ゲートを抜けて、新たに現れたワールドに訪れる。
このワールドはGXワールドと呼ばれている。融合召喚がよく使われていた、孤島にある巨大な学園を舞台にデュエルをする事になる。
現在俺がこの世界にいるのは、このデュエルリンクスで行われているイベントというものがきっかけだ。
デュエルリンクスにおいては、歴史に名を残したレジェンドデュエリストの“スキルセット”を使用することができる。己自身のスキル以外の強力なスキルを使う為、敵のデッキの特徴を体験と共に刻み込む為などの様々に理由で自分以外のスキルセットを使う事は多いのだとか。
当然といえば当然だが、遊戯にもスキルセットはあった。ブラックマジシャンのサポートを始めとして、有用なスキルが多いが、竜騎士ガイアをサポートする“竜騎士への道”というスキルが今のところ多くのデュエリストに使われているのだとか。
閑話休題
現在、このGXワールドではDDキャッスルというイベントが行われている。2、3戦ほどの連戦デュエルで街の防衛か、塔の攻略をする事でカードやスキルセットが手に入るというモノだ。
現在なんとなくデュエルを受け入れられるようになったが、それ以外に何も目的も持たない自分は流されるようにここへとやってきた。その為にこの“とあるレジェンドデュエリストの体験した出来事の追想”についての情報は調べていない。
よって、覇王などと呼ばれていた自分が覇王軍からの防衛をするという妙な事になっているのだった。
「……デュエルの相手がそれなりに弱いあたりが癪に触るな」
覇王様万歳! といった言葉を残しながら去っていくモンスター達。どうにも座りが悪い。確実に自分ではないと理解しているのだが。
……我には、部下は居なかったが故に。
と、そんな微妙な顔をしていると見慣れない姿の者が同じような表情をしていた。
「……なんだい? 君は」
「……俺はズァークという。お前は?」
「僕はユベル。変わったナリをしてるけど、この世界だとただのデュエリストだよ」
ユベルの姿はまさしくモンスターのモノだった。背中の翼、黒が目立つ肌の色、そしてその存続感。
このデュエルリンクスではカードの精霊の類もデュエリストをしているらしい。
「お前は何故、そんな妙な顔をしているんだ?」
「それは君もだろうに」
「……否定はしない」
「まぁ一応答えると、僕は十代……僕の相棒と今離れていてね。少しナーバスになってるんだよ」
「信ずべきデュエリストの手元に居ないというのは、辛いモノなのか」
「まぁ、それなりにはね。けど、死に別れた訳じゃないから」
「……なるほど、ならせいぜい目の前の連中にやられないようにしようか」
「この程度の連中にやられる程、雑魚に見えるかい?」
「見えない」
目の前には次の陣の侵略役のモンスター達が居る。そんな彼らと戦う為に、俺とユベルはディスクを構えるのだった。
「終わったか」
「不完全燃焼甚だしいよ。これなら塔に殴り込みに行けば良かったかな」
「……いや、それならひと勝負しないか? カードの精霊とデュエルした経験はなくてな」
「僕も君みたいなドラゴンの残骸とデュエルした事はないよ」
「……確かに残骸だな、我は」
「気を悪くしたかい?」
「悲しい事に、事実でな」
軽口を叩きながら、互いにデュエルディスクを構える。どこか親近感を感じているのだろう、お互いにデュエルの準備はスムーズに行われた。
「さぁ、始めようか」
「……その力、見させて貰うぞ!」
「「デュエル!」」
ユベル LP4000
ズァーク LP4000
「先行は貰うよ。僕は手札から
「……なるほど」
サンダードラゴンデッキ。手札から捨てた時と除外された時、二つの効果を持つサンダードラゴンモンスターを匠に操るデッキだ。どこかデッキに対しての熱が浅いように思えるが、しかし十全に使いこなしている。
「ではいくよ。雷獣龍の効果によってデッキから雷鳥龍を特殊召喚。そして雷電龍の効果でデッキから2体目の雷獣龍を手札に。カードを伏せてエンドフェイズ 。雷獣龍の効果で特殊召喚された雷鳥龍は手札に戻るよ」
「手札は万全だな」
「そうだね。手札は3枚にセットカード1枚。それなりにはやれてるよ」
