魔法の森。多くのキノコが自生しているこの森で、魔理沙と白斗はキノコ狩りをしていた。二人の探すキノコは、アオキノコ。不気味なほど青い色をしているキノコで、魔理沙がこの間たまたま採取した物だった。
ある実験で、薬草を煎じた物に間違えてアオキノコを入れてしまったのだが、高い治癒力を発揮する事が偶然にも明らかになったのだ。もっと詳しくこのキノコを調べるため、二人はこうしてキノコ狩りをしているというわけだ。
「はぁ~。中々見つからないな~」
「いくら青色でも、殆どが毒キノコだしな」
「だけど、絶対見つけてやるぜ!」
「凄い意気込みだな……」
その時、近くの茂みがガサガサと揺れた。二人はすぐに険しい表情になり、辺りを見回す。遠くの川の水が流れる音と、ジメジメしたこの環境を好むカエルの声だけが聞こえていた。
「白斗……」
「あぁ。何か居る」
白斗は爪を尖らせ、魔理沙はミニ八卦炉が入っているポケットに片手を突っ込む。その時、白斗の正面の茂みが大きく揺れた。白斗がそこへ向かってキックをすると、茂みから大きな猪が出てきた。
「そこだ!」
「ブギィィィィ!?」
「助太刀するぜ、はく――――」
白斗と言おうとした瞬間、後ろから何者かが布で魔理沙の口を塞いだ。何とか抵抗しようとするが、段々体から力が抜けていく。布を持っている男はニヤリと笑うと、そのまま魔理沙を担いで静かに逃げて行った。
「くっそ、やけにタフな猪だったぜ。魔理沙、終わった……ぞ? 魔理沙?」
魔理沙の姿が見えない。さっきまで一緒に居たのに、突然その姿を消してしまったのだ。嫌な汗が吹き出てくる。まさか今の猪は囮のモンスターで、自分が相手をしているうちに魔理沙を浚ったのだろうか? 足元を見ると、魔理沙の居た場所に別の足跡があった。さらに木の枝には、何故か泥がついている。きっと木に飛び移りながら移動してるのだろう。
白斗は自分の不甲斐なさに悔しくて、思わず地面に拳を打ちつけた。ティガレックスの力を込めていたので、クレーターが出来てしまった。
「くそ! 絶対助けてやる。待ってろよ、魔理沙!」
その時の彼には、自分の頬に現れる鱗が赤くなっていることに気付いていなかった。
「うぅ…………」
「お、目を覚ましたみたいだね」
魔理沙が目を開けると、そこは薄暗い洞窟だった。ランタンの光が微かな暖かさを出しているようにも見えた。
「(手が動かない……。もしかしてこれ、かなりヤバイんじゃないか?)」
全くその通りである。今の魔理沙は手足を縛られている。幸いミニ八卦炉は奪われていないようだが、この状態では取り出すのは難しい。
そして、目の前にいる者が怪し過ぎた。男か女か分からないその者は、白い髪に白い服を着ていた。前髪が長くて、目は見えない。
「クンクン……。うん。やっぱりボクは当たりを引いたみたいだね」
「おい! なに匂い嗅いでるんだよ! お前は誰だ!」
「ハハハ。ボクの名前はシロ。少しだけ君に興味があって、ここに連れて来たのさ」
「……目的は何だよ」
すると、シロの笑みが三日月の弧を描くように歪んだ。
「ボクの子供を産んでもらうんだよ」
「…………はぁ!?」
「子孫を今のうちに増やしておいて損は無いからねぇ。ボクは雌雄同体だから、女にも男にもなれるよ? ま、ボクは男のつもりでいるけど」
「くっ! ふざけるな! 触ろうとするんじゃねえ!」
「駄目だよ抵抗したら。少し大人しくしてもらおうかな」
シロが指先から青白い光を発する。それを魔理沙の身体に当てた瞬間、身体が痺れて動けなくなった。
「……っ! ………………っ!」
「ふふふっ。大丈夫。身体が痺れているから痛みは感じないし動けない。当然、喋る事もできないよ」
「(やばいやばいやばい! このままじゃ本当に……)」
ゆっくりとシロの手が伸びてくる。その時魔理沙は、いつも一緒に居るあの男のことを思い出していた。
色々な薬の作り方を聞いてきたり、外の世界の話を教えてくれたりするあの男。たまに戦うその姿はとても惚れ惚れする物で、その力強さに……段々惹かれていった。
「(嫌だ……嫌だ……! 助けて、白斗)」
心の中で彼の名前を読んだ瞬間、洞窟が大きく揺れた。シロもビックリしている。
「な、なんだ!?」
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
洞窟の奥から聞こえる怒号。だが、魔理沙はその声を聞いた事があった。愛しいあの人の声。モンスターの力を持っていながら、優しい笑みを浮かべるあの男。
「は、白斗!」
「なぁに魔理沙に手を出してんじゃああああああ!」
そこには、怒りの表情をあらわにしている白斗がいた。