愉快な吸血鬼っ娘は可愛い眷属たちとイチャつきたい   作:エヘ狂信者の猫

15 / 20
第14話【引っ越し年越し雨はユキ】

 

 街で村で様々な依頼をこなしたこの年末。

 ……仕事納め? ボーネン会? 知らんなっ!

 

 そんなこんなで集まりました30000gp! もう貧乏吸血鬼とは言わせない!

 

「……正直、その程度で貧乏脱却は……いえ、何でもございません」

 

「……おっほん、そんなことより。こんな大金で何を買うのか、気にならないかぁ? 気になるよなぁ? 仕方ない、教えてあげよう!」

 

 まだ何も言ってない、とでも言いたげな抗議の視線を感じるが気にしない気にしない。

 

 王都パルミアから出て少し、厳格な雰囲気が漂うこの場所はパルミア大使館。

 

「パルミア大使館……確か、税金を納める場所でしたか。……でも、まだ我が主は納税義務ありませんよね? 国から認知されてませんし」

 

「うぐっ……それ若干気にしてるのに……。ま、まあ……確かに我、全然名声ないし冒険者としてまだまだだけど……って!? 違くてだなぁ!?」

 

「納税目的ではない、ということですか」

 

 眷属の所為で出鼻はくじかれたが、気を取り直して白銀の大使館を突き進む。

 

 ここ大使館は、税務の他にも権利書や家具の販売なども行っている。

 権利書を購入すれば、土地や家屋を得ることができる。そして、家を手に入れれば必要になるのが家具である。

 ……商魂たくましいなあ……。

 

「商魂、なんですかね……? ここ大使館ですよ?」

 

「国ぐるみの陰謀を感じるな!」

 

「………………」

 

 ……なんか、職員から白い目で見られた気がする……。ひどい。

 

「自業自得です」

 

 そうこうしてるうちに、目的地に着く。

 ここは権利販売所。個室には職員が数名、デスクが一つ。

 デスクに座る一人の可愛らしい女性職員が、我を見るとニコりと微笑みかける。

 

「ようこそパルミア大使館へ♪ 本日はどういたしましたか?」

 

「……ふっ、とても可愛らしいアナタと暮らす愛の巣を――ぐぇっ」

 

 ……職員のお姉さんを口説こうとしたら眷属に横腹ずつかれた。痛い。

 

「…………だ、大丈夫ですか……?」

 

「……ハハハ、気にしないでくれ……」

 

 ほらー、お姉さん引いちゃったじゃん! おのれ眷属め……!

 

「我が主の言動の所為でしょう」

 

 あいも変わらずな眷属コウモリを横目に話を続ける。

 

「……えっと、それで。一番安い家を買いたいのだが……」

 

「一番お手頃な価格の物件権利書ですね、かしこまりました。少々お待ち下さい!」

 

 ゴソゴソと箱を漁り権利書の束を取り出すお姉さん。

 ……そう、我がこの大金で買うのはわが家の権利書!

 ……一番安いものなのは、仕方ないだろう……? 駆け出し冒険者なんだから……それに、仮住居だし……。

 

「……はい、お待たせ致しました。こちらの物件の権利書ですね、森のほったて小屋です」

 

 森のほったて小屋。ふむ、小屋サイズではあるがかなりお手頃な物件という訳か。

 

「名前には森と入っていますが、そういったコンセプトというだけで森以外のどこにでも建てられる住宅となっております」

 

 森以外でも建てられるのなら、雨雲対策にも使えるな……!

 

「……で、お値段は……?」

 

「はい、27000gpとなります」

 

「買った!!」

 

 予算範囲内ならオールオッケー! 即金一括払いで権利書を購入!

 あとは、建てたい場所で権利書を読めばいつの間にか新居ができてるという寸法だ!

