東方竜人帳   作:G大佐

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2016年6月4日、大規模編集


今こそ伝えよう、この想い

 ある日のこと、護は神奈子の元に呼び出されていた。いきなりの事で少し緊張しているが、神奈子はそんな様子を知ったことが無いように、緑茶を飲んでいる。

 

「ふむ、今日も茶が美味い。……む? どうしたんだ護。普段は同じ卓袱台を囲んでいるというのに、なぜそこまで固くなる?」

「いきなり威圧を込めた声で呼び出されれば、そりゃ緊張しますよ。それで、お話とはいったい?」

 

 護は、神奈子の話の内容はかなり重要な事だと思っていた。何せ、諏訪子や早苗は来ないように命じていたのだ。護だけにしか話せない内容とは、一体なんだろうか?

 神奈子は護の問いにふむと頷くと、もったいぶる様に話し始めた。

 

「今回お前を呼び出したのはな、お前が早苗をどう思ってるかだ」

「……は?」

「偶に見かけるが、お前を見る早苗の目は、俗に言う『恋する乙女』というものだ。それにお前も、彼女を見つめる目が普段よりも慈しみに満ちている。だから気になったのさ。お前はどう思ってるかを」

 

 胡坐をかいて、湯呑みを片手に神奈子は言う。護はその問いに唸るしかなかった。

 しかし、しばらくすると観念したのか、呟くように答えた。

 

「むむむ……」

「今ここに早苗はいない。正直に言ってみろ」

「好きか嫌いかで言えば……好きです」

「ほう? では、なぜそこまで唸る?」

「それはその……気恥ずかしさとかですよ」

 

 護は頬をぽりぽりと掻きながらその理由を答える。

 やはり、女性の前で素直に「好きだ」とは告白する事ができなかった。恥ずかしさと共に、相手は自分の事を好いていないのではないかという不安があるのだ。

 神奈子は、モンスターや野良妖怪と戦うときは目付きが鋭くなるのに、こういう時にヘタレになる護の状態に、大きく溜め息を吐いた。

 

「はぁ~……。あのなぁ、お前達は人化したモンスターの親玉との戦いが控えているのだろう?」

 

 

 ―――――――思いを伝えられずに死んだら、どうするつもりだ?

 

 

「っ!」

 

 神奈子の言葉に、護は息を呑んだ。彼らを待ち受けている戦いは、恐らく厳しいものになるかもしれない。どの人化モンスターも語っていた「あのお方」という者。どのモンスターも忠誠を誓うほどの存在。護たちは、そのようなやつと戦うのだ。

 ……下手すれば、誰かが死ぬことだってあるかもしれない。それは、護や早苗にも当てはまるのだ。

 

「これからどうするかは、お前が決めろ。だがよく考えろよ。早苗が好いた者が後悔して堕落する姿は、私とて見たくないからな」

「…………」

 

 神奈子が部屋を出て行った後、護はしばらく黙り込んでいた。しかし、しばらくすると何かを決心したかのように部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕方、早苗と護は縁側で茶を飲んでいた。だが二人の表情は、少し緊張した感じを漂わせていた。護が大切な話があると言ってから数分。護は中々言い出せないでいた。こういうときに限ってヘタレな護である。

 だが、早苗の心配するような表情に耐えかねたのか、大きく息を吸って吐くと話し始めた。

 

「早苗。俺はたまに悪夢を見るんだ」

「悪夢……ですか?」

「ああ。大切な人たちが目の前からどんどん消えていくという夢だ。その中には……早苗も入っていた。普通だったらただの夢だと言い切ることも出来るが、これは予知夢ではないかという疑問が出てくるんだ」

 

 この疑問は、護を大いに苦しませた。本当に仲間達が、好きな人がいなくなるのではないかという不安があったのだから。油断すれば殺られる。幻想郷はそんな世界でもあるのだ。

 

「そして神奈子さまにも言われたよ。思いを伝えられずに死んだらどうする?ってな」

 

 だから、伝える。後悔しないように。己が強くありたい理由がハッキリする為に。

 

 

「早苗。俺はお前のことが好きだ」

 

 

 護は早苗を見つめてハッキリと言う。その告白に、早苗は口を両手で隠し、涙で潤んでいる目を少しだけ見開いている。

 その様子を心配した護は、まさか傷つけたのではと思って声をかける。

 

「だ、大丈夫か?」

「グスッ……。はい、大丈夫です。あまりにも……ヒック、嬉しくてぇ…………!」

 

 涙を指で拭いながら、早苗は落ち着きを取り戻して、護をしっかりと見る。

 

「本当は私からも言おうとしたのに、先を越されちゃいましたね。えへヘ」

「え? そ、それってムグッ……」

 

 途中から、護は何も言えなくなった。これが返事だとでも言わんばかりに、早苗が唇を重ねたのだから。

 

「(好き……。大好きです、護さん……♡)」

 

 そして二人はしばらくの間、ずっとキスを続けているのだった。

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