東方竜人帳   作:G大佐

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2017年11月26日 大規模編集


日常:二人の溜め息

「ふぅ……」

 

 地底にある橋で、パルスィは溜め息をついていた。川には情けない自分の顔が映っている。

 

「どうしちゃったんだろ、私……」

 

 それは3日前のことである。

 

 

 

 

「くっ!数が多い!」

 

 旧都へ続く大きな橋付近で、小型モンスターが大量発生していた。地面から勢いよく出てきては、妖怪や人間を吹き飛ばす。時には上半身だけ身体を出し、火を吐いてくる始末だ。

 このモンスターの名は、溶岩獣(ようがんじゅう)ウロコトル。

 一匹の脅威は大した事ないが、今は群れで攻撃を仕掛けてきているため侮れない。このままでは旧都に入り込むのではと思ったパルスィは、ウロコトルを駆除しようと奮闘していた。

 

「カタカタカタカタ……」

 

 一匹のウロコトルが嘴を鳴らして威嚇する。するとパルスィを囲むようにウロコトルが全員出てきた。

 

「一斉に火を吹いて片付けようってわけ?」

 

 苦笑いをするパルスィ。しかし、その顔には余裕がある。

 

「どうやら、こんな私にも応援してくれる奴がいるみたいよ!」

 

 すると、一匹のウロコトルが痛みを感じて地面から飛び出した。

 

「これ以上はやらせないよ!」

 

 手でピストルの形を作り、ウロコトルを睨みつけるナナシがいた。

 

「コイツはちょっと特別でね? 様々な弾丸を発射できるんだ。例えば、これとかね!」

 

 手首をカクンと曲げて、すぐに戻す。そして指先をウロコトルに向けると、そこから火が吹いた。

 

「『氷結弾』、凍りな!」

 

 ドンッ!ドンッ!という発砲音と共にウロコトルの身体に着弾しては、氷が弾け飛ぶ。慣れない急激な冷たさに、ウロコトルが死ぬのも時間の問題だ。

 

「私がトドメを刺してあげる。『グリーンアイドモンスター』!」

 

 パルスィがスペカを唱えると、ウロコトルを取り囲むように緑色の弾幕が張られる。その弾は全てウロコトルに命中し、完全に動かなくなった。

 

「いえーい! ナイスコンビネーション!」

「正直言って危なかったわ。あんたの姿を見てなかったら諦めてたわよ」

「えへへ……」

 

 少しだけ頬を赤くして照れるナナシに、パルスィは微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 旧都の一角にある、やや大きめの家。そこにナナシは住んでいた。

 

「うむむ……。もうちょっと急いで持ち帰れば良かったかなぁ?」

 

 何やってるかと言うと、倒したウロコトルの解剖をしていた。少しでもモンスターの生態を研究し、異変解決などに役立てようと思ったからだ。

 しかしウロコトルの腐敗は思ったよりも早く、たとえ解剖したとしても、どのような行動をするのかが分からない以上、立ち回りは不利だろう。

 

「どうせなら、そのモンスターを尾行しちゃえば……」

「あんたは夢中になると周りが見えなくなるから、あっという間に食べられるわよ」

「うわぁっ!? い、いつの間にいたのさ、パルスィ!」

「『どうせなら~』の辺りからよ。それにしても、変わった生き物よね。これ」

「うん。妖怪とは違う、人間以上の存在と言ってもいい生き物……モンスター。謎だらけだよ」

「地上でもかなりの数がいるらしいわよ。あんた一人じゃ研究も大変なんじゃない?」

 

 そう。まだモンスターは未知数だ。まだ発見されてない個体がいるかもしれないし、これからどんどん別世界から幻想入りしてくるだろう。いくらなんでも、一人で研究するのは無理がある。

 

「うん……。モンスターの研究は永遠かもね」

「じゃあさ、私や勇義とかで手伝ってあげようか?」

「え?」

「大抵は暇だから私たちも戦い方を学べる、あんたは研究が進む。一石二鳥じゃない?」

「なるほど~!」

 

満面の笑みでうなずくナナシ。しかし、その次の発言がパルスィに衝撃を与えた。

 

 

「ありがとうパルスィ! 僕、パルスィのこと、大好きだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 そして今に至る。きっとナナシは「親友として」という意味で言ったのかもしれないが、あまり異性と接した事のないパルスィにとって、「大好き」発言は心をときめかせた。

 

「あれは異性としてではなく、友達として好きという意味よね……。うん! そうに違いないわ! でも……」

 

 悶々とする気持ちに、パルスィは悩み続けた・・・・。

 

 

 とある居酒屋では、ナナシがジュースを飲んでいた(居酒屋に子供を連れてくる妖怪もいるので、ジュースを出せるようにしてるらしい)。

 

「はぁ……」

「よっ、ナナシ! そんな溜め息ついてどうしたんだい?」

 

 ジュースの入ったコップを片手に溜め息をついていると、勇義が話しかけてきた。

 

「あっ、勇義。うん……。ちょっとね……」

「悩みがあるんだったら相談してみな。聞いてやるからさ」

 

 ナナシは少し黙ると、意を決したように話し始めた。

 

「僕ね、パルスィに会うと、心が苦しくなる……のかな?」

「なんで疑問系なんだい……」

「でもパルスィに会わなくなると、もっと心が苦しくなるんだ! これって、病気かな?」

「…………」

 

 勇義は感じた。ナナシはパルスィに恋している。だけど精神がまだ幼い故に、恋心に気がついてない。教えてやるべきか迷った。教えてあげたいが、まだ幼いナナシに恋が分かるだろうか?

 それに、このまま教えるのはつまらない。どうせなら自分で気がつかせてあげよう。

 

「ナナシ。それは病気なんかじゃない。ある条件を満たすと現れる現象さ」

「そうなの?」

「ああ。死にはしないから安心しな」

「そっか~」

 

「(二人とも頑張りな。互いに頑張れば、結ばれるはずだ)」

 

勇義は心の中で二人に応援しつつ、思いっきり酒を口に流し込んだ。

 

 

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