「ぜぇ……はぁ……」
「やっと着きましたね……」
護と椛は、守矢神社の鳥居まで来ていた。モンスターから逃げるのに成功した二人は、神社に着いたとたんに大きな疲労感に襲われる。
「しかし、おかしいですね? 普段なら早苗さんが掃除しているはずなんですが……」
「(早苗……? どこかで聞いたような)」
普段ならここで巫女が掃除してるはずなのだが、今日に限って居ないと言う。その巫女の名前を聞いた時に、護はどこかで聞いた様な気がしたのだが、思い出せなかった。
「おや? 白狼天狗が珍しいね?」
「す、諏訪子さま!?」
「……誰だ?」
「ここの神様の一人ですよ」
「えぇ!? す、すいませんでした!」
突然幼い声がしたかと思うと、そこには変わった帽子を被った少女がいた。彼女が何者なのか分からずに首を傾げる護だったが、相手が神だと知ると、慌てて頭を下げた。
「気にしなくて良いよ~。ここはほら! 何だっけ、あの言葉?」
「『ふれんどりぃ』じゃないか?」
別の女性の声が聞こえた。すると、神社の中から背中に大きなしめ縄らしき物を背負った女性が現れた。諏訪子には失礼だが、女性のほうは一目で神だと分かった。主に威圧感や言動で。
「そうそう、それだ! いやぁ~神奈子は記憶力が良いや」
「早苗のほうがもっとスラスラと言えるのだが・・・ところで!」
神奈子はいきなり護のほうを見る。その目はまるで、何者なのかを探るような目だ。
「お前、能力者だな? 雰囲気が早苗や霊夢といった、能力者たちと似ている」
「あ、あの話が読めないんですが……」
いきなり「能力」などと言われ、きょとんとする護。それを察した神奈子は能力についての説明を始めた。
「おそらく道中で説明を受けただろうが、この幻想郷には『程度の能力』を持つ者が存在する。私や諏訪子のように神の力を持つ者も居れば、身体能力などが能力に転換される者もいる」
能力の説明を忘れていた椛は、尻尾がピーンッ!と伸びた。それを見ていた諏訪子がクスクスと笑っていたのは言うまでもないだろう。
ちなみに、このとき神奈子が言った身体能力が能力に転換される者とは、「空を飛ぶ程度の能力」を持つ霊夢のことである。
ふと、自分の力について気付いた護は、思い切って神奈子に尋ねた。
「もしかしてこの力も、程度の能力なのでしょうか?」
自分の腕を岩のようなものに変化させる護。それを見た神奈子と諏訪子は、目を見開いた。
「っ!? かなり強い力だな。油断していたせいで驚いたぞ……」
「これでよく廃人にならなくて済んだね。それどころか、能力が暴走していてもおかしくないほどなのに……」
どうやら、自分はかなり危ない状態だったようだ。しかも廃人や暴走という危なっかしい単語も聞こえた。強大な力には何かしらの代償が付き物のようだ。
「おそらく、無意識に制御や発動を行なっていたんだろう。幻想郷に来たのは正解だったかもな」
「あははは……」
能力の説明が終わったところで、護は住むところについて相談した。しかし、これに対して神奈子と諏訪子は、あっさりと答えを出した。
「「この守矢神社で暮らさない(か)?」」
「え……えぇぇぇぇ!?」
まさか、神様二人に神社で暮らさないかと誘われるとは思わなかった。断ろうとする護だが・・・
「里で暮らしたとき、いつ能力が暴走するか分からないぞ?」
「う……」
「能力をもっと自在に操れるように修行も出来るよ?」
「うぅっ!」
こうして、護は折れた。あまりのトントン拍子に、椛は全くついていけてない。
「ちなみに君ってさ、名前はなんていうの?」
「白石護といいます」
「「えっ?」」
名前を聞いた瞬間、神様二人が固まった。それは自分の家族を救ってくれた男の名と同じだったからだ。
すると、緑色の髪をした巫女が石段を上ってきた。
「ただいま戻りました~。あれ? 参拝の方ですか?」
「「あ……」」
「あの~神奈子様に諏訪子様? いったいどうしました……か?」
護の姿を見た瞬間、巫女は買い物籠を落とす。護もその巫女を見た瞬間、思わず彼女の名前を呟いた。
「……早苗?」
「護さん……?」
守矢神社の巫女、東風谷早苗は大粒の涙を流しながら、彼の名前を呟いた。そして……
「護さぁぁぁぁん!」
「ごぶぅっ!?」
勢いよく抱きついたのだった。その勢いが強すぎて、護が一瞬気を失いかけたのは余談である。