護と早苗の再会から数ヶ月が経った。あまりにも濃厚な日々で、護は胃に穴が開きそうになったという。
例えば、椛から護の情報を入手した烏天狗、射命丸文が号外をばら撒き宴会を開く事になったり、外来人が来た事を知った博麗霊夢が「何故早く教えなかった」と妖怪の山のメンバーに怒鳴り込んだりした。
一番疲れたのは神柱二人の話で、「早苗の婿にならないか?」と縁談を持ち込んできた。顔を真っ赤にした二人は、能力が暴走しそうになったり、弾幕を宴会場で撃ちそうになったという。
そんな感じで幻想郷のメンバーと知り合っていく内に、護も柔和な笑顔をするようになっていった。
所変わって、場所は博霊神社。護は、霊夢と早苗による特訓を受けていた。
「護さん、横ががら空きですよ!」
「横だけじゃなく、後ろにも注意!」
「うぉぉぉぉぉ!」
護は二人の放つ光弾を避けつつ、一撃を与える方法を考えていた。二人は様々な異変を解決したり、妖怪退治で鍛えられている。一筋縄ではいかない。
「(どうしたものか……)」
「隙あり!」
「やべっ!」
霊夢の放った光弾が直撃しそうになる。今放たれている光弾は、死にはしないものの、当たると結構痛い。
「『鎧化』!」
「このタイミングで!?」
だいぶ能力を制御できるようになった護は、腹の一部に力を集中して、岩のようなもので全身を覆う。この岩のようなものは、どうやら生き物の甲殻らしい。全身を甲殻で覆うと鎧を着込んでいるような見た目になるため、護はこの状態を『鎧化』と呼んでいる。
しかし、かなりの霊力が込められているのか、鎧化しても完全に衝撃を殺すことは出来なかった。一発だけでなく、続けて放たれていたため、護は大きく吹き飛ぶ。
「ぐぅぅっ!」
「そこまで! 今日はここまでにしましょう」
早苗の一言により護は鎧化を解除し、霊夢はお札をしまう。かなり激しい攻撃だったにもかかわらず疲れた様子を見せない霊夢に、護は唖然としていた。
博麗神社の縁側で、霊夢たちはのんびりとお茶を楽しんでいた。お茶請けは、早苗が持ってきた羊羹。高級な物ではないが、小豆の甘みが疲れた体を癒してくれる。
「それにしても、あなたの体を覆う……甲殻だっけ? 一体何の生き物なのかしら?」
「分からないな。蟹とかではないことは確かなんだが。しかし、鎧化をすると動きが鈍くなってしまう。どうしたものか…」」
「鎧化した状態でも動けるように鍛えないといけませんね。これは毎日続けないと無理だと思います」
「だろうな。……ん? コッチに向かってくるの、魔理沙じゃないか?」
「おかしいですね? いつもは猛スピードで突っ込んでくるのに、今日はフラフラしてます」
「まって。あれは……怪我をしてるわ!」
霊夢が空を飛び、魔理沙に肩を貸しながらゆっくりと降りてくる。魔理沙の服はボロボロで、火傷もしていた。
「いててて……。私としたことが油断しちまったぜ」
「どうしてこんな大怪我を!?」
「いつも通り紅魔館へ向かおうとしてたら、空中で変な人間にあったんだ」
「変な人間? 俺のような外来人か?」
「いや、腰を布切れのようなもので覆ってるだけだった。髪が赤髪で、私を見たとたんに炎の弾幕を撃ってきやがった」
「ずいぶん物騒な人ですね。しかも弾幕を撃てるなんて……」
「幻想郷のことも知らない様子だったし、人里で暴れたらまずい事になるぜ!」
「しょうがないわねぇ。じゃあ行きましょうか?その男を懲らしめに」
「え? 霊夢自ら行こうとするなんて、明日は雨か?」
「失礼ね! 面倒事が起きて、紫に小言を言われるのはこりごりなのよ!」
魔理沙の軽い冗談に呆れ顔で答える霊夢。早苗と霊夢が、治癒のお札で魔理沙の傷を癒したあと、4人は怪しい男がいるという場所へ向かった。
幻想郷のとある平原。そこで一人の男が、鹿の肉を生で貪り食っていた。人間は、肉を生で食べるということはあまりしない。護たちは、相手は人間ではないと判断した。
すると、護たちの気配を感じたのか、男は振り返って睨みつける。
「ん? また人間か?」
「あいつが魔理沙を攻撃した奴?」
「赤髪にあの服装……間違いないぜ!」
護は腰を低く構え、霊夢と早苗は札を取り出す。敵意を感じた男は、背中から巨大な赤い翼を大きく広げた。
「何故だ? 何故俺は人間の姿になっている? 分からない……分からない。人間は忌々しいはずなのに何故・・・。うあぁぁぁぁぁムシャクシャする! そこの人間共も、まとめて焼き尽くしてやる!」
赤髪の男は大きく叫び、護たちへ襲い掛かった!