東方竜人帳   作:G大佐

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2015年8月3日、大規模編集


止まない嵐~異変の終わり~

 意識を失ったあと、リオは大きな川の前に居た。

 

「ここは?」

「気が付いたかい?」

 

 振り返ると、大きな鎌を持った女性が居た。彼女は時々リオの店に来るので知っている。

 

「小野塚小町……。という事は、俺は死んだのか?」

「惜しいね。アンタは今、生と死の間を彷徨ってここに居る。ここは三途の川の、生者の岸辺さ」

 

 小町曰く、生者の岸辺から向こう側に渡ってしまうと、死者の岸辺に行ってしまい、その先にいる閻魔によって審判を下されるという。いわば死者になってしまうのだそうだ。

 小町の話を聞いていたが、ふと、彼女の後ろにある岩が気になった。そこから緑色の髪が少しだけ見えている。

 

「なあ、小町。後ろにいるのは誰だ?」

「あぁ、この子かい? どうしてもアンタに会いたいっていうからね。……ほら、出てきな」

 

 すると、岩陰から女性がそっと出てきた。その女性を見て、リオは驚く。

 

「リオ……」

「っ! お前……レイアか?」

「うん!」

「レイア…………レイアぁぁぁぁ!」

 

 リオは、嬉しさのあまり涙を流してレイアを抱きしめる。彼女の名前はリオレイア。リオが幻想入りする前、彼とレイアは夫婦だったのだ。

 しかし、密猟者の手によって、大事な妻と生まれるはずだった子供を失ってしまった。まさか、こうして再会できるとは思ってもいなかったのだ。

 すると、レイアよりも濃い緑色の髪をした少女が現れた。

 

「感動の再会は、いかがでしたか?」 

「……誰だ?」

「申し遅れました。私の名前は四季映姫・ヤマザナドゥ。幻想郷などで閻魔をやっております」

「アンタに話があるってことで、ここに来たんだ」

「俺に?」

「彼女の貴方に対する愛は、非常に深いものです。本当は生き返らせてあげたいのですが、そう簡単に死者を生き返らせるわけにはいきません。そのかわり、私は別の方法を考えました」

「私が、リオの武器になろうと思うの」

「なっ!?」

「リオ。さっきまで戦っていたモンスターは、リオの能力だけでは勝てない。仲間と協力するのも大切だけど、リオも強くならなくちゃ勝てないと思うの」

「だからって……」

「私はリオと一緒に居たいの。その為にはこうするしかないの。お願い、リオ!!」

「ぐぬぬぬ……」

 

 目を閉じてしばらく唸った後、リオはゆっくりと目を開く。そして映姫に頭を下げた。

 

「……お願いします」

「よろしいのですね?」

「はい」

「分かりました。すぐに転生の手続きをします。貴方が目覚める頃には、レイアは生まれ変わってるでしょう。ご健闘を祈ります」

「さあ、そろそろアンタの魂は元の肉体に引っ張られる頃だ。早く霊夢たちに加勢してやりな!」

 

 段々と目の前がぼやけていく。するとレイアが近寄り……

 

「んっ……」

「っ!?」

「また、会おうね♪」

 

 リオにキスをした。最後の言葉を聞いた瞬間、目の前は暗くなった。

 

 

 

 

 護と白斗の目の前には、巨大な竜巻があった。それは、ディグルのように獲物を狙うような動く竜巻ではない。動きはしないものの、二人の足は徐々に竜巻へと向かっていく。

 

「ぐっ! 吸い込まれる!」

「と、とにかく風に逆らって走れ! でないと巻き込まれるぞ!」

 

 しかし、吸い込まれていたのは護と白斗だけではない。霊夢、魔理沙、早苗、リオまで吸い込まれていた。

 

「リオさん! リオさん! 目を開けてください!」

「早苗、早く逃げるぞ! あの竜巻はヤバイ!」

「リオ! いい加減目を覚ましなさいよ。空の王者なんでしょう!?」

 

