「GuruAaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
龍の姿であるボレアスが大きな咆哮をあげる。それだけで空気が震え、霊夢たちは耳を塞いで目を閉じた。ゆっくりと目を開けると、彼が人の姿に戻っていた。髪は燃えるような橙色で、瞳は黄色く輝いている。
「身体が熱い……。だが不快ではないな。むしろ心地良いくらいだ」
「じゃあその心地よさを、苦痛に変えさせてやりますよ!」
影夜は一瞬でボレアスに詰め寄り、ブレードで切り裂こうとする。
しかし影夜が次に感じたのは、自身の皮膚が焼かれたことによる痛さだった。
「あああぁぁぁぁ!?」
「おぉ……素晴らしい! これほどの力とは!」
ボレアスの拳から炎が放たれている。影夜は、彼が拳を振るうのを見ることが出来なかった。否、見えなかった。
モンスター能力者は、能力を発動する際、強大な力と引き換えにモンスターの苦手とする属性も反映される。ナルガクルガの弱点は雷だが、体毛も関係してるのか炎も苦手な属性なのだ。
「霊夢、畳み掛けるぞ!」
「分かったわ!」
リオと霊夢が飛びながら弾幕を展開し、ボレアスへと近づく。
一方のボレアスは、右腕を大きく振るった。すると青白い衝撃波がリオたちを襲った。
「がぁぁぁぁ!」
「ぐぅぅぅ!」
「良いぞ……良いぞ! この力さえあれば我らモンスターの繁栄は可能となる! はっはっはっはっはっはっは!」
大きく翼を広げ、空へと飛ぶボレアス。そして再び人差し指を空へ向ける。
「まさか、また隕石を落とすつもりですか!?」
「拙いわね……。この状況だと、私の結界でも耐え切れないわ」
「だったら、俺が止めてやる!」
「リ、リオ!? 待ちなさい!」
霊夢がリオを止めようとするが、リオは大きな翼を広げて、ボレアスへと向かってしまった。
「(能力かどうかは分からないが、恐らくあの隕石は創られた物。ボレアスを怯ませれば、暴発して逆にチャンスが作れるかもしれない)」
緑桜剣を構え、力を注入していくリオ。緑桜剣に再び炎が宿る。そして斬りつけた!
「っ!」
「どうだ!?」
「…………フンッ!」
「なっ…………ぐああああああ!」
渾身の一撃もむなしく、リオは地面に思いっきり叩きつけられた。バゴォン!という音が、衝撃の強さを思い知らせる。
「リオ! リオぉ!」
「(霊夢、すまねぇ。お前の忠告を聞いていれば……)」
涙目になりながら駆け寄る霊夢に、心の中で謝罪しながら、リオは意識を落としていった。
「あ……あぁ…………」
ナナシがやられた。ナナシだけではない。護や白斗といったモンスター能力者やリオ、魔理沙や早苗までやられた。
残っているのは霊夢だけ。
「……無理よ。あんなのに……あんな龍になんて勝てない………………」
霊夢の心は限界だった。ボレアスから放たれる殺気。そして、見せ付けられる圧倒的な力。それらが霊夢の心をへし折るには、十分過ぎた。
「ふん。素晴らしい瞳をしていたというのに、これでは失望だな」
指先で火球を作り、霊夢に放とうとするボレアス。もう駄目だと悟った霊夢は、ゆっくりと目を閉じる。
「諦めてるんじゃないぜ、霊夢!」
「ば、馬鹿な!」
霊夢は目の前の光景が信じられなかった。いや、ボレアスですら驚いている。なぜなら、倒れたはずの護たちが勇ましく立ち上がっていたからだ。
「な、なんで……?」
「へへっ。あいつが怪我を治してくれたんだ」
魔理沙が指を指すところには、一人の青年がいた。
歳は、見た感じは護たちと同じくらいに見える。しかし背は小さい。白髪に赤目の青年は、影夜とリオに何かを撃ち込んでいる。
何かを撃ちこまれたリオは、ゆっくりと目を開けた。
「ぐっ……何だ? 傷が癒えていく……?」
「目が覚めた?」
「……おい、嘘だろ。お前まさか……」
「えへへっ! 僕ことナナシ、ここに復活!」
青年ことナナシは、ニカッと笑っていた。