我は、何故ここにいるのだろうか。笑顔でデュエルを楽しむ人々の姿を見ながらそんな事を思う。
我はかつて世界と戦い、そして封じられた。
望まれたままに戦い、望まれたままに勝ち、望まれたままに生きてきた。それしか、生き方を知らなかったからそうしたのだろうと、少し落ち着いた今だから理解できる。
かつて共に戦ったカード達は分たれた4つの分身と共にいるのだろう。今、デッキからかつての声は聞こえない。
力を失い、
デュエルリンクス。そう呼ばれている架空の世界で。
「ねぇ、どうかしたの?」
「……デュエルなら受けるつもりは無い」
「そっか、残念。始めてみる人だったから、どんなデュエルするのかなって思ったんだけど」
「あいにくロクなデッキも無い身だ。分かったらさっさと失せろ」
「……なら、一緒にパック買いに行かない? 新しい召喚法がやってきたんだよ」
「……新しい召喚法?」
「ペンデュラム召喚、だって」
「ペンデュラムだと⁉︎」
「知ってるの? だったら教えて欲しいな。まだペンデュラム使いの人とデュエルした事ないんだ」
そんな人の良いような声で目の前の男は我の手を引く。逆らう気にもなれずにショップまで行き、パックを開封した。
そこにあったのはかつて作り出した召喚法。ペンデュラム召喚に必要なPカード達。
「……そう、か」
そこに、少しの懐かしさを感じた。覇王龍とは程遠い力のないカードたち。それを組み合わせているといつのまにか20枚のデッキが出来ていた。
「デッキできたんだ! おめでとう!」
「そう……だな……」
「せっかくだからデュエルしない? そのデッキもキミと一緒に戦いたいって思ってるよ」
「……そうか」
不思議とその言葉は腑に落ちた。カード達がそんな意志を示していたのもそうだし、このデッキを使ってみたいという欲もあった。
それ以上に、目の前のこのデュエリストからかつて戦った強き者たちと同じ何かを感じたからだ。
「ならば、一戦交えよう」
「うん!」
「「デュエル!」」
ズァークvs????
LP4000 LP4000
「ボクのターン! ゴールドガジェットを召喚! 効果によって手札のグリーンガジェットを特殊召喚! そしてガジェットの呼び声によってレッドガジェットが手札に加わる!」
「レベル4モンスターが、2体……」
「そう! モンスターをエクシーズ召喚! ギアギガントX!」
ギアギガントX が二つのオーバーレイユニットと共に勢いよく現れる。このワールドには元々エクシーズ召喚は無かったと聞いたが、彼はもう自分の手足のようにエクシーズを使いこなしているようだった。
……強い。素直にそう思う。
「そしてX素材を使って効果発動! デッキから銅鑼ドラゴンを手札に加える。そして、カードを1枚セットしてターンエンド!」
???? LP4000
フィールド
ギアギガントX
伏せ1枚 手札3枚
「なかなか、やる!」
「ありがとう。さぁ、キミのターンだ!」
「我のターン、ドロー!」
ズァーク 手札5枚
「手札のスケール8レインボーズとスケール2ドラゴニアの竜獣騎兵でペンデュラムスケールをセッティング!」
「魔法ゾーンに2体のPモンスター! これがペンデュラム!」
「その通りだ。スケールの間、今回はレベル3から7のモンスターを同時に召喚可能になった」
「手札のモンスターと、エクストラデッキに追加される表向きのPモンスターを、だよね」
「あぁ。ただしエクストラからのP召喚は一度のペンデュラムにつき一体までだ」
スピードデュエルに適応した結果なのか、随分と苦しくなっている。現在、我の魔法罠ゾーンの空きは一つしかない。3つのゾーンのうち右と左をPゾーンとして使っているからだ。
「では行くぞ! ペンデュラム召喚! 現れよ、我が僕のモンスター共! レベル4、エンジェルトランペッター! レベル5、フーコーの魔砲石!」
現れる2体のモンスター。エンジェルトランペッターはチューナーであるためレベル9のシンクロ召喚が可能である。しかし、今我の7枚のエクストラデッキにはこの場に最適なモンスターは居ない。
