白斗がポイズンと戦い終わったころ、護と早苗はディグルと戦っていた。ディグルの拳が護の身体を狙う。
護は腕と身体を鎧化させて攻撃に耐えるも、後ろへと下がってしまう。
「うふふふ。その程度かしら?」
「(ぐっ! コイツ、見た目の割に一撃が重すぎる!)」
「もう一発くらっときなさい!」
「うおわぁぁぁ!」
ディグルは手の平から小さな竜巻を作り出し、護を吹き飛ばす。幸い、鎧化で身体が重くなっていたため遠くへは飛ばされなかったものの、地面に叩きつけられる痛みは感じた。
早苗は、護に当たらないように配慮しながら弾幕を張っていた。その弾幕を鬱陶しく感じたディグルは、指で小さな円を描く。
「鬱陶しいわねぇ。貴女も吹き飛べ!」
「っ! 弾幕を集中させるまでです!」
早苗は一瞬驚いたが、広範囲にばら撒いていた光弾を全て竜巻に集中させた。中で光弾同士がぶつかり、竜巻の勢いがどんどん弱くなっていく。
しかし、突然早苗の身体が宙に舞った。
「…………え?」
「早苗ぇぇぇぇ!」
「あっはは! 私特製の風の砲弾はいかがかしら?」
「くっそがぁ!」
護は地面を蹴ってディグルに殴りかかった。一瞬だけ鎧化を解除して、また一瞬のうちに拳だけを鎧化する。ディグルは片腕で受け止めるが、いきなり重くなった一撃に少し驚く。
動きが止まった隙を見逃さず、護は八卦炉・試を取り出し、発射した。
「『マスターファイアー』!」
「なっ!? キャアアアアアア!」
太陽光の熱エネルギーが濃縮された太いレーザーが、ディグルを襲った。叫び声を上げながら、彼女は炎に包まれていく。雨が降っていてもその炎は中々消えない。早苗はふらつきながら、護のもとへ来る。
「早苗、大丈夫か?」
「はい。護さんは?」
「俺も、特に問題は――――!?」
何かがおかしい。炎が未だに立ったままになっている。もしディグルが息絶えたのなら炎は横になっているはずだ。
護と早苗は、警戒をさらに強くする。すると、驚くべき光景が目に入った。
パキリ……パキリ………パキパキパキパキ!!
ディグルの褐色の肌がどんどん崩れていく。そこから現れたのは、腕に所々黒い鱗が浮かび上がる女性へとなっていた。
「う~ん。やっぱり脱皮した後の身体はいいわねぇ」
「だ、脱皮……ですか?」
「そうよ。私は定期的に脱皮をすることで新しい甲殻を得るの。今の私は、鋼の甲殻手にしたわ!」
そう言った瞬間、辺りの風が一段と強くなる。護は吹き飛ばされそうになる早苗の後ろへと回り込んで、抱きかかえる。
しかしそれだと、動きが鈍くなってしまう。ディグルは風の弾丸を再び作り始めた。護はもしものために鎧化し、早苗は結界用の札を取り出した。
「あはははっ! 今度こそ潰してあげるわ!」
「早苗、頼むぞ!」
「護さんもお願いします! 結界、展開!」
風の弾丸が二人に向かって放たれる。素早く結界が張られたため直撃する事は無かったが、衝撃が思ったよりも強く、早苗はへたり込んでしまいそうになる。
「(くっ! 嵐のせいでエネルギーをチャージできない。どうすれば……)」
「まだまだよ。この嵐は私の味方。風の弾丸は作り放題よ!」
「それじゃあ、俺にとってもありがたい環境な訳だ」
どこからか声が聞こえた。護にとってそれは、聞きなれた「アイツ」の声で、そして頼もしい挑発の声だった。
見ると、小さな石ころがディグルに当たる。野球ボールを全力で投げたのよりも速い石が頭に当たったのだから、これは痛い。
「お前も来てたのかよ………………白斗!」
「当たり前だ! あと、魔理沙もいるぜ?」
「魔理沙さんまで!?」
「早苗や霊夢に負けてられないからな。 私も参戦だぜ!」
現れたのは、白斗と魔理沙だった。彼らは丁度ポイズンと戦い終わったあと、他よりも風が強く吹いている場所があったので、それを辿ってきたのだ。
ディグルは頭を抑えながら、白斗を睨みつける。
「あなた、何で石ころでそんな威力が出るのよ!?」
「あ? そりゃあ、俺の能力を使って投げたまでだ」
