ろうと子供を椅子に座らせ、口を開こうとすると台所から
「あなた、恥ずかしいからやめて欲しいのだけど。」
と言われたが、俺は「別にいいだろ?減るものじゃないし。それにヘイローとの思い出は今日だけじゃあ語りきれないじゃないか。」と言い返す。ヘイローは「まあ…そうね。語る権利をあげてもいいわよ?」と答えた。
「やった!パパ!早く早く!」
「そうだな…どこから話すか…」
俺はどこから話すか悩んでいるとヘイローが話に入ってきた。
「普通は初めからよ…年取ってきたじゃないかしら?」
「年取ってねぇよ。じゃあ思い出話のはじまりはじまり〜。」
(以下回想)
今日の選抜レースで俺の担当ウマ娘が決まる。そのため、俺はレース場に来た。ほかのウマ娘はスカウトされているが1人だけポツンと準備運動している。番号は7番。俺は配られた書類に目をやる。次のレースは第3レースで3レースの書類を見る。7番の子が気になり、名前を探す。
「(7番7番…あった。『キングヘイロー』か。にしても、どうして1人なんだ?)」
俺は1人でレースが始まるまで考えた。すると近くのトレーナー達の話が聞こえてきた。
「この7番のキングヘイロー?って子。人気ないよな。」
「なんでも、性格に難ありらしいぞ。だから、誰にもスカウトされてないんだと。」
「そこまでやばいのか?」
「やばいらしい。噂曰く『このキングの横に立ってみなさい。』って言うらしい。」
「うわぁ。それはきついな。」
俺は「なるほど。」と思い、キングヘイローを見た。
キングヘイローは集中してゲートの中に入っていった。出走するウマ娘が全員ゲート入りし、ゲートが開いた。キングヘイローは好スタートをし、好ポジについた。俺は双眼鏡でキングヘイローを追いかけた。この日は雨上がりでターフは稍重だった。キングヘイローの服は前を走るウマ娘の泥で泥だらけになっていた。それでも、諦めず最終コーナーで一気に抜きに掛かった。しかし、先頭はかなり離れておりキングヘイローは惜しくも2着。しかし、俺はキングヘイローの末脚を見逃さなかった。最終コーナーで見せたあの末脚を鍛えれば、こんな結果にならないはずと思いキングヘイローをスカウトすることにした。
しかし、キングヘイローはどこにも居ない。すると、後ろから話しかけられた。
「トレーナーさん。」
「ん?えっ?」
「後ろですよ〜。」
「き、君は…グラスワンダー?確か、今葉先輩の担当ウマ娘でURAマイル初代優勝ウマ娘だったかな?」
「はい〜♪ところでキングちゃんどうでした?」
「ん〜。最後末脚がいい。是非ともスカウトしたいのだが…」
「難しいと思いますよ。キングちゃんは意志の固い娘ですから。もし、トレーナーさんがキングちゃんに合う一流になれば話は別ですが〜♪」
「なるほど…にしてもどうして俺が探してるってわかった?」
「そうですね〜。私のトレーナーさんの力…でしょうか?」
「え?今葉先輩いるんですか?」
「はい。あっちにハヤヒデ先輩と一緒に。」
「すごいな…『不死鳥』と『ビワハヤヒデ』と一緒に居るなんて…」
「それより、キングちゃんの行方教えましょうか?」
「知ってるんですか?」
「えっと…確か、校舎の方に行ったはずです。」
「ありがとうございます。探しに行って来ます。」
俺はグラスワンダーにお礼を告げ、トレセンの校舎に向かった。
「校舎ってこの中を探すのか…うわぁ…広いな…」
俺は恐る恐る中に入る。どっちに行こうか悩んでいたらどこからか泣いている声が聞こえた。俺は声が聞こえる方に向かうとそこにはキングヘイローが床に座って大泣きしていた。
「こんな…こんな結果じゃ…なかったのに…」
「君がキングヘイローなのか?」
「何よ…笑いに来たの?」
「まさか、あれは前に邪魔されてた。俺は君をスカウトしに来たんだ。」
「私に?このキングに?」
「そうだ。君だ。キングヘイロー。俺は君の走りをバカにしない」
「ふ…ふん!あなたにこのキングに並ぶ程の一流なる気はあるの?」
「なる。なってみせる。」
「そう!ならこのキングに付いてきなさい!」
「ああ。」
俺とキングの二人三脚の日々が始まった。
早朝からキングのランニングの距離を決めた。そしてトレーニングのする日程を決め、デビュー戦の日にちも決めた。
ある日、トレーナー室で書類整理とトレーニング設定をしているとキングが入ってきた。
「ちょっといいかしら?」
「キング?どうした?」
「あなた。少しトレーナーとして成長したのかしら?」
「そうか?俺なんか今葉先輩とか変な先輩に比べたら全然だ。」
「その今葉先輩って誰なのよ。」
「誰って…グラスワンダーとビワハヤヒデのトレーナーだが…」
「グラスさんの!?えっ…グラスさんの付き合っている疑惑のあるトレーナーの後輩なの?あなた!」