「けれどギアギガントの攻撃力は2300。フーコーの攻撃力2200では及ばない」
「そうだ。しかしそれは今だけの話だ! PゾーンのレインボーズのP効果発動! 俺のエクストラデッキの枚数は7枚! 貴様のは6枚! その差である一枚分、フーコーの攻撃力をアップさせる!」
「魔法としての効果!」
「もっとも、一枚の差で上昇するのはたったの100ポイントだがな」
フーコーの魔砲石 ATK2200 → 2300
「カードをセットして、バトル! フーコーでギアギガントを攻撃!」
「相打ち狙い……いや、それだけじゃない!」
ギアギガントの拳とフーコー砲撃が衝突し、共に砕け散る。これで、厄介なエクシーズは消えた。
「ペンデュラムモンスターは、エクストラデッキから蘇るんだよね」
「それだけではないさ。Pゾーンのドラゴニアの獣竜騎兵の効果発動! 自身の通常モンスターがバトルでモンスターを破壊した時、デッキからレベル4以上の通常モンスターを手札に加える事ができる。デッキから竜角の狩猟者を手札に」
「ペンデュラムカード、厄介だね」
「そして、エンジェルトランペッターでダイレクトアタック!」
???? LP4000 → 2100
「ターンエンドだ」
ズァーク LP4000
手札1枚。伏せ一枚
「僕のターン、ドロー! 行くよ! まず僕はアステルドローンを召喚!」
「ガジェットではない?」
「そしてスキル発動! レベルコピー! 手札のモンスターを見せ、フィールドのモンスターのレベルをそのレベルにする。僕が見せるのは……ブラックマジシャンガール!」
「何ッ⁉︎」
それは伝説の魔法使い、ブラックマジシャンの一番弟子。かつての世界でもこのデュエルリンクスでも凄まじいレアカードだ。そして彼はこのカードの忠誠を得て使いこなしている!
「そして僕もペンデュラム召喚だ! スケール7の銅鑼ドラゴンと、スケール2の
「……ガジェットに加えて、レベル6モンスターが2体!」
「まずはレッドガジェットの効果で、イエローガジェットを手札に加える。そして、レベル6になったアステルドローンとブラックマジシャンガールでエクシーズ召喚! 来て、マジマジ☆マジシャンギャル!」
現れるのはランク6のエクシーズモンスター。マジシャンガールの姿が進化して現れた。
「まず、アステルドローンによって付与された効果発動! X召喚時、一枚ドロー! そしてマジシャンギャルの効果発動! 手札のイエローガジェットを捨てて、エンジェルトランペッターをこのターン魅了する!」
「何⁉︎」
エンジェルトランペッターのコントロールが奪われて彼のフィールドへと移る。そしてトランペッターのレベルはガジェットと同じ4!
「さらに、エンジェルトランペッターとレッドガジェットでエクシーズ召喚! 恐牙狼 ダイヤウルフ!」
「まだ来るか!」
「ダイヤウルフの効果発動! 自分の獣! 獣戦士、鳥獣族と相手のカードを一枚破壊する! キミのセットカードを破壊だ!」
「チェーンしてトラップ発動、ダメージダイエット! このターン受けるダメージを半分にする!」
「……躱されちやったか。でも、このターンのダメージはゼロじゃない! ボクはマジシャンギャルに重ねてエクシーズ召喚を行う!」
「ペンデュラムに加えてランクアップエクシーズだと⁉︎」
「弟子の呼び声を受け、現れよ幻想の黒魔導師!」
現れたのは、伝説の魔法使いモンスターを感じさせるエクシーズモンスターだ。
「幻想の黒魔導師の効果発動! エクシーズ素材を使って、デッキから魔法使い族通常モンスターを特殊召喚!」
「信じられん……ッ!」
「ブラック・マジシャンを特殊召喚!」
そのカードは決して強いと言い切れるカードではない。レベル7で攻撃力は2500の通常モンスター。カードにあるのはそれだけだ。
しかしそのカードは伝説だった。
多くのカードと繋がり、多くのコンボが産み出され、多くの勝利を導いた伝説の魔法使い。それが……
