東方竜人帳   作:G大佐

66 / 76
2017年11月26日 大規模編集


近づく、決戦の時

 幻想郷のどこかにある巨城。そこにある一室で、ミラボレアスは水晶に手をかざした。すると水晶に映っていたピンク色のもやは、スーッと消えていった。と同時に城の外からガラスが割れるような音が聞こえる。

 

「城の結界を解いた。これで、幻想郷の者やモンスター能力者は私を殺そうとするだろう……」

 

 結界を解いたのには意味がある。相手は異変の黒幕を、自分を探している。そこで結界を解けば、その際にあふれる力を感じ取ってこの城へやって来るだろう。

 

「だからこそここで迎え撃ち、葬り去ってくれる。我々の故郷にするために……」

 

 ミラボレアスはそう呟くと、残りのモンスター達に指示を出す為に部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 守矢神社の居間にて、護たちは強い力を感じた。その力に押されかけて、護と早苗の二人はビクッと大きく震える。

 冷や汗を垂らしている諏訪子が、神奈子に聞く。

 

「ねぇ神奈子。これってまさか……」

「おそらく、結界か何かが解けたのだろう。それにしても、これ程の力とは……」

「もしや、異変の黒幕!?」

 

 震えから立ち直った護が尋ねる。ようやく姿を現した『あのお方』と呼ばれる存在。これほどの力を持っているのなら、幻想郷を滅ぼすことも容易いだろう。だからこそ、倒さなければならない! 護は立ち上がった。

 

「おそらく、な」

「行かせてください、神奈子さま! そいつを倒さないと、この幻想郷は……!」

「分かっている。だがな護。お前一人でそいつに勝てるのか? 放たれた力だけでも強大だ。お前一人では確実に死ぬぞ」

「くっ……!」

 

 神奈子の言う事はもっともだ。護一人で挑んだところで、物を言わない肉塊にされるのは目に見えている。

 悔しそうに俯くのを見た諏訪子は、神奈子にアイコンタクトする。神奈子が黙って頷くと、諏訪子が提案した。

 

「それならさ、早苗や他の仲間たちと行けばいいよ」

「え? しかし、もし神社がモンスターに襲われたら……」

「私たちでもモンスターには立ち向かえるし、何より、一緒に戦ってきた仲間の方が心強いでしょ?」

「諏訪子様……。神奈子様も良いんですか?」

「止めたところで、お前達は行くのだろう? ならば、私たちとの約束はただ一つ。……二人とも生きて帰って来い」

 

「「はいっ!」」

 

 護と早苗は力強く返事をすると、博麗神社へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法の森では、白斗と魔理沙が戦う準備をしていた。

 

「よし! スペルカードも持ったし、これで準備オーケーだぜ!」

 

 魔理沙はミニ八卦炉をポケットに、スペルカードの束を懐に入れる。白斗は動きやすいように、外の世界で着ていた服に着替えていた。

 

「白斗、そろそろ霊夢のところに行こうぜ」

「ああ。だがその前に……」

「え? どうし……!?」

 

 白斗は魔理沙を思いっきり抱きしめた。いつもよりも力強く、まるで二度と離さないと言わんばかりに。

 

「魔理沙、約束だ! 俺は絶対に生きてやる! だからお前も死ぬんじゃねえ!」

「白斗……。あぁ! 約束だぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅魔館。影夜はナイフを研いでいた。研ぎ終わったナイフを見つめると、刃に自分の顔が映った。

 

「影夜さん……」

「小悪魔さん……」

 

 声がしたので振り返ると、小悪魔がいた。普段の司書服に加え、関節の部分にガントレットのようなものを着けていた。モンスターに対抗する為に、今の紅魔館は妖精メイドも武装している。小悪魔も、図書館を守るためにパチュリーと共に戦うことになったのだ。

 

「影夜さんは、ミラボレアスの討伐に行くんですよね?」

「はい。姉さんはお嬢様の護衛に、鈴姉さんは妖精部隊の指揮を任されているので、私一人なんですけどね」

「そうですか……」

 

