東方竜人帳   作:G大佐

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2016年3月16日、大規模編集


集う者たち

 場所はマヨヒガ。そこに4人の男が集まっていた。護、白斗、影夜、リオである。

 

「白斗、影夜、リオ……。お前達はなぜ此処に?」

「知るかよ。突然紫さんに連れてこられたんだ。っていうか、そこの執事服は誰だよ?」

「十六夜影夜と申します。紅魔館で執事をしております。今後ともよろしく」

「紅魔館……あそこか。俺の名は轟白斗。魔理沙の居候だ。いつも彼女がすまないな」

「まぁ頻度は減ってきてるのですがね……。今度からもう少し多めに返してもらえるとありがたいです」

「近いうちに、魔理沙と話してみるわ」

 

 白斗と影夜が軽く自己紹介をする。白斗は、魔理沙がよく紅魔館から本を盗み……もとい、死ぬまで借りているのを知っていた。その度に白斗が返しに行ってるのだが、それでも家に帰ればまた本が増えているのだ。

 ちなみに、返す本を受け取っていたのはおもに美鈴だったので、影夜と白斗がこうして会うのは初めてである。

 

「にしても白斗、所々包帯を巻いてるがどうした?魔理沙の実験に巻き込まれたか?」

「んな訳無いだろ。お前こそ包帯だらけだろうが」

「いや、これは全員に言えることじゃないですか?」

 

 影夜の言うとおり、この場にいるメンバー全員が包帯を巻いていたり、絆創膏を貼ったりしていた。さっきまで敵と戦ってたのだが、そんなことを互いに知るはずも無い。

 するとどこからかスキマが開いた。突然の出来事に一瞬警戒する4人。そこから出てきたのは

 

「ぶべらっ!……あれ?ここどこ?」

 

 幼い雰囲気を出す少年だった。分かってると思うが、この少年はナナシである。

 

「…………妖怪か?」

 

 ナナシを見てまず警戒したのは護だった。妖怪の山に住んでいるが故に、護は妖気を毎日感じている。ナナシから感じる僅かな妖気から、彼は妖怪だと判断したのだ。

 白斗や影夜、リオも同じだ。いつでも迎え撃つ事が出来るようにナイフやスペルカードを構える。

 

「え、ちょっと待ってよ!なんでスペルカードを構えるわけ!?」

「お前、何者だ。俺たちはたまに、野良妖怪に襲われることがあるからな。少しばかり警戒させてもらう」

「その必要は無いわよ、護。彼はあなた達の味方だから」

 

 紫がナナシと護の間に割り込む。笑みを浮かべているものの、その目には『厄介ごとを起こすな』と言っていた。彼女から発せられる妖気に当てられた護たちは、冷や汗をかきながら武器をしまった。

 

 

 

「今回集まってもらったのは、あなた達の事についてよ」

 

 紫を中心に、緊張した空気が辺りを包んだ。全員が真剣な表情となり、ロウソクの炎がジジッと揺れる音がやけに大きく聞こえた。

 

「あなた達は、モンスターに襲撃されたのよね? それもあなた達を狙ってるかのように……。それぞれ話しを聞いて結び付けてみたのだけれど、奇妙なものがあるのよ」

『『奇妙なもの?』』

「まず初めに護。貴方はオウガと名乗る男に襲われたのよね?」

「ああ。報告したとおりだ。『あの方の命令でお前を殺す』。そう言っていた」

 

 その言葉に全員が反応する。聞き覚えがあったからだ。『あのお方』という言葉に。

 

「次に影夜。貴方はブラフという男だったわね。小悪魔を誘拐して、おびき出したという」

「ええ。今思い出すだけでも……くっ!」

 

 小悪魔が穢されそうになったことを思い出したのか、影夜の目が怒りによってうっすらと赤くなる。しかし護が宥めると、元の黒目に戻った。

 

「そしてリオ。あなたには感謝するわ。あの時博麗神社から守ってくれなかったら、幻想郷は滅んでいたかもしれない」

「やめてくれ、紫さん。妖怪の賢者であろう貴女が、俺に頭を下げる事なんて……」

 

 それでも深々と頭を下げる紫。博麗神社は、とても重要な場所である。外の世界と幻想郷を遮断する『博麗大結界』の中心こそ、あの神社にあるのだ。

 もし蒼炎によって幻想郷が破壊され、さらに霊夢まで殺されていたら……幻想郷は崩壊する。

 まさに、リオはそうなるのを防いでくれたのである。だから頭を下げるのだ。

 

「次はナナシ。あなたね」

「待ってくれ、紫さん。俺と影夜はついさっき自己紹介したから分かるが、そいつは何者だ?俺たちとは初対面だろ?」

「白斗の言うとおりですね。教えてくれませんか?」

 

 このときの紫は「しまった」と思った。ナナシは地底から出る事が無かった。すなわち、護たちと面識が無い。だとすれば、さっき護が警戒したのも納得がいく。

 

「では紹介するわ。この子はナナシ。地底世界に住んでいる付喪神、いわば妖怪よ」

「だろうな。妖気を僅かに感じた。だが、気のせいか? 他の強い力も感じる気がする」

「それもそうでしょうね。彼は古の武器の集合体……別世界では、モンスターを殺すための武器が、妖怪になったんだもの」

 