 必死に呼びかける早苗を、魔理沙は引き離す。それとはすれ違いに、霊夢がリオを起こそうとする。しかし、徐々にその吸引力は強くなっていき、逃げ切るのも時間の問題だ。

 霊夢は、札を自分の足元にばら撒いて、あえて自分の足を拘束した。そしてリオの身体に覆いかぶさる。

 

「(これで大丈夫……)」

 

 しかし、現実は非情で、拘束の札がどんどん剥がれていく。やがてそれらが全て剥がれると、霊夢は尻餅をついた。それと同時にリオの身体も竜巻の中へと消えていった。

 

「そ、そんな……」

「う、嘘だろ…………」

「リオぉ!」

 

 全員が絶望する。あの竜巻によって、リオはボロ雑巾のようにズタズタにされるだろう。そうなって助かる確率は、ほぼゼロに近い。

 もうリオは死んだ。そう思ったときだった。

 

「グアアァァァッ!?」

 

 フウジンの声が聞こえた。竜巻は止まり、着物はバッサリと斬られている。そして、その切り口は燃えていた。

 そして、苦しむフウジンの後ろには、男がいた。その男を護達は知っている。モンスターでありながら人間と共に生きる事を決めた男……火渡リオだ。

 

「リオレウスッ! 貴様ぁ!」

「火渡リオ、ここに復活。行くぞ、レイア!」

《うんっ!》

 

 リオは、レイアが剣の姿になった緑桜剣(りょくおうけん)を構えて突っ込む。フウジンは風を操って動きを止めようとするが、リオはいきなり止まってして剣を振るった。そこから弾幕ごっこの光弾が放たれる。

 

「無駄だ。それも我が風で……ぬあぁぁっ!?」

「リオにばかり美味しいとこ取りされてたまるかよ!」

「ようやく命中しやがったな。どうだ? 電気を纏わせた石ころの威力は?」

 

 フウジンが振り返ると、鎧化した護と、石ころを片手でポンポンと軽く投げている白斗がいた。護は熱線を、白斗は石ころに雷属性を付加させて投げたようだ。

 すると、さらに背後から衝撃が来た。さっき振り返ったせいでリオの光弾が当たったのだ。よろめいた瞬間に、リオが手の平に炎の球を作って近寄る。

 

「燃えろ」

「がっ、ギヤァァァァァァァ!!」

 

 炎で顔が焼け爛れ、ぬかるんだ地面を転がるフウジン。そして立ち直ると、彼は完全に怒っていた。

 

「オ……オォ…………ウオオオォォォォォ!」

「キャッ!?」

「か、風が強くなった!?」

「もう許さんぞ、人間ども……。我の全ての力を持って、切り刻んでくれる!」

 

 フウジンは飛ぶ。完全に姿が見えなくなったところで、護たちは不審に思った。

 

「どこだ?」

「逃げたわけじゃないよな?」

「これは……上からよっ!」

『『っ!!』』

 

 上を見た瞬間、圧縮された水が護たちを襲った。大急ぎでジャンプをして避けると、さっきまでいた場所が、深く抉れていた。嫌な汗が背中を流れる。

 さらに、さっきは護たちから見て縦の方向に発射されたのが、今度は横から迫ってきた。

 いち早く危険を察知した男3人は、それぞれ早苗、霊夢、魔理沙を抱きかかえて後ろへ飛び退いた。

 

「フウジンの野郎、上から俺たちを狙ってやがるな?」

「大方、俺たちのスタミナ切れを狙ってるんだろう」

「どうするのよ。あいつを倒さない限り、この嵐は治まらない。私達がやらないと幻想郷が危機を迎えるわよ」

 

 全員が悩む。護と白斗は、例え能力を使っても飛ぶことは難しい。早苗は強風の中を飛ぶのは無理だ。魔理沙は箒を持ってきていないし、霊夢は身体がボロボロだ。

 風の音が支配する中、その静寂を破ったのはリオだった。

 

「俺が行く」

「なっ!? 正気か、リオ!」

「この嵐を飛ぶことなんて無茶です!」

「なに、俺は元の世界では『空の王者』と呼ばれてたんだ。大雨を飛んだこともある」

「……しょうがない。俺は能力で熱線を飛ばしてみる。上手く落とせよ?」

「じゃあ、私も手伝うぜ!」

「では私は、二人のサポートをさせていただきますね!」

「おいおい。じゃあ俺はあれか? 大声で叩き落すってか?」

 