「……なら、俺もそれなりにやらせて貰う。俺のターン、ドロー!」
ドローカードを見る。うまく嵌ればこのターンで決着が付く道はある。だが、どうにも決められる気がしない。
……手堅く行くか。
「俺は、スケール8のレイン・ボーズとスケール2のEMドラネコをPスケールにセッティング! ペンデュラム召喚! 手札より現れろ龍角の狩猟者、魔装邪龍イーサルウェポン!」
「……モンスターの同時召喚、ペンデュラム使いか!」
「その通りだ。まずは、孤高除獣を対象にイーサルウェポンの効果発動! 特殊召喚に成功した時、対象のモンスターを除外する」
「発動は無しだ、彼は除外されるよ。破壊でないため除外されたモンスターを手札に加える効果は発動しない」
「……カードをセットしてバトル! イーサルウェポンでダイレクトアタック!」
「その攻撃は受ける」
ユベル LP4000 → 1700
「そして、先頭ダメージを受けたことでBKベイルの効果発動! このカードを特殊召喚し、受けたダメージを回復する」
ユベル LP 1700 → 4000
「……龍角でベイルを破壊して、ターンエンドだ」
ズァーク 手札0
龍角の狩猟者 魔装邪龍イーサルウェポン
セット1枚
「随分と羽振りが良いんだね」
「防御札を消費させたかったのでな」
「それは良いんだけど……このデッキと相性の良い
「どうだろうな」
「対策はあるみたいだね。だからといって変わることはないのだけれど! 僕のターン、ドローフェイズ! ライフが1800減るたびに発動できるスキル、闇の誘惑を発動するよ。通常ドローを放棄してデッキ外から闇の誘惑を手札に加える」
やはり、と言うべきだろう。サンダードラゴンデッキと闇の誘惑のスキルはよく組み合わせられている。デッキ外から有用カードを引き込めるスキルはわかりやすく強いからだろう。スピードデュエルだからこそだろう。
「そして、手札の雷獣龍を除外して闇の誘惑を発動
2枚ドローする。さらに雷獣龍の除外時効果でデッキの雷鳥龍を特殊召喚。手札の雷鳥龍を捨て効果発動、除外されている雷獣龍を特殊召喚。2体のモンスターでエクシーズ召喚。甲虫装機エクサビートル」
「……リミット2はライノセバスなのか」
「実の所あるモノで作ったデッキだからね。黄金櫃が一枚足りなかったのさ」
デュエルリンクスでのデッキ構築には現実でのデュエルと違うルールがある。それがリミットだ。
現実での制限カード、純制限カードは同じ種類のカードの枚数を制限するルールだ、しかしリンクスのリミットはリミット2のカードは合計2枚まで、と言うように複数のカードの組み合わせをやり難くする意味合いが大きいのだろう。
……誰がそんなデッキへのルールを作っているのかは定かではないのだが。
「では、昆虫族のランク5〜6のXモンスターの素材を2つ墓地に送り、
「……次の展開への布石まで仕込んでいるか」
「まぁね。墓地の雷獣龍2体と雷鳥龍を除外して、手札の混沌龍レヴィオニアを特殊召喚。そして効果発動、光と闇の両方を除外しての特殊召喚なので相手フィールドのカードを2枚破壊する。セットカードとドラネコを破壊するよ」
「チェーンしてトラップカード、ブレイクスルースキル。レオヴィニアの効果を無効にする」
「おや、それだとレヴィオニアは攻撃不能の制約を受けないけれど?」
「どちらにせよ破壊されるならPスケールを守った方が幾分か得だ。攻撃制限の有無は大して変わるまい」
「その通りなんだけどね。……このモンスターはレベル5以上のモンスター一体をリリースしてのアドバンス召喚が可能、よってレヴィオニアをリリースし、“オッドアイズ・アドバンスドラゴン”を特殊召喚!」
現れるのは雄々しくも美しい二色の眼を持つドラゴン。かつての相棒、オッドアイズだった。
「……なかなか来るものがあるな」
「このカードに因縁でもあるのかい?」
「かつてはオッドアイズの背中を見ていた」
「……今は?」
「オッドアイズにも他のドラゴンにも、まだ向き合えてはいない。だからデュエルリンクスでの仮初の姿とはいえ、この眼は……堪える」
「……それはキミが逃げているからだよ」
「そうだな」
