東方竜人帳   作:G大佐

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2015年11月5日、大規模編集


空の王者vs蒼天の王

 博麗神社の上空で、赤と蒼が火花を散らしていた。赤とはリオと霊夢のことで、蒼は蒼炎である。霊夢が封魔針を飛ばし、リオが緑桜剣から弾幕を作って逃げ場を少なくする。霊夢は、そんな作戦をアイコンタクトで伝えていた。リオもすぐに理解して弾幕を生成し始める。

 

「そうら、受けてみやがれ!」

「むっ!? なるほど。実体がないボウガンの弾みたいなものか」

 

 やはり蒼炎も長い時を生きてきたのだろう。弾幕ごっこに使う光弾を見ても、慌てること無く冷静に分析をしていた。そのせいか、蒼い翼に掠ることはあっても、体勢を崩す事はなかった。

 だがこれで良い。リオがやってるのは、霊夢が封魔針を展開するための時間稼ぎだ。自分の方に集中させることで霊夢への被害は少なくなるはず。リオは剣を強く握る。

 

「うるぁぁ!」

「ぬおっ!?」

 

 いきなり剣を構えて突っ込んで来たために、蒼炎は動きが止まった。そのままリオは斬りかかる!

 だが、止まったのはほんの一瞬。危険を感じた蒼炎は、口に炎を溜めた。リオはそれに気付く様子を見せない。

 

「落ちろ!」

「貴様がな!」

 

 リオの顔面に広がる炎。それは彼にとって、とても久しぶりな感じのする炎だった。最後に受けたのは確か……縄張りをめぐって他のリオレウスと戦った時だろうか?

 とても懐かしい。だが今はそれどころではない。奴の視線をこちらに集中させなくては。霊夢の悲鳴のような物も聞こえるが、気にしていない。剣を持つ腕に力を入れる。しばらくして、肉を切るような感覚がした。

 

「(よっしゃ、手ごたえあり! うまくやってくれよ、霊夢!)」

 

 だが、彼は気付かない。相手の炎の予想外の強さに、自分が落ちていることなど。

 

 

 

 

「リオ!」

 

 霊夢は、落ちていくリオに声をかける。その声はどこか悲鳴に近い物だった。炎が命中し、黒煙の中から現れた彼の傷は、思ったよりも大したことはなかった。

 しかし衝撃が強すぎたのか、リオは翼をはためかせる様子がない。落ちていく彼に手を伸ばそうとすると、目と目が合った。彼は、少し笑っていた。

 

『うまくやってくれよ、霊夢!』

「っ!」

 

 そして小さくなるリオの姿。霊夢はその光景を見たくなくて、顔を背けた。すると、一本の剣が霊夢の手に向かって落ちてくる。

 

《キャアアアアアア!》

「うわぁっ!?」

 

 運よくキャッチしたそれは、リオが持つ剣『緑桜剣』だった。彼女は安堵の息を漏らすと、霊夢に語りかける。

 

《霊夢! 早くアイツを倒して!》

「えっ!? あ、あんた誰よ!」

《リオレイア、リオの元・夫。はい自己紹介終わり! とっとと行くよ!》

「た、倒すってどうするのよ!」

《ひたすら弾幕を撃てば良い! その針をとにかく飛ばして!》

 

 剣の重さに四苦八苦しながらも、蒼炎に向かって加速する霊夢。敵はすぐに霊夢の存在を察知し、火球を放ってくる。だが、霊夢は蒼炎と比べて小柄で素早い。向かってくる火球を小さな結界を開いて打ち消し、蒼炎との距離を詰めて行く。

 

《目を狙って!》

「『封魔針』!!」

「小娘がぁ!」

 

 蒼炎の正面が針に覆われ、蒼炎ただ一人に向かって飛んでいく。蒼炎は口に炎を溜め込んで一気に放つ!

