東方竜人帳   作:G大佐

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2017年11月26日 大規模編集


決戦!ミラボレアス(5)

「う、うぅん……」

 

 ナナシは、体の痛さで目を覚ました。しかし、目の前は真っ暗で何も見えない。

 状況を知るために身体を起こそうとするが、さっきからゴツゴツしたものが当たっていることに気がついた。

 

「……あれ ?もしかしてここって瓦礫の中!?」

 

 瓦礫に埋もれたにもかかわらず無事なのは、攻撃を受けた時に咄嗟に身体を防具で覆っていたからだろう。身体の傷はかなり少ない。

 しかし、よっぽど衝撃が強かったのか、結構長い間気を失っていたようだ。

 

「それにしても熱いな……。早く抜け出さないと蒸し焼きになっちゃうよ」

 

 妖怪である彼は、普通の人間に比べて力が強い。燃えている瓦礫に苦労しながらも、なんとか自力で脱出した。

 

「あれ?」

 

 瓦礫から抜け出して立ち上がったのだが、やけに自分の視線が高くなってることに気付く。それに、自分の中にある妖力もかなり溢れてる感じがする。

 

「もしかして、背が伸びてる!?」

 

 何故背が伸びているのか? それはナナシには分からない。ただ、妖力が大きくなっていることから、それが関係してるのだろう。何気に低身長がコンプレックスだった彼は、飛び跳ねたい気持ちになる。

 しかし、周りの状況がそれを許さない。仲間達が傷付いているのに気がついたナナシは、急いで護たちのもとへ走る。

 

「護!」

「お前……ナナシか? なんか、背が伸びてるような……」

「そんなことは良いから!『回復弾』!」

 

 緑色の光弾を、護と早苗に撃ち込む。最初は驚いた二人だったが、すぐに傷が癒えていることに気がついた。

 

「傷が塞がっていきます……!」

「僕は、白斗やリオの傷を癒してくる。急いで霊夢たちを!」

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

 護たちはボレアスの前に立ちはだかる。一方でボレアスは歯軋りをしていた。

 

「おのれぇ……。しぶとい奴らめ!」

 

 左手を前にかざし、黒色の光線を放つ。太いその光線は、真っ直ぐ護たちへと向かう!

 

「散開だ!」

 

 護の指示で横へ飛んだり、空を飛んだりして避ける。そのまま全員は攻撃に移った。

 

「投げ飛ばしてくれたお礼だぜ!」

 

 白斗が、ティガレックスの怪力で瓦礫を投げ飛ばす。当然、ボレアスは片腕で身を守る。その隙を突いて、魔理沙が『マスタースパーク』を、霊夢が『夢想封印』を放つ。

 

「ぐああぁぁぁ!?」

「俺たちも……」

「忘れてもらっちゃ……」

「困るぜ!」

 

 護が殴り、影夜とリオが斬りかかる。さらに、後ろから早苗がボレアスを狙い打つ!

 

「『グレイソーマタージ』!」

 

 復活した護たちに一方的にやられるボレアス。当然、彼も黙ってやられるわけではない。翼を羽ばたかせて護たちを吹き飛ばし、拳を大きく振り上げる。

 その様子を見ていた霊夢と早苗は、顔を引き攣らせた。

 

「まだ終わらん!」

「え? ちょっと……」

「まさか……!?」

 

「そぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 勢いよく拳を振り下ろすと、地面はどんどんヒビ割れていく。そして……城は崩壊した。

 

「なぁぁぁ!?」

「嘘だろぉぉぉ!?」

 

 信じられない行動に全員が驚きながら、まっさかさまに落ちていった。

 

 

 

 

 護たちは、最初こそ落ちていたものの、途中から体勢を整えて、無事に着地する事が出来た。

 

「ここまでしぶとく生きる人間は初めてだ……」

「随分とボロボロだな」

「お前達の攻撃でな……。だからこそ、これで終わりだ!」

 

 ボレアスが指を鳴らすと、大きな地震が護たちを襲う。

 すると、ドバァッ!という音と共に溶岩が噴き出した。その溶岩はカーテン状に広がり、護たちを逃がさないようにする。

 

