愉快な吸血鬼っ娘は可愛い眷属たちとイチャつきたい 作:エヘ狂信者の猫
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「フハハ、さあ辿り着いたぞ! はじまりの街ヴェルニース!」
太陽の日射しを黒きマントに浴びながら、輝かしく高々に叫ぶ我が主。
周りの人間の奇異の目を気にもせず、我が物顔の主にひっそりと溜息をつく。
「どうした、せっかくの初街なんだぞ? もっとテンション上げないか!」
ウルチヤ様はテンションが高すぎなんですよ。少しは周りの人間のことも気にして下さい。
「ハッ、なぜ我が人間などに気を向けなければならん!」
常識が育たないからですよ。
「ぐっ……!?」
……もっとも、この街の人間は頭のおかしな冒険者など見慣れているのか、既にテンションの高い冒険者から別の物へと興味の対象を移したようだったが。
「むう、我を差し置いて別のことに気を移すとはなんて奴らだ、まったく」
……人間に気を向けないのでは?
「それは……あれだ。……あー、うー。……良いだろう別に!?」
我が主は頭の方が少々非常に残念であらせられる。このようなことも日常茶飯事だ。
「主をバカにするでないわ!?」
残念ながら純粋なる評価です。
やいのやいのと、騒ぎ立てる我が主。
現在私の存在は我が主と同化されている。
なので我が主は今、独りで居もしない誰かに話しかける気狂いと化しているのだが、それに自力で気付けるとは到底思えないのだった……。
「……おい、お前の思考は分かるのだからな? バカにするなと言っておろう……!? ……しかし、確かに今の我は控え目に言ってヤバい奴だな……」
少しシュンとしてしまった我が主。
……まあまあ、そもそも周りの人間はウルチヤ様のことをさほど見てないので大丈夫ですよ。
「それはそれで複雑だぞ……!?」
……それにしても、彼らは一体何に興味を向けているのだろうか。
少し気になり、耳をすましてみた。
「――異形の森の異端の民エレアは……――彼の地と彼らは災厄を齎す存在――」
何者かの演説。内容は……恐らく、批判と扇動といった所か?
政治家か何かだろうか。辺りの人間たちが聴き入っている辺り、かなり影響力を持つ人物であるように思える。
「――我らを襲う災厄、エーテルの風は彼の地が生み出している。異形の森、そして異端の民エレアの根絶こそが、我らの救いの道である!」
彼の主張に歓声を上げる住民たち。少々異様ではあるが、この主張こそが現在の、あるいは未来の主流となるのでは無いか。
それだけのカリスマ性を、私は彼の言葉に感じた。カリスマ性を持つ者には幾人か触れてきたが、彼は間違いなく世界を変える者の一人であろう。
「……けっ、つまらんつまらん」
どうやら、まだまだ磨かれ足りぬ我がカリスマには、つまらない話だったようだ。
何が気に入らなかったのですか?
「ボクを救ってくれたのはエレアだ……ボクの恩人たちを知りもしないでケチ付ける奴らは気に入らん」
あまりにも幼稚で、真っ直ぐな意見ですね。
「なにっ!?」
……まあ、悪くは無いと思いますよ。少なくとも私は、嫌いじゃないです。
「……えへ、そうか? ふふん、そうだろうそうだろう♪」
少しへそを直し、見るからに上機嫌になった我が主。……やはり、我が主はまだまだ"カワイイ"ですね。
「なんだ〜? 今日はえらく素直に褒めてくれるじゃないか、気持ち悪いぞ〜♪」
褒めたつもりは無いのですが、まあ良いでしょう。遠回しが通用しないのも、見方を変えれば我が主の良い所なので。
……それはそうと、何か行動を起こすつもりで?
彼は恐らく政治に長けた者。このままではあの主張は主流となり、やがて世界に爪痕を遺すことになりますよ?