「カードの心はキミも感じられるんだろう? 僕はオッドアイズしか知らないけど、彼は君を嫌っている訳ではないさ」
「……だからこそ、だ」
「オッドアイズも他の龍もそれぞれに相応しい相棒の元に行き、進化を重ねていった。対して俺ができたのは彼らを貶める事だけ。彼らが許しても、俺が俺を許せない」
「……だったら早く許せるようになって欲しいね」
「大切な人の力になれない事は、カードにとっては辛いからね」
その実感の篭った声に、少し考えさせられる。四天の龍は覇王と化した俺に着いてきてくれた。覇王の力の為ではなく、温かな心によって。
彼らは、俺をどう思っていたのだろうか。
「お前も、そうだったのか?」
「ああ。今では落ち着いてるけどね。十代と一緒に居たいからって随分と無茶をしたものだよ」
「……なぜそこまで?」
「愛とは、そう言うものだよ」
そう言い切るユベルの顔は、とても温かかった。
「では、デュエルを続けようか」
「……そうだな」
「まずはアドバンスドラゴンの効果発動! アドバンス召喚成功時、相手モンスター、龍角の狩猟者を選んで破壊する! さらにその攻撃力の半分1150のダメージを与える!」
「……ッ!」
ズァーク LP 4000 → 2850
「バトル! アドバンスドラゴンでイーサルウェポンを攻撃!」
ズァーク LP2850 → 2150
「そして戦闘でモンスターを破壊した事でアドバンスドラゴンの効果発動、墓地の上級モンスターを守備表示で特殊召喚できる。舞い戻れレヴィオニア! そして……ターンエンドだね。Pゾーンのドラネコの効果によって1ターンに一度ダイレクトアタックでのダメージはゼロになってしまう」
ユベル LP4000
オッドアイズアドバンスドラゴン 電子甲虫ライノセバス 混沌龍レヴィオニア
手札1
「俺のターンだ、ドロー! まずはP召喚! エクストラより来たれ、イーサルウェポン! 召喚時の効果によってレヴィオニアを除外する!」
「発動はない、レヴィオニアは除外される」
「さらに俺は、チューナーモンスター ナイトエンドソーサラーを召喚! 行くぞ、レベル6のイーサルウェポンに、レベル2のナイトエンドソーサラーをチューニング! シンクロ召喚! 現れろレベル8、琰魔竜 レッド・デーモン!」
「レベル8のシンクロモンスター! 決闘龍《デュエルドラゴン》か!」
「ああ。琰魔龍の効果発動! このカード以外の攻撃表示モンスターを全て破壊する!」
「仕方ない、ライノセバスの効果を発動! 相手の守備力の一番高いモンスターを破壊する!」
「墓地のブレイクスルースキルを除外して効果適用! ライノセバスの効果を無効!」
一瞬で焼け野原になるユベルのフィールド。レプリカとはいえ、やはり強力なドラゴンだ。
「そして、レッドデーモンでダイレクトアタック!」
「……チィ!」
ユベル LP 4000 → 1000
「ターンエンド」
ズァーク LP2150
琰魔竜 レッド・デーモン
手札0
「僕のターン、ライフが1800減った事でスキル使用。デッキ外から闇の誘惑を手札に加え発動! 闇属性モンスターを除外して2ドロー! 魔法発動、| D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》。手札一枚を墓地に送り、先程除外した
「自分自身を呼び出すか!」
「そして、墓地に送ったシャッフルリボーンの効果を発動。このカードを除外し、自分フィールドのカードを一枚デッキに戻す。そして、一枚ドローする。僕が戻すのはD・D・R! そしてコイツが離れた事で、僕自身は破壊される」
「破壊がトリガーの進化、だとッ⁉︎」
「その通り。ユベルが破壊された事で、ユベル-<ruby><rb>Das Abscheulich Ritter</rb><rp>(</rp><rt>ダス・アプシェリッヒ・リッター</rt><rp>)</rp></ruby>をデッキより降臨させる。そしてカードをセットしてエンドフェイズへ移行。僕の効果によって、僕以外の全てのモンスターを破壊する!」
吹き飛ばされる琰魔竜を見る。凄まじい力のモンスターだ。
遊戯のブラックマジシャンのような“本物”を感じる。