「なっ……!」

「熱い! じ、地面が熱くなってます!」

 

 あまりにも馬鹿げた現象に、驚きの連続である。さらに、そこから追い討ちをかけるように、地面から焼けるような熱さが迫る。

 

「貴様らは逃げられまい! これが最終ラウンドだ!」

 

 

 

 

 

 護は、グラビモスの体重を利用したパンチをくらわせる。

 

「でりゃぁぁぁ!」

「甘い!」

 

 ボレアスは、炎を纏わせた拳で殴り飛ばそうとする。だが護は、右腕を鎧化してパンチを相殺した。

 

「相殺からの……『マスターファイアー』!」

「私の甲殻は溶岩すら防ぐのを忘れたか!」

 

 護の熱線は防がれる。防ぐと同時に足元から衝撃波を放って護を吹き飛ばす。すぐに鎧化したからか大きく吹き飛ばなかった。すると、護を踏み台にして一つの影が飛び掛った。

 

「『神の風』!」

「ぬっ!? ぐあぁぁぁぁああ!」

 

 ボレアスの頭上から、緑や青の光弾が滝のように放たれる! 早苗がスペルカードを唱えたからだ。ボレアスは早苗に狙いを定めて、火炎弾を放つ。

 

「消し炭になれ!」

「お断りです!」

 

 結界を張って攻撃を防ぐも、火炎弾が爆発した衝撃で、早苗は大きく吹き飛んだ。護はすぐに飛んで早苗を受け止める。

 そこから入れ替わるように、影夜と白斗が間合いをつめる!

 

「良いですか、白斗さん! 行きますよ!」

「了解! やるべきことはただ一つ……」

「「ただひたすらにぶった斬る!」」

「ぐうっ!?」

 

 両腕のブレードを双剣のように振るう影夜と、ティガレックスの爪で斬りかかる白斗。

 二人は、『生きて帰る』という思いを胸に、ただ腕を振るい続けた。

 

 

 

 

「霊夢、仕掛けるぞ!」

「分かったわ!」

 

 魔理沙と霊夢は、空からの攻撃を始めた。魔理沙が『マスタースパーク』を、霊夢は『夢想封印』を放つ。

 

「やっぱ、私たちはこれがお似合いだよな!」

「全くね。さぁ、まだ倒れる気配は無いのかしら?」

 

 ボレアスは、回し蹴りをして白斗と影夜を攻める。そこから入れ替わるようにリオが、緑桜剣で斬りかかった。

 

「その刀は無駄だというのが、まだ分からんか!」

「……貴様、レイアの事を無駄と言ったな? よし決めた。貴様はぶち殺し確定だ。行くぞ、レイア」

《え!? う、うん!》

 

 リオはキレた。今までよりも速いペースで、剣に力を溜めていく。

 

「地面に這い蹲りな! 『飛竜炎斬』!」

「ぬっ! 何という威力……!」

 

 炎の斬撃波に耐えようとするボレアス。そこへ、霊夢と魔理沙が急降下してくる。

 

「吹き飛ばしてくれた……」

「お礼だぜ!」

 

 二人はボレアスに体当たりをする。その衝撃でバランスを崩し、地面へと倒れる。

 

「なら私は、その数十倍にして返してくれよう!」

 

 ボレアスは地面に拳を打ちつける。すると、リオたちを目標に大量の火山弾が降ってきた。

 

「はぁぁ!? 火山が無いのに火山弾なんてアリか!?」

「おっとと! う、うわぁ!」

 

 火山弾を必死に避ける3人。しかし、着弾した爆風で、魔理沙が吹き飛びそうになった。

 

「魔理沙!」

 

 霊夢は急いで魔理沙を抱きかかえる。しかし勢いは止まらずに、ゴロゴロと転がっていった。

 

「おい霊夢、大丈夫か!?」

「これが大丈夫そうに見える?」

「死んでないから大丈夫だな」

 

 すると、ナナシが走ってきた。

 

「霊夢! リオ!」

「ナナシか。今まで何やってたんだよ」

「ごめん。ある物を使おうとしててね」

 

