外の世界のとある裏路地。そこで、ある男が歩いていた。茶髪で茶目の男の様子は、まるで誰かを探しているようにも見える。
「くそっ! アイツが行方不明になってから数ヶ月……。どこに行ったんだ!」
すると、ビルの陰から数人の男達が現れる。いかにもチンピラという格好だ。チンピラは、茶髪の男を取り囲む。
「おいおい? ここは学生さんが通る場所じゃないぜ?」
「それがどうした?」
「通行料ってのがあるんだよ。ここは俺たちの縄張りだからよぉ。ほら、出せや」
「俺は今、機嫌が悪いんだ。とっとと失せな!」
「んだとコラ! 痛い目に遭いてえのか!」
「もう一度言う。とっとと……失せろ!」
「このガキィ!」
チンピラの一人が拳を振りかざす。だが茶髪の男は、それを片手で受け止めた。
「殴ってきたって事はよぉ……。喧嘩を売ったんだな? そうなんだな?」
辺りがバチ、バチバチと音を立てる。非常識な現象にチンピラ達は慌て始める。
「お、おい! 何か妙だぜ! ソイツから離れ―――――」
「売られた喧嘩は買うぞ、ゴラァァァァァ!」
大声を出した瞬間、近くにあったゴミ箱が吹き飛び、ビルには亀裂が入った。それだけではない。辺りにピリピリと稲妻が走り、チンピラたちに当たった!
「「ぎゃああぁぁぁあああああ!!」」
辺りが青白い光で溢れた。チンピラ達は、全身を黒コゲにしながら逃げていく。一方茶髪の男は、忌々しい物を見るような目で、自分の手を見つめた。
「はぁ。……またか」
「あらあら。随分と凄い力を持ってるのね?」
「っ!? 誰だ!」
男の目の前に、奇妙な服を着た女性が現れる。さっきまで誰も居ないはずだったのに、どうやって現れたのか?
男は、目の前の女性を警戒する。
「貴方のその力はこの世界では強過ぎる。貴方、全てを受け入れる楽園を信じるかしら?」
「うるせぇ! 俺はそれどころじゃねえんだ! 探している奴がいるんだよ!」
「……それが、貴方の言う探している人が居たとしても?」
「なに?」
「来てみないかしら? 全てを受け入れる楽園……幻想郷に」
男は目の前の女性を見つめる。「アイツ」は、自分の持つ異常な力を受け入れてくれた数少ない友達だった。共に喧嘩し、共に笑い、共に成長した仲間だった。
そんな彼が行方不明になったと聞いた時、自分は信じることが出来なかった。友達である俺に何も知らせずに、どこかへ行くはずなんて無い。きっと嘘だ。
だが、その期待はあっさりと砕かれた。いつまで経っても帰ってこない。だから、探す事にした。でも手掛かりがない。「アイツ」は目的地を決めずにブラブラ歩く時があるから、当たり前だ。
もし目の前の女が言っていることが本当なら、もしかしたら出会えるかもしれない!
「……ああ、行ってやる! 行くさ! 幻想郷ってとこに護がいるのなら!」
その答えに女性―――――八雲紫は微笑んだ。
「分かりました。では、ようこそ幻想郷へ。幻想郷は……貴方を受け入れますわ」
そして、その路地裏から一人の男が消えた。
「護さん、何を見てるんですか?」
早苗が護に声を掛ける。どうやら写真を見ていたようだ。写真には、護の頭を掴み笑っている男が写っている。
「写真、ですか。その方は?」
「こいつか? こいつは、早苗の学校から引っ越した先の高校で知り合った、悪友だよ」
「何というか、豪快そうな人ですね……」
「そうでもないぞ? 弱い奴には手を差し伸べる、優しい奴さ。ただ……」
「ただ?」
「アイツも、俺と同じ能力持ちだった。そのせいで化け物呼ばわりされて、孤立してたよ。だから俺が声を掛けた」
「……結局、自分達と違うだけで、人間は同じ人間を化け物と呼ぶんですね」
「おいおい、そんな悲しそうな顔するなよ。お前には笑ってるほうが似合う」
「っ! はい!」
それからしばらくすると、ドォーン!という爆音が響いた。方角からして天狗の里の方だろう。
「っ!? なんだ!」
「まさか、またリオさんのような方が!?」
「急ぐぞ!」
「はい!」
二人は弾幕用のお札や八卦炉・試を持って、天狗の里へ向かった。
「「霊夢(さん)!」」
「あら、早苗に護じゃない。凄い爆音だったわね」
「威力が高いってことが分かるぜ。天狗の里から煙が上がってる」
空を飛んでいると、霊夢と魔理沙に出会う。二人はたまたま、妖怪の山の近くを飛んでいる時に爆音を聞いたらしい。
すると魔理沙が驚いたような顔をして護を見た。何と、護が飛んでいるのだ。
「お? お前、空飛べたんだな」
「どうやら鎧化をしないときは飛行能力が上がるようだ。リオ曰く、グラビモスも少しは飛べるらしい」
そうこうしている内に、天狗の里の入り口に到着する。門は所々壊されており気絶している天狗もいる。
門をくぐると、数人の白狼天狗が男を囲んでいた。
『近づくんじゃねえ! 俺は機嫌が悪いんだ!』
『我々は、何故君があんな山奥にいたのかを聞きたいだけだ!』
『いきなり拘束しようとして、何言ってやがる!』
「護さん」
「ああ。恐らく、外来人だ」
護たちは溜め息をつくと、天狗たちのもとへ向かう。
「あー、ちょっといいか?」
「護さん! お願いします、この人間ちっとも話を聞かないんですよ!」
「分かった。何とか話をしてみるよ。おーい! ちょっと開けてくれー!」
天狗たちは、後ろの霊夢や早苗の姿を見ると道を開けてくれた。
暴れていた男は、急に天狗たちが離れていくのを怪しく感じた。
「おい! そこのおま……え……?」
「何だよ……うん?」
護と男は、時が止まったように動きが止まる。まるで久しい友人と出会ったかのような。そんな雰囲気で。
そして……
「白斗ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「護ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
感動を喜ぶように二人は両手を広げて走り――――
「「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」
お互いを殴った。
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」
いきなりのことに、護と男以外のメンバーは、唖然としていた。