愉快な吸血鬼っ娘は可愛い眷属たちとイチャつきたい 作:エヘ狂信者の猫
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「チカラが……欲しいッ!」
唸るような声で切実な願いを叫ぶ我が主。
ここはとある草原。我々の周りを取り囲むは、ほとんど野良動物と変わらないような程度のモンスター。
最弱スライムモンスターのプチ。小動物のうさぎ。やけに固いやどかり。常に空中に浮遊している飛び蛙。……あと、シンプルに紛らわしい野良コウモリ。
街の近くということもあり、最弱レベルの雑魚モンスターしかこの周辺には居なかった。
きっと、普通の冒険者ならば目を瞑っても勝てるだろう。
「……ハァ……ハァ……きついぃ! こいつら相手すんのメッチャきついぃ!!」
……そう、普通の冒険者ならば……。
とてもとても非常に残念なことに、温室育ちであった駆け出し初心者冒険者の我が主では、たとえ雑魚モンスターである彼らが相手だったとしても、到底敵いそうにもないのであった……。
「おい、我を舐めるな! コイツら程度、一体ずつなら倒せるわ! ……だが、連戦となると非常に不味いというか、スタミナが保たんのだよ……!?」
現状、我が主の通常の攻撃力では、プチ相手に何とか傷を付けるのがやっと、というような状態であった。偉大なる吸血鬼の名が大号泣モノである。
しかしそんな我が主ウルチヤ様でも、吸血能力を使用すればどうにか敵を倒せる。牙を突き立て体液を啜りその力を吸い取っていけば、プチでもやどかりでも倒せるのだ。
「吸血鬼の吸血能力は最強だからな……! ……ハァ……ハァ……っ……!」
だがしかし、我が主のこの息の上がり様を見れば分かる通り、この吸血はかなりスタミナを消費する行為なのだ。
つまる所、我が主の継続戦闘能力は皆無に等しい。このように囲まれたら即効で御陀仏だ。
「ぐぬぬ……悔しいが……めっっっちゃ悔しいがその通りだ……あぁーーもう力が欲しいっ!」
そもそも、元来我が主は魔法の方が得意であった。しかし、その魔法すら事故のショックのせいか殆どストックが消滅し、現在我が主は魔法の使えない魔法職という謎の存在と化していた。
「そんな酷いこと言うでないわぁ! 我だって好きで魔法使えなくなった訳では無い! というか、魔法書買う金無いのが悪い!! ……所持金、全部海の底だもんなあ……うぅ……」
貧乏にあえぐ高貴なヴァンパイアですか……。今の我が主を見ていると、思わず目頭が熱くなってしまいますね……。
「適当なこと言ってないで我を手伝え眷属!! お前この野良コウモリくらいなら戦えるだろう!?」
私の戦闘能力は我が主と連動しています。我が主がクソ雑魚カタツムリな限り、私が戦力になることは無いと思ってください。
そう言って無慈悲にバッサリと切り捨てておく。……別に、私をそこらの野良コウモリと同列扱いしたことに腹を立てたとか、そういう訳では全然無いのであしからず。
「絶対根に持ったじゃん!? ヒドイよぉこの役立たず眷属ぅう……!!」
そんなこと言われても、実際力が殆ど無いのは事実なので……もっと実力もカリスマも上げたら私も貴方様のお役に立てますよ。
それまでファイトですっ!
「他人事みたいに言いやがって……! というか今普通にヤバイ! 疲れたぁっ! めっちゃ今疲れてるぅ!」
疲労を全力で叫びながらも、何とか相手の首元に噛み付き血を啜る我が主。
息を荒くし、血を求め必死に齧り付くその姿は、野性味に溢れた恐ろしさに溢れていた……。
「ほうひうおほろひはは、ほほへへはいっ!!」
えっなんて? 吸血しながら喋らないでください、はしたないですよ。
「…………んむっ、ぷはっ。……そういう恐ろしさは、求めてないって言ったんだ! 我は偉くて気品溢れる夜王ぞ!? もっとスタイリストに戦いたいっ!!」
それを言うならスタイリッシュです我が主。デザイナーにでもなるつもりですか。
「うっさいばかぁ! ばかばかば……ぐうぇっ!」
必死過ぎて言語野が幼児になる我が主。哀れな……。
そしてそこに追い打ちを掛けるように、野うさぎが突進してきてその無防備な身体を地面に押し倒した。
「イタタぁ……くっ、我の大事な身体に何をするのだっ……!?」
「ぷぅぷぅぷぅ」
可愛い見た目をして地味に凶暴な野うさぎが、我が主ウルチヤ様の身体にのしかかりマウントを取る。
「……う、うさぎ風情が……わわ、我の上に立とうなどとっ……い、いやあの……ど、どいてくれませんかね……? ね?」
「ぷぃぷぃ……ぷぅ?」
「あっ、駄目ですか。そうですか」
動物の言葉を聴く能力でうさぎの拒否の言葉を聞き取ると、フッ……と、軽く自嘲気味に笑って全てを諦めた顔をした。
……もう少し抗えないのですか? 我が主……。
「……だって無理なんだもんっ!! 今もう全然力入らないもんっ!! 時既に疲労中だよぉ!? ボクめっちゃ頑張ったじゃん!? もうゴールしても良いじゃんっ!! びぇーーっ!!!」
あっ、泣いちゃった。……最近、我が主の涙腺が脆くなってる気がする……。可哀想に……。
ひとまず、もう我が主は助からなそうなので黙祷を捧げた。
「ぷぅぷぅぷぅぷーぅ!」
「いたっ! かむなぁっ!? ひっかくなあっ!! もふもふスリスリするなぁっ!!」
「ぷぃっ!」
「ぐうぇっ……」
あなたは殺された。遺言は?
