東方竜人帳   作:G大佐

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2017年11月26日 大規模編集


怒りは脅威となる

「消し炭となりなさいな」

「っ!」

 

 霊夢に灼熱の炎が襲いかかろうとしていた。それを見ていたリオは、手の平に炎を溜め込む。

 

「霊夢、スマン!」

 

 爆音と共に、霊夢の身体は大きく吹き飛ぶ。リオが火球を放ったのだ。これによって霊夢は軽いやけどを負っただろうが、エンプレスの炎によって消し炭にならずに済んだ。一方でエンプレスは忌々しげにリオを睨む。

 

「ふうん? その炎……貴方、リオレウスね? どういうつもりかしら?」

「俺は人間を気に入ってしまってるんでな。ましてや霊夢にはそれなりに恩がある。ここで死なせるわけにはいかない」

「そう。貴方には炎は無意味ね……。それなら、爪で引き裂いてあげるわ!!」

 

 エンプレスが、爪でリオを引き裂こうとする。リオは静かに緑桜剣を構えた。

 しかし!

 

「おりゃああああ!」

「ぐうっ!?」

 

 エンプレスに何かがぶつかった。見ると、緑髪の幼い少女……キスメが桶を使って体当たりをしていた。その隙に、ヤマメがリオたちの元へ駆け寄る。

 

「リオ、霊夢! 大丈夫かい!?」

「俺はどうって事ないが、霊夢がヤバイ。離脱させないと殺されるぞ」

「だったら、ここはアタシ達に任せな」

 

 勇義が現れる。近くでは、パルスィがナナシの傷を診ている。

 

「あんたも結構危ないんだろ? 少し休んでおきな」

「……スマン」

 

 リオは勇義の肩を借りて、その場から離れる。ヤマメも霊夢を背負って戦線離脱した。

 

 

 

 

 

 エンプレスはリオ達を追おうとするが、ナナシ達の弾幕によって行く手を阻まれた。一方でパルスィは、ジト目でナナシを睨む。

 

「一人で古龍……だっけ? それに挑むなんて馬鹿じゃないの?」

「……ごめん」

「謝るのなら、もっと私たちを頼りなさい! 私たちだって伊達に長生きしてないわよ」

「……うん!」

 

 二人は、それぞれ片手を前にかざして再び光弾を放つ。だが強靭な鱗を持つエンプレスは、片手で薙ぎ払う。

 

「数が増えたくらいで勝てると思うな!」

「無論、そのつもりさ!」

 

 ナナシは腕を片手剣にして、エンプレスを斬りつける。彼女は瞬時に甲殻で腕を覆うが、痛みが走ることに変わりは無かった。

 そこを追撃するようにパルスィが鋭い蹴りを放つ。彼女も妖怪。人間より強い力で出される蹴りは痛いものだ。

 

「くっ!もうこうなったらヤケクソよ!」

 

 辺りに赤い粉が撒き散らされる。ナナシは急いでパルスィの手を引く。すると、エンプレスの周りが爆風に包まれた。

 

「あれって……自爆?」

「違う。あの爆発に耐えられるほど強いか、何か工夫をしてるかどちらかなんだけど……」

 

 エンプレスについて考えている二人だったが、この時の二人は気付いていなかった。自分達の周りに()()()()が舞っていることに……。

 

「あっははははは! 吹き飛びなさい!」

「「っ!?」」

 

 その瞬間、熱風と衝撃が襲い掛かってきた。二人の思考は混乱に染まる。

 

「(どういうこと!? 確かにエンプレスの近くで爆発したはず!)」

「(ここまで爆風が届くなんて……ありえないわ!)」

 

 地面に叩きつけられる二人。そこへ二つの影が降り立った。

 

 

「ナナシ、パルスィ! 無事か?」

「加勢します!」

 

 

 護と早苗だ。全速力で飛んできたものの、今度はイーオスの群れに妨害されそうになったのだ。それらを討伐した二人は無事に到着し、こうして加勢することが出来た。

 

「遅いよ護!」

「いざと言うときに限って良い所取りなんて、妬ましいわよ」

「すまねえな。さて、と……。あの際どい恰好してる女が敵だな?」

「幻想郷のためにも、倒させていただきます!」

「ちぃ! 次から次へと……。鬱陶しいのよ!!」

 

 エンプレスは更に熱の力を強める。口からは炎が溢れ、爪も更に鋭くなった。

 

「こうなったら全力よ! お前ら全員殺してやる!」

「全員散開!」

 

 辺りに黄色い粉が撒き散らされる。ナナシは叫んで離れるようにする。離れたと同時に再び爆発が起こった。

 これでナナシは確信する。

 

「やっぱり! 黄色い粉のときは遠距離に、赤い粉のときは近距離で使い分けてるのか!」

「ならば、今がチャンスね! 妬符『グリーンアイドモンスター』!」

 

 パルスィが緑色の光弾を撃ちながらエンプレスへと近づいていく。ナナシは彼女を援護しようと走り出した。

 更に護と早苗も、スペルカードを構えながら一気に近づく。

 

「図に乗るなよ人間風情がぁ!!」

 

