この話は、おそらく今までの中で最も不快になるかもしれません!
暴力表現・発言、残酷描写、鬱っぽい展開が含まれてます!嫌な方は、速やかにお戻りください。
2017年11月26日 大規模編集
とある森の奥深くに、小さな集落があった。そこの人々は何気なく暮らしているが、何人かの男たちは集団で『ある場所』へと向かう。
その場所を、人は「化け物の住処」と呼んでいた……。
ガッ!ゴスッ!!
地下の空洞に、人を殴る音が聞こえる。
「この化け物が!!」
「とっとと……死ねよ!」
「しぶとい野郎だ!」
罵声と共に男たちは、鎖に繋げられた黒髪の少年を殴り続ける。一方で少年は何も喋らず、ただ殴られているだけだった。
「おい、もうそろそろ怪しまれるぞ」
「くそっ! また止めを刺し損ねたか」
「明日こそ生きていられると思うなよ!」
男たちはぞろぞろと地下から出て行った。当然少年は何も喋らない。
「…………」
少年の目には光が無かった。何も喋らなかった少年はポツリと呟く。
「お母さん……」
それは突然の出来事だった。
母と父と3人で幸せに暮らしていた日々が、終わりを告げてしまった。
『この化け物家族が!』
『な、何なんだお前たちは!?』
『俺は見たんだ! そこのガキが蛙に驚いた瞬間、目が赤く光ったのを!』
『それだけで私たちの子供を化け物扱いするの!?』
『うるせぇ! 化け物は黙ってろ!』
『がっ!?』
『なっ! 私の妻に何を……』
『化け物は滅んでしまえ!』
『と、父さん!』
『逃げろ! 早く!』
『逃がすな! ガキも捕らえろ!』
その後少年の目に映ったのは、頭を殴られ血だまりに沈む父の姿だった。少年は必死で逃げるも捕まってしまう。
そして、父と母の亡骸がある家を目前で燃やされた。
その後は、ただひたすら地下洞窟で殴られる日々……きっと彼らは、じわりじわりと苦しめながら殺すつもりなのだろう。大人たちが言うのだから自分は化け物なんだろう。そのせいなのか、食べ物すら与えられてないのに死ぬことが出来ない。自然とこんな台詞を吐いてしまう。
「誰か……助けて……」
それから数日後。彼の目の前に一人の女性がいた。
「大丈夫かい?」
「……誰?」
すると女性は、鎖から少年を解放する。
「可哀想に……。こんなに殴られて痛かったでしょう」
女性はそっと少年を抱きしめる。不思議と嫌な感じはなく、どこか母の温もりと似ていた。その女性はそっと耳打ちする。
「外へ出てみないかい?」
少年と女性は地下洞窟をこっそりと抜け出し、ある花畑にいた。色とりどりの花が咲き乱れ、蝶は舞い、鳥が鳴いている。
「わぁ……!」
「ここは、私のお気に入りなんだ」
「凄い……凄いよ、お姉ちゃん!」
「さぁ、思いっきり走り回りな!」
「うん!!」
それは、少年が久しぶりに笑顔を見せた瞬間でもあった。それもそうだろう。毎日が暴力の日々で、美しいものなどいつしか忘れてしまったのだから。
笑顔の少年を、女性は嬉しそうに見つめていた。この女性は、男たちがどこかへ行くのを気になっていた。だからこっそりついて行けば、まだ幼い少年を口汚く罵り、暴力を振るっているではないか。だから、誰もいない時を見計らって助けに来たのである。
少年にとって、この時間がずっと続けばいいと思っていた。初めて見る蝶や花冠、川にすむ魚……。どれもが少年の心を惹きつけた。
だが、夜になった瞬間、また地獄が戻ってしまった。
「いたぞ!」
「あの女も化け物だ!」
「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」「殺せ!」
「殺せ!!」
女性は少年の手を力強く引っ張って叫ぶ。
「逃げるよ!」
「うん!」
ただただ走った。転びそうになっても諦めずに走った。たとえ枝の先端や鋭い葉で腕が傷付いても走った。しかし……体力が無くなってしまった。
「はぁ……はぁ……。あうぅっ!」
「やっと捕まえたぞ、このクソガキ!」
「何するんだい! 離しな!」
「このアマぁ……! 化け物を逃がそうとするなんてよぉ、この野郎!」
老若男女、全ての人間が二人を蔑むような目で見ていた。
「化け物なんか……居なくなればいいんだ!」
そう叫んで、男は木の棒を少年に思いっきり振り下ろす。少年は目を瞑る。
ゴスッ!
「…………え?」
「ゴメン、ね……」
女性が少年を庇い、殴られた。ドクドクと頭から流れる血は、女性の残りの命を意味していた。そして・・女性は動かなくなる。
「あ、あぁ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「チッ、化け物の味方なんかしやがるからこうなるんだ。さぁ、今度こそてめぇを……」
返せ………。お父さんとお母さんを…………。お姉ちゃんを返せ…………!
お前らが僕から全てを奪ったなら……今度はお前らの命を奪ってやる!
そこから先は、地獄絵図だった。
「や、やめろぉぉぉぉ!
「いやだ……! いやだいやだいやだぁぁぁぁ!」
「許してくれ! お前に今までやってきたことは謝るから、命だけは……!」
腕に刃が現れた少年は、それで男たちを斬り殺していく。逃げようとする女にも、泣き叫ぶ子供にも、命乞いをする老人にも容赦はしない。
夜空の下には、肉が斬られる音と血が噴き出す音、人間の悲鳴が聞こえるだけだった……。
「……あれ?」
少年の腕から刃が消えたときに、少年は正気に戻った。あたりには赤い何かが転がってるだけだ。
腕に生暖かい感覚がした。腕を見てみると、真っ赤に染まっている。
少年の頭は混乱に包まれる。まさか……まさかまさかまさか!
やったのは……自分?
「う、うわ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
少年は泣きながら走った。その場から逃げたくて。現実を受け入れたくなくて。家族を守れなかったのは自分だ。恩人を守れなかったのは自分だ。人の命を奪ったのも自分だ。
悪いのは、全て自分だ。
どこを走っているのだろう? それは自分にはよく分からない。
「あっ……」
足元の土が崩れ、少年は空中へと身を投げ出した。どうやら崖の近くを走っていたみたいだ。
背中から風を感じる。きっとその下には鋭く尖った木の枝が待ち構えているだろう。
もう僕は死ぬんだ。そう思った瞬間、不思議と眠くなってきて、目を閉じた。
「……さすがに見ていられないわ」
突然、空中に『何か』が現れる。それは少年を飲み込むとすぐに消えてしまった。きっと少年の耳には最後にこう聞こえただろう。
『幻想郷へようこそ』と。
もう少しだけ続きます。