 ナナシと紫以外の全員が驚く。あの強いモンスターに対抗できる武器が妖怪になっているのだ。もし敵に回したのならば、厄介な事になっていただろう。

 

「話は戻すけど、貴方はついさっき戦ってきたばかりよね?」

「そうだよ。溶炎とか言うモンスターに襲われた。倒したけどね」

「何か言ってなかったかしら?」

「そういえば……『あのお方の命令で』とか言ってた気がするなぁ」

 

 ナナシは少しばかり首を傾げる。実は彼も『あのお方』というのが気になっていたのだ。

 

「極めつけは白斗よ。貴方の証言で、私はこの場を設けようと決意したの。教えて頂戴。襲撃者が言った言葉を」

 

「あ、あぁ。確か――――――――

『幻想郷はあのお方によって、モンスターだけが繁栄する楽園になる』だったはずだ」

 

 またもや走る衝撃。敵の狙いは、幻想郷の崩壊だったのだ。

 一瞬慌てそうになった全員だが、軽く深呼吸をして落ち着きを取り戻した。コホンと紫が咳をして、話を再開する。

 

「今回の襲撃は共通点があるの。それは、あなた達モンスター能力者の抹殺を目的としてることよ。そして『あのお方』と呼ばれる存在……。そいつが親玉であること」

 

 特に気になるのは、『あのお方』と呼ばれる者。神も愛する幻想郷に対して宣戦布告をするくらいだ。かなりの力があると見ていいだろう。

 

「おそらく目的は、幻想郷の破壊、または侵略だな。あのディアロって女の台詞から察するに」

「しかも『あのお方』とやらは、カリスマでも溢れてるのかねぇ? 俺が戦った相手は、俺の質問に対して舌を噛み切るって行為をしやがった」

 

 白斗とリオが腕を組んで、唸りながら自分の考えを述べる。しかし、影夜がある疑問を口にした。

 

「ですが気になる点があります。なぜ我々モンスター能力者を襲うのでしょう? 幻想郷で敵に回すと最も厄介なのは、博霊の巫女である霊夢さんや、妖怪の山の二注である諏訪子さんや神奈子さん、そして妖怪の賢者である紫さんなどたくさんいる筈です」

 

 そこである。影夜が挙げた者以外にも、鬼の四天王である星熊勇儀や、亡霊の姫・西行寺幽々子、閻魔である四季映姫ヤマザナドゥ、妖怪の中でも上位に君臨する風見幽香だっている。

 幻想郷メンバーの中でも弱い方に分類されると思ってる彼らには、なぜ自分たちが狙われるのか理解できなかった。

 

「いいえ、貴方たちは弱くないわ。勝てるとまではいかなくても、渡り合えるほどまでの力があると見てるもの。私だけじゃなく、他のみんなもね」

「それでも納得がいかねぇ。強者という不安の種を刈り取ってから、俺たちを潰す手だってあるはずだ」

 

 白斗の疑問に対して、護が答えた。

 

「相手は、別世界の大自然に生きていたんだ。大自然と言うのは弱肉強食の世界。強い奴に無謀に挑んで勢力を失うよりも、弱い奴を潰して仲間の士気を上げて、強者を叩き潰す。そういう手も考えられる」

『『………………』』

 

 辺りが静まり返る。自分達があの時に負けていれば、相手は一気に幻想郷を襲い掛かっていただろう。まだ幻想郷の人々は、モンスターに対抗する術が少な過ぎる。敵の情報もまだ僅かしか持ってない。他の能力者たちは、自分のテリトリーとも言える場所を守るのに精一杯となるだろう。相手の数すら分からないのだ。

 明らかに不利すぎる現状。どうすれば良いのか。

 

 そんな空気を壊したのは、ナナシだった。

 

「防衛設備を作ればいい」

「なに?」

「防衛設備だよ。遠い記憶の中なんだけど、人間には、バリスタや大砲といったものを設置して、対抗する手段があった。たしか人里にも自警団ってのがあっただろ?」

「あ、ああ。彼らは妖怪が起こしたトラブルなどを処理したりするから、それなりに屈強だぞ」

「それなら、小型モンスターにも対抗できるかもしれない。武器に関する厳しい規則を取り付ければ、里の安全は何とかなるよ」

「ふむ……。考えてみる必要がありそうね」

 

 ナナシの提案に、紫も顎に手を当てる。無条件で武器を与えるのならば考えを渋っていたかもしれないが、ルールを設けるならば、人間が妖怪を虐殺するようなことは防げるかもしれない。

 

「だとしたら、後は俺たちが強くなるだけだな!」

「だな。相手は強くなってきている。相手の士気を上げさせるわけにはいかん」

「では、後で鈴姉さんに修行の強化を頼んでみましょうかね?」

 

 白斗、護、影夜は己自身をさらに鍛えることを考える。能力の扱いに慣れてきたからといって気を抜いてられない。

 今このとき、彼らの目的は一つになった。

 

『幻想郷を、モンスターによって崩壊させない』

 

 それが、彼らの誓いであった。

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