魔法の森の中を走る護、影夜、そしてリオ。虫がやけに沢山集まっている魔法の森のほうを探すのが、手っ取り早いと思ったからだ。
そして魔法の森へ向かう途中――――
「本当に視線を感じたんだろうな? リオ」
「リオレウスの視力を舐めんなよ? 確かに感じた」
「そういえば、ここに入ったとたん虫の量がたけに増えたような……」
後ろから麻痺針を刺そうとしていたランゴスタをブレードの腕で切り裂く影夜。ここにいる全員が、虫達と応戦しながら森を進んでいた。
すると虫達に紛れて、黄色髪の女が護を襲おうとしていた。護は急いで腕を鎧化して、女の攻撃を防ぐ。
「ぐっ、堅い!?」
「……何者だ、テメェは?」
護は女を睨みつける。いきなり現れた女に、影夜とリオも警戒する。すると女は手を大きく広げて名乗ってきた。
「私の名前はビィ。またの名をクイーンランゴスタ。このランゴスタ達を従えている者よ」
「クイーンランゴスタだと!? じゃあ、アルセルタスもお前がやったのか?」
「それは違うわ。タスク、知ってるんでしょう?」
すると、目の前にあった木の上から、タスクと呼ばれた緑髪の女が現れた。さらに奥から、護たちを襲ったアルセルタスが現れる。
タスクはアルセルタスの角を撫でると、護を睨んだ。
「アルセルタス、あなたを食べようとして失敗したみたい。向こうからわざわざ来てくれたってことは……ご飯になりに来たの?」
「ふざけんな! この虫達のせいで被害が出まくってるんだ! あんまりにも度が過ぎるから止めに来たんだ!」
「そっか。でも無駄だよ。私達の命令で、この子達は様々なところに卵を植えつけている。人間なんて、邪魔なだけだしね」
「そうかい。だったら……徹底的に叩き潰してやる!」
その瞬間、二人から殺気が溢れた。護と影夜はいきなりの事に驚き、リオは鋭くなってた目付きをさらに鋭くする。
「タスク、予定変更よ。貴女で人間二人を殺しなさい。私は、あの赤髪のをやるわ」
「分かった」
ビィが指示すると、タスクは拳を振り上げて護たちを襲ってきた。二人は後ろへ飛び退きながら拳を避けていく。しかし気付いていなかった。これは、リオから遠ざける為の作戦だということに。
残されたリオは離れていく護から目を離すと、ビィを睨んだ。一方彼女は、リオを見下したようにリオを見ていた。
「良いのか? 大事な相棒じゃないのかい?」
「あら、タスクがそう簡単に負けるとでも? あの子はゲネル・セルタスなのよ」
「へぇ、あの女帝か。だが、あいつらはまだまだ可能性がある。まさに期待の芽を出し始めてるぜ」
「……あなたの考えはよく分からないわ。分かってるわよ。貴方がリオレウスだってこと。どうして人間なんかの味方をするのかしら?」
「さあねぇ? 自分で考えな」
「そう。なら……無理矢理聞き出してやるわ!」
ビィは爪を伸ばすと、一気にリオに詰め寄った。
「くそっ! あんな小さい体のどこに、あんな馬鹿力が隠されてるんだ!?」
「能力だけがモンスターである貴方と、元々モンスターである私を比べないで。虫唾が走る」
「どこまで人間を見下す気ですか……ねぇっ!」
護が鎧化した腕でタスクの拳を受け止め、影夜がブレードになった腕でアルセルタスの爪を弾く。
すっかりリオと離れてしまった二人は、一人と一匹を同時に相手しないといけない。護は影夜に耳打ちする。
「タスクって奴は俺がやる。お前はアルセルタスを頼む」
「了解です」
「人間如きが、甘く見るな!」
タスクは目を見開き、護の腹を殴る。遅れて反応した護は口から胃液を吐き出し、大きく吹き飛んだ。木に叩きつけられて動けない護に、タスクは近づく。
「やっぱり、こんなものだよね。じゃあ……死んで」
全力で振り下ろした拳によって、護は叩きつぶされる―――――ことは無かった。
拳が届く寸前に、護が受け止めたのだ。彼の足元には大きいクレーターが出来て、歯を食いしばっている。タスクは驚きで動けない。
「なっ!? そんな馬鹿な!」
「死ぬわけにはいかねぇ。待ってる人がいるからよぉ!」
そう言って、護はタスクの顔面を思いっきり殴った。