「ブラック……マジシャン!」
その魔術師は、ただ気高くそこに現れた。
「ブラックマジシャンと幻想の黒魔導師でダイレクトアタック!」
強さだけでない“何か”を携えた、彼の仲間として。
呼吸を忘れそうになる。今はただのデュエルだ。命を懸けた戦いではない、ただ気まぐれで始めたデュエルだ。
しかし、このデュエルは今までのどんなデュエルとも違った。恐怖も、嘲りも、嘲笑も、憎しみも、全てのあるべきモノはなく、ただ温かな気高さだけがそこにあった。
「……あなたは、一体?」
「ボクはただのデュエリストだよ。キミと同じ」
その言葉は、きっと彼の中では真実なのだろう。
だからこそ、悔しい。彼とのデュエルに全力を出せない弱い自分が。
我が龍たち。彼らと共に駆け抜けて、勝ち抜いてきた。だからこそ、この最強の敵に対して彼らと共に戦いたかった。
『四天の龍はもう居ない』
『あの龍たちを道具のように使い捨てたのは貴様だ』
『だからこそ、今の我にはどの龍も答えない』
『我は彼らにすら捨てられた、ただの残骸なのだから』
立つ気力が、出ない。
幻想の黒魔導師の効果によってレインボーズは除外された。残りライフは1500。まだ戦えはするだろう。
しかし、彼に勝つ道が全く見えない。
負ける事が、怖い。
「ねぇ、キミはどうしてデュエルしているの?」
「……望まれた、からだ」
「望まれたまま、望まれたように戦っていた。そして望まれたままに、強くなっていった」
「……違うよ」
「何?」
「キミが昔どんなデュエルをしてたかじゃなくて、キミが『今』デュエルをしている理由を聞きたいんだ」
彼は、温かな言葉を紡ぐ。確かな強さが秘められた、その言葉を。
「デュエルリンクスって不思議な所なんだ。昔の自分だったり、未来の友達だったりとデュエルできたりする」
「……時空が歪んでいるのか」
「多分ね」
「けど、それはこのデュエルリンクスでは大事なことじゃないんだ。ただの夢かもしれない、何の意味もないかもしれない。けれど、今のこの瞬間のデュエルは本物なんだ」
「……」
「だから、今のキミが思ってる事を教えて。言葉じゃなくていい。キミのそのカードで!」
声が、胸の中のなにかを響かせる。
デッキトップに自然と指が置かれ、そしてどこかと心が
過去は振り切れない。今は変わらない。しかし、
「……行くぞ」
「うん」
響いた心のままに力を解き放つ。このスピードデュエル特有のルール。デュエリストの持つ力をスキルとして解放するモノだ。
「スキル発動、
「……ギャンブルスキル」
ズァーク LP1500 → 750
背に白紙のカードが現れる。そのカードの色は常に変わり続ける。融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、その全てが混ざった色、そして何もない灰色。その6つ。
「このスキルは、それぞれの召喚方法をサポートする『ズァーク・コア』を呼び出すモノだ」
「……けどキミはもう結果は見えてるんだね」
「……あぁ」
色の変化が止まった時。カードの色は灰色になった。
「どの召喚もサポートしないズァークコアが選ばれた場合、コアの召喚と引き換えに我のエクストラデッキのカードは全て相手のエクストラデッキへと加わる」
エクストラデッキの7枚のカードと表向きのPカード、フーコーの魔砲石が彼のエクストラデッキへと吸い込まれていく。
だが不思議と諦めの感情は浮かばない。
彼も最初は痛ましそうな顔をしたが、我と目が合った時にその目つきは変化した。
命を奪いに来る、一撃を打ちに来る相手を警戒する目だ。
「そして、通常のドローに加えてカードを一枚追加でドローする!」
フィールドにあるズァーク・コア・
だが、これで勝利の可能性は見えた。
細い細い、吹けば飛びそうな線が。
「ドラゴニアの海竜騎兵をPスケールにセッティング! これでレベル3から6のモンスターを同時に召喚可能! ペンデュラム召喚! レベル6、龍角の狩猟者!」
「……魔導師達の攻撃力は2500! キミの攻撃力はまだ届いてないよ」
