人里のとある場所に、焼き鳥屋がある。その焼き鳥屋を営んでいるのは、火渡リオ。彼は「炎を操る程度の能力」を利用して、この店を営んでいるのだ。
「こんにちは」
リオしか居ない店の中に、女の子の声が響いた。天狗の新聞を読んでいたリオは少し驚いたが、すぐに冷静になる。
その女の子は、白い髪におかっぱのような髪型、そして何より、背中にある二本の剣と周りに浮いてる人魂が大きな特徴だった。
「開店は夕方からだぜ? まだ下準備しか出来てないんだが」
「申し訳ありませんが、今焼いてもらえませんか? 私のご主人がどうしても食べたいと言うので……」
「うわ、ご主人からの命令か。それはマズいな。それじゃあ、今回だけだぞ?」
「ありがとうございます!」
「火をおこすのに時間が掛かるかもしれないから、カウンターに腰掛けててくれ」
頭に鉢巻を巻くと、すぐに火をおこす準備を始める。使う炭は、迷いの竹林に住んでるという藤原妹紅から仕入れてる代物だ。自分の能力でボッとやれば話が早いのだが、ここは飲食をする店。勢いが強すぎて灰などが飛んだら客にも迷惑が掛かる。じっくりと、弱火で火をおこす。
「(あれは……剣でしょうか?)」
少女、魂魄妖夢は、カウンターからちらりと見えた剣が気になってしょうがなかった。何故、店の中に剣を飾っているのか?どこでその剣を手に入れたのか?様々な疑問が浮かんでくる。
すると、剣から何かが溢れているような気がした。
「?」
段々とその溢れてくる「もやのような物」は、上半身が女性の形になっていく。そして……
『ハァ~イ☆』
ついに姿を現した。妖夢は分かってしまった。この下半身が無く半透明な女性は、幽霊なのだと。
リオは妖夢が目を見開いているのを見ると、軟骨に塩を振りながら大きく溜め息をついた。
「レイア。お前、この子が冥界から来たと思って出てきやがったな?」
『うん。だって、私が見えるのはリオや霊夢のような一部の人だけだし~」
「え、えっと……この方が見えるんですか?」
妖夢は、フヨフヨと浮かんでいる女性、レイアを指差しながらリオに尋ねる。
「近くに人魂が浮かんでるからもしやと思ったんだが、君は冥界かどこかに居るだろ?」
「は、はい。冥界にある白玉楼の庭師です」
「今君の前に浮かんでる女は、レイア。俺の妻だった女だ」
『よろしくね~」
「は、はぁ……」
その後、リオは火の通り加減を確かめながら、剣に幽霊と化したレイアがとり憑いている理由を話した。ある世界で竜だったころ、レイアが密猟者に殺された事。それからしばらくして、レイアがリオの力になりたいと四季映姫に頼んで、剣に転生したこと。
妖夢も幽々子から、閻魔のところに留まっている魂が居ると聞いていた。まさか彼女だとは思いもしなかった。
「さて、焼き終わったぜ」
「ありがとうございます。幽々子様のお願いも、これで何とかなります! えぇと、代金の方は……」
「おう。じゃあ、これとこれ、あとこれも合わせて……」
リオは、焼き鳥代を計算する。開店前に訪れた事もあり、そこら辺はちゃっかりしているようだ。
妖夢がその代金を支払うと、店を出ようとする。するとリオは、彼女を呼び止めた。
「待ってくれ」
「はい?」
「少しばかり頼みがあるんだが良いか?」
「えっと、話にもよりますが……」
「あぁ。いつでも良いから、俺に剣を教えてくれないか?」
「ほうほう成る程…………えぇっ!?」
「俺は剣で戦うことに慣れてなくてな。戦いつつ剣を持つという事に慣れておきたい」
「わ、私で良いんですか?」
リオは真剣な表情で頷く。他人が見れば、大人が中学生くらいの女子に告白しているようにも見える。その真っ直ぐな青い瞳に、妖夢は少し驚いた。
「分かりました。戦いながらで良いんですね?」
「あぁ。俺は、剣術で特に決まった型は持っていない。そこだけは覚えていてほしい」
「では、時間を見つけ次第伺います。それでは……」
妖夢が店を出ると、リオはレイアに向いた。
「レイア、ごめんな。下手したらお前に負荷が掛かってしまうのに」
『問題ないよ。私も協力する。強くなろう?」
「そうだな。護たちも毎日修行している。俺も強くならきゃな」
それから数日後、人里に冥界の庭師が来る事が多くなった。そしてその日は決まって、ある焼き鳥屋の男が剣を片手に、彼女の弾幕を避けたり、斬っているという。