 怒りに染まったエンプレスは、最大級の炎を吐き出した。このままでは全員が消し炭になりかねない。

 しかし、早苗は結界を張ることで、護は鎧化をして身を守った。ナナシも片腕を盾に変えてパルスィと自分の身を守る。

 

「怒りに染まった奴ほど、攻撃が大降りで隙だらけになるってモンだ」

 

 護がエンプレスの顔面にアッパーをくらわせる。妖怪の山で鍛えられた一撃は中々のダメージだ。それにモンスターとしての怪力も加わればとんでもない威力だ。

 さらに早苗が、青色の光弾を地面に放ち土煙を起こす。これでエンプレスの視界を封じた。

 

「あぐぅ! まだ…………だぁ!」

「(しまった! 油断した!)」

 

 エンプレスは翼で土煙を晴らし、護に対して連撃を繰り出す。古龍の鋭い爪は容赦なくグラビモスの甲殻を削っていく。

 早苗が近づこうとするが、赤い粉を撒き散らして牽制される。いつ爆発を起こすか分からないのだ。

 

「まずは貴方からよ!」

「がっ……はぁ……!」

「護さん!」

「貴女も邪魔ぁ! 吹き飛びなさい!」

 

 護はとうとう連撃に耐え切れず、彼女の右ストレートを受けてしまった。早苗が急いでエンプレスに一撃を入れようとするが、振り向きざまに放たれた回し蹴りで、大きく吹き飛ばされた。

 護と早苗は気を失って動けない。殺されてはいないものの、二人はエンプレスに敗北した。

 

 

 

 

「さあ、残るは貴方たちよ。あぁ……! これでテオの仇を取れる……!」

 

 ゆっくりと、恍惚とした表情でナナシ達に近づくエンプレス。しかしナナシの目には諦めの色が見えない。

 右腕を変化させた。先端がランスのように尖っている。左腕には謎の紋様が浮かび上がっている。武器ならば盾の役割をしている部分が、ナナシには結界と言う形で現れてるのだ。

 エンプレスは走りながら、爪に力を込める。

 

「さあ、私の悲しみを思い知れぇぇぇぇぇ!」

「結界、展開!」

 

 腰を低く落として結界を展開する。そして右腕のランス状の腕を突き出す!

 

「ぐあああ!? こ、これがミラボレアス様の言っていた、龍殺しの武器の力ね……!」

「(ミラボレアス!? 何だその名前は……。寒気がする……)」

「ナナシ、ぼうっとしちゃ駄目!」

 

 パルスィは、ナナシが一瞬だけ動揺したのが分かった。すぐに声をかけて反撃に移るようにする。

 我に返ったナナシは更にランスを突く、突く、突く!

 

「がっ! ぎっ! うぐぅっ!

「これはおまけ!」

「ごはぁっ!?

 

 さらにランスの先端から砲撃が放たれる。ナナシが変化させている武器は、見た目はランスのようだが、ランスとはちょっと違う。

 砲撃機能を兼ね備えた武器…………ガンランスである。名は『デオス・オシリス』。太古の武器である。

 

「な、なぜ……? 人間に扱われるだけの武器が……なんで…………!?」

「背中ががら空きよ!」

「パルスィ、これを!」

「っ!」

 

 エンプレスは、あまりにも強すぎる攻撃によって、軽い混乱状態になっていた。そのせいで大きな隙を許してしまう。ナナシがパルスィに、常備しているモンスター解体用のナイフを投げ渡した。そしてパルスィは、そのナイフで背中を斬りつける!

 

「ぎゃあああああああ!」

「今よ!」

「これで終わりだ……! 『竜撃砲』!!」

 

 大きく仰け反ったところを、ナナシは最大の砲撃である『竜撃砲』でトドメを刺す。

 エンプレスの目の前は真っ白になる。それと同時に、最愛の夫……テオが微笑んでいた気がした。

 

「あなた……。あぁ……愛しい人……。私も貴方の元へ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンッ!という音が、部屋に響いた。暗い王室のような場所で、『あのお方』と呼ばれる男……ミラボレアスが震えていた。

 

「ナナ・テスカトリまでやられたというのか!? 何という……何という成長速度……!」

 

 予想外だった。ここまでモンスター能力者が強くなっているとは思わなかった。

 完全に甘く見ていた。強大な力を持つモンスターをかなり失った今、このまま隠れて攻撃しても無駄だろう。ミラボレアスはある決断をした。

 

「……ナズチ。いるか?」

「ここにおります」

「お前も分かってると思うが、この城には結界を張っていた。他の者達に居場所を探られない為だ」

 

 妖怪の賢者と呼ばれる八雲紫ですらミラボレアスを探せないのは、この城に張られている結界が原因だ。遠い昔に、人間の書物を読んで真似をしてみた結果得ることできた、特殊な術。幻想郷の中でも遠い辺境の地にあることも相まって、今まで見つからずにいられたのだ。

 

「しかしこのままでは、戦力を失うばかりだ。そこで一か八かの賭けだが……」

 

 

 

 

 

「この城の結界を解く。モンスター能力者も、幻想郷に住む者も、本格的に攻撃するぞ」

 

 

 

 

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