口調はカリスマ溢れる感じにしてみましたが、どうでしょうか?
2017年11月26日 大規模編集
この日の幻想郷の天気は雨。私、レミリア・スカーレットの気持ちを一言で表すなら「退屈」だ。
前みたいに派手な戦争でもやってみたいが、そんな物は今となっては愚の骨頂。仮にやったとしても管理者の八雲紫によって消される可能性もある。
パチュリーの図書館にも行ってみたのだが、大半が魔導書。魔女にしか読めないものもあったりした。
最近拾ったばかりの咲夜も、今はお茶の準備をして忙しいだろう。私のわがままに付き合わせるわけにもいかない。
時計を眺めながら咲夜が運んでくるお茶を待っていると、美鈴が慌てた様子で私の部屋に入ってきた。
「お、お嬢様! 失礼します!」
「……ノックをしてから入りなさい。それと身体も濡れたままよ」
「も、申し訳ありません! ですが、緊急事態です!」
「……何があったの?」
「人間の子供が門前で倒れてたんです! それも傷だらけで!」
「それで? その子供は?」
「今は私の部屋で寝かせています!」
「連れて行きなさい」
何故だか分からないが、私はその子供がとても気になった。
途中で救急箱を持った咲夜と出会い、一緒にその部屋へ向かう。部屋の前に着くと、咲夜がノックする。
「失礼します」
「っ!?」
その子供は男のようだ。入ってきた我々を見て少しビクビクしている。それもそうだろう。私は吸血鬼。背中にはコウモリの翼が生えているのだから。
ふと、違和感を感じた。さっきまで黒目だった少年の目が赤く光っている。そして腕には……っ!?
「ガァァァァァァァァァァ!!」
「っ! 美鈴、咲夜!」
「「はいっ!」」
腕に現れた刃のようなものを振り下ろそうとする。美鈴がそれを受け止めると少年は蹴りを出してきた。だが、それを咲夜が後ろから押さえる。
よく見ると、少年の腕や足には痣や切り傷があった。そして僅かに他人の匂いも感じる。
……この子はおそらく、人間に迫害されたのだろう。何があったかは分からないが、今は人間不信に陥っている。
「落ち着いて……。大丈夫……」
「ガァッ!」
咲夜がそっと抱きしめるが、少年は肩に噛み付く。彼の噛む力が強いのか、咲夜の肩には血が滲んでいた。相当痛いはずだが咲夜は少年を撫でる。
「グルルルル……!」
「大丈夫よ……大丈夫……。私たちはあなたを痛くしないわ」
「そうですよ~。みんな、私たちの味方ですから」
「グッ……ウゥ……うぅぅぅ……!」
咲夜と美鈴が、前後で抱きしめて頭を撫でる。段々と落ち着いてきたのか力が弱まり、目に涙を浮かばせながら眠っていった。
「……よし」
私はあることを決めた。
少年を寝かせたあと、私はあることを二人に告げる。
「あの子を紅魔館の一員にするわ」
「お嬢様が決めたことならば、この十六夜咲夜、従います」
「私も同じです」
そこで私は、ある問題を口にした。
「問題はあの子の名前を何にするか。そして世話係は誰がするかを決めなくてはならないわね」
「そうですねぇ……」
美鈴は門番で忙しい。それに少年が、仕事時間に平気で居眠りする彼女を手本にしてしまったらマズイだろう。
パチュリーは言うまでも無い。読書にふけって世話どころではない。逆に魔法の実験台にしそうだ。
妹のフランドールは危険すぎる。自ら地下に入ったとはいえ、いつ狂気が暴走するか分からない。それにまだ力加減も彼女にとっては難しいから、あの子を殺しかねない。
私は……人間の世話をしたことが無い。咲夜の時は美鈴に任せきりだったし、私は「こういう風にすれば良い」くらいしか出来ない(今思えば、咲夜がメイド長になってから美鈴の居眠りが始まった気がする)。
ならば……もう決定ね。
「咲夜、あなたに最大の仕事を与えるわ」
「まさか、あの子の世話係ですか!?」
「その通りよ。妖精メイドの世話も出来てるのだから、あなたは出来るわ」
「妖精メイドとは訳が違うと思うのですが……。はぁ、分かりました」
「次は名前ですね……」
そうだ。あの子の名前を私は知らない。それに、苦しい過去から救い出す為にも新しい名前で一新させた方がいいだろう。
「それにしてもあの子、速かったですね~。まるで影が動いてるようでしたよ」
「暗闇で戦うとなれば強いんじゃないかしら?」
影……? 今の時間は夜……。世話係は咲夜で、苗字は十六夜……。
「十六夜影夜……」
「「えっ?」」
「あの子の名前よ。十六夜は世話係である咲夜の苗字から。そして名前は、夜に強さを発揮する影」
「なるほど~」
「影夜……ふふっ。まるで弟が出来たみたいです」
決めた。あの子の名前は十六夜影夜。新しい紅魔館の一員の誕生だ。
「あなたに新しい名前を与えようかと思うの」
「………………」
「あなたの名前は、十六夜影夜。良いかしら?」
「……はい」
私は驚いた。初めて声を発したのだ。そしてその目には、紅魔館で生きていく覚悟があった。
「私の名前はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主よ」
「あなたの世話係を務めることになった十六夜咲夜。家族のように接してちょうだい」
「門番の紅美鈴。よろしく~」
「あと、ここにはいないけど、魔女のパチュリーとか妹のフランがいるわ」
少年、いや影夜は目をパチクリとさせていた。どうしたのだろうか?
「どうして……化け物の僕に…………こんなに優しくしてくれるんですか?」
はぁ、と私たちは呆れてしまう。この世界には異形と呼べるようなものがごまんといる。私たちを見た程度で驚いているようじゃまだまだね。
「あなたね……あなたの力で化け物と呼ぶなら、私たちは何なのよ?」
「うぅ……」
「今日からあなたは、私たちの仲間。家族でもあるわ」
「……懐かしい夢だったわ」
どうやら私は、心地よい空気に誘われて眠っていたようだ。
それにしても、影夜が仲間になってから色々なことがあった。咲夜と美鈴がブラコンに目覚めたり、パチェが小悪魔を召喚したり、紅霧異変を起こして紅魔館のメンバーで霊夢たちを迎撃したり……。
ここ最近は、龍による異変や騒動が多かったりするが、平和ボケするよりはいささか刺激的な日々だ。
「お嬢様、クッキーをお持ちしました」
「ありがとう影夜」
影夜は基本的にはフランやパチェに紅茶を淹れる担当だが、咲夜が忙しいときは私にも淹れてくれたりする。最初はドジばかり起こしていたのに、今は中々の腕前だ。咲夜にはまだ遠いが。
「気持ち良さそうに眠っていましたが、良い夢でも見ていたのですか?」
「ええ。ちょっと懐かしい夢を、ね」
「そうですか」
……ふむ。ちょこっとからかってみようかしら?
「影夜、あなたも好きな人を作ってみたらどうかしら? 小悪魔とか咲夜、美鈴とか」
「っ!? な、何をおっしゃってるんですか!?」
「クスクス……冗談よ」
本当、影夜は突然の事になると慌てる。時々見せるその表情が面白くてたまらない。
……本当に、この子を手に入れて良かったと思うわ。