「…………うーん、でも我、高貴な吸血鬼だから政治とか興味無いしなあ……そこら辺は人間同士勝手にやっててくれないかなあ」
……まあ、予想通りではありましたが……。
……いえ、文句はありませんよ。恐らく、ウルチヤ様ではどうにもできない問題でしょうし。
「……ふーむ、我がこの土地を支配したらワンチャン?」
貴方様の力では無理ですよ。
「んなっ!? 超絶強い夜王である我を愚弄するか!?」
武力の問題ではありません。政治力の問題です。ウルチヤ様に、政治能力はありませんでしょう。
「ぐぬぬ……確かに、お父様から政治に関しては習わなかったしなあ……興味無かったし……」
その貴方の父上である先代の主ですら、その結末は支配していた人間からの逆襲ですからね。
「……………………」
我が主の表情が曇る。
……申し訳ございません、失言でした。
「いや、いい。お父様はそうなって当然の主君であったからな」
……ウルチヤ様……。
「……まあ、いい! つまり我は人間を支配せず、人間どもの政治に干渉せず、愛しい眷属たちとで勝手に我が国を作れば良いということだろう? ならば、人間の愚かな争いは当事者である人間に任せようじゃないか。我は我の道を征くだけだ!」
……はい、何処までも着いて行きます、我が主。
眩しき未来の王の言葉を胸に刻み、私は我が主へと静かに敬意を表した。
「……それに、ボクはボクの恩人を信じているしね。彼らとは、また会う約束をしたからな!」
……必ず、また会えますよ。
「うむ、今から楽しみだ!」
そう言って純粋無垢な輝かしい笑顔を見せる我が主に、私は確かな幸福を感じるのであった。
◇
ムカつく演説男が去って暫く、ようやく人もはけた頃。
我は暖かな日差しを浴びながら炭鉱街を探索していた。
……あ、何故我が吸血鬼なのに太陽の元を歩けるのか、と疑問に思ったみたいだな?
フッフッフ……教えてやろう!
「……そう、我こそは夜を統べる帝王にして、太陽の元を歩む者! 選ばれし吸血鬼しか成れぬ太陽の克服者、デイウォーカーなのである!!」
「ママー、あれなーにー?」
「しっ、見ちゃいけません……」
……ふふふ、我を直視できないか人間よ!
…………いや、まあ……うん、……ちょっとつらい。
あー、孤独! こんな風に言われるのも、我が独りだからだろう……ああ、早くカワイイ眷属ちゃんたちが欲しいなあ……。
「ワンワンっ! ヘッヘッヘッ……」
そんなことを思っていたら、どこからともなく犬がやって来た。
「ウゥ、ワンッ! ワンッ!」
偉大なる吸血鬼の力を持ってすれば、動物の言葉を理解するなど容易いことだ。
……ふむ、どうやら我のことを生き別れたご主人様だと勘違いしてるらしい。
「キャンッキャンッ」
……しかし、我は犬を飼っていないので当然この子のご主人様では無い。
「すまないな、我はお前のご主人様では無いのだ。どこか別を当たってくれ」
可哀想だが、そう言ってワンちゃんに別れを告げた。
「クゥーン……」
「みゃーお、みゃーお」
……残念そうに去っていく犬とすれ違うようにして、今度は一匹の猫がやってきた。
「みゃー! みゃー!」
猫は可愛い。本当に可愛い。
あと、猫を膝の上に乗せ撫でながら部下と話をするって、めっちゃカッコいいよね。憧れる……。
「みゃん? みゃおにゃー!」
……しかし、この子もどうやら我をご主人様だと勘違いしているらしい。
……何だ、生き別れのご主人様がやけに多くないか……? なんか、あの犬もそうだが船がどうこうとか言ってるし……。
「うみみゃ……みゃー?」
確かに、我も船に乗ってたしその後漂流してしまったが……。我は残念ながら猫を飼っていない。つまりはこの子の探すご主人様では無いのだ。
「みゃう……」
そう言って別れを告げると、猫ちゃんは残念そうに去っていった……。
「がうがう!」
……そして、入れ替わるように立派で大きな熊がやって来た。
……いや、熊など飼っとらんわ!!
「がうがー! がうがー!」
全然違う!! 我は一切合切何があっても、お前のご主人様では無いわ!!
「がぅ…………」
熊はガックリと肩を落とし、残念そうに去っていった……。
……いや、何なのだ!? なぜこうも連続して、しかも犬や猫は分かるが熊までもが、生き別れのご主人様を探して我に話しかけてくるのだ……!?