 苦笑する影夜だが、小悪魔の方は俯いてしまう。会話が途切れてしまい、妖精たちによる慌ただしい音がやけにうるさく聞こえた。

 だが、何かを決心したのか、小悪魔は勢いよく顔を上げる。

 

「あ、あの! 言いたいことがあるんです」

「?」

「私は……私は、影夜さんのことが好きです!」

「小悪魔さん……」」

 

 小悪魔は、堂々と言った。前は影夜が寝てるときにしか(本当は起きていたが)言えなかったが、今ここで言っておかないと、もう二度とチャンスが来ないと思ったからだ。すると、小悪魔を暖かい何かが包んでいた。

 影夜が、小悪魔のことを抱きしめていた。

 

「か、影夜さん?」

「これが私の答えです、小悪魔さん。私も……貴女のことが好きです」

「かげ、やさぁん……」

「ふふっ、泣かないでください。私は絶対に、絶っ対に帰ってきます。だから小悪魔さんも……死なないでください」

「……はい!」

 

 迫ってくる決戦。この二人に幸運の女神は微笑むのか?それは神のみぞ知る。

 

 

 

 

 地底にある、ナナシの研究所。奥にある工房でナナシが歓声を上げた。

 

「やった! ついに……ついに完成した!」

「苦労の甲斐があったわね!」

 

 巨大な槍を前に、ナナシとパルスィは歓声を上げる。これこそナナシが作った切り札・・・撃龍槍(げきりゅうそう)である。

 

「あとは、これをスペルカードに収納して、と……」

 

 何も描かれていないカードに、撃龍槍を収納する。さすがに巨大な槍を持ち運ぶには無理がある。一時的にカードに収納することにしたのだ。

 

「ナナシと一緒に行けるほどの実力じゃないのが妬ましい。いえ、これは……悔しいわね」

「そんなこと無いよ。パルスィは僕の手助けをいっぱいやってくれたじゃないか」

「そうだけど……」

 

 ミラボレアスとの戦いに、ナナシの存在は必要不可欠だった。しかしパルスィは旧都の守護のほうを任せられた。いつもナナシは無茶ばかりするので、今回も無茶するのではないかと心配していた。

 

「大丈夫。僕はもう無茶はしない。絶対に帰ってくるよ。約束する」

「ナナシ……」

 

 優しく言うナナシ。その話し方は、何か悩み事をしてイラついてる時にパルスィがやっていた話し方だ。パルスィの心が少しずつ暖かくなる。

 

「じゃあ行って来るね」

「行ってらっしゃい。……帰ってきたら、ナナシの大好物を作ってあげる。約束よ!」

「うん!」

 

 二人は指きりげんまんをする。その後、ナナシは博麗神社へと向かっていった。

 

 

 

 

「みんな来たわね」

 

 場所は博麗神社。そこには護と早苗、白斗と魔理沙、影夜、ナナシ、リオと霊夢がいた。

 ミラボレアスに挑む8人に話しかけるのは紫。彼女は強い力を辿って、ミラボレアスの居場所を見つけたのだ。

 

「今からスキマを開いて、ミラボレアスがいる城へ送るわ。私はこの博麗大結界を維持する。……あなた達が頼りよ」

 

 紫が真剣な顔に、護や霊夢たちもうなずく。

 

「いよいよだな……」

「あぁ……。終わらせてやるぜ!」

 

 護と白斗は意気込む。一方で影夜とナナシは黙っていた。それぞれ、想い人のことを思っていた。

 

「(小悪魔さん……絶対に帰ってきます)」

「(パルスィ、僕は君のことが……。いや、帰ったら言おう。その為にも勝たないと!)」

「さぁ、スキマを開くわよ!」

 

 大きなスキマが開かれる。その中に浮かぶ大量の目玉はやはり不気味だ。これを通れば、最終決戦が始まる。

 霊夢が護たちの前に立って、お払い棒を高く掲げる。

 

「多分、今までに無い大きな戦いになるわ。それでも……絶対に勝つわよ!」

『『『おうっ!!』』』

 

 全員、強い意志を目に宿してスキマへと飛び込んでいった。

 

「みんな……。幻想郷を、頼むわよ」

 

 スキマが閉じた後、紫は全員の無事を祈りながら、結界を強化する作業に入った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。