タスクは顔面を殴られ、護と同じように吹き飛んだ。しかしすぐに体勢を立て直し、護に襲い掛かる。
「さっきのお返しだぜ!」
「一発当てられたぐらいで、調子に乗るなぁ!」
当然、護は一回当たった程度では油断しない。全身を鎧化してタスクの攻撃から身を守る。
だが、タスクがやったのは、護を指差しただけ。護は首を傾げる。
「……やっちゃって」
「ん?……ぐああぁぁぁ!?」
その瞬間、大量の虫が護の背後から襲いかかった。アルセルタスと似た姿をしているが、それは大きな爪が無い。アルセルタスがカマキリとカブトムシを合体させたような姿ならば、それはバッタとカブトムシを合体させたような姿だ。
「私が従えてるのはアルセルタスだけじゃない。カンタロスやオルタロスだって従える。カンタロスの角も、刺さると結構痛いよ? これだけの数、貴方は対処しきれるかな?」
足元からは、オルタロスが酸性の液体をかけていた。防御力を低下させるつもりだろう。甲殻がどんどん煙を上げていく。
しかし護は動かない。それを諦めと判断したタスクは拳を握り締めて、今度こそ潰すためにその腕を振り下ろそうとする。
「諦めがいいね。それじゃあ、トドメと……」
「やらせると思うか?」
「っ!?」
顔は甲殻で覆われてるため分からないが、きっと彼は今ニヤリと笑っただろう。タスクは嫌な予感を感じて離れようとするが、もう遅い。
「へへっ。燃え盛りやがれ! 大・爆・発!」
その瞬間、タスクが感じたのは熱。自分の身体が燃えていく感覚だった。攻撃していた虫達はその甲殻を爆発で粉砕されながら、その命を散らしていく。
タスクは地面を転げまわる。この森は湿気が高く、キノコが繁殖しやすい環境だ。地面にも僅かながら水分がある。転げまわったせいで泥だらけになったものの、なんとか火を消す事はできた。
「ぐうっ! あなた、一体何者なのよ!」
「モンスターさ。能力だけだけどな!」
護は容赦なくタスクを蹴る。タスクは虫達に指示を送ろうとするが、今のガス爆発で殆どがやられてしまった。
しかし彼女は諦めない。復讐のためにも。自分の上にいる者のためにも。タスクは虫の斬羽で作ったナイフを懐から出す。
「(アイツはまだ接近戦しか出来ていない。さらに、全身を鎧化してるため動きも鈍い。高速で攻めれば……勝機はある)」
タスクが攻めに出た! 正面から突撃してくるタスクに対して、右腕だけに力を集中させる。
「せやあぁぁぁぁぁ!」
「そこぉっ!」
分厚くした右腕でナイフからの攻撃を防ぐ。この方法は、他の部分の鎧化を薄くさせてしまう。まさに一か八かの賭けだ。弾かれるのを悟ったタスクは、護の脇腹を狙ってナイフを投げた。
「がっ!? まさか……投げるとはな」
「まだまだよ! 吹き飛ばされたお返しよ!」
タスクはか〇はめ波のような構えを取ると、そこから巨大な水の砲撃を放った。腹に直撃した護は大きな悲鳴を上げてしまう。
「がぁぁぁっ!?」
「甲殻を見て、貴方はグラビモスの力を使ってるって分かったわ。知ってた? グラビモスって水に弱いのよ」
「はあっ! はあっ! 畜生!」
「もう無駄よ! みんな、やっちゃいなさい!」
残っている虫達全てが護に襲い掛かる。ありとあらゆる所から血が噴出していく。その光景を、タスクはただ冷たい目で眺めていた。
「人間であった罪を呪うがいいわ。私のお母様を殺した人間たちを……私は許さない」
護の死体でも拝もうかと思っていたその時だった!
「『マスターファイアー』!!」
「っ!?」
目の前に見えたのは、熱線。タスクは思い出していた。グラビモスはガス爆発や熱線を繰り出せるのだと。
巨大な熱線が、タスクを貫く。体に開いた風穴から全身へ炎が燃え広がっていくのが分かる。
そして、全身から血を出しながら八角形の物を構えている護を見つめた。
「……結局、虫は最期まで虫のまま、踏みにじられるのね」
「逆に踏みにじられそうになったから、危機感を感じたけどな」
「そう、か……。最後まで……戦えたんだ……」
すると、アルセルタスと戦っていたはずの影夜が近づいてきた。これはすなわち、アルセルタスもやられたという事になる。
「……終わったか」
「ええ。他の虫たちの妨害もありましたが、何とか」
「あははっ。完敗だなぁ。だけど……この子達はとっくに、置き土産を残してる。きっとこの世界で生き続ける。覚悟……しておく事ね……」
やがて、タスクは炎に包まれる。小さく燃える炎をしばらく見つめた護は、影夜にポツリと言う。
「行こう。リオのところへ」
「……分かりました」
倒れてるアルセルタスの目には、光が無い。その目が見つめるさきでは、自分が仕えていた女帝が、ただ燃えているだけだった。
タスク&アルセルタス―――死亡