おそらく年内最後の投稿になります。
皆さん、良いお年をお迎えください。
皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m
現時刻、正午。
雄英高校の本校舎からバスで移動しなければいけない距離にある
その入り口が見える木陰で、私は煙草を嗜みながらにどうやって侵入するべきかを考える。
本校舎の雄英バリア程では無いにしろ、この場所にも侵入者を検知するセンサーがある。
時間を掛ければ無効化して侵入することも出来るだろうが、私が此処に居るのがバレてしまうリスクもそれなりに高い。
どうしたものかと悩む私の耳に付けた小型通信機越しに、レディ・ナガンの声が聞こえてくる。
私は煙草の火を消し、携帯灰皿に吸い殻を捨ててから、耳を澄ます。
≪ムーンビースト、朗報だよ。“オール・フォー・ワン”の配下と思しき奴らに接触できた。奴ら、“
流石に二人で雄英高校に近づくのはリスクが高いので、レディ・ナガンには別の場所で情報収集に励んで貰っていたのだが、どうやら
「…へえ、襲撃当日に人集めとは、“連合”を名乗りながら随分と人手不足の様ですねえ。わかりました。今から、私も
≪いや、あんたは来ちゃ駄目。顔が割れてるだろう。わたしが潜入して情報を集めるから、あんたはそのまま其処で待機してなよ。どうせ、目的地は同じなんだから、後で合流できるさ。こいつらがどういう方法でUSJに侵入するかは判らないけど、そこに便乗しちまえばいいさ≫
レディ・ナガンの言葉に「なるほど」と納得する。
彼女は元公安。潜入捜査などはお手の物だろう。私が心配するのは、おこがましいというものだ。
「わかりました。では、頼みましたよ。侵入方法がわかり次第、連絡をお願いします」
≪うん。任せておきなよ≫
レディ・ナガンの力強い返事と共に通信は切れた。
私は暇になってしまったので二本目の煙草に火を点ける。紫煙が空に
オール・フォー・ワンの配下。
もし仮にもヒーローの心を持つ者なら、未来ある子供達の命を守る為、通報するべき事案だ。
しかし、私のギロチンは疼くばかりで子供の未来など欠片も心配してはいない様だった。
ギロチンの正式名称は“正義の柱”。しかし、ギロチンは人を殺した人を殺せと言うばかりで、人を守れとは言わない。
未熟な“僕”が正義の為のモノだと思った“
その事実から、目を反らす気は無い。
むしろ、それで良いのだと笑おうと思う。
「そうです。“個性”は人格の形成に影響を与えましょう。しかし、それが全てではない。正義を成すのは、常に人の意思。強い意思が、正義を育むのです。そうでしょう?オールマイト」
思い出すのは、今朝に見た偉大な背中。オールマイトの姿を見ると、私の根幹にあるものが高ぶるのを感じる。私も“男の子”なのだと実感する。ステインが恋焦がれるのも、無理からぬというものだ。
「…ならば、やはり、私もまた貴方の様に成れるはずです。私の心が、正義を、叫びたがっているのだから‼私はッ、“正義の象徴”にィ‼———
「ん?おい、今、なんか変な声しなかったか?」
「え?したか?気の所為じゃないか?」
———…巡回の警備員。ヤバいですねえ」
気が高ぶってしまったことを反省しつつ、私は隠れる場所を変えることにした。
悪党共が
オール・フォー・ワンの配下と
「これより我々は打倒オールマイトを掲げ、雄英高校を襲撃します。皆さまには、先兵としてチカラを貸していただきたい」
黒霧の姿は頭部と身体の所々が黒い
路地裏に屯する
レディ・ナガンとしては、潜入捜査である以上、あまり目立った真似はしたくないのだが、このままでは
「オールマイトを倒すって、勝算はあるのかよ。無駄死には御免だよ」
頭部を覆う黒い靄の中で黒霧の眼と思われる模様がレディ・ナガンに向けられる。
「心配は要りません。打倒オールマイトの秘策を、我々は用意しています」
「その秘策、わたしらを集めて“質より量”とかじゃないよな?」
「無論、オールマイトを数で圧倒しようなどとは考えていません」
「じゃあ、その秘策って、なんなのさ。聞かせてくれよ」
「それは———
そうして、レディ・ナガンが黒霧から情報を聞き出しかけた所で、無粋な声で邪魔が入る。
レディ・ナガンの隣に立っていた鹿の角を生やした大男が、レディ・ナガンを馬鹿にした声で言う。
「ガハハッ、随分とブルってるみたいだな。
「ああ?」
レディ・ナガンが睨みつけて制するの無視して、鹿角の大男はレディ・ナガンの身体を舐め回すように見た後、いやらしく笑いながら言う。
