東方竜人帳   作:G大佐

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2015年9月28日、大規模編集


鎧の戦士vs無双の狩人

「『グレイソーマタージ』!」

 

 早苗がスペルカードを唱える。そこから赤と青の光弾が星の形を作るように現れ、やがて花の形になるように広がっていく。夜空の月光と蛍の活性化による発光、そして弾幕の鮮やかさが、この森をより一層眩しくさせた。

 

「なっ!? 人間がこんな技出せるなんて、ありえねぇ!」

「残念ですが、目の前に起こっているのは本当です!」

「ちっ! 面倒くせえ!」

 

 彼はその場から跳躍して切り抜けようとする。しかし、早苗が追いかけながら、星の形になるように並んだ光弾を撃ってくるために、隙間が埋まって行く。最初は雷球を飛ばして相殺して行くオウガだったが、やがてその隙もなくなってきた。

 

「(こうなりゃ、無理矢理押し切るしかないな)」

 

 オウガは自分の身体に雷を纏い始めた。さらに、周りには雷球を漂わせて身の守りを完全にする。そして……そのまま弾幕の中に突っ込んだ。

 

「どぉりゃあぁぁ!」

「だ、弾幕の中に突っ込むなんて、あなたは無茶苦茶ですか!?」

 

 彼の纏う雷が、弾幕を次々と打ち消して行く。早苗は、まさか突っ込んでくるとは思わなかったために、慌ててその場から逃げようとする。

 しかし、高低差の激しい山で育ってきた彼にとって、距離をつめることは難しくない。さっきよりも高くジャンプして、一気に追いついた。

 

「あ…………」

「今度はこっちの番だ」

 

 近距離で雷球を早苗に当てたあと、吹き飛ぶ前に彼女の首を掴んで引き寄せる。引き寄せたあとは掴む力を強くして、首の骨を折ろうとする。

 

「ぐ、ぐぐ………!」

「じっくりと苦しみながら死んでいけ」

 

 だが、早苗とて伊達に長い間戦ってきたわけではない。彼女はオウガが自分を見ている隙に、弾幕用のお札を3枚ほど足元にばら撒いた。鮮やかな色合いを出すことなく、黒い煙と共に爆発音が響く。

 足元をやられたオウガは、その衝撃の強さにゴロゴロと転がるばかり。やがて体勢を立て直すと、そこにはお札を構えた早苗が居た。

 

「はあっ!」

 

 札を投げ飛ばし、そこから更に弾幕を展開する。オウガが札を避けても、そこへ回り込むかのように光弾が迫る。木の枝に飛び移ろうとしても、早苗が飛んで接近戦をしてくる。弾幕を放つ前に距離を詰められる事など、妖怪退治でもよくあったことだ。その時のために、彼女は格闘もそれなりに出来るのである。

 

「ハァ……ハァ……。舐めてたぜ。この俺、知らない内にお前を見下してたかもしれないな」

「人間は無限の可能性を秘めている。そう思いませんか?」

「そうかもしれないな。なら、これで相手してやるよ!」

 

 そう言うと、オウガは雷光虫をいつもよりも大量に呼び寄せ始めた。段々と彼の身体は碧色に光っていく。その眩しさに、早苗は手をかざして目を守ろうとする。やがてバチバチと音が激しくなってくると、ついにその光は最高潮に達した。

 

「オオオォォォォォォォォォォン!!」

 

 狼のような声を上げると同時に、彼に落雷が生じた。思わず目を瞑る早苗。目を開けるとそこには、姿の変わったオウガがいた。額からは角が生え、尻尾のような物まで生えている。逆立った髪はパチパチと音を立てている。さらに、彼の身を守るかのように雷まで発生している。

 

「超帯電モードで……行くぜオラァ!」

「っ! は、早い!」

 

 オウガは駆けると同時に雷を拳に送り込む。早苗も急いで後退しようとするが、大きめの石に躓いて尻餅をついてしまう。こればかりは運が悪かったと言うしかない。

 無双の狩人はそれを逃さない。拳を振り下ろした。碧色に光るそれは、早苗の巫女服を焦がすのに十分過ぎた。口の中に酸っぱい物が込み上げてくる。追い打ちといわんばかりに彼女の身体は蹴り上げられる。

 

「っあぁ!」

「容赦しねえ。今度はこれでもくらっときやがれぇ!」

 

 大きめの雷球を作り出し、早苗に向かって放たれる。早苗は、これ以上の攻撃を危険と察して、結界を張ろうとした。

 そこへ、大きな影が早苗の前に現れた。

 