 

「……土地の管理とかなされてるのですかね……? そんなホイホイと建てられるなんて」

 

 ……まあ、ネフィアが出たり消えたりしてるんだし、管理しきれてないんじゃないかなあ……。

 でもそのお陰で、我は恩恵を受けられるのだから、ずさんな管理体制万歳。

 

「お買い上げありがとうございました〜♪」

 

 見送るお姉さんの声を聞きながら、部屋を後にする。

 

「……それでは早速、建設予定地へと向かいますか?」

 

「うむ、そうだな……! …………あっ、ちょっと待て」

 

「……はい? どうかしましたか」

 

 ついでに買っておきたい物があったのを思い出し、大使館を出ようとするその足を止めた。

 

「ちょっと買い物があるから先外に出ててくれ! んじゃ、行ってくる!」

 

「あっちょっとっ……すぐ戻ってきてくださいねー」

 

 我が眷属に心を読まれる前に、そそくさと家具屋へ向かう。

 ……ふふっ、これが無いといけないもんなあ。約束は、ちゃーんと守らきゃなっ♪

 

 アイツとの約束に胸を弾ませ、我は目当てのモノを抱え店員に話しかけるのであった――。

 

 

「はーい! それではこれより、チョー天才ウルチヤ様のパーペキ雨雲対策講座はっじまーるよ!」

 

「わぁい」

 

 気の抜けた眷属の掛け声が新居に響く。

 

 そう、ここは新たなわが家! 雪原に佇む、森のほったて小屋である!

 

「……それにしても、かなり辺境の地に引っ越しましたね。ここはルミエストとノイエルの中間ほど。決してアクセスの良い場所とは……」

 

 至極当然のことを言う我が眷属。まあ、確かにこの地はたしかに辺境ではあるが……。

 

 でも、水の都で魔法の国であるルミエストに雪の街ノイエル、強力なアイテムを造っているというミラル・ガロクの工房、果てにはルミエスト墓所まであるのだぞ!

 色んな所の丁度中間くらいにあるから、どこにも行きやすいというメリットがあってだなぁ……。

 

「どこにも行きやすいというより、どこに行くにも時間が掛かるでは無いでしょうか……。……墓所に至っては、行くメリットも無いですし」

 

「うぐっ……」

 

 眷属に痛い所を突かれてしまった……。

 もう少し甘口にしても良いんじゃないかなぁ?

 

「……そ、そんなことはどうでも良い! それよりも、我の雨雲対策講座を聞くのだ!」

 

「……雨雲対策ですか。この土地への突然の引っ越し、それが雨雲対策なのですよね?」

 

「うむ、その通り! あの忌々しき自動追尾型雨雲を無力化する、とっておきの策がこれなのだ!」

 

 エーテル病によって出現したあの雨雲の所為でどれだけ我が辛酸を舐められたか……!

 だが、我が天才頭脳にかかれば無効化など容易いのだ……!

 

「……この土地ならば、雨雲を無効化できるのですか……。ふむ……この土地、この地帯の特徴がカギという訳ですね」

 

「わっかるっかなぁ〜? 眷属、わっかるっかなぁ〜?」

 

「…………この土地の特徴は年中雪が降りしきる、雪原ですね。大きな山が多いことが原因だとか。気圧や風、その他諸々の関係で気温が低く降雪量が多い……」

 

 ……あれっ、なんか真スルーされた……? かなしい……。

 ま、まあ。ちゃんと真剣に考えてくれてるだけだろうきっと。うん。

 

「……そして、雨雲。……例え、雨雲が引き寄せられたり、突如発生したりしても、この土地であれば水分は空中で冷やされることとなり、そしてそれは雪に……」

 

 ふっふっふ……分かってきたみたいだな?

 

「……一見すれば、雨を雪に変えた所で差異は少ないように思える。が、そもそも我が主が雨を嫌う理由は、雨が流水であるから……そう、流水」

 

「さあ、答え合わせと行こうじゃないか我が眷属よ!」

 

「……この気温の低い土地に自宅を置くことで、流水である雨から固形が降りしきる雪へと変化させる。それにより、流水を苦手とする我が主でも外出を可能にしこの雨雲を無効化する、という訳ですね我が主」

 

 さらさらと満点100点模範解答を述べる我が眷属。流石は我が眷属だな!!

 

「大正解だ! ふふっ、どうだ? パーフェクトに雨雲を無効化してやったぞ? 凄くない? すんごくない!?」

 

「……いや、ホントに……凄いですね我が主……。まさか、こんなにも見事にあの雨雲を無力にしてしまうとは……。これなら確かに、雨天時でも流水では無いので外出できますし、どんなに雨雲が追い掛けて来ようとも、帰還さえすれば無効化できる……お見事です……」

 

 ……あ、あれ……? なんか、思ってたよりガチな反応返されたぞ……?