「トレーナー育成学園の先輩だ。良くしてもらってたんだ。」
「そうなのね。少しトレーナー育成学園の時の話が気になるけど、その前にお母様に電話しようと思うわ。」
「えっ?」
「私ってお母様によく『あなたには無理。トレーナーなんて付かないから早く帰ってきなさい。』って言われるのよ。だから、トレーナーが付いたって報告と驚かせようと思うの。」
「なるほど…?とりあえず、意気込みを言えばいいのか?」
「そうね。掛けるわよ。」
キングは深呼吸をして、電話に出た。
「お母様!聞いて驚きなさい!私にトレーナーが付いたわ!さぁ!貴方も意気込みを言いなさい?」
「しっかりと、キングさんをトレーニングしますから応援お願いします。」
キングはドヤ顔で俺の方を見る。電話の向こうからは「貴女には無理だと思うけど、やれることはやりなさい。」とだけ言い、電話を切った。
キングは笑って、
「ねぇ、貴方!一流には一流のやり方があるのをご存知かしら?」
「もちろん、レースに出て圧勝することだ。」
「そうよ!この私キングヘイローはキングとしてレースを勝たなければならないの。だから、貴方もしっかり付いてきなさい。貴方に私の伝説に付いてくる権利をあげる!」
キングは大きな声で俺に伝説について行く権利を渡してくれた。これは気合を入れてトレーニングをしなければならないと思い、そしてしっかりキングの親を見返すことをしなければならないと思った。
翌朝、キングと朝練をしていると後ろから話しかけられた。
「おはようございます〜♪」
「えっ?あっおはようございます。グラスさん。」
「はい〜♪どうですか?キングちゃんは。」
「熱心でしっかりとする子ですよ。」
「そうですか。次のレースは何を?」
「もちろん。東京優駿です。」
「日本ダービーですか。」
「何か問題でもあるんですか?」
「問題と言いますか…ハヤヒデ先輩も出る予定なんですよ?日本ダービーに。」
「大丈夫です。キングなら、勝ってくれますから。」
「そうですか。こちら、日本ダービーを出走するウマ娘達です♪要注意ウマ娘達も居ますから気をつけてください♪」
「こんなもの渡して大丈夫なんですか?」
「大丈夫も何も。乱雑に置かれてましたから〜♪」
「そうですか。それなら貰っておきます。」
俺はグラスワンダーから今葉先輩が集めたであろう情報を受け取った。その情報には「マルゼンスキー」、「アグネスタキオン」、「ビワハヤヒデ」と書かれた書類だった。
主に勝負所やスタミナが高いなどしっかり書かれた書類だった。
キングが一周して帰ってきた。
「あら?貴方それは何かしら?」
「さっきグラスさんが来て渡して行ったんだ。」
「なるほどね〜。なかなかしっかりまとめられてるわね。これもあなたの先輩と言う今葉先輩の字かしら?」
「多分だがそうだと思う。」
「そう。なら、しっかりこのウマ娘達に負けないぐらいトレーニングしないとね。」
「ああ。」
(回想終わり)
「この話は一旦ここまで。ほら、イチリュウもう寝る時間だぞ。ヘイロー任せてもいいか?」
「もちろんよ。貴方に任せられる権利を今しっかり受け取ったわ。」
ヘイローがイチリュウを連れて寝室に入っていた。俺は、ヘイローとのアルバムを見てコーヒーを飲む。そして、泣きながらトロフィーを持つヘイローを見てあの頃を思い出していた。ヘイローの勝負服と同じエメラルド色の記憶を…
初めましての方は初めまして。
他を読んでいる人は…私だよ!と綾凪九尾です。
今回はキングヘイローの小説を書かさせていただきました。
本当は書く予定なかったのに書くことになった理由としましては、無性に書きたくなったと言うことです。見切り発車だと思ってくれていいです。
今回、この小説を書くに渡って難しかったことが沢山ありますね。
まず、「隣に寄り添う青き炎」に時間軸を合わせること。
この話はわかる人にしかわかりませんが、「横に寄り添う青き炎」でビワハヤヒデが担当になった時に選抜をしていた設定です。
このあとは日本ダービーですので、「隣に寄り添う青き炎」は皐月賞からですが、日本ダービーにキングヘイローが居ますので探してみてください。(まだ書けてないのでまた今度にでも。)
次にキングヘイローの話し方です。
「○○の権利を貴方にあげるわ!」や「このキングに着いてきなさい!」など話し方がよく変わるウマ娘ですので、難しかったですね。
あとは、ゴリ押しでやるのみですが…。
そろそろ次回予告…といきます。
次回は多分…6週間後になると思います。
「横に寄り添う青き炎」がその時日本ダービーですので、それに合わせようと思います。
それでは、そろそろ失礼いたします。
凪の中に言葉の綾あり。綾凪九尾でした。