 

「ボゥアアアアアアアア!」

 

 炎によってドロドロに溶け、さらに熱風によって勢いを失って行く封魔針。蒼炎は炎を吐き終えると同時に霊夢のいた場所へと向かう。

 

「ふっ、たかが空を飛べるだけの小娘が私に勝てるなど……なにぃっ!?」

 

 何と、向かった場所には霊夢がいなかったのだ。すぐに辺りを見回す。その瞬間、翼に光弾が降り注いできた。飛んできた方向は、上だ。

 

「傲慢が仇になったわね!」

「舐めるな小娘!」

 

 霊夢の顔に向かって爪を刺そうと腕を伸ばす。だが、霊夢は持っていた緑桜剣を前に突き出し、腕の皮膚を切り裂いた。

 しかし、今彼女が行なったのは「突き」のポーズ。僅かに隙が生まれてしまう体勢だ。皮膚を切ったとはいえ蒼炎の動きは止まるわけではない。爪はそのまま霊夢の皮膚を掠る。顔を避ける事で直撃は免れたが、急に視界が揺らいだ。

 

「っ!?」

「ふふっ、掛かったな! 私の爪には猛毒が染みこんでいる。貴様はやがて空を飛ぶのも億劫になるだろう!」

《マズイ。霊夢! 出来るだけ低空飛行で……》

「ゴメン、無理だわ。さっきまで動き回ってたせいか、毒が回るのが早すぎ……た…………」

 

 避けようと素早く動いたせいで、毒の効き目が早くなってきた。霊夢のの背中を冷や汗が伝う。

 やがて飛ぶのが困難になってきた。力を失い地面へ向かって落ちて行く。その間にも蒼炎が炎を何度も放って、霊夢を燃やそうとしてきた。だが無理矢理光弾を作って、相殺して行く。途中で炎が掠って服が少し燃えたが、直撃は何とか避けている状態だ。

 

《霊夢、飛んで! このままじゃ地面に激突する!》

「簡単に……言わないで……。何とか飛ぶほうに……力を回そうとしてるわよ…………」

 

 嘘だった。本当は、もう飛ぶほうにも回せないくらいに霊力は無くなってた。今まで色んな敵と戦ってきたが、このように力技で倒さないといけない敵は、本当に初めてだったかもしれない。

 もう少しで地面にぶつかる。せめて死は免れようと体勢を立て直したが、間に合わないだろう。その時、人影が霊夢にを受け止めようとスライディングしてきた。

 

「間に合えぇぇぇぇ………ぶぐっ!?」

「え……?」

「イテテテ……。何とか間に合ったようだな」

《リオぉ! ……無事で良かったよぉ!》

 

 その影の正体はリオ。顔が少し黒こげているが、苦笑いしている。

 

「炎自体は大丈夫だったんだが、落ちたときに当たり所が悪かったみたいでな。少し気を失ってた」

「な、なによそれ……」

「話は後だ。レイア、彼女の状態は分かるか?」

《毒が回って動けないみたい。掠っただけだからそろそろ消えると思うけど……》

「そうか。……おい蒼炎。お前、随分とやってくれたじゃねえか」

 

 リオは、空中で歯軋りをしている蒼炎を睨む。だが、焦っているのか何も答えない。

 

「馬鹿な……なぜだ! なぜ原種である貴様が私の炎に耐えていられる!?」

「俺をただのリオレウスと思ったら、大間違いだ!」

 

 緑桜剣を握って、蒼炎を目指して飛ぶ。霊夢はその姿に安堵すると、身体の力を抜いて目を閉じた。彼の勝利を信じて……。

 

 

 

 

 剣と爪、光弾と炎がぶつかり合う。リオが緑桜剣で斬りかかれば蒼炎が爪で防ぎ、光弾が放たれれば炎で打ち消される。一向に進まない状況に、リオは少しばかり苛立ちが出ていた。

 だが、それで攻撃がおろそかになってはいけない。リオは相手の拳による衝撃を感じながら炎を放つ。

 

「ボアアァッ!」

「ガウウッ!」

「グウッ!?」

 

 炎を受けても蒼炎は動きを止めず、リオの翼に噛み付く。リオレウスは飛竜種に分類されるだけあって、翼などは大切な部分だ。リオは今まで翼で飛んでいたため、体勢が一気に崩れる。

 再び地面へ近づくリオ。だが、ギリギリの所で蒼炎が口を離した。彼の脇腹にはある物が突き刺さっていた。

 

「ガハァッ!?」

「緑桜剣の存在も忘れてもらっちゃ困るぜ!」

《ザマァ見ろ!》

 

 緑桜剣を突き刺したのだ。

 剣を蒼炎の脇腹から引き抜くと、力を溜め込む。その隙に蒼炎は炎をいくつも作り出して、リオに襲い掛かる!