 いつもなら、もう少しぞんざいな扱いされる所だろ……? 調子に乗らないでくださいとか……。

 

 えっ、なにその急な早口……キショい……。

 

「……いや、本当に凄いですよ我が主。正直言って私、あの絶望的な状況から脱せるなんて思ってませんでした……。あの我が主が、こんな完璧な対策を考え出すとは微塵も……本当に申し訳ありません……」

 

「おっ……おぅ……わ、分かればいいんだ分かれば……」

 

 ……ど、どうしよ、純粋に褒められると反応に困る……。

 ……というか我、こんなにも眷属から脳足りんだと思われていたのか……? い、いや……良いけどさ……なんか今回はたまたま上手くいっただけだし……。

 

「こんな策を思い付くとは流石は我が主です……! 今までの天才という自称は過言過剰では無かったのですね……!」

 

「あっうん。そうだよ、そうそう。……うん……」

 

 今まで見たことない程に目を輝かせ、我に対する尊敬を深める我が眷属に、どう接すれば分からなくなってしまった……。

 

 うぅ……嬉しいけどなんか居心地悪い……! というかキモい……! いつもの眷属に戻ってよぅ……!

 

「……しかし、本当によく思い付きましたね……。普段は行き当たりばったりで、策略とか対策とか全く得意じゃなさそうでしたのに……」

 

「……褒めてるのか貶してるのかどっちかにしろ……。……まあ、そうだな……今回の我は、本気で考えたからなあ……」

 

「……本気、ですか……? ……まあやっぱり、雨雲にストーカーされるのは死活問題ですからね……生存本能により脳が活性化したとかでしょうか……」

 

 ……なんか、難しくてトンチンカンな話をしてないか? このバカ眷属……。

 

「……お前、忘れたのか……? あの時、ちゃんと約束しただろう?」

 

 そう言って、大使館の家具屋でこっそり買った例の物を取り出す。

 

「…………約束って……、……あっ……」

 

「……言っただろう? この雨雲をどうにかできたら、二人で一緒に遊ぶって……。……だから我、必死になって、本気で考えたんだぞ……?」 

 

 眷属に内緒で買った物、それは二人用のボードゲームであった。

 それを眷属に見せながら、我が頑張った理由を正直に話すと――。

 

「――う、ウルチヤさまぁ!!」

 

「おわぁ!? 急に飛びつくなっ!?」

 

 我が眷属は、感極まったような声で我の胸に飛び掛かる。

 いやいや、そんな喜ぶことか……!?

 

「私、心を震わされました……我が主の、深い心を感じ、本当に……本当に……! ウルチヤ様は素晴らしい主ですね……!」

 

「メチャクチャになってないか言葉!? というかそんなキャラだったかっ!?」

 

 盛大にキャラ崩壊した眷属にどうすれば良いか分からず、ひとまず胸に埋まるコウモリをひと撫でしておく。

 ……うぅん……? よく分からないが、でもまあ……喜んで貰えたなら良かった……良かった……?

 

「ありがとうございます、我が主……。私の為に……自分の頭脳容量の限界を破ってまで……!」

 

「……ねえ……? やっぱりお前、我の頭脳バカにしてるだろ? なあ、お前なあ……!?」

 

「眷属の為ならば、己の限界を超え500%の能力を発揮できるとは……!! 主の鑑! 理想の主!!」

 

「普段の我の知能は1/5程度しか無いと!? どれだけ馬鹿にするんだ貴様!?」

 

「私、貴方様の眷属で良かったです……! 眷属である私の為に、深く想い考え行動してくれる……そんなウルチヤ様が我が主で、本当に良かったです……!」

 

 あわわわわ、どうなってんのこわいこわい。

 眷属が素直……! あの眷属が! アイツがめっちゃ素直!! こわい! 気持ち悪い!!

 

 …………で、でもまあ……? うれしくないワケじゃないけど……?

