東方竜人帳   作:G大佐

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2015年9月19日、大規模編集


白斗、怒る

 白斗は走る。土を蹴り、枝に飛び移り、木から降りればまた土を蹴る。奥の方へ進むに連れて、ゾワリとした『何か』がどんどん大きくなっていった。

 

「何だってんだ。この胸の痛みはよぉ……!」

 

 魔理沙はまだ無事だろうか? 彼女は結構可愛い。もし誘拐犯が男で、その男に何かされたら……。そう思うと、気持ちがどんどん暗くなっていく。

 白斗の頭の中は、誘拐犯をどのくらいボコボコにするかで一杯だった。そうでもしないと、彼女を考えるたびに起こる胸の痛みに耐え切れなくなりそうな気がしたから。ようするに憂さ晴らしである。

 

「ここか……」

 

 走った先には崖が立ちはだかっている。その崖の一番下に、ぽっかりと穴が開いていた。この洞窟が犯人のアジトなのだろう。白斗は大きく深呼吸をすると、再び走り出した。ティガレックスの脚力を利用して。

 

『助けて、白斗』

「っ! うおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 白斗は、道を狭めている岩すら砕いて突き進む。洞窟はそこまで複雑ではなかったので、魔理沙と誘拐犯の場所をすぐに見つけることが出来た。モンスターの力は五感にも影響するのか、女性特有の匂いを感じることが出来たからだ。

 その先では、白髪の男が魔理沙に手を出そうとしていた。

 

「なぁに魔理沙に手を出してんじゃああああああ!」

 

 白斗の中で何かが切れた。血管が浮かび上がるほどの憤怒の表情を浮かべ、男……シロに襲い掛かる。

 シロはすぐに飛び退いて、白斗の方へ顔を向けた。シロが避けた時に、白斗の鋭い爪が魔理沙の縄を切ったようだ。

 

「チッ。とんだ邪魔が入ったようだね」

「生憎だが、彼女は俺に居場所を与えてくれたんでね。恩を返すのは当たり前だろう?」

「せっかくボクの子孫を増やしてもらうと思ってたのに……」

「決めた。テメェは、俺の拳による顔面整形の刑にしてやる」

 

 明らかに怒っている白斗に、魔理沙は少しばかり驚いた。今まで笑ってる顔しか見たことが無かったから、こういう顔を見るのは初めてだったからだ。きっとこれから、この二人による戦いが始まる。ならば自分も加勢しなければ。魔理沙はそう思い、ポケットにあるミニ八卦炉を取り出そうとした。

 

「白斗、私も……」

「駄目だ」

「えっ? な、何でだよ」

「ここから先は、汚いシーンが多い。お前には……耐えられない」

「私だってやれる! 足手まどいになんかならない―――」

「スマン、魔理沙」

 

 白斗は魔理沙の首の裏を強く叩いた。当て身と言うやつだ。確かに魔理沙と一緒なら倒すことが出来るだろう。だが、そんな彼女を子作りの道具としか思ってないシロが許せなかった。女絡みでここまで熱くなったのは初めてだった。このとき白斗は気付いた。

 

「(あぁ……。俺って、魔理沙に惚れてたんだ)」

 

 だからこそ、彼女の手を血で染めるわけにはいかない。きっと戦いの事を知ったら、彼女は拒絶するだろう。それでも、今はこの男を潰す。白斗はそう決意し、シロを睨みつけた。

 

 

 

 

 

 魔理沙から少し離れた洞窟内で、壁や天井を殴るような音がする。白斗が落ちている石をシロに投げつけるが、シロは天井に張り付いてその攻撃を避ける。そして手の平から青い光を放つ球を生成すると、お返しといわんばかりに白斗に放った。

 その球を拳で受け止めようとする白斗だったが、触れた瞬間、体中に鋭い痛みが走った。

 

「ぐあああぁあぁ!?」

「どうだい、ボクの電撃は。一応黒コゲにはさせないでおくよ。せっかくのお楽しみを邪魔されたんだからねぇ!」

 

 シロは天井から飛び掛ると、白斗の左腕に思いっきり噛み付いた。噛まれたところからジュウッという音がする。白斗は痛みと悪臭で、顔を顰めた。噛まれていない右手を握り締めて、シロの顔面を思いっきり殴る。拳が額に届いたため、シロは容易に吹っ飛んだ。

 

「痛いなぁ!」

「離れてくれたな。これでも喰らいやがれ!」

 

 体勢を立て直そうとするシロに、白斗は石を掴んで大きく振りかぶった。

 

「もしかして君、近距離でしか攻撃できないね?」

 

 しかし、石は命中する事は無かった。逆に白斗の首にあるものが巻かれる。ロープやワイヤーのような物ではない。首に巻きついているのは……シロの腕だった。

 

「ぐっ、がぁっ!?」

「驚いてるね? ボクはシロって名乗ってるけど、本名ってのがある。ボクの本名はフルフル。ボクは電気を放つだけじゃない。関節を外して……ほらこの通り♪」

 

 ギチギチと音を立て、首を絞める力が強くなって行く。シロはニタニタと笑いながら、自分の身体に電気を蓄積させていく。この時白斗は、能力を発動していた。攻撃をするためではなく、ある事のために。

 シロは身体を青白く発光させて、充電していく。

 

「クハハハハ! さぁ泣き叫びなよ! ボクのお楽しみの邪魔をした報いだぁ!」

「…………ありがとうよ」

「ハハハハ……ハ?」

「俺の仲間が言ってるんだ。俺の能力はティガレックスに近い物だってよ。そいつは電撃に弱いらしいが、俺の場合は少々異端でなぁ……」

 

 その瞬間、近くにある岩が白斗の蹴りによって砕け、その破片が電気を帯びてシロに突き刺さった。もしも普通の電撃だったら、シロにエネルギーを与えるようなものだろう。しかし岩が突き刺さった事で、電気を吸収するほどの集中力を与えなかった。

 

「うぐあああぁ!」

「ようやく悲鳴を上げやがったな。お前さんの充電は、むしろ俺に活力を与えてくれた。感謝するぜ」

「そ、そんな馬鹿な!?」

「さてと、とっとと終わらせるぜ。俺を怒らせたこと……覚悟しろよ」

 

 白斗はそう言うと、外の世界に居たころの、護と出会う前の目付きに変わった。敵を容赦なくボコボコにする。そういう感情が彼の頭の中を占めていた。

 その後、洞窟の中に一人の男の断末魔が響いた。

 

 

 

 

「…………ハッ!?」

 

 魔理沙が目を覚ますと、ランタンで照らされた岩の天井が目に入った。

 

「私は確か……白斗に助けられて、でも気を失って……」

 

 気を失う前のことを思い出すと同時に、白斗が心配になった。シロは電撃で相手を動けなくする。声も出せなくするのだから、声が武器の白斗には分が悪い。

 

『ギャアアアアアア!』

「っ!?」

 

 洞窟の奥から断末魔が響いた。それが終わってしばらくすると、足音が聞こえてきた。魔理沙は願った。その足音の正体が白斗であることを。

 そして、足音の主がランタンに照らされた。

 

「無事だったみたいだな」

「白斗!」

 

 魔理沙は白斗に抱きつく。対する白斗も、優しく魔理沙の背中に手を回した。

 

「魔理沙。俺は、お前に言いたい事があるんだ」

「何だ?」

 

 ―――――俺は、魔理沙が好きだ

 

 ―――――私も、大好きだぜ。白斗♪

 

 洞窟に映る二つの影が、重なった。

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