 だがリオは怯む様子は無い。舌打ちすると、今度は毒爪で引っかく。それでも彼は表情を崩さない。蒼炎に焦りが生まれてくる。

 

「(これだけの炎を浴びても、毒爪でもビクともしない。ま、まさかコイツ……はG級レベル!?)」

 

 リオがいた世界の人間は、モンスターの強さを下位、上位、G級という風に分けていた。蒼炎は人間たちによって上位と認められていた。だが、もし目の前にいる敵がG級レベルだったら?

 蒼炎に、僅かながら敗北感が出始めた。このままでは負ける。このままでは蒼天の桜としてのプライドが崩される。

 

「(それに『あのお方』にも顔向けできん!)」

「いくぜ!」

 

 顔を上げると、リオの持つ剣が赤く発光していた。そして変な声も聞こえる。その声を間近で聞いているリオは、顔が少し赤くなっていた。

 

《あっ、リオぉ…♡。そんなに力を込めちゃらめぇ…………♪》

「ええい、喘ぎ声を出すな!」

「なんだそれは……何なんだ『ソレ』は!」

 

 嘗ての世界では、何度も切りつけて、太刀が発光する状態を維持し続けるハンターがいた。だがリオは、力を込めただけで発光させた。そんなものは聞いたことがない。

 この時、蒼炎は見誤っていたところがある。それは、緑桜剣は太刀のような形状だが、前の世界の太刀とは違うという事だ。

 緑桜剣はリオレイアがリオの手助けをする為に生まれた剣。リオの中にある「火竜の紅玉」の力を注いだことによって、もう一つの刃が浮き上がっているのだ。

 

「(…………これで決着がつくというわけか)」

 

 蒼炎の顔が引き締まる。相手がこのような隠し玉を出してくるならば、自分の生命力を使ってでも迎え撃とうではないか。拳と口の中に炎を溜め込み、爪に毒を染み込ませる。

 

「RUOOOOOOOOOO!」

「GUOOOOOOOOOO!」

 

 互いに、竜としての咆哮を放ち得物を振りかぶる。両者の叫びは森の殆どの鳥が、獣が逃げ出すほどのものだった。

 

「死ねぇぇぇ! 『あのお方』の為にぃぃぃ!」

「『飛竜炎斬』!!」

 

 炎と、赤い半透明の刃が飛ぶ。だが蒼炎の炎の中を刃が突き進み、蒼き竜に当たった。妖夢などと模擬戦をしたことによって、彼女の真似をすることで生み出すことが出来たリオの必殺技。

 蒼炎はリオの鋭い目を見ると、満足したまま地に落ちていった。

 

 

 

 

「ぐっ! うぅ……」

「おい。お前の言う『あのお方』とは誰の事だ」

 

 リオは緑桜剣の剣先を蒼炎の喉に突きつけ、先ほど叫んだ『あのお方』について聞こうとする。しかし、帰ってきたのは謎の笑みだった。

 

「ふふふ……。私は『あのお方』の為に尽くそうとしたつもりだった。しかし結果がこのザマとはな……」

「笑ってるんじゃねぇ。さっさと答えやがれ」

 

 余裕の態度を崩さない蒼炎に苛立ち、リオは少しだけ殺気を出した。それでも彼は笑ったままだ。

 

「お前はモンスターでありながら、人の為に生きようとする。心まで人のものに成り下がったか?」

「俺は俺だ。モンスターとしての尊厳ではなく、俺としての尊厳を守ったまでだ」

「なるほど……。だが私は、人間のために戦うなどしないぞ。人間たちは『許されない罪』を犯したのだから……」

「なんだと?」

「お前は『あのお方』について知りたがっていたな? これが答えだ!!」

 

 蒼炎が一気に歯を食いしばったかと思うと、彼の口から大量の血が出てきた。

 嫌な予感がしたリオは、蒼炎の胸倉を掴む。

 

「おい! 『あのお方』とは誰だ! 答えろ!」

 

 しかし蒼炎はピクリとも動かない。絶命してもなお崩れないその笑みは、どこか不気味だった。

 

「……舌を噛み切りやがったか」

 

 リオは舌打ちをすると静かに蒼炎を降ろす。すると足音が聞こえてきた。

 それは、ふらつきながら歩いてくる霊夢の姿だった。

 

「終わったみたいね」

「あぁ。もっとも、奴の自害で終わったがな」

「自害?」

「奴が口にしていた『あのお方』って者について聞こうとしたら、舌を噛み切りやがった。……どうやら、やばい事が起ころうとしているぜ」

 

 リオの真剣な表情と声。それは今吹いている風も相まって、霊夢を緊張させる物だった。

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