◆
「……酷い目にあった……」
わが家の土から這い上がり、我が主ウルチヤ様は復活を遂げた。
……冒険者としての初死亡、おめでとうございます我が主。
「恨むぞ眷属よ。……というか、何故お前は主が殺されそうだったというのにあんな冷静だったのだ!? 命の危機なんだからせめてもっと狼狽えろ! 心配しろぉ!!」
若干涙目になる我が主に不憫さを覚えつつも、しっかりとその
良いですか我が主。この世界の駆け出し冒険者というのは、無限にも思える死を乗り越えて、それでも諦めず文字通り這い上がって経験を積んでいくものなのです。
そもそも、貴方様は偉大なる不死者の吸血鬼ですから、その程度の死で埋まるような御方では無いと私は信じてますので。
「……お前、我を信じておると言ったか……? ……ふふ、ふふふ。そうであろう! やっぱり我は最強な吸血鬼だからなっ! この程度の死など痛くも痒くも無いわぁ! ハーッハッハッ!!」
……何が我が主の琴線に触れたのかは分からないが、急にめちゃくちゃ上機嫌になったウルチヤ様。
まあ、何はともあれ。死に慣れは冒険者にとって必要なことだと言われているので、そこが大丈夫そうで良かったです。
「……というかさあ? めっっっちゃ、昔っから気になってたことなんだけどさ?」
……はい……? なんでしょうか。
「何故この世界の人間は、平然と死んでも這い上がってくるのだ……?」
…………我が主が、この世の常識に疑問を投げ掛けて来た。
えっそりゃ……そういう世界というか……システムというか……そういう感じじゃないですかね……。
「だから当然、と? では聞くが、なぜ我らが吸血鬼、もといアンデッドたちは、不死性を誇っているのだ……?」
…………それは、あれですよ。確実に土から這い上がることができるからではないでしょうか。
普通の人であれば、致命的すぎる傷を負ったり、諦めてしまえば、埋まったままとなりますからね。
「でもでも、本に出てくる人間たちは、みーんな死んだらそのまんまだよ!?」
……そこら辺は大人の事情ってやつですよ。きっと。あるいはご都合主義的な。
「随分とメタいなあ……」
……まあ、それに。確実に殺さないといけない時には、それなりにヤバイ方法で
「…………ああ……そういえば、御父様もママも……」
一瞬、我が主の顔が曇る。
……申し訳ございません。……失言でした……。
「……いや、いい! ぜんっぜん気にするな! ……ふーむ、そうなると……ロミアスとラーレイネお姉さんが心配だなあ……今度あった時、なんか良い対策あったら教えておこっかなあ?」
……まあ、それまでにはまず、しっかりと冒険者として力を付ける必要がありますけどね。
恐らく、対策とかもそこら辺から色々模索できるようになりますから。
「それもそうか! 我も冒険者としてガンガン死んで這い上がって強くなって!
そのいきです我が主。死への抵抗感も結構無くなったみたいですね!
「……いや、それは……そのぉ……また、別の話というかぁ……やっぱり、我あんまり死の経験無いからなあ……」
未だ死への抵抗は残っているものの、目標が出来たのならば、どうにでもなるだろう。
「……ふっふっふっ! まあ、我が死に慣れてないのは当たり前だよなあ……? ……なんてったって、我は
それは自慢気に言うことではありませんよ。
……いや、あれでも……貴族であるという意味では自慢になるのか……? いや、そもそもその言葉自体皮肉的な意味で……あれ? うん、あれ?
「…………何お前の方が混乱してるんだ」
よりにもよって、我が主にジト目で指摘される。
……なんか、申し訳ございません我が主……。
「いい、まったく気にしてな――いや待て、よりにもよってとはなんだ!?」
……空耳じゃないですかね。
「思考を共有してるのに空耳もクソもあるか!?」
ちっ……面倒だな……ひとまず逃げるか。
「あっ!? 分離しやがったなぁ!? テメーほんと、このクソっ!! 待てぇーっ!」
「キィーっ! キキィーッ!」
お口が大変悪うございますわよお嬢様!
淑女ならばもっとエレガントで美しいお言葉をお使いなさい!
「何でお前までお嬢様言葉使ってるんだ気持ち悪いわぁ!! お前、いくら性別無いからってお嬢様は無理あるだろ!?」
「キーィキィッキーィッ!」
誰の心にもお嬢様は住んでいるのですわぞ!
「それは最早お嬢様言葉ですらないわぁ!!」
やんややんやと言い合いながら、わが家の洞窟の中を走り、飛び、追い駆け回し、主と眷属は暖かなひと時を堪能したのであった――。
「――待てー!! こんっっの、バカ眷属ぅうう!!」
「キィーーっ♪」