「黒霧さんとやら!こんな女は要らねえよ!むしろ、こんな上玉だ!これから、戦いに赴く俺たち戦士の
鹿角の大男の下劣な言葉に同意する様に、その場に居た何人かの男達の汚らしい視線がレディ・ナガンに注がれる。
黒霧は何も言わずに成り行きを見守っていた。黒霧としては、こうした諍いは先兵とする駒たちの実力を見るいい機会だと思った。
それを“許可”と勘違いした鹿角の大男はいやらしく笑いながら、レディ・ナガンに手を伸ばす。
「おら!大人しくしてりゃ、乱暴にはしねえよ!まずはその服を———
汚らしい指先が、レディ・ナガンの身体に触れることは無かった。鹿角の大男の首にアーミーナイフが突き刺さる。鹿角の大男は鯉の様に口をパクパクとさせながら、絶命して地面に倒れた。
その場の誰の眼にも映らなかった程のナイフ術で鹿角の大男を殺害したレディ・ナガンはゴミを見る視線で汚い死体と自分に欲情を向けて来た男達を見ながらに言う。
「このゴミには、私の個性を見せる必要も無かったけどさ。…誰か、見たい奴はいるかい?」
レディ・ナガンに汚らしい視線を向けていた男達は顔を青くしながら、顔を背けた。
黒霧はレディ・ナガンに拍手を送る。
「素晴らしい。素晴らしい。あなたの様に強く容赦のない者こそ、我々が求めていた人材です。名前を聞いておいて、いいですか?」
「………ガンナ」
レディ・ナガンは偽名を騙る。
「ありがとう。ガンナさん。我々がオールマイトを倒すと言う偉業を成した暁には、あなたには特別な報酬を与えましょう。そして、この場にいる皆さまにも満足できる額の報酬を約束します」
黒霧の言葉に周りの者たちが沸き立つ。
レディ・ナガンは、オールマイトを倒す秘策の情報を聞き出す空気ではなくなったことに内心で舌打ちをしながら、この場でこれ以上に目立つことは出来ないと、引くことにする。
「それでは…皆様を我々のリーダーである者の元へ案内しましょう。彼の名は、
そう言うと、黒霧の身体を覆っていた黒い靄が膨張する。
そして、その黒い靄がその場に居た全員を包み込む。
次の瞬間、レディ・ナガン達は路地裏ではない、まったく別の場所に立っていた。
レディ・ナガンは驚く。百戦錬磨の彼女からしても、希少種であるとしか言えない
その個性だけで一財産を築ける男が与しているとことで、レディ・ナガンの中で
黒霧により連れて来られた場所は、廃墟の工場だった。
既に朽ち果てた工場の地面には、壊れた人形の残骸が散乱していた。
その中で全身に人の手を付けた異形な男が立っている。
男の横では脳みそが向きだしの黒い巨体が、体育座りで眼をギョロギョロと動かしている。
黒霧は全身に人の手を付けた男を「死柄木」と呼んだ。
死柄木は黒霧から一言二言耳打ちされた後、集めてきた者たちに言う。
「まず、集まってくれたことに礼を言う。なんで、集められたんだって、思う奴もいるよな?」
死柄木は大袈裟に腕を広げながら、言葉を続ける。
「俺はな!怒ってるんだ!同じ
「「「「お、おおおおおおおオオオオッッ‼」」」」
死柄木の演説に集められた有象無象達は沸き立つ。
レディ・ナガンは死柄木の見え透いた嘘を看破しつつ、顔には出さない。
“世の中を変えたい”と本気で考えている思想犯を、レディ・ナガンは二人知っている。
世界の歪さに対して溜息を吐くステインと世界の歪さを笑うムーンビースト。
二人の眼は温度は違えど燃えている。
しかし、死柄木の顔に張り付いた手の間から見える眼は、愉快犯のものだ。
黒霧という
しかし、彼女は“今は”と心の隅に置くことを忘れない。
オール・フォー・ワンが死柄木に息子の様に目を掛けているという情報を、ムーンビーストが手にしている以上、愉快犯以上のナニカが死柄木にはあるのだろう。
そのナニカを今回のことで知る事ができれば良いと、レディ・ナガンが思った所で、誰かに肩を叩かれた。
殺気は無いけれど、また馬鹿な男が突っかかって来たのかと苛立ちを込めた視線のままでレディ・ナガンが振り返れば、そこには目をキラキラと輝かせた女性が居た。
「…なに?」
十代後半くらいの女性は、射抜くようなレディ・ナガンの視線に臆することなく頬を赤く染めながらに言う。
「あ、あの、さっきのアレ!マジでカッコよかったっス!大男を一発で
予想外の言葉にレディ・ナガンの頭は混乱する。まさか
正直、面倒くさいという気持ちを隠しもせず「ふざけんな」と言うレディ・ナガンに対して、女性は「そこをなんとかお願いするっス!姉御!」と、レディ・ナガンは許可してないのに既に勝手に姉御と呼びつつ頭を下げてくる。