 

「……いや、でもやっぱ……違和感バリバリというか……お前こんなにチョロかったっけ……?」

 

「……正直、ハードルが低過ぎたみたいな所はありますかね……! でも、それはそれとして我が主好きです、どこまでも付いていきます」

 

 しれっとコクりやがったぞ。……いや、親愛の意味だろうけど。

 いや、それにしても盛大かつ壮大に壊れたなぁ……眷属バリバリ壊れちゃったなあ……。

 

「……ひとまず、一旦離れよ? 暑苦しいから。んで、ちょっと外出て頭冷やせ? そしたら一緒に遊んでやるから」

 

「分かりました。流石にこのテンションにも私疲れてきたので頭冷やして来ます……!」

 

 あっ、一応変になってる自覚はあったのね。

 

「言ってらっしゃ〜い」

 

 ……フラフラと熱に浮かされたまま羽ばたく眷属コウモリを見送りながら、ほうっと一息吐く。

 

「…………うぅむ……まさか、こんなに喜ばれるとは……我、愛しい眷属の為に全力で頑張っただけなんだけどなあ……」

 

 眷属の心というのは、よく分かんないものだなと一人ごちりながら、いつの間にか溜まっていた顔の熱をその手で覆い隠すのであった――。

 

 

「――はい、これで5勝〜! 我の勝ち越し〜!」

 

「くっ……もう1戦……!」

 

 新たな住居でボードゲームを囲み、雪降る夜に華を咲かせる主と眷属。

 

「……そういえば、そろそろ年を越す頃か?」

 

「ゲームに夢中になってましたが、確かにそろそろ0時ですね……」

 

 刻は大晦日。0時を過ぎれば、その年は終わりを迎え、新たな年がやって来る。

 

「……今年は、変化の年だったなあ……こっちに来たのは夏の終わりだったが、それでもこのノースティリスでの生活は濃厚だったな」

 

「遭難したり妹に襲われたり、雨に振られて熱を出して餓死をして……エーテル病に振り回されたり……」

 

「……おい、なんで嫌なことばかり挙げるんだお前」

 

「すみません、印象的で。不憫なウルチヤ様を見るのがすっかり日常になってしまったなあ……と」

 

 不憫とは何とも不服な評価だが……実際最近の我は不憫過ぎると思う……。

 もっとこう……冒険者ならばカッコよくクールになりたいのになあ……。

 

「……でも、来年は絶対に活躍してやる……! 成長しまくって、超絶カッコいい冒険者になってやるんだ……!」

 

「応援してますよ、我が主。ともに頑張りましょう……!」

 

「えへへ……そうだな! ……あ、あと来年こそ絶対カワイイ眷属を作るぞー!」

 

「ファイトです、我が主」

 

 微笑みとともに応援してくれる我が眷属コウモリを、そっと捕まえてやる。

 

「……えっと、何です」

 

「ふふん、安心しろ〜? カワイイ眷属たちができても、ちゃーんと! お前のこともいっぱい大事にするからな〜♪」

 

 わしゃわしゃーと、我が眷属の小さな身体を揉み撫でる。

 

「……別に、そんなこと、気にしてないですが…………でも、その……ありがとうございます……」

 

「素直じゃないな〜♪ ふふんっふ〜ん♪」

 

「……いえですから、別に気にしてないですからね……!?」

 

「ふふっ、分かってるって♪」

 

「本当に分かってますか……!?」

 

 わちゃわちゃとふざけあって、暖かな時間を過ごす二人。

 そうこうしてる内に、時刻は0時を迫り――。

 

 ――ゴーン……ゴーン……。

 

「……年、越したなあ……」

 

「……越しましたねぇ……」

 

 備え付けの時計の、0時を告げる音が一年の終わりと始まりを実感させた。

 

「……眷属よ」

 

「なんでしょうか、我が主?」

 

「……明けましておめでとう、今年も、来年も、ずーっとずっと、よろしくな……♪」

 

「……こちらこそ、よろしくお願いします……親愛なる永遠の、我が主ウルチヤ様」

 

 

 ――さあ、これより始まるは、我の新たなる時代……! カッコよくて最強の吸血鬼ウルチヤ様の、伝説の幕開けである……!

 恐れ、覚悟し、感激せよ! 我の覇道を、このノースティリスに刻み込んでやる!

 

 ……だから、見ててね。ボクは、我は……やるから――!

 

 ――新たなる年のその幕開けは、とっても暖かく希望に満ちた物であったと、我は確かにそう感じるのだった。

 

「ゆくぞ、新たな時代! 我の時代! 我こそは高貴なる夜の帝王ウルチヤ様であるっ!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。