……というか少なくともどこかに、熊を飼っている者が居たということだよな……。
こわ……。
「……あ、ご主人様!? 生きていたのですねご主人様!!」
……なんか、金髪少女が、聞き慣れた4回目の言葉を叫びながら我の元に走ってきた。
「ほんっとうに、心配したんですよ!? クイーン・セドナ号が沈んで、私は助かったけどご主人様は消息不明で……」
クイーン・セドナ号、我が乗っていた船だ。
「本当に良かった……さあ、私と共に行きましょう! 早く私をペットにして下さい!」
「ママーあれー」
「しっ、見ちゃいけません!」
……うわあ……うわあ……ちょっと待って欲しい……。
我に、人間をペットにする趣味など無いのだが……風評被害も甚だしい……。
「……あのぉ、すみません…………たぶん、人違いです…………」
「……そんな、今度こそご主人様だと思ったのに……!」
そう言って肩を落として、少女は去っていった。
……ホント、ホントに……何なのだ……? 怖いよ。
待って欲しい、ホントにやめてくれ……だって、これあれじゃん……ボクと同じ船に、人間をペットにしてる異常者が居たってことじゃん……。
あの船の中に、ボク以外の魔の者の気配なかったし……つまりは、幼気な少女をペットにしている人間が居たということで……。
「人間こわい……」
一人そう呟くと、目を覆い天を仰ぎ頭を抱えた。
「ねえ……」
そんなことをしていたら、いつの間にやら何者かの気配が現れ、呼び掛けられた。
「な、なんだ……ボクは君のご主人様では無いぞ……」
そう言いながら振り返ると、真っ赤な服と純粋な緑髪をした、ツインテールの幼女がそこに立っていた。
「……ああ、すまない。変なこと言ってしまったな……今のはちょっと忘れてくれ。で、我になんのようだお嬢ちゃん?」
「お姉ちゃん? お姉ちゃんは、私の生き別れのお姉ちゃん?」
……ご主人様では無く、今度はお姉ちゃんと来たか……。
「……いや、我はひとりっ子だぞ。うちの家は由緒正しき血筋だからな。しっかりと把握してあるし」
自称:妹にやんわりと否定の言葉を告げた。
「ううん、血の繋がりなんて関係無いよお姉ちゃん! お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなの」
血の繋がりの無い生き別れの妹とか他人では無いのか……?
「なんで妹にそんな酷いこと言うのお姉ちゃん! お姉ちゃん、妹の私が分からないの!? お姉ちゃん! お姉ちゃん? お姉ちゃん!?」
何度もお姉ちゃんを叫びながら、迫ってくる妹。
そんな異様な状態にも関わらず、周りは誰も見向きもしない。
……あれ、間違ってるのはボクの方なのか……!?
いやでも、絶対絶対ボクに妹なんていないしこんな奴知らないし……!?
「お姉ちゃん? お姉ちゃん! お姉ちゃーん! お姉ちゃん!? お姉ちゃん♪ お姉ちゃん! お姉ちゃーん? お姉ちゃーん♪」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!
絶対これヤバいって!? お関わり合いになっちゃいけない奴だ!?
「……お姉ちゃん……? ……ホントに、お姉ちゃんはお姉ちゃんじゃないの……?」
「さ……さっきからそういってるであろう……!? 早くあっち行ってくれ!?」
「……そんな…………」
ハッキリと拒絶を告げると、妹は肩をがっくり落とした。
……ああ、これで誤解は解けた……さっきの四人と同じように、帰ってくれるはz――。
「せっかくお姉ちゃんを見つけたと思ったのに!!」
突如として真っ赤な包丁を取り出した妹は、大声で叫びながら襲い掛かって来た。
「ビャアアーーーー!!! 怖いよぉぉーーーー!!?」
ボクは逃げた。そりゃもう、全力で逃げた。
恐怖でみっともなく泣き喚きながら、どこまでもどこまでも逃げた。
街の住民の可哀想なモノを見る目線と、迫りくる恐怖の妹の気配を背中に感じながら、ボクはヴェルニースを飛び出すのであった……。
◇
見慣れた洞窟が見えた辺りで、いつの間にか妹は消えていた。
「……はあ……はあ……何だったんだあの妹とやらは……こわい……めっちゃこわい……」
命からがら洞窟に逃げ帰り、息を落ち着かせながら呟く。
「…………もう、あの街入りたくない……こわいもん……分かんないもん……人間こわい……うぅ……」
涙目になりながら、地面に腰を落ち着かせる。
こんな洞窟が拠点なのか……と最初は思っていたが、今はとてつもない安心感を覚えている……。
「ありがとう洞窟……ボクのマイホーム……」
土汚れなんて気にせず、地面に寝転がり、我が家の暖かさを、優しさを、安心感を堪能する……。
「……ああ、我が家ってこんなにも……こんなにも安心できる場所だったn――」
『――いつでも見てるからね、お姉ちゃん!』
「――あびゃっ」
姿なき恐怖の声が脳に直撃し、ボクの意識は、記憶は、そこで途切れるのだった……。
『お姉ちゃーん♪』
次話は明日の21:00に投稿されます
《妹》
血の繋がっていない生き別れの妹。
その正体は妹という概念そのものだとかそうじゃないとか。
妹の日記を読めば何処からともなくやって来る。
木を揺すると稀に降ってくる。畑からも収穫できる。外を歩いてると集団でやって来る。妹を理解するとやって来る。
『お兄ちゃーん! お姉ちゃーん!』