それは、何気ない日のことだった。
「あー、そのぉ……。お前、これから予定とかあるか?」
「ふぇ?」
「この間お前を心配させちゃったし、そのお詫びにと思ってな。どうだ?」
「だ、大丈夫ですよ! すぐに準備します!」
「そうか! じゃあ、鳥居の下で待ってるよ」
早苗は急いで洗濯物を干す。愛しの人と、少しでも一緒の時間を過ごせるように。
「お待たせしました!」
「じゃあ、行こうか」
守矢神社の鳥居の下から、二人は一緒に歩き始めた。本当は飛んで行った方が早いのだが、それだと勿体無いような気がしたからだ。
護はふと、山の木々を見てみる。幻想入りした頃は桜色があったのに、今はすっかり緑色だ。
「そうだ、歩きながらでいいから、早苗が幻想郷に来た頃のことを教えてくれよ」
「そうですねぇ。私たちが来た頃は……」
異変解決に関わったことや、自分達が異変を引き起こしたことなどを早苗は話す。護は異変を起こしたことに呆れながらも、早苗もこの世界で頑張っていることを知ることが出来た。
そうこうしているうちに、人里へ着いた。すると、人ごみの中に目立つ格好をした少女を見かけた。
「おーっす、護! 早苗!」
「よう、魔理沙!」
すっかり馴染みとなった魔理沙が話しかける。彼女はどうやら、実験に使う道具を買いに来たらしい。
魔理沙は早苗と護を見て、ニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「なんだよ、今日は二人でデートか?」
「「なっ!?」」
「おーおー、二人して真っ赤になってるということは図星だな?」
「魔理沙テメェ……!」
「おっと、私はここら辺で失礼するぜ。文に盗撮されないようになー!」
そう言ってそそくさと逃げて行った。護は舌打ちし、早苗は顔を赤くしたまま放心状態になっている。
護は、恥ずかしさを紛らわす為に話題を変えようとする。すると、近くに餡蜜屋の看板を見かけた。
「よ、よし! 餡蜜でも食べるか!」
「そ、そうですね! そうしましょう!」
周りから暖かい視線を受けながら、二人は急いで餡蜜屋へと向かった。
護と早苗は餡蜜屋の中に入る。結構人気な店なのか、老人から子連れまで幅広い人・妖怪がいた。
「いらっしゃいませー! 何名様ですか?」
「二人だ」
「かしこまりました、こちらへどうぞー」
店員に案内された場所は、言ってしまえばカップル用の席だった。しかも竹製の仕切りで客席から離して、「二人っきり」という空間を作り出している。
「(あの店員、顔がニヤニヤしてたのはこの席に座らせたかったからなのか?)」
「(あう~……。絶対にバレてますよぉ……。デートになっている事が……)」
二人して顔を赤らめたまま、黙って席に座る。
このとき護は、恥ずかしがっている早苗に目を奪われた。
「えっと、何にしますか?」
「…………」
「護さん?」
「あっ!? ご、ゴメン……。ちょっとボーっとしてた(早苗のこと考えてたなんて言えねぇよ!)」
「餡蜜、色々サイズがあるみたいですけど、どうしますか?」
「そうだn「お待たせしましたー!」……え?」
護が何にしようか考えてるところに、店員が大盛りの餡蜜を持って来た。それはもう凄くデカイ。とてもじゃないが、一人では食べきれない量だ。
そう。これはカップル用である。
「当店からのサービスです! それではごゆっくりー!」
「あっ、ちょっと!」
「元気な店員さんでしたね」
「ハァ……。とりあえず、食べようか?」
「あれ? スプーンが一つしかないですね?」
もう一本スプーンを頼もうとしたが、いつの間にか店は客でいっぱいだ。店員もさっきの元気な顔はどこへやら、必死な顔で厨房と客席とを行き来している。
「「…………」」
「あの、護さん?」
「え?」
「あ、あーん……」
「(えぇ!? それはさすがに―――ああもう! 期待した目で見るな!)あむ、ムグムグ・・・」
「どうですか?」
「うん、美味いよ(だぁぁ! 凄く恥ずかしい! でも、悪くは無いかな?)」
すると護は何も言わずに早苗からスプーンを取る。そして一口サイズの蜜柑を乗せて、早苗の口へ運ぶ。
「ほ、ほら。さっきのお返しだ」
「はい! あーん(護さんもそんな顔するんだ……。意外です♪)」
少しだけ顔を背けながらも、遠まわしに「あーん」をしてくる護に、早苗は少しギャップを感じた。
そうして、時々「あーん」をしながらも完食した二人は、気付かぬうちに手を繋いで帰っていった。
ちなみにこの光景を……
「あやや~、中々甘い空気じゃないですか~。これは良い写真が撮れそうですよ!」
烏天狗こと、射命丸文が盗さt……もとい、撮影をしていた。
翌日、彼女が発行する新聞によって二人のデートがばれてしまい、護が恥ずかしさで天狗の里に殴りこんできたのは、また別の話である。