東方竜人帳   作:G大佐

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2015年8月24日、大規模編集


暑さの脅威~炎の王~

 男は驚いていた。自分の放った業火によって、ナナシを焼き払ったと思っていた。しかし、その考えは浅はかだった。

 

「熱いなぁ!」

 

 ナナシは『腕を変形させて』炎を防いでいた。腕は、巨大な板という表現がピッタリな剣に変形している。その剣は緑色に輝き、いつの時代でどこの国なのか分からない文字が彫られていた。

 その剣の名は、エピタフイディオン。古代技術で作られた龍殺しの大剣である。

 

「何故だ!? 何故お前は我輩の炎を防いでいられる!?」

「そんなの、僕にも分からないよ……っと!」

 

 剣になっていない左腕を振るい、淡い緑色の弾幕が発射される。狙いは正確に定まってないが、何発か命中し、男にダメージを与える。

 

「ぐっ! ブルァァァァァァ!」

 

 男は叫びながら炎を吐く。炎はナナシの髪を少しだけ燃やした。ナナシは舌打ちしながらも、突然変化した腕を見ながら考える。

 

「(この腕……不思議だ。大昔から僕が持っているかのようだ)」

 

 なぜそんな感覚がするのか自分の体に問い詰めたかったが、すぐにその考えを振り払う。今はただ、目の前の脅威を振り払うのみ。ナナシは腕を元に戻して、男へと走っていった。

 

 

 

 

「本当に感じたんだろうねぇ? 強大な力ってのを!」

「はい! この間の嵐の異変と似たような力が、地底に潜んでいたようです!」

 

 勇義とさとりは、旧都のはずれから感じる強大な力のもとへ向かっていた。ずっと地底に潜んでいたにもかかわらず、いきなり威圧を放ったのだ。

 二人は不安になっていた。

 ついさっき、遠くから弾幕を発射する音が聞こえた。恐らく弾幕ごっこをしてるのだろう。

 しかしナナシは弾幕ごっこの経験が浅い。相手の強大な力で潰されてしまうのがオチだ。おそらく勝ち目は……。

 

「(ナナシさん、どうか私たちが到着するまで持ち堪えて!)」

 

 さとりはナナシの無事を願っているのを感じたのか、さとりを背負っていた勇義は、走る速度を上げた。

 

 

 

 ゴオンッ!という爆音がする。土煙の中からナナシが吹き飛ばされてきた。

 

「がっはぁ!」

「ふっはっはっはっは! 最初の勢いは何処へ行った? んん?」

 

 ナナシは悔しそうに男を睨みつけた。立ち上がり腕を振るおうとするも、意識が朦朧として、視界がぼやけて見える。戦い始めて数十分。力こそナナシが有利だったかもしれないが、男は力だけでなく経験も深かったようだ。

 力はあっても経験が浅い者と、力があり経験も深い者。どちらが有利になりやすいかはすぐに分かるだろう。

 

「今度こそ終わりだ!」

「ぐっ!? うぅ……」

 

 無慈悲にも、男の拳が振り落とされる。その拳は腹に深く食い込んだ。ナナシの意識は暗闇に落ちていく・・・。

 

 

「どぉらああああああ!」

「グボォッ!?」

 

 勇義は、明らかに異形である男を殴った。その男は少しだけ動きを止める。勇義はその隙にナナシの元へ駆け寄った。

 

「(くそ! 間に合わなかったか。ごめんな……)」

 

 勇義は、もっと早く駆けつけていればと後悔していた。ナナシは男に殴り飛ばされていた。口からは一筋の血が垂れ、小さい呼吸だけが、生きている事を教えてくれる。

 男は忌々しげに勇義を睨みつける。

 

「貴様、我輩を殴り飛ばすとは何者だ!」

「名乗ってやるよ。あたしの名前は星熊勇義。あんたが殴った、ナナシの友人さ」

「ならば我輩も名乗ろう。我が名は炎王龍(えんおうりゅう)テオ・テスカトル。またの名をカイザー。人間から炎の王を呼ばれた者よ!」

 

 瞬間、辺りは殺気に包まれる。龍と鬼の殺気が混ざり合って濃厚なものになっていた。テオの殺気を受けた勇義は、相手は中々の実力者かもしれないと悟る。

 そうしている内に、カイザーは口に炎を溜め込んでいる。

 

「我が炎で灰になれ!」

「鬼の四天王を舐めるんじゃないよっ!」

 

 一直線に向かってくる炎を避け、殴ろうと接近する勇義。しかし一瞬だけ近づいた後、すぐに後退した。

 カイザーに近づいた瞬間、辺りが急に暑くなったのだ。勇義の額から垂れる汗は冷や汗なのか、暑いだけの汗なのか? それは彼女も分からない。

 

「(くっ、肌が焼ける! イラつくねぇ)」

「近づかないなら、我が近づくまで!」

「鬼の怪力を受けてみな!」

 

 走ってくるカイザーのパンチを片腕で受け止める勇義。ビリビリとした痛みが勇義を襲うが、彼女は伊達に長い間戦っていない。カイザーの脇腹に蹴りを打ち込んだ。

 カイザーは酸っぱい物が込み上げてくるような感覚を受けながら、横へ殴り飛ばされた。

 

「ぐっ! 我輩とした事が……。があぁぁぁっ!?」

「ナイスだよ、さとり!」

 

 体勢を立て直そうとしたカイザーに、さとりが光弾を叩き込んだ。再び膝を突くカイザーに勇義が再び拳を打ち込んだ。

 

「がっ……ふっ! ふっふっふっ……!」

 

 口から血を流しつつも、なぜかニヤリと笑うカイザー。勇義はそれに気付いていなかった。

 

 

 

 

 さとりは勇義を援護しようと再び妖力を集中させようとしたが、ふとカイザーの考えを読んでしまった。

 その内容は「勇義を粉塵爆発で吹き飛ばす」というもの。嘘だと思いつつ見ると、カイザーは微かに笑っているし、背中の翼を小さく羽ばたかせていた。嫌な予感が一気に全身を駆け巡った。

 

「勇義、危険です! この男から離れて……」

 

 勇義に声をかけるも、時すでに遅し。すさまじい爆音と共に勇義は爆発に飲み込まれた。この時さとりは、勇義に警告をすることに夢中で彼のもう一つの考えを読めなかった。

 それは、「仲間が駆けつけたと同時に炎で焼き尽くす」ということ。

 そのことに気付かず、傷だらけの勇義に駆け寄るさとり。予想通りの行動にほくそ笑みながら、カイザーは口に炎を溜め込んでいく。

 そして吐き出そうとした瞬間、背中に鋭い痛みを感じた。同時に辺りに鮮血が飛び散る。

 カイザーは元々モンスターであったため、ハンター斬撃には慣れてるつもりだった。しかしこの痛みは尋常ではない。さらに、その痛みは大昔に経験したことのあるものであり、二度と味わいたくないものだった。

 後ろを睨みつけた瞬間、カイザーは「理解不能」という状態に陥った。何故なら……

 

「な、なにぃっ!?」

「ナ、ナナシ!?」

「……ナナシさん?」

 

 『青銅色の鎧に身を包んだナナシ』が、両腕を剣に変形させて立っていたのだから。

 

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