レディ・ナガンは面倒なことに巻き込まれたと思い女性を無視しながらも、その姿を見る。
美人と言っていい顔立ちの女性は七色の派手な髪を腰の下まで伸ばしていて、胸に白いサラシを巻き、その上から丈の長い特攻服を羽織っている。そして、幅の広いズボンを足元で絞った姿は、ひと
潜入捜査中のレディ・ナガンからすれば、この上なく目立つ関わりたくない類の人物なのだが、無視し続けるレディ・ナガンに対して、遂には「姉御ぉ…お願いするっスよぉ…」と頭を下げる姿勢から、遂には土下座にまで移行しそうな彼女を放置し続ける方が目立つとレディ・ナガンは、諦めつつ無視を止める。
先ほどから、黒霧の視線が此方を向いているのにも、気が付いていた。
「…わかったさ。好きにしなよ。ただ、わたしの邪魔は、するなよ」
「はいっス!」
「あんた、名前は?」
「ウチは———
こうして妙な御供を連れたレディ・ナガンの潜入捜査は始まった。
USJへの侵入方法は黒霧の
USJ内のセンサー類は電気系の個性を持つ
そして、USJに侵入後は再び黒霧の個性を使いヒーロー科の生徒たちを広大なUSJ内に散らす。散らす先には、集めた
そうして、オールマイトが一人になった所で、死柄木と黒霧、脳みそ剥き出し男‐“
本当に死柄木と黒霧、脳無の三人でオールマイトを殺せるのかという点に目を瞑れば、シンプル故に成功率の高い作戦だとレディ・ナガンは判断した。特に生徒たちをUSJ内に散らして、集めた
しかし、“任務は成功させる”。“人々も守る”。両方をこなしてこそ、“ヒーロー”だと、レディ・ナガンは一瞬だけ思って、苦笑交じりに
(私はもう、ヒーローじゃあ、なかったね。…でも、罪の無い子が殺されるのは、許せない)
なら、どうする?と、レディ・ナガンは考える。
現在、黒霧が集めた
死柄木は欠伸をしながら、頭を搔いている。
脳無は死柄木の命令が無ければ動かない。
レディ・ナガンは考える。
(今なら、死柄木の脳天に弾丸は打ち込めるね。脳無は得体の知れない存在だけど、命令が無きゃ動かない
レディ・ナガンの個性『ライフル』は、遠距離戦でこそ威力を発揮するもの。しかし、レディ・ナガン程の技量があればライフルを用いた接近戦も不意打ちも対応ができる。
レディ・ナガンは右手を死柄木に向けようとして、止めた。
(…私達の最終目標は、“オール・フォー・ワン”。その情報を得る前に、死柄木を殺すのは、駄目だね。ほんと、この場にあいつが居なくて、良かったよ。絶対、なりふり構わず笑いながら、この場の全員を皆殺しにしていたよ)
レディ・ナガンは脳裏にムーンビーストの姿を思い浮かべて、苦笑する。
頭は悪くない筈なのに、“人殺しを殺す”という事に固執して、大局を見れない
そして、レインボーローズは思った事をそのまま口にする。
「あー!姉御の笑顔ッ!かーわーいーいー‼」
レインボーローズの突然の大声に、周囲の視線がレディ・ナガンとレインボーローズの二人に向く。
黒霧だけでなく、やる気なさげにしていた死柄木の視線も、二人に向けられた。
目立つことはしたくないレディ・ナガンは、すぐさまレインボーローズの頭を引っ叩き黙らせる。
「ア
「なあ?わたし、言ったよな?私の邪魔するなって?それは、わたしの気に障る事をするなって意味だって、わかんないの?」
「お、
注意をしているのに気合いを入れる様に更に大きな声を出して拳を強く握るレインボーローズを見て、レディ・ナガンは「もうコイツは駄目だ」と諦める。
幸いだったのは死柄木の視線が、レインボーローズの事を馬鹿を見る眼に変わったことだ。
死柄木はつまらなそうな顔に戻り、視線を外した。
そんなやり取りをする二人の元に黒霧がやって来る。
「ガンナさん。レインボーローズさん。貴女達はUSJ内のどこに飛ばしてほしいか、希望はありますか?先ほど、説明した通り、出来る限り“個性”が発揮しやすい場所を選んで欲しいのですが」
USJは水難事故、土砂災害、火事現場、
「希望を言ってください。そして、
黒霧の言葉にレディ・ナガンは淀みなく答える。
「わたしの個性は『ハンドガン』。右手を射程は短いけど、弾数無限のハンドガンに変えられる。ナイフとハンドガンを使った近距離戦から中距離戦が専門だよ」
嘘を付く時のコツは、少しだけ真実を滲ませることだ。黒霧は警戒心が高く頭も回る。死柄木の
レインボーローズはレディ・ナガンに続く。
「ウチの個性は『バイク』。足にタイヤとエンジンを生やすことが出来るっス!“インゲニウム”とか言うヒーローと個性がダダ被りっスけど、無関係なんで気にしないで欲しいっスね‼」
二人の個