東方竜人帳   作:G大佐

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2015年8月7日、大規模編集


少年と心を読む妖怪

「うわぁ~!」

「ここが、旧都の最大の特徴でもある大通りさ。ほとんどの奴らはここを通るんだ」

 

 勇義はナナシを連れて地霊殿へ向かっていた。身長差もあって、親子に見えるだろう。ナナシは勇義に手を引かれながら、幻想郷とはどういう場所なのかを聞いていた。

 

「じゃあ、幻想郷は妖怪とか神様がいる世界ってこと?」

「いや、そればかりではないさ。ちゃんと人間とかも生活してる。まぁ、中には人間との共存を理解せずに襲い掛かるヤツもいるけど」

「そうなんだ~……ん?」

 

 すると、上から何かが凄い勢いで落ちてきた。

 それは桶だった。ナナシは首をかしげながら、中をのぞこうとする。すると……緑髪の少女が飛び出してきた。

 

「ばぁーーーっ!」

「うわぁぁぁぁ!?」

 

 大きな声が聞こえたのですぐに振り返る勇義。そこには、腰を抜かしているナナシと、よくパルスィなどと遊んでいる知り合いがいた。

 

「なんだ、キスメじゃないか」

「やっほー、勇義」

「ナナシ、安心しな。この子はキスメ。さっき言った妖怪ってヤツだ」

「び、びっくりしたぁ~」

「あはは、見たこと無い子だったから、ちょっと悪戯しちゃった」

「こいつはナナシ。幻想郷に来たばかり……なのか?」

 

 埋まっていたと言うことは、かなり前から幻想郷に居たことになる。だがナナシは幻想郷の事を知らない。来たばかりと言えるのだろうか?

 

「この世界の事は知らないから、来たばかりで良いんじゃない?」

「そうかい。んで、さとりに挨拶するためにこれから地霊殿へ行くんだ。キスメも来るかい?」

 

 勇義の誘いに、うーんと考えるキスメ。しばらくすると、何かを思い出したかのように申し訳なさそうな顔をする。

 

「ごめん。これから、ヤマメと遊ぶ約束をしてるんだ」

「それだったら仕方ないか。じゃあ、あたし達で行ってくるよ」

「じゃあね、キスメ」

「またね、ナナシ」

 

 お互いに手を振って、別れようとする。すると、キスメはまた何かを思い出したように注意をしてきた。

 

「さとりのペットにもみくちゃにされないでね?」

 

 そう言うと、上へシュルシュルと昇っていった。

 

「ペット……?」

「さとりは地霊殿にたくさんの動物を飼っている。中には妖怪も混じってるけどな」

「たまに、案内された人に悪戯するらしいからな。気をつけろよ」

「わ、分かった」

「そんな心配するなって! キスメよりも、ちょこっとヤンチャなだけだからさ」

 

 それでも、ナナシは不安だった。そうして旧都を抜けて少し歩くと、大きな館が見えてきた。

 

「凄く……大きいです…………」

「このデッカイ館が地霊殿さ。開けてもらうにはペットの誰かがいればいいんだけど……お、いたいた。お燐ー!」

「にゃ~!ってことで、ここにいるよ」

「ね、猫が喋った!?」

「あ、この姿のままだったか。ほいっと!」

 

 二つの尻尾が生えた猫はナナシの反応を見て納得すると、くるりと宙返り。その時に猫は煙に包まれ、着地した頃には人間になっていた。

 

「おぉ~!」

「と言うことで自己紹介。あたいは火焔猫燐。種族は火車さ」

「僕はナナシ。えっと……何者なんだろう?」

「え?種族が分からないのかい?」

「そうなんだよ。実は…………」

 

 勇義が記憶喪失のことについて話すと、お燐は納得した顔になる。彼女はナナシに「付いて来な」と言い、地霊殿の中を案内する。ちなみに勇義は、案内をお燐に任せて帰ってしまった。

 ここだけの話、お燐がペット達に悪戯をしないように命令していたので、ナナシは少し安心していた。

 

「本当はお空も説明したいんだけど、今は仕事中だからねぇ。さあ、ここがさとり様の部屋だよ」

 

 どうやら話をしてる間に到着したらしい。ステンドグラスのような廊下に、一際大きな扉がある。

 

「言っておくけど、さとり様の能力は・・・いや、実際に見たほうが早いか。さとり様、新入りを連れてきました」

『……入りなさい』

 

 少女の返事がすると、ゴゴゴという音を立てながら扉が開かれた。

 

 

 

 

「貴方が新入りのナナシさんですね。私は古明地さとりといいます。よろしくお願いしますね」

「あ、はい(お燐さんが言っていた、さとりさんの能力……。なんなんだろ?)」

「私の能力が気になりますか?」

「え?」

 

 ナナシは目を丸くする。簡単な返事をしただけなのに、なぜ思っていたことが分かるのだろうか?