 皆が、それぞれ自分が何をやるかを言っていく。そんな中霊夢は、自分だけ何も出来ないような状況に苛立っていた。どうすれば良いか考えるうちに、ある考えが浮かぶ。

 

「リオ。私も行くわ」

「なっ!?」

「霊夢さん、そんなボロボロでどうするんですか!」

「確かに空を飛ぶのは難しいわ。でもね、私は博麗の巫女よ。異変解決が仕事。何も出来ないっていうのは、我慢できないの!」

 

 リオは、霊夢の目を見つめる。そこには無謀というものは無く、勇気があった。リオは静かに頷く。

 

「分かった。俺が抱きかかえて飛ぶ。お前が最大の技をブチかませ。良いな?」

「もちろんよ!」

「よし、作戦開始だ!」

 

 

 

 

 リオは、霊夢を抱きかかえてひたすら上を目指して飛ぶ。顔面に雨粒が当たって痛いが、それでも彼は突き進んだ。

 そして、風に乗っているフウジンのもとへ辿りついた。

 

「来たか。だが、すぐに叩き落してくれる!」

「……そろそろだ。霊夢、俺はとにかく避け続ける。絶対に当てろよ」

「分かったわ」

「何をゴチャゴチャ言っている! 我が嵐に飲み込まれるが良い!

 

 フウジンは指先で水球を作ってリオへ投げる。しかし、リオはそれを容易く避けた。

 リオは、ふと自分の翼の調子がいい事に気がついた。きっと三途の川から帰ってくるときに、小町か映姫が治療してくれたのだろう。ありがたい話である。

 

「霊夢、まだか!」

「あともうちょっと! もう少しで霊力が溜まる!」

「そこだぁっ!」

 

 ちいさな水のレーザーが、リオの頬を掠る。霊夢の髪の毛も数本、宙に舞った。しかし飛ぶ力は衰えない。リオの血が、霊夢の手を少しだけ染める。

 霊夢はさらに込める。自分の中でも最大だと思うそのスペルカードに、込める。

 

「ええい、ちょこまかと! これで終わらせてくれる!」

「放てるわ!」

「よし、今だ!」

 

 フウジンが水のレーザーを発射する直前に、その名は唱えられた。

 

「『夢想天生』!!」

 

 大量の札が舞い、それらが神秘的な光を放ちながらフウジンを狙い打つ。波のように襲い掛かる弾幕に、飲み込まれるしかなかった。

 

「ぬっ! ぐっ……ぐぬぬ……があああああああ!」

「強力な一撃によって落ちていけ」

「後は任せたわよ、みんな」

 

 フウジンの悲鳴を聞いた護たちは、互いに頷きあう。

 

「ぐうううっ! だが、風を使えば……」

「やらせねぇ! ガアアアアアアアア!」

「グフゥッ!?」

 

 風を使って浮かぼうとするフウジンに、白斗が大声を使って体制を崩した。

 

「魔理沙!」

「おう!」

「「くらええぇぇぇぇ!」」

 

 さらにそこへ、護の能力による熱線と、魔理沙のマスタースパークがフウジンを襲った。

 

「ぐうっ! 馬鹿な! この私が落とされるなどありえん! あってたまるかぁ!」

「あり得ないことがあり得てしまう。それが此処、幻想郷だ」

「あ……あぁ…………空が……。あの空が見え……る…………」

 

 フウジンは空へ手を伸ばしながら、地面に叩きつけられる。そしてそのまま息絶えた。

 すると、さっきまで暗雲に覆われていた空が、青くなった。

 

「久しぶりの青空だな」

「あぁ。なんとか、神奈子さまの依頼も達成だ」

「あっ、見てください! 虹が見えますよ!」

 

 一方リオは、美しく光る剣に語りかけた。

 

「……戻ってきてくれてありがとう。これからよろしくな、レイア」

《うん。よろしくね、リオ》

 

 こうして、大嵐の異変が終わったのだった…………。

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