東方竜人帳   作:G大佐

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2017年11月26日 大規模編集


日常:ちょっとした幸せ

~護と早苗~

 妖怪の山の雪も融けはじめ、少しばかり風が強い季節になった。護は、自分の部屋で本を読んでいた。

 

「グラビモスは睡眠ガスも使うのか……」

 

 読んでいたのは、リオのいた世界で言う『モンスターの書』と呼ばれるものである。これには様々なモンスターの特徴が記されており、護は偶然にも、自分の能力である鎧竜・グラビモスについて書かれた本を手にしたのだ。

 ちなみに、影夜や白斗といったモンスター能力者たちも『モンスターの書』を香霖堂から買い取った。他の者達も今頃は読んでいる頃だろう。

 

「護さ~ん。お昼ごはんですよ~」

「ん? ……あぁ、もうそんな時間か」

 

 襖から早苗がひょっこりと顔を覗かせて、昼時を告げた。どうやらずっと本を読んでいたようだ。

 返事をした瞬間、肩に痛みが走る。思わず顔をしかめた。

 

「うっ! ()つつつ……」

「もしかして、肩こってますか?」

「そのようだな。イタタタ……」

「それじゃあ、肩を揉んであげましょうか?」

「……え?」

 

 護は少しだけ躊躇った。というのも、どこか年寄り臭い感じがしてしまうのと、ここのところ早苗とデートする機会が全く無かった為、早苗に触れた途端に顔がにやけてしまいそうだったからだ。

 しかし、肩が痛いのは事実。ここは甘えることにしよう。我慢することは良くないだろう。多分。

 

「それじゃあ、お願いするかな?(頼む。理性を保ってくれよ、俺)」

「はい!」

 

 そっと肩に手が添えられる。ゆっくりと自分の肩が揉まれていくのだが、力加減が丁度良い。痛過ぎず、力が弱いわけでもない。自然と気持ちの良い溜め息がこぼれる。

 

「あ~~~~。やべぇ、とても気持ち良い」

「クスッ。本当に疲れてたんですね。肩がバキバキになってるのが分かりますよ?」

「凄い幸せだ……こうして、恋人に肩を揉んでもらうのは夢にも思わなかったし」

「えっ、そんな……。いきなり嬉しいこと言わないでくださいよ~」

 

 早苗は、突然『恋人』と言われて頬が緩んでしまった。言葉では否定しているものの、声のトーンや話し方で、照れているのはバレバレだ。

 

「(……可愛いな)」

 

 護の部屋は火鉢のおかげで暖かくなっていたが、それ以上の暖かさを、早苗と護は感じていた。

 

 

『神奈子~。春だね~』

『そうだな。どうやらかなり早く、守矢神社にだけ春が来たようだ』

 

 神奈子と諏訪子は、そんな光景を暖かく見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~白斗と魔理沙~

 いくら冬が終わりに近くなってきたとはいえ、魔法の森の中に家がある以上、まだ寒さはあるものだ。

 魔理沙は自室で、あるものを作っていた。あともうちょっとで完成である。

 

「…………よしっ!完成だぜ!」

 

 魔理沙は自分の手にある『ソレ』を見て、満足したように頷く。かなり上出来なようだ。頬が、にへら~となってしまう。

 そこへ、コンコンとノックする音が聞こえた。

 

「魔理沙ー? 大きな声出してどうしたー?」

「っ!? な、何だよ白斗かよ~。ビックリさせんなよな~」

「へへっ、悪い悪い」

 

 ドアの隙間から部屋を覗くのは、恋人である白斗。普段は明るく喋り、馬鹿のように見えて実はしっかり者という人間。

 魔理沙は、だらしない顔をしてないか不安だった。だが、どうやら顔までは見られていないようだ。心の中で安堵の息をつく。

 

「それじゃあ……そろそろ行こうか?」

 

 今日はとても良い星空が見えるという。今晩は、魔理沙イチオシの穴場へ行く事になっていた。

 

 

 

 だいぶ暗くなってきた頃。ランタンを手に、白斗は周囲を警戒しながら魔理沙の後を付いて行く。モンスターは魔法の森にも現れる。少しでも警戒して損はないのだ。

 

「よ~し。ここだぜ、白斗!」

「……おぉ~。これは……すげぇな…………」

 

 そこには大きな切り株があった。年輪を見ると、かなり樹齢の高い木だったのだろう。光を遮る物を失ったその場所には月光が射し込み、幻想的な雰囲気を作っていた。

 

「よっと。今日はここに腰掛けて、冬の天体観測といこうぜ?」

「そうだな。よっと」

 

 二人で座ってもまだ余裕があるほど、その切り株は大きかった。動物たちも冬眠してるため、たった二人きりである。外の世界にも、こんなに素晴らしい星空を見れる場所は少ないだろう。白斗は静かに興奮していた。

 しかし、今はまだ雪が残る季節。しかも夜なので寒い。白斗はブルリと身体を震わせた。

 

「寒いな…………」

「おっ、そうか? じゃあ……これを巻くか?」

 

 魔理沙が取り出したのは、白いマフラー。しかし見てみると、かなり長い。二人くらいなら軽く包めそうなほどだ。

 実は、最初に魔理沙が作っていたのはマフラーだったのだ。しかも二人で一緒に巻きつけるタイプのを、白斗に内緒で作っていた。いきなりこういうサプライズをすると、白斗は顔を赤くする。その反応が見たかったのだ。

 

「これ、まさか手作りか?」

「おう! 一度で良いから作ってみたかったんだ。こういう……恋人っぽいのを」

 

 いつにも増してモジモジしてる魔理沙を見て、白斗は正直ドキドキしていた。寒さのせいか照れてるせいか分からないが、頬が赤くなっている。、今日の魔理沙はかなり可愛い。

 そんな白斗はマフラーを首に巻くと、右腕で魔理沙を抱き寄せた。そして、余った分を魔理沙の首に巻きつける。

 

「俺のために作ってくれたんだろ? ……とても、暖かいぜ」

「……ありがとう」

 

 二人は、互いの温もりを感じながら冬の星空を眺めていた。

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