護と早苗は、暴風雨の中を進んでいた。
「神奈子さま、あとどれくらいでしょうか?」
《このまま真っ直ぐ進め。空の奴ほどではないが、もう一つの力を見つけた。そいつは各地を転々としていて、今は護が向かう先にいる》
護は、諏訪子と神奈子に渡された『通信札』を使って、異変と関係している者を探していた。どうやら、空に居る何者かが嵐を起こしており、その仲間がさらに被害を悪化させているらしい。
仲間は各地を転々とさまよっている為、被害は広がる一方だという。
「(これだけの異変だ。霊夢やリオ、そして魔理沙と白斗も気付いているはずだ)」
「護さん?」
「ああ、スマンスマン。ところでお前、寒くないか?」
「え? 大丈夫ですけど、どうしてそんなことを?」
「いや、お前の体調が少し心配なだけだ。大丈夫ならその……よかった」
護はそっぽを向いたまま、早苗を心配する。「よかった」の部分だけは小さく言ったつもりなのだが、早苗には聞こえていたようだ。早苗は、不器用でも気を使ってくれた嬉しさを感じた。
思えば、何か恥ずかしい時があるときは、護は決まってそっぽを向く。それを再び見ることができて、思わず笑ってしまう。
「フフッ。ありがとうございます」
「い、良いから行くぞ! 早く異変を解決して、暖かい風呂に入りたい」
「はい。行きましょう」
護の顔は赤く恥ずかしさを隠しきれてないが、早苗はあえてそれを言わず、滅多に見せない彼の顔を、しばらくの間楽しみながら、奥を目指すのだった。
「うわぁ……」
「これは……酷いな」
二人が来た場所は森の中。しかし、その場所はとても拓けている。草は吹き飛び、木は折られているのだ。
敵が近くに居ることは明らかだ。警戒しながら拓けた場所へ入っていくと、突然風が強くなった。
「あら? こんな嵐の中を突き進む人間なんて、久しぶりに見たわ」
声は空から聞こえた。見上げると、踊り子のような服を着ている褐色の女が、クスクスと笑っていた。彼女の周りに風が渦巻いていることから、この女が仲間だろう。
護と早苗は、目の前の女を睨む。彼女は異常なのだ。何せ、額から角のようなものが見えるのだから。
「面倒くさいから単刀直入に言わせて貰う。すぐにその風を抑えろ」
「あら? それはまたどうしてかしら?」
「今分かったぜ。お前が纏うその風、それによってこの場所は拓けてしまったんだ。もしお前がこのまま人間を襲おうものなら……」
「あら、そんな事? 安心しなさいな。―――どうせしばらくしたら人里を襲って、人間を皆殺しにするだけだし」
「「なっ!?」」
褐色の女は、二人を見下したような目で見る。これから石ころを蹴ると宣言するかのように、人々を殺すと言うのだ。
「そのつもりで、この嵐を引き起こしているのかっ!」
「私としては、思う存分風を起こすことが出来るし、命令も遂行できる。一石二鳥ね」
「……俺たちがやるしかなさそうだな」
「そうですね。彼女を、止めましょう」
その瞬間、女のニヤニヤした笑みが泊まり、冷酷な顔へとなった。
「……人間如きが私を倒すって言うの? 古龍と呼ばれる私を?」
「(こいつ、雰囲気が変わった。今まで以上の強敵かもしれない)」
女は両手を大きく広げると、威圧を放ちながら大声で叫んだ。
「我が名はディグル! またの名を
叫びと共に、猛烈な風が護たちを襲った。
一方、白斗と魔理沙は森の中を走っていた。魔理沙は帽子を押さえながら白斗の手を握っている。
「いきなり外に飛び出して、どうしたんだよ?」
「……聞こえたんだ。強いヤツの鳴き声を」
白斗の本能が、強者がいることを告げる。何故か分からないが、戦わないといけない気がしたのだ。
白斗は空を睨みながら、淡々と呟く。
「きっと、この嵐を起こしている犯人がいる」
「異変の黒幕がいるのか? だったら・・・行ってみるか!」
魔理沙は霊夢をライバル視している。きっと霊夢も、この異変を解決しようとしてるのだろう。そう考えた魔理沙は、なんというか、負けたくない気持ちになったのだ。
二人は準備を整えると、嵐の中を進み始めた。