「これ以上はやらせない!」

 

 雷球はその影によって遮られ、弾けた。早苗は知っている。まるで岩のようにゴツゴツしたその鎧は……護のものである。

 オウガは驚いていた。護は、今居る場所から少しばかり離れていた場所にいた筈だ。それなのに早苗を庇う事が出来たということは、かなりのスピードでここまで来たということだ。それも、雷球がぶつかる直前に鎧化したのだろう。

 

「(やはり違う。今まで俺は、鎧化した腕を鈍器のように振るっていた。だが今は、俺と一体化してるような感じだ。自分の腕と同じなのに、なんで気付かなかったんだ)」

「なぁにブツクサ言ってんだ! 俺の攻撃を止めたってことは、お前と二回戦目をやるのかい!」

「その通り。俺からやらせてもらう!」

 

 護が一瞬で鎧化を解除すると、オウガに拳(鎧化)を叩き込む。だが、超帯電モードで筋肉が膨張しているのか、少し怯む程度だった。それでも護は攻撃を止めない! 今度は手の平に力を込める。

 

「これでどうだ!」

「熱っ! くそ、ここまでとはな!?」

「『マスターファイアー』!」

 

 護の十八番である『マスターファイアー』。普段は射程距離が長いが、今放ったのは違った。熱線の長さはいつもよりも短いものだ。

 これは出力を少し抑えたもので、機関銃ほどではないが連射も出来る技だ。オウガは熱線がいくつも飛んでくる状況に、冷や汗をかいていた。

 というのも、オウガは体毛を使って自身の電気エネルギーを溜め込んでいる。その体毛が燃やされて無くなったら、不利な状況になってしまうのだ。さすがにそれだけは避けなくてはならない。

 

「ちっ! どらっせぇい!」

「ぬおっ!?」

 

 オウガが尻尾で護の手をはたく。その隙に腹に拳を入れる。今の彼は鎧と一体化してるような状態なので、衝撃がよりダイレクトに伝わる。「ぐっ」とうめく声が出そうになるが、何とか踏みとどまる。すると今度は、爪を鋭くして顔面を狙ってきた。

 

「っ!」

「テメェの鎧の弱点っ! それは、関節や目などの甲殻が薄い事だ!」

「ぐぅおおおおお!」

 

 何とか甲殻が厚い手で受け止めるが、少しばかり甲殻に刺さる。さっきも言ったように、皮膚と一体化してるような状態だ。痛みが殺気よりも強くなる。その場で護はうずくまる。

 

「ぬぐぅ…………」

「さぁ、これで終いだ!」

 

 動けないところを突いて、尻尾をなぎ払う。その勢いはとても強くて、大木はへし折るほどだ。尻尾は護の首を狙っている。骨を折られたら、ジ・エンドだ。

 早苗は駆けた。護は何かチャンスを狙っている。でなければ、あんな風にジッとしているわけがない。見れば彼は、腕を上げようとしているではないか。痛くてたまらないはずなのに頑張って上げようとしている。

 

「ぐっ、ぐぐぐ…………早苗?」

「お手伝いします、護さん。私だって役に立てるんですから」

「それじゃあ、一緒に行くか!」

「はい!」

 

 オウガが爪を突き刺そうとする。しかし、二人は大きな声で叫んだ!

 

「「マスターファイアー!!」」

「何ぃっ!?」

 

 巨大な熱線が現れる。二人が唱えたからなのか、いつもよりも巨大で、熱いものに感じた。オウガはその美しさに見惚れ、動きが止まってしまった。そして敗北を悟ると、小さく笑みが浮かんだ。

 

「やれやれ……。人間ってのは、本当に分からない生きもの―――――」

 

 オウガはそのまま炎に飲み込まれ。やがて、大地にひれ伏した。

 

 

 

 

 満月の夜の下、二人は神社への帰途についた。

 

「すぅ……すぅ…………」

「寝てしまったか。もうちょっとだからな」

 

 護は、少しだけドキドキしていた。背中に当たる豊満な胸、髪の毛から香る優しい匂い、幸せそうな寝息……。よくぶっきらぼうだと言われる護も、こうしてドキドキする事があるのである。

 ふと、空を見上げる。そこには道を照らすのに十分な光を放つ月があった。その時、早苗が何かを呟いた。

 

「ん……、護さん……」

「ありがとう、早苗。お前が俺を受け入れていなかったら、きっと暗闇しか見れなった。お前は光だ。これからもよろしくな、早苗……」

 

 鈴虫の声が響く山の中を、護はゆっくりと進むのだった。

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