東方竜人帳   作:G大佐

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2015年8月31日、大規模編集


暑さの脅威~暑さの終わり~

 勇義とさとりは驚いていた。それもそうだろう。突然何者かがカイザーに斬りかかったと思えば、それは鎧を纏っていたナナシだったのだから。

 ナナシは刃になった腕を振るって元に戻すと、二人のもとに駆け寄ってきた。カイザーが攻撃をしないのは、先ほどの斬撃がかなり効いたのだろう。

 

「二人とも、大丈夫?」

「大丈夫だけど、アンタ、その鎧をどこで手に入れたんだい?」

「これ、僕の能力みたい。『体を武具にする程度の能力』っていうみたいだ」

「ナナシさん。貴方から微かに妖力を感じます。貴方は妖怪ですか?」

「うん。どうやら僕は、剣に魂が宿った付喪神らしい」

 

 話を聞いたさとりは、少し考える。付喪神というのは「神」という文字が入っているが、せいぜい魑魅魍魎(要するに雑魚)ぐらいの力しかないのだ。それなのに、ナナシからは尋常じゃないほどの力を感じる。妖力でもない、得体の知れない何か……。それがナナシから感じる。

 すると、立ち直ったカイザーが拳に炎を纏わせて襲い掛かってきた。狙いはもちろん、ナナシだ。

 

「小僧……貴様だけは確実に殺す!」

「ナ、ナナシさん!」

「ナナシ!」

 

 後ろから襲ってきたテオから守ろうと、勇義とさとりが動き出す。しかし、二人が動く前にナナシが動き出した。

 光と共に、カイザーの拳は板のような物に防がれた。ナナシが睨みつける。

 

「危ないなぁ。二人に当たったらどうするんだよ?」

 

 ナナシは、腕を大剣『エピタフイディオン』に変形させて攻撃から身を守ったのだ。突然腕が変形したのを見て、二人は状況に追いつけずにいる。

 そんな二人を気にせずに、今度はナナシが黒い雷のようなものを放出しながら、カイザーに襲い掛かる。

 

「その剣……やはり、貴様は龍殺しの力を持っているのか!?」

「その通り! さあ、大人しく斬られな!」

「そう易々とくらうかぁ!」

 

 大剣はかなりの重量を誇る武器の一つだ。それによって強力な一撃となるが、動きが遅くなってしまう。小さな体格のナナシにとっては、それを振るうことすら難しくなる。

 何が言いたいのかというと……、ナナシが決めようとしてた一撃を簡単に避けられたのだ。さらに運の悪いことに、刃が地面にめり込んでしまい抜けなくなってしまった。力をコントロールして腕を変形させてしまえばいい話なのだが、混乱していたナナシにとって、それは出来る話ではない。

 

「し、しまった! ぐっ……抜けない!」

「今度こそ息の根を止めてやる! 死ねぇ!!」

「そんな事させると思ってるのかい?」

 

 口の炎を溜め込み、火炎放射を浴びせようとするカイザー。そこを、勇義が殴って止めた。

 

「ぐぅぅぅ! 星熊勇義、貴様ぁ……!」

「私達を忘れてもらっちゃぁ困るんだよ」

「ナナシさん、慌てないで。剣を別の形に変形させれば良いのです」

「わ、分かった!」

 

 さとりにアドバイスを受けたナナシは深呼吸をして、目を瞑って別の武器をイメージする。再び暖かい力が腕を駆け巡っていき、一方が刃に、もう一方には不思議な紋章が彫られてる腕が現れた。

 その名は片手剣、『破龍剣【邪絶一門】』。双剣の【真絶一門】より威力は落ちるが、己を守りながら手数で攻めていく武器だ。しかし、片手剣ならば盾が付いている筈だがナナシの腕には、盾らしきものが無い。何故か?それは後に明らかになる。

 

 

 

 

「殴るのは良いが、我輩にはコレがある!」

「ま、また爆発!?」

「吹き飛べぇ!」

 

 カイザーは、身体から赤色の粉塵をばら撒くと、地面を軽く蹴る。

 その瞬間、大爆発が発生し、爆炎は勇義を包み込んだ。

 

「ぬがぁぁぁ!」

「勇義さん!」

「小娘。貴様は我が炎で灰にしてくれる!」

 