そう言って、自分の腕を別の物へと変える白斗。護はやれやれという感じで、息を吐いた。
「その腕、まさかティガレックス!? グラビモスとティガレックスが出るなんて聞いてないわよ!」
「驚いてる暇があるなら、攻撃しろや。スゥー……ガアアアァァァァ!!」
「ぐおっ!?」
「うわっ!」
「キャアッ!」
いきなり白斗は息を吸い込み、大声でディグルに攻撃した。攻撃は受けていないものの、三人の鼓膜は大ダメージ。護はすぐさま白斗に蹴りを入れる。
「白斗テメェ! いきなり大声出すな!」
「だぁー! 耳元で大声出すな!」
「な、舐めた真似してくれるじゃない……。もうこの森ごと吹き飛ばしてやるわ!!」
ディグルは右腕を突き出すと、巨大な竜巻を作り上げた。その色は黒色で、禍々しい雰囲気を出している。
この場にいた4人は、危険を感じてそれぞれバラバラに散った。早苗が大きな声で白斗たちに指示をする。
「あのディグルという女性、竜巻を作ることが出来ます! 全員で攻撃すれば、この竜巻を消す事が出来るかもしれません!」
「よっしゃ! じゃあ、私から行かせてもらうぜ! 『マスタースパーク』!」
「『マスターファイアー』は、何も八卦炉・試だけから出すとは限らない! くらえぇ!」
「私のスペルカードもお見せします! 『グレイソーマタージ』!」
3人がスペルカードで竜巻を消そうとしている中、白斗だけはディグルを追っていた。能力によって強化された身体能力で木へと飛び移り、ディグルの目の前に立つ。
「逃がさないぜ?」
「あら? お友達の助けをしなくて良いのかしら?」
「あいにくと、護と俺との付き合いは長いんでね。俺はアイツを信じる」
「そう……。なら、その絆をここで断ち切らせてくれるわ!」
ディグルは、口から白い息を吐き始める。危険を感じた白斗は木に飛び移って避けようとするが、息が当たった木は、見る見るうちに凍っていく。
ついに、白斗の足は木と共に凍ってしまい、動けなくなった。
「なっ!?」
「さあ、さっさと死になさい!」
「お断りだ!」
ディグルの爪攻撃を、白斗も爪を使って応戦する。このとき、彼女の身体に僅かな電流が走った。
「ぐっ!? な、なによ今の攻撃は!?」
「俺は電気を発生させる事ができる。いまは雨と風による大嵐によって、お前の身体もびしょ濡れだ。だからこそ、今のお前には電気が流れやすくなっている。さらに!」
白斗は爪に電気を溜めると、凍りついた足に当てた。そこからジュウ、と音を立てて少しずつ溶けていった。
「電気から発生する熱によって、この氷も溶かせるのさ!」
「ふ、ふん! 溶けるといっても、それには時間が掛かる。だったらその前に吹き飛ばすまでよ!」
「やらせるかよ!」
ディグルの竜巻と、白斗の轟音がぶつかる。
「死ねぇぇぇぇ!」
「『音壊の波紋』!」
今までに無い大咆哮。その咆哮は小さな竜巻を容易く打ち消し、ディグルすら吹き飛ばした。
さらに運の悪いことに、彼女が飛んだ先は光弾と熱線が飛び交う大竜巻。止まる術も無く飲み込まれていった。
「う、嘘………。嫌……。嫌ぁぁぁぁぁ!!」
断末魔の音に聞こえるのは、光弾とがぶつかり合って爆発する音。やがてその音すらも聞こえなくなると、目に入ったのは……ボロボロになって息絶えたディグルの姿だった。
ディグル―――――死亡
とある小高い丘。そこには3人の人影があった。一人は紅白の巫女服を着た、霊夢。もう一人は、火竜リオレウスの翼を広げている男、リオ。
そして二人が睨みつける先には……大きな角を額から生やした男が、風に乗っていた。
「その程度か? 博麗の巫女と火竜よ」
「くっ……強い!」
「だろうな。相手は古龍。俺よりもはるかに長生きしている存在だからよぉ」
「さて、そろそろ消えてもらおうか。むぅんっ!」
男が水球を指先から作ると、リオに投げつけた。鳩尾に思いっきり叩きつけられたリオは、その場に崩れ落ちる。
「はっはっはっは! この幻想郷は、我が嵐の元に崩させてくれよう!」
男はそう叫ぶと、霊夢へと襲い掛かった!