その日、幻想郷に嵐が襲い掛かった。雷が鳴り響き、風は吹き荒れ、細い木の枝なんかはたちまち吹き飛ばされてしまう。
その様子を窓から眺めていた白斗は驚いていた。
「凄い嵐だな……」
「さすがに、こんな日に外出する物好きは居ないだろうな」
窓から嵐の様子を見て呟く白斗に答えたのは、霧雨魔理沙。住むところが無く途方に暮れていた時に「助手になる」という条件のもとで、彼女の家に住んでいるのだ。
「今日は実験とかもやらないんだろ? だったら、今日は本棚を整理だ」
「えぇ~! ついこの間も実験室とかを掃除したばかりだろ!?」
「うるせぇ! 俺が来なければ、この家は腐海の一部になってたのを忘れたのか!?」
「ふ、腐海? 凄い嫌な響きなんだけど?」
「漫画にある、カビやらキノコやらが生い茂る森のことだ」
「私の家は、魔法の森と同じ感じなのかよ!?」
ぎゃあぎゃあと叫ぶ魔理沙をよそに、白斗はまた窓に目をやる。すると何かが見えた。
「……人?」
「ん? どうしたんだよ?」
「いや、人が空を飛んでた気がしてな……」
「見間違いだろ? それよりも、私の家はそんなに汚いのか!?」
「あーはいはい。そう言われたくなかったら掃除をしましょうねー(棒)」
「ムキーーーーーーー!!」
場所は変わって、人里にあるリオの焼き鳥屋。風の音を聞きながら、リオは難しい顔をしていた。
「何なんだ? この嫌な感じは……」
ピシャァン!と雷が鳴る。すると、リオは雨合羽を着始めた。恐らくこれは異変だと悟ったのだが……
「この嵐はヤバイって感じがする。多分、俺一人では無理だな」
こうなれば誰かと組むしかない。すると、ある少女の顔が思い浮かんだ。異変解決のスペシャリストの少女の顔を。
「霊夢に頼んでみるか」
リオは戸を開けて外に出ると、風に飛ばされないように姿勢を低くして、博麗神社へと走っていった。
場所はまた変わり、守矢神社。全身びしょ濡れの護が神社の中に入ってきた。
「ただいま……戻りました」
「神社の補強、ありがとうございます」
「ご苦労だったな、護」
護がびしょ濡れだったのは、神社を補強していたからだ。守矢神社はボロくないが、万が一のことも考えて柱や扉などを補強していたのだ。
早苗からタオルを受け取り身体を拭く護。しかし、吹いている途中、護は何かを思い出すように、手の動きを止めた。
「…………」
「どうかしましたか?」
「いや、補強をしている最中のことなんだがな?」
護は、補強中に起こった事を話す。
~回想~
「くっそ! なんつー嵐だよ! 能力を足に発動してなかったら吹き飛んでるかもしれないな!」
風が吹き荒れる中、護は足だけ鎧化させた状態で、板に釘を打っていた。嵐に向かって文句を吐きながらも作業を続けていた………その時!
「オオォォォォォォォォォォォォォォォン!」
「っ!?」
空へ視線を移すが、見えるのは暗雲だけ。護は首を傾げるしかなかった。
「何だ? あの声は……」
~回想終了~
「――――と、言うわけさ」
「謎の鳴き声ですか?」
「あぁ。風による聞き間違いだといいんだが……」
護は、締め切った雨戸の向こうを、不安げに見つめていた。
翌日。嵐はおさまるどころか、ますます強くなっていた。この事態に、早苗と護は驚くしかない。
「はぁ!?」
「幾らなんでもありえません!」
このままでは洪水だけでなく、川に生息する菌の病気など、考えたくも無い事態が起きてしまう。さらに、作物の収穫量が激減すれば、それによる飢餓の発生も考えられる。
二人がどうしようか考えてると、神奈子が居間に来るように呼んできた。二人は急いで居間へと向かった。
「護、早苗。話があるんだ」
口を開いた神奈子の表情は真剣だ。当然、諏訪子もだ。話す内容は、恐らくこの嵐のことだろう。
「ついさっきのことなんだが、空の方から『強い力』を感じた」
「『強い力』?」
「こんなに大きな嵐……。神じゃないと起こせない現象の筈。だが、神力を感じないのだ」
「神でないと起こせない現象なのに……ですか?」
「そうなんだよ。下手すれば神と同レベルの『何か』がいることになる」
「もし放っておけば、この幻想郷に住む者たちは危機にさらされる。そうなると我々への信仰が薄れる事も考えられる。そこで二人に頼みたい」
神奈子は、早苗と護の二人にあることを依頼した。
「この異変の黒幕を調べて来てもらえないだろうか?」
二人は、迷うことなく頷いた。