少女漫画みたいな世界に転生したけど転生友達ができたからOKです 作:キャニッジ
私は今、高校生活で経験したことのない最も危険な状態に身を置いている。
「おい大環寺、またてめぇと同じクラスとはな」
今年こそてめぇに勝つ。と言っているこの男は、浮菱翔吾。テストの点数とかで競ってるのか?やたらオラついてる俺様系の雰囲気を漂わせていて危ない感じが女子に人気で、更に浮菱財閥の御曹司らしい。現代日本に財閥ってなんだ。少女漫画か?
「フフッ、君と同じクラスになれて僕はうれしいけどね。ウッキー」
それはそれとして今年も僕が勝つ。と言っている男は、大環寺総司。世界中で様々な物やサービスを提供する国際企業団OKANグループの跡取りだそうだ。その立場や物腰の柔らかさ、私には及ばないがオールマイティな才能を持ち何でもこなす所から王子様みたいと女子に人気。スペック盛りすぎだろ、少女漫画か?
ウッキーって言うな!という声が前から、更に浮菱をからかう声が後ろから聞こえる。何故私を挟んで会話しているのか。ウキビシ、エザキ、オオカンジ。今日ほど五十音順という文化を恨んだ日はない。
私は今、おもしれー男に挟まれている…!
女子からの顰蹙を買わないようにするには、圧倒的なコミュ力で女子からの人気を得るか、そもそも向こうから関わろうと思わせないコミュ力雑魚になりきることが重要だ。前者なら男と関わっても彼女なら仕方ないかと思わせることも可能だろうが、女子トークができない私には不可能だ。後者では人気な男と関わらなければ嫉妬されることも無く遠巻きに見られるだけで済むし、女子ぢからが求められないので楽だ。結果、後者を選び孤高の美少女をやっている私だが、決してコミュ力が実際に雑魚なのではない。
後者を選んだのになんで学校の人気者が私を挟んでるんだよおおおお!めんどくせええええ!
無だ。無に徹しろ。話しかけられないモブだ。私は目が描写されないモブ。私は目が描写されないモブ。いややっぱりたまに映るけど関わりのない美少女。
「おい女、そこ退け。俺は今から大環寺としっかり話をつけなきゃなんねーからよ」
は?前世の私がこんな言動したら女子から袋叩きなんだが?クソ金持ちイケメンがよ…!まぁこの空間から逃れられるから乗ってやるよ、精々私以下の成績でどんぐりの背比べしてろ、ぺっ。
「…わかりました」
ワザと間を置いて一言だけ発することで積極性のない従順な無口女を演出。完璧だ。次からは休み時間になる度にすぐに離れれば良いだろう。席替えまでこの礼儀のなってねぇイケメンから逃げ続けてやる。
「おい浮菱、そんな言い方ないだろ。彼女にだって名前があるし、何も悪いことしてないだろ。ごめんね江崎さん、僕らが移動するから」
おいやめろ、ここから離れる口実を奪うな。アッ!?どっちに転んでも人気者の言ったこと無視することになるじゃねーか!残ったら浮菱の命令を無視、離れたら大環寺の親切を無視。前門のイケメン、後門のイケメンとはこのことか…!
「…いえ、お手洗いに行くので」
私はどっちの門も通らん!自己都合で離れる横の門を選ぶぜ〜!これでどちらの顔も立つだろ…。立ってください。この後、特に目立つことなく始業式当日を終え、すぐに帰宅した。これからしばらく我慢の日々か、トホホ。
一週間が過ぎた。前後のイケメンに絡まれるのはごめんなので授業以外ではすぐ離れるようにしているためか、今のところ害はない。私は危機を脱したと言っていいだろう。だが何処に少女漫画地雷が埋まっているかわからない、油断することなく席替えまで耐えるのだ。
「はー、つまんな…」
昼休み、読んでいた小説を閉じて呟く。別に小説が面白くない訳じゃない。ただ、趣味じゃないのだ。少年漫画の方が好きだし気楽に読める。学校に持ち込めないし、美少女のガラじゃないからここでは読めないが。
昼休みももうじき終わるしそろそろ戻って次の授業の準備をしよう。メッセージアプリで今日の弁当に文句を垂れてきた弟を帰ったら張り倒すと考えながら歩く。なんでや、唐揚げにハンバーグ、ソーセージに卵焼きの最高弁当だろうが。
教室に入って、おもしれー男共がいないことを確認するため見回したとき、とても懐かしく、存在しないはずのものを見つけた。
そして今日、同郷の友人を得ることができた。
「大環寺、聞いたか?あの女の噂」
昼食を食べている時、浮菱が珍しく女性の話題を出したことに驚きながら返答する。
「あの女っていうと江崎さんのことかい?聞いたことがあるのは男を誑かす悪女っていう悪い噂だね。でも君がそんな噂を気にするなんて、彼女のこと気に入ってたのかい?」
あんなに消極的で無口な彼女が噂通りの性格をしてるとは思えないが。
「江崎はあってるけど他はちげーよ!悪女なんてどーでもいーんだよ!あの女、成績がトップクラスで俺たちよりも高いって話なんだよ」
「それこそただの噂じゃないのかい?どうやって他人の成績を知ることができるのさ。彼女も自分で言いふらしそうにないよ」
「いや、教師を締め上げて聞いたから間違いねぇ」
「そんなことしていたのか、よくないな」
聞けば勉学のみならず運動神経も抜群だそうで、イメージと異なる。
「きっと自分の成績以下の奴らがどんぐりの背比べしてるって俺たちのことを馬鹿にしてたんだぜッ…!」
「そんなことないでしょ…」
しかし、財閥やグループをいずれ背負う僕たちはそこいらの人には負けないと考えていたけど、まさかこんな身近に優秀な人が居たとは。あの性格だ、上手く心を解きほぐし唯一の友人になれば優秀な人材として僕のグループに取り込めるかもしれない。
「興味が湧いたね」
教室に戻るといつも固い顔をして無口な彼女が、一人の地味な男子生徒とその端正な顔を緩ませて談笑している姿を見た。プランが全てオジャンになった。
主人公① 前世で自分がやっても許されないことを許されるおもしれー男に理不尽さを勝手に感じて敵視気味 前世の知識や経験を今世で活かすことにカケラも罪悪感を感じないタイプ 高校の授業は2回目だし幼い頃から才能を磨いてるためクソ優秀 大学で通じるかはわからない 感性が男のままなので自分を磨いた結果男受けする外見になっているが、料理は男料理で弁当を茶色に染め上げるなどズレてる部分多い
主人公② 割と周りが見えてない 前世の知識や経験を今世で活かすことにズルをしてる気分になって罪悪感を感じるタイプ それなりにこなすことが多く熱を上げるものがない