 

「私の能力は『心を読む程度の能力』なんです。だから、あなたが何を考えているのかは、お見通しなんですよ?」

 

 さとりは自虐気味にそう言うと、少し不安になりながら、サードアイでナナシの心を読んでみた。

 しかし、その心を読んだ瞬間、さとりは心の中で驚いた。

 

「へぇ~! 幻想郷って、そんな能力を持つ人もいるんですね!」

「(えっ、怖がらない? まさか、今言ってることは本心なの!?)」

 

 さとりは戸惑った。今まで出会ってきた者は、ほとんどこの能力を忌み嫌ったのだ。「だったらコイツと話すのは止めよう」という考えを呼んでしまった悲しみは、今でも忘れられない。

 

「私の能力は、あなたの考える事を何でも分かってしまうんですよ!? ……気味悪くないのですか?」

「だって、それでさとりさんは、脅迫とかをやりましたか?」

「そんな事ありません!」

「よかった。能力を悪用してないんだったら、僕は怖がりませんよ(でも、勇義から聞いた弾幕ごっこって奴だったら、勝つのは難しいかもなぁ)」

 

 さとりは唖然とした。戦いたくないとかではなく、勝つのは難しいと思っているのだ。そう考える者は初めてだ。思わず笑みがこぼれてしまう。

 すると、黙ったままのさとりを見かねたナナシは、不安そうな顔で尋ねた。

 

「あれ? どうかしましたか?(何か変なこと言っちゃったかな・・・?)」

「クスッ。大丈夫ですよ。そういう風に言ってくれる方を初めて見ましたので」

「そうなんですか~。怒らせちゃったかと思いましたよ」

 

 安心したように息を吐くナナシ。そんな彼を見てまた小さく笑い、話を進めることにした。

 

 

 

 

 まず最初に、ナナシはどんな妖怪なのか聞いてみることにした。しかし……

 

「え?自分が何者なのか分からない?」

 

 ナナシは記憶喪失なのでどんな妖怪なのか分からない。

 見た目は人間のナナシだが、どこか不思議な力を感じたため、さとりは「妖怪の類ではないか」と思っている。

 

「はい。幻想郷という名前も、初めて知りました」

「しかし、土に埋まっていたとなると、まず人間ではないことは確実ですね」

「そうなんですか?」

「はい。しかし残念ながら、妖怪には様々な種族があるために、貴方が何者なのかは分かりませんが」

「あう~……」

「しかし、きっといつか思い出すでしょう。辛抱するしかありませんね。……おや、もうこんな時間ですか」

 

 さとりは近くにあった振り子時計を見る。すでに長針は夜の時間帯を指していた。かなり長い間話し込んだのだろう。

 

「この時間になると、大通りが賑やかになるのです。ナナシさんも見て行かれたらどうですか?」

「そうですね。勇義に頼んで、見てみようかと思います」

「では、私はある仕事を片付けなければならないのでここでお別れです。お燐ー!」

 

 お燐に、出口まで送ることを命令する。ナナシは礼を言うと、さとりはニッコリと笑いナナシを見送った。

 

 

 

 

「あれ?」

「どうしたんだい?」

「今、視線を感じたような……気のせいかなぁ?」

「急ぎな、ナナシ! 大通りって賑やかになると、混雑することでも有名なんだよ!」

「あ! 待ってよー!」

 

 お燐が、祭りへ急ぐかのように走ってしまう。ナナシは慌てて、彼女の後を追いかけた。

 その後ろでは、さとりと同じ、しかし青色のサードアイを持つ少女がいた。さらに、その目は閉じてしまっている。

 

「お姉ちゃんをあんなに楽しませる人、久々に見た気がするな~。私も久々にお姉ちゃんに会いに行こうかな~」

 

 その少女は笑いながら、さとりのいる部屋へと向かう。しかし、途中で汗を何度も拭った。

 

「……地底がいつもより暑い気がするのは気のせいかなぁ?」

 

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