 そう言って、スペルカードを見せる。そこには巨大な槍が描かれていた。それを見たリオは、顔を引き攣らせる。

 

「おいおい、まさかそれって……」

「そう、僕と地底のみんなで開発した兵器。これなら倒せると思う。でも……」

「でも?」

「これを発動するには、膨大な魔力や霊力が必要なんだ! みんなを集めて!」

「よっしゃ!任せろ!」

 

 リオと霊夢、魔理沙は走って、護たちへと急ぐ。

 

「ぐっ! うぅ……」

 

 護は必死でボレアスの攻撃を避けながら、それでも時折、小さな熱線を放っていた。しかし、体力ももう限界。防御が崩れるのも時間の問題だ。

 

「護、力を貸してくれ!」

「リオか。何があった? 今はそれどころじゃないんだが……」

「この状況を打破できるものだとしたら?」

「……詳しく話せ。その『打破できるもの』まで案内しながらな」

 

 ニヤリと、護とリオは笑いあった。

 

 

 

 

 

「(なんだ? なぜこの人間たちは、私から離れていく?)」

 

 ボレアスは不審に思っていた。さっきまで肉弾戦を繰り広げていたはずなのに、何故か護たちは離れていく。

 本能が告げている。「奴らは何かをするつもりだ」と。

 

「そうはさせるか!」

 

 黒い光線を放つ。その瞬間、護たちは一斉に振り返り、スペルカードを放つ!

 

「『マスターファイアー』!」

「『海の割れる日』!」

「『音壊の波紋』!」

「『マスタースパーク』!」

「『夢想封印』!」

「『飛竜炎斬』!」

 

 明らかにオーバーキルとでも言うべき、スペルカードの嵐。大量のレーザーと光弾、斬撃波によって光線は押し返される。

 結果、光線は暴発し、ボレアスは大きく怯んだ。その隙に、護たちはナナシへと走る。

 

「待たせたな! 全員、ここに集合だ!」

「OK! それじゃあいくよ!」

 

 ナナシがスペルカードを掲げる。だが、当然ナナシの妖力だけでは足りない。護たちがナナシに手をかざす。

 

「ぐっ、うぅ……!」

「よっと。手伝うぜ」

「護……」

「いよいよですね。白斗さん」

「あぁ。これで決着だ」

「魔理沙さん。私、護さんと出会えて本当に良かったです」

「そうだな。私も白斗と出会えて良かったと思うぜ。そしてこれからも……」

「はいはい。何気なく惚気るんじゃないわよ、早苗に魔理沙」

「そう言うなって霊夢。こうやって、改めて仲間のよさを実感できたワケだからな」

 

 様々なことを言いながら、スペルカードに力を注ぐ護たち。

 ボレアスも身体に炎を、拳には自分の内からあふれる力を纏わせて構える。その覚悟はかなり強いのか、ボレアスの手は青白く光っていた。

 護たちは構える。ボレアスは走る。

 

「「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」

「これで・・・・」

 

 

「終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッ…………ハッ…………………」

 

 ボレアスは大きく目を見開く。口からは血が流れ、腹に突き刺さってる槍は、もしも抜こうものなら風が吹き抜ける穴が出来上がるだろう。

 

 ボレアスの攻撃よりも、撃竜槍の発動が早かった。

 

 ボレアスは護たちを見る。全員の目は闘志に満ちていて、なぜか不快には感じなかった。彼は護に問いかけた。

 

「……なぜお前たちは戦う? そのモンスターの力は人が恐れるもの……。人間が憎くないのか……?」

「……もう、そんな事はどうでも良いんだ」

 

 護は早苗を抱き寄せる。

 

「俺がこうして戦ったのは、最愛の人と暮らせる場所を失いたくないからだ。住処を失いたくないのは、お前も一緒だろう?」

「っ! ……ふふ、そうか。なるほどな……」

 

 ボレアスはゆっくりと瞼を閉じる。

 

「お前たちのような人間に会えたのが、これが最初で最後とは……。悲しいものだよ……」

 

 そして、ボレアスは息をしなくなった。

 

 

 こうして、最大の敵・ミラボレアスとの戦いに、幕が下りたのだった。

 

 

 

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