「……分かっているさ。バトル! 龍角の狩猟者で幻想の黒魔導師を攻撃!」
「……発動は、ない!」
「ダメージステップに速攻魔法発動、鈍重! 対象の攻撃力を守備力分低下させる! ブラックマジシャンの守備力は2000、よって攻撃力は低下して500となる!」
「貫け、狩猟者よ!」
遊戯 LP2100 → 300
「そして! 通常モンスターがバトルでモンスターを破壊した事でPゾーンの獣竜騎兵の効果発動! デッキよりレベル4以上の通常モンスターを手札に! そして、もう一方のPゾーンにある海竜騎兵の効果発動! 通常モンスターのバトルでモンスターが破壊された時、手札の通常モンスターを特殊召喚する!」
「…… それが最後の攻撃なんだね」
「ああ。俺が手札に加えて召喚するのは、
このカードはデュエルリンクスにて配られていた仮初のカード。力は借り物で、誇りは張りぼてで、姿はどこか空虚だ。
しかし、今の俺の選べる最適なカードはこれだった。全てが無くなった今の俺に転がってきた、どこにでもあるカード。それがこのカードだった。
「貴様のライフは残り300、この一撃で終わりだ!」
「……それはどうかな?」
だが、どこかで理解はしていた。この一撃は決して届きはしないのだと。
彼のセットカードは伏せられたまま残っている。一撃で全てを変えるような必殺のカードが、そこにあるのだろう。
……勝つ可能性は、それが発動できないブラフであることだけだった。
「さぁ、どうだ!」
「トラップ発動、黒魔術復活の棺! ボクの幻想の黒魔導師とキミのブルーアイズを墓地に送り、墓地のブラックマジシャンを蘇らせる!」
今、俺の攻撃は完全に防がれた。もう、勝つ道は残されていない。
「サレンダーはしない。ターンエンドだ!」
「行くよ、ボクのターン、ドロー! ……一つだけ聞いていい?」
「ああ」
「このデュエル、楽しかった?」
「楽しかったよ。だが、貴様の全力を引き出せなかった事だけは、悔しいな」
「そっか。ならもう大丈夫だね」
「……世話をかけた」
「ボクはただ、キミとデュエルしてみたかっただけだよ」
「ならば、いつかお前を倒す事でこの礼は返そう」
「……うん!」
ブラックマジシャンの一撃は、攻撃表示のズァークコアを貫き俺のライフを削り切った。
ズァーク LP 750 → 0
???? WIN!
デュエルのダメージで仰向けに倒れた俺は、なんとなく起き上がる事なくそのまま目を開けた。
デュエルリンクスの空は、多くの世界とリンクしている。ここが何なのか、どんな意味があるのかは何もわからない。俺自身がなぜここにいるのかも。
しかし、この空は美しかった。
「ペンデュラム召喚って、楽しいね」
「……ああ。お前は見事に使いこなしていたよ」
「キミもね。ブルーアイズはデュエルリンクスに来てからのカードだったのに」
「力の全てを引き出せてなどいない。悔しいが、俺の手元にあっても俺のカードではないんだろう」
「そうだね。ボクも色んなカードを使ってみたけど、自分のカードの感覚ってのはあるかも」
何となく、彼の目を見る。彼は、全力でこの世界を楽しんでいた。
「いつまでも横になってると汚れちゃうよ」
「そうだな。いい加減起きてみよう」
身体を起こして、この世界で立つ。
目に映るのは多くのデュエリスト。彼らは様々なカードを使い、楽しそうにデュエルをしている。
俺の事を憎む者、俺によって殺された者、俺の力を持っている“彼ら”。
俺が彼らにあったときにどうするのかは分からない。しかし、今は生きてみようと思った。
この、デュエルリンクスで。
半オリ主と化したズァークさん。第一戦の相手は武藤遊戯(映画版)です。遊戯はレベルコピーのスキルを覚えませんが、他のレジェンドのスキルセットを使っているという事でどうか。(ペンデュラム実装に際して色々テスト中)
尚、ペンデュラムモンスターは墓地に送れないので復活の棺はなかなか打てません。墓地に送るタイプのカードを使う際はお気をつけ下さい。