「さぁ、キミのターンだよ」
「……俺のターン、ドロー! まずはペンデュラム召喚! イーサルウェポン! ユベルを対象に効果発動し除外する!」
「効果は受ける。そしてユベルは、フィールドから離れた事で最後の段階へと進化する! 現れろ、ユベル-|Das Extremer Traurig Drachen《ダス・エクストレーム・トラウリヒ・ドラッヘ》!」
「だが、ソイツに耐性効果はない! カードを伏せて、ターンエンド!」
「僕のターン、ドロー! 封印の黄金櫃を発動、雷電龍を除外! それにより雷鳥龍を手札に加え、それを捨てて効果発動! 除外されている雷獣龍を特殊召喚! バトルだ! 僕でイーサルウェポンを攻撃!」
「攻撃力はゼロ……ダメージ反射か!」
「その通り、イーサルウェポンの攻撃力分2300のダメージを受けろ!」
「させん! イーサルウェポンをリリースしてトラップ発動、弩級部隊! 雷獣龍を破壊する!」
「それもさせないよ! 速攻魔法、禁じられた聖槍! 雷獣龍の攻撃力を800下げて、このカード以外の魔法罠の効果を受けなくする!」
ユベルの攻撃を躱し、そのままバリスタによって射出されたイーサルウェポンの攻撃が聖槍によって防がれる。
「そして、雷獣龍でダイレクトアタックだ!」
ズァーク LP2150 → 550
「ターンエンド」
ユベルの声は、どこか楽しげだ。自分も不思議と顔が緩んでいるのがわかる。
「……さぁ、見せてくれ。キミのデュエルを!」
「あぁ。俺のターン! ドローフェイズにスキル発動! Z-ARC! ライフを半分支払い、ランダムに選ばれた召喚法に対応するズァークコアを特殊召喚する!」
「……キミは、キミのドラゴン達にどんな顔を向けるのか決めたのかい?」
「いや、決めていない」
「……そうか」
「ああ。今この瞬間のデュエルに、必要な事をできない奴のままでは居たくない。応えてくれるかは、アイツら次第だが」
「……きっと応えてくれるさ」
ライフポイントが半分の275に減少する、それと同時にフィールドにズァークコアが現れ、その色が変化した。融合を示す、紫色に。そして、飢えた牙を持つ毒龍の咆哮が響き渡る。
「これにより、エクストラデッキにカードが追加される! そしてドロー!」
「来なよ、キミで!」
「あぁ。ペンデュラム召喚! 現れろイーサルウェポン! そして手札を一枚捨て、ズァーク・コア・Fの効果発動! 融合召喚を行う! 現れろ、我が信じた融合龍! スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」
その龍は、月まで届くかのような力強い咆哮と共に現れた。
「……僕にはよくわからないけど、キミは今、そこそこ良い顔をしていると思うよ」
「だとしたら感謝する。お前は、お前のデュエルは俺にコイツと向き合わせる気持ちをくれた。おそらく、愛と呼ばれる類のモノを」
「……なら、ガラになくデュエルをしたのも悪くはなかったかも知れないね」
「……今度は、お前が信ずる相棒と共にいるお前とデュエルをしよう」
「十代が聞いたら喜びそうだ」
スターヴ・ヴェノムの力によって、雷獣龍の攻撃力がスターヴ・ヴェノムに吸い取られる。そして、攻撃力5200の一撃が雷獣龍を貫通してユベルを貫いた。
デュエルを終わらせる、強きドラゴンの一撃だった。
ユベル LP1000 → 0
ズァーク WIN!
ユベルとは、そのデュエルのあとすぐに分かれた。互いに少し分かるところがあり、互いに分からない処は多くある。
似たモノ同士ではないが、似たモノを覚える奇妙な相手、それがズァークにとってのユベルという存在だった。
「さて、次はどうするか」
ふらふらと、当てもなくデュエルリンクスを歩いていく。
やってきた事への後悔が消えた訳ではない。スターヴ・ヴェノムが戻ってきた訳ではない。
それでも、昨日より足取りは軽かった。
「……改めて思うが、ユベルの言う愛とは何なんだろうか?」
疑問も、それなりに増えはしたのだが。
ユベルと十代がなんかふわっとした理由で別行動してるタイミングでした。リンクスなら自由に歩けるだろうとかいう適当な設定です。