日本ダービーは5着のギリギリ入賞だった。
キングは曇った空を見ていた。
「キング…。」
「ええ。わかってたわ。後でお母様のお説教ね。」
キングそう言って、控え室に戻っていた。マルゼンスキーの独壇場だった。スタートからマルゼンスキーは1回も先頭から落ちることなく、1着を取った。これは敵ながらあっぱれである。しかし、キングを励ますにはどうすればいいのだろうか?とりあえず控え室に向かった。
キングの控え室の前に着いたら中から泣いている声が聞こえた。
「…っ…トレーナー…っ。ごめんなさい…勝てなくて…っごめんなさい。」
「キング泣くな。キングに涙は似合わないぞ。」
「ヒック…そう…っ?でも…っ!」
「ほら泣かない。これからも辛いことあるんだから。」
俺はキングを抱きしめた。好きだからではなく、慰めるためにだ。そして、次のレースについて話した。
「キング。次のレースだが、短距離行ってみないか?」
「…っ…?何それ…?」
「高松宮記念だ。1200m。キングにも分がある。」
「そう…?」
「ああ。知ってるか?キング。」
「何よ…」
「キングの諦めない姿を見て頑張ろうって思う人が居るんだぞ。」
「…いないわ。そんなの。」
「目の前にいるじゃないか。俺はキングにいつも励まされてるよ。」
「……。」
「さて、落ち着いたな。電話はそろそろ鳴るかな。」
俺がキングの携帯に手を伸ばした時に携帯が鳴った。
「お母様だわ。ゴホン!もしもし。」
「ヘイロー言ったでしょ?あなたには無理って。」
「いいえ!これはこの先もっと挑戦するってことよ!」
「相変わらず、減らず口ね。」
「お母様譲りですわ!このキングがキングになる所をその目で見とくといいわ!」
「ふん、言うようになって、いいわ。見といてあげる。でも、次落としたらわかるわよね?」
「ええ!帰ってやりますわ!」
キングはそう言って電話を切った。しかし、キングの顔は暗いままだ。次のレースまで期間があるので、出かけようと思った。
翌日、トレーナー室で遊びに行くためにキングを誘う。
「キング、明日遊びに行かないか?」
「は?」
「だから、気分転換に。」
「なるほど。確かに、気を張りつめてたから疲れてしまったけど…どこか行く宛てあるの?」
「ノープランだ。」
「大丈夫なのかしら。まあいいわ。行きましょう。」
こうしてデート?の約束を取り付けた。俺は書類を片付けた。噂でよれば、今葉先輩は書類の山を1人で片付けたなどを聞いた。真実はどうかは知らないが。キングは雑誌とにらめっこをしていた。俺はそれを見て和み、外を見ると今葉先輩が居た。ビワハヤヒデとグラスさんのトレーニング中だろうか?書類をもってトレーニング指示している。それに夢中になっているとキングが話しかけてきた。
「あなたって…横浜行ったことあるの?」
「横浜?神奈川のか?」
「え…ええ。」
「いや、行ったことないな。」
「そう。なら、明日は横浜に行くわよ。」
「えっ?あ〜。わかった。」
そう言って行く場所が決まった。
時間的にターフが空いている頃にトレーニングを開始した。次のレースは1200mってことなのでスピードを中心的に強化する。
「はぁ…はぁ。タイムは…?はぁはぁ…。ふぅ。」
「ん。早くなってる。さすがキングだ。」
「ふん。私にできないことは無いのよ。それに、貴方が支えてくれるからよ。」
「照れる。ははは。」
「いいから、もう一度測って。走るから。」
「わかった。行くよ!」
こうしてこの日のトレーニングが終わり、トレーナー寮に向かう時話しかけられる。
「こんばんは〜♪」
この落ち着いて話す方は1人だけだ。
「お疲れ様です。グラスさん。」
「そろそろ敬語やめて欲しいですが。まあ…いいです。」
「どうしました?」
「いえ、見かけたので話しかけただけです。」
「そうですか。」
「キングちゃん、残念でしたね。」
「相手が悪かったって言えばいいんですかね。」
「そうですね。それと、明日のデート頑張ってください♪」
「えっ…あっはい。」
「キングちゃんやる気ですからね。」
「何を…ですか?」
「何をってそれは一つだけですよ。これはご自分で考えてください♪それでは。」
グラスさんは俺にモヤモヤを残して、ウマ娘寮に入っていった。俺はグラスさんが言ってた事を考えながら自分の部屋に入る。
「んー?どうゆう事だ?さっぱりわからん。何をやる気なんだ?」
そう考えながらご飯を食べ、風呂に入り、布団に入った。
翌朝、早く起き用意を進める。集合場所は駅。トレセンにしなかったのは周りの目だろう。とりあえず、俺はオシャレだと思う服を着る。そして、デートの基本として早めに着いておくことが男の暗黙のルールである。俺は早めに家を出て、駅に向かった。季節は夏で、クソ暑い。これも全て地球温暖化のせいだと思いながら、駅へ歩いていく。タクシーは使えるが高いから使わない。バスの方が安いからバスに乗る。そして、集合場所の駅が見えてきてわかりやすいシンボルを写真に撮り、キングに送り俺は少し離れた所で待機していると。
「だーれだ。」
目を隠された。匂いや手の感触でわかると思っていたが予想外で香水の匂いに柔らかい手の感触。わかるはずもなく。
「だ…誰だ?」
「担当である私のことを忘れたのかしら?」
どうやらキングも早めに来ていたらしく、俺にイタズラをしたらしい。少し、膨れているように見えるが何故だろう。もしかしてさっきのだろうか?とりあえず謝る。
「すまん。わからなくて。」
「いいわ。その代わり、キングをエスコートする権利を差し上げますわ! 」
「それはありがたき幸せ。行きましょう姫。」
「あなたは何を…/////」
「照れるな!俺だって照れかけてるだからな!」
そう言ってホームに入り、横浜行きの電車に乗った。
俺とキングは他愛のない話をする。
「貴方って、彼女いたことあるの?」
「えっと…お恥ずかしながら…居ません。」
「そう。」
キングは髪をくるくる自分の指に巻き付けてたりしてそっぽを向く。俺は、揺れる電車が心地よく感じ外を見ていた。
数十分間電車に揺られてやっと横浜に着いた。
「んゥーん!ここが横浜よ!」
「もんげぇ。バリ高いビルあるばい。」
「色んな方言言う必要ないでしょ。ここに来たら行かないといけない場所があるのよ。」
「それは? 」
「赤レンガ倉庫よ!」
「お土産屋か?」
「そうね…まあ、そんな感じよ。」
「なら見に行こう。」
俺とキングは赤レンガ倉庫へ向かった。
赤レンガ倉庫は沢山あり、中にはたくさんのお土産屋さんや雑貨屋があって普通に面白い建物になっていた。
「これ、貴方に似合うと思うのだけど…どうかしら?」
「俺も似合うと思ってた。」
「買う?」
「んー。キング決めてくれ。」
「そうね。それならこの服とかどう?」
「確かにこの服なら俺のセンスにも合うから大丈夫そうだな。」
「なら、買ってくるわ。」
「いやいや、自分で買うよ。」
「いつも応援してくれてありがとうの気持ちよ。」
「なるほど。なら、お言葉に甘えて。」
キングはご機嫌で俺の服を買った。俺はキングになにか恩返しをと思い雑貨を見ているとキングが帰ってきた。
「これ買ってきたわって何見てるのよ。」
「キングに似合うものは何かなって思ってな。」
「ふん。そんなの決まってんじゃない。」
「なんだ?欲しいのあるのか?」
「高松宮記念の1着よ!」
「……。わかった。その意思受け取ったぞ。」
俺は今度こそキングを勝たせるように決意し、誓った。何があろうとキングを勝たせるって。
「そんな覚悟決まった顔しても勝つに決まってるわ。だって、キングだもの!おーっほっほっほっ!」
「そうだな。勝ってくれる勝利の女神だもんな。」
俺はそう言ってキングを撫でた。キングは少し照れ下をむく。キングが下を向いている間俺はずっと頭を撫で続けた。それからキングが俺の顔を見て一言。
「ええ!私は貴方の勝利の女神よ!!」
どもども綾凪ですぅ。
今回も短い!
本編にしたら短い!短すぎてこれでいいのか?と思ってしまいますね!
本編と言えば「横で寄り添う青き炎」(次から青き炎と呼ぶ。)が長いからこそ悩んでしまいますね。
さて、今回の話ですけど言えばデート回です。
しかし、まだ好きって感情のない時ですから難しいものですね。まだ好きじゃない人とデートって。
体験しとくべきでしたかね?ははは…。
とりあえず、今回読んでください。
面白くなかったらそれはそれです。
それではそろそろ行かないと…
次回は未定です。まあ…不定期なんで首を長くしてゲートインしといてください。
それでは失礼します。