東方竜人帳   作:G大佐

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2016年7月15日、大規模編集


悩む影夜。そして……

 雪が降り積もった紅魔館。日の光が差し込む庭では、休憩を貰った影夜と小悪魔が楽しそうに会話をしていた。

 そんな二人を、微笑ましく見守っている人物が二人。咲夜と美鈴である。

 

「美鈴、作戦は成功ね」

「ええ。咲夜さんによる過剰なスキンシップ、そして私からの何気ないハニートラップ……。いくら影夜でも、異性を意識し始めるでしょう」

 

 今まで布団に忍び込んだり、風呂場で身体を密着させるなど過剰なスキンシップを取っていた二人。しかし,これは演技だったのだ。

 影夜は幼い頃、同じ人間に疎まれていたために心を閉ざしてしまっていた。レミリアに拾われて以降心を開いていったのだが、ここで思いがけぬことが発生した。

 それは、異性に対しても無関心であるということ。彼が幼い頃に咲夜と美鈴が(タオルを巻いて)一緒に風呂に入っていたことが影響したのか、ラッキースケベが起きても、顔を赤くするそぶりすら見せなくなっていたのだ。

 

 これが明らかになったのは、まだ護が幻想入りする前のことである。

 

 たまたま転んでしまった美鈴を支えようと、影夜が前に立った。しかし身長でも体重でも差があるため、結果的に美鈴が影夜を押し倒す形になってしまった。

 丁度その時、美鈴の胸に顔が埋まってしまうのだが、返ってきたのは「大丈夫ですか?」の一言のみ。慌てることすらなく、ただ淡々と言ったのだ。

 このことを知った紅魔館メンバー(小悪魔はまだ召喚されていなかった)は、全員頭を抱えた。

 

 そこで二人は考えた。もしも姉の下着姿を朝一番に見たら、どんな反応をするのか?

 

 結果は……顔を赤くしての大絶叫。咲夜も初めて、義弟の「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」という悲鳴を聞いたらしい。普段は部屋にいない筈の姉が、普段は見せない下着姿でいたのだから当然だろう。

 そこから二人の行動は続いた。美鈴が風呂場に乱入し、休憩におやつを持って来たときには咲夜が口で咥えて食べさせようとしたりと、それこそ近親相姦になるのでは?と思うほど。

 そして……ついに努力が実り、少しは異性を意識するようになったようだ。現に、小悪魔と話をしている今も、若干顔が赤い。

 

「小悪魔は影夜が好き。そのことに影夜は気付くかしら?」

「気付くわよ、きっと。そういう運命が見えるもの」

「「っ!?」」

 

 声がしたほうへ振り向くと、自ら日傘を指しているレミリアの姿があった。突然の事に、バネ人形のごとくピシーンッ!となる。

 

「それにしてもあなた達ねぇ……。あのスキンシップで影夜が女性恐怖症にでもなったら、どうしてたのかしら?」

「「あっ」」

 

 完璧なメイドなど存在しない。たとえ咲夜であろうとも、見落としてしまう部分があるのである。レミリアは、呆れたような溜め息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 パチュリーの管理する大図書館。影夜はそこで本棚の整理をしていた。魔道書を本棚に戻しながら、影夜はある『違和感』を胸に抱いていた。

 

「(…………何だろう、この気持ち)」

 

 さっきまで小悪魔と話をしていたのだが、仕事の為に別れることにした。その時にどこかこう・・・・切ない気持ちになったのだ。姉と話をした後ではこんなことは無かったはずなのだが、なぜ小悪魔に限って起こるのか? それが不思議でならなかった。

 

「(最近の俺は、何か変だ)」

「おっす、影夜」

 

 声のしたほうを振り向くと、大きな袋を担いだ白斗がいた。紅魔館に来ることは滅多に無かった白斗が何故ここにいるのだろうか?

 

「珍しいですね。何の御用ですか?」

「魔理沙と一緒に、本を返しに来たんだ。かなり前に盗んだものも混じっていてよぉ……。どうせなら全部返して、一からやり直しってことにしたんだ」

 

 奥の方から『盗んでねぇよ!』という声が聞こえた気がしたが、二人は聞かなかったことにした。白斗は袋をドカッと下ろし、本を取り出しながら話す。

 

「それにしても、溜め息つきながら本棚に向かっていたが、何か悩みでもあるのか? 俺で良かったら相談に乗るぜ?」

 

 ニカっと笑う白斗。影夜は、不思議な安心感に包まれた。レミリアに出会ってからは再び感じることの無かったこの気持ちを、今こうして感じている。

 恐らく、護やリオ、白斗と出会ったことで芽生えた感情なのだろう。影夜の心は、大きく開いていた。

 

「実は…………」

 

 影夜は、自分が抱いている違和感を簡単に説明した。そのことを聞いた白斗は少し呆れた。どうやら影夜は、『自分が他人を愛するなどありえない』と思っているようだ。

 

「あのなぁ……。お前、小悪魔とかが大切な人なんだろ?」

「そうですが、私のとっては姉さんやお嬢様も大切な人達であって……」

「そうじゃねえよ。お前が咲夜とかに抱いてる『大切な人』っていう価値観は、あくまで『家族として大切な人』なんじゃないか?」

「家族として? では小悪魔さんに抱いてるこの感情は違うというんですか?」

「よ~く考えてみな。これ以上はアドバイス出来ねぇ」

 

 ふむ、と顎に手を当てて考える影夜。家族としての大切な人……。確かにそれは合っている。咲夜も美鈴もレミリアも、みんな家族のようなものだ。小悪魔もその一人な筈……。家族とは違う大切な人とは何なのだろうか?

 

「(分からない……。どういう意味なんですか?白斗さん)」

 

 解決どころか悩みが増えた感じがした。もう一度白斗に聞こうと思った瞬間、

 

 

 

 ドゴォォォォォォン!!

 

 

 

 何かが破壊されたような音がした。今いる場所からでも土埃が見えるということは、かなり大規模な部分が破壊されたのだろう。

 

「……白斗さん」

「あぁ、ヤバイ感じがする。行くぞ」

 

 二人は急いで音の発生源である扉の元へ走る。そこへ着くと、二人は目を見開いた。そこには……

 

「……妹様?」

「……嘘だろ?」

「アハハ♪ 影夜?ワタシ、凄くチョウシが良イノ。ダカラ…………イッショニアソビマショウ?」

 

 紫色のレーヴァテインを持った、禍々しいフランがいた。




フラン、狂竜化です。
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