 さとりの目の前に、炎の渦が迫る。さとりは弾幕で炎の勢いを殺していくが、カイザーはさらに炎の勢いを強くした。

 カイザーから放たれる熱と、弾幕を放っているせいで、さとりには疲労がたまっていく。段々炎が近づいていき、さとりも危機感を感じていた。

 

「はあっ!」

 

 すると、さとりの目の前に光の壁みたいな物が現れ、さとりを炎から守った。

 

「お待たせ!」

 

 さとりが右を見ると、左腕を発光させて何かを展開しているナナシがいた。

 

「ナナシさん、それは……?」

「片手剣の能力なんだけど、どうやら盾の代わりに結界を張るみたいだね。それじゃあ行くよ!」

 

 ナナシは刃に、赤と黒が混じった稲妻を纏わせる。そしてその刃をカイザーの腹に突き刺した。

 その稲妻は、龍から忌み嫌われしもの。カイザーにとっては毒も当然だった。

 

「ぬぐぁぁぁ!まだだ!まだ我輩は倒れん!」

「あっ、そう。それなら、しつこくやってやるよ!」

 

 再び身体を切り裂き、キックをお見舞いする。さらに腕を元に戻し、アッパーをくらわせた。

 だがカイザーもやられっぱなしではない。ナナシの腕を掴むと、そのまま捻るようにナナシを宙に浮かばせた。そして足に熱を纏わせると、宙で回転しているナナシの腹にその灼熱の蹴りを打ち込む。高く放り上げられたナナシに、カイザーは火炎放射を放った。

 

「あっちぃぃぃぃぃ!」

「ふっ。このまま……ぬ?」

 

 カイザーは足に何かがいるのを感じた。そこに目を向けると、服が所々焦げている勇義がカイザーの足にしがみついていた。

 

「な、何をする! 放せ!」

「動きは止めた! さとり、叩き込みな!」

「了解です!」

 

 さとりが勇義を踏み台にして光弾を放った。しかし、疲労のためにその威力は低下してしまっていた。カイザーは手で軽く払う。

 

「ふん。そんなもので我輩を殺せると思ってるのか?」

「何言ってるんですか? 私と勇義さんは、今の状態では殺せると思ってません」

「何?」

「そこで問題だ。高く放り投げられた石が、馬鹿デカい岩になって自分に落っこちてきたらどうなる?」

「っ!!」

 

 カイザーは、咄嗟に上を見た。そこから何かが落ちてくる。

 それは、腕をエピタフイディオンに変形させて振り下ろそうとする、ナナシの姿だった。重い物体が高いところから落ちてれば、そのエネルギーはとても大きくなる。

 

「いっけぇぇぇ!」

「ぐっ、こんなもの!」

 

 腕を交差させて身を守るとするが、ナナシはどんどん力を込めていく。やがてその腕は斬りおとされた。

 

「ぐああああああっ!? 腕が、腕がぁぁぁぁ!!」

「これで終わりだ!」

 

 カイザーの顎に蹴りを当てるナナシ。カイザーはそのまま、仰向けに倒れた。

 ナナシは腕を片手剣に変え、刃を喉に突き刺そうとする。しかし、勇義がそれを止めた。

 

「止めな。もう、コイツは死ぬ」

「ふっ……ふふっ……。まさか我輩が敗れるとは……。小僧、貴様のその力は我等にとって非常に危険な物。お前を殺そうとする者が、次々と来るだろう。覚悟……するんだな」

 

 カイザーはそう言うと、そのまま目を閉じ、二度と起きなかった。

 

 

 

 

 その日、幻想郷に雨が降った。僅かな間とはいえ猛暑が続いていた時には、まさにグッドタイミングといえるだろう。

 人里では、老若男女ほとんどの人間や妖怪が、家から飛び出て雨が降ったことを喜んだ。ある子供は服を脱いで全身で雨を浴び、ある老人は天に向かって「ありがたや」と呟いている。

 リオと霊夢も外へ出ていて、その雨の心地よさを感じていた。

 

「終わったみたいね」

「そのようだな……」

「こんな大規模な異変を起こす敵を止めるなんて、その解決者は何者なのかしら?」

「さあな。ただ、一つだけ言えることがある」

「なに?」

「そいつはきっと、俺たちと共闘する日が来るかもな」

「何で分かるのよ」

「お前と同じさ。勘だよ。勘」

 

 霊夢は、リオの言葉に苦笑いしながらも、雨による涼しさを味わう事にした。

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