護たちがタスクと戦っていた頃、リオはビィが率いるランゴスタ達に苦戦していた。後ろから麻痺針を刺そうとしてくるのだ。裏拳で殴ろうとしても、すぐにうえへと逃げるのだ。
「くそっ! しつこいな!」
「修羅場を潜り抜けてきた猛者たちよ? そう簡単にやられるとは思わないで」
「そういうお前は高みの見物かい。いい身分だぜ」
「私の攻撃に、親衛隊の子達を巻き込みたくないだけよ。勘違いしないで欲しいわ」
正面から、一匹のランゴスタが体当たりをしてきた。腕を交差させて身を守るリオだが、守った瞬間、紙で指を切ったような痛みを感じた。
これは、虫の羽の中でも特に鋭い「斬羽」というものである。舌打ちと同時に血が垂れてきた。しかし、リオもこう見えて、元いた世界では弱肉強食の世界を生き抜いてきたのだ。空の王者としての誇りが、倒れる事を許さない。
「あらあら……。親衛隊の子達じゃ物足りなかったかしら? それじゃあ、ブナハブラも追加してあげる」
赤い甲殻に覆われた羽虫が現れる。ブナハブラと呼ばれるこの虫たちは、銃を構えるように尻をリオに向けると、一斉に酸性の液体を発射し始めた。
リオの皮膚がどんどん焼け爛れていく。
「ぐああぁぁっ!」
「痛いかしら? リオレウスの悲鳴を聞けるなんて、嬉しい事この上ないわ」
「舐めるなよ……。クソがぁっ!」
リオは大きく息を吸い込むと、そこから大きな炎を吐き出した。その炎はランゴスタやブナハブラたちを巻き込んでいく。狙いは木の上から見下しているビィだ。油断していたビィはその炎をもろに受けた。
「っ!? キャアアアア!」
「飛んで火に入る夏の虫ってな!」
熱さのあまり木から落ちるビィ。しかしリオは油断しない。相手は自分と同じモンスター。人間よりもタフなのだ。
すると、うめき声を上げながらビィは立ち上がった。
「ううぅぅぅぅ……。殺す! 殺してやるわ!」
ビィは爪を伸ばしてリオに斬りかかる。リオはひらりと避けるが、その時に爪が頬を掠った。その瞬間、体の感覚が無くなってそのまま地面に倒れる。
「(がっ! 体が……動かない。喋る事すらできねぇだと!?)」
「どうかしら、私から麻痺液のプレゼントよ? 私の爪は麻痺液を出す事ができるの。痛みすら感じずに殺されるのだから、嬉しいでしょう?」
「(ふざけんな! くそ、動け! 動けよ!)」
「あなたは炎の熱さに耐えられるのでしょう? ならば、焼けるような痛みを味わいなさい」
ビィは手から黄色い液体をボトボトと垂らしていく。その液体はリオの皮膚をどんどん溶かしていく。痛みを味わえとビィは入っていたが、麻痺によって感覚が無い。だが肉が嫌な音を立てながら溶けていくのは分かった。
「(このままじゃ……。ん? 指が動くぞ?)」
ビィはリオをげしげしと踏みつける。徐々にその痛みを感じるようになっていく。リオは動ける喜びと共に、馬鹿にされている屈辱に怒りが溜まっていった。
「あなたを殺したら、人間たちを皆殺しにしてやるわ。今や私はリオレウスすら圧倒できるのだから!」
「……ほう? たとえ麻痺状態が解けてもか?」
「っ!?」
ビィの足と地面の隙間から、リオが怒りの眼差しで睨んでいた。自然と踏みつける足が止まる。その隙を逃さず、リオは足を掴んでビィを木へ投げ飛ばした。
「おらぁっ!」
「があっ!」
「立てよ、虫の女王。空の王者の怒りはこれじゃ治まらないぜ!」
ビィの首を掴み、その力を強くしていく。その時の彼女は恐怖の顔に染まっていった。だが、まだ彼女には虫たちが残っている。総攻撃を仕掛けるように指示をしようとするが……
「無駄だ」
首だけ虫たちへ向けると、口から炎を吹く。突撃しようとした虫たちはその炎に焼かれていった。
「あ、あぁ……。ああぁぁぁぁ!!」
「残念だったな。お前も、親衛隊の奴等と共にやられろ」
容赦なく炎を浴びせるリオ。手を放すと、ビィは火を消そうともがく。しかし火は全身へと回っていく。
「い、嫌だ……。嫌d――――」
彼女の言葉は途中で遮られた。炎の塊となったビィは、そのまま地面へと倒れる。
「リオ!」
「護か。……終わったんだな」
「そっちも終わったようですね」
「影夜も生きてたか。よし、帰るぞ。霊夢や慧音さんに報告だ」
「「おう(はい)!」
3人は、虫たちの亡骸を背に森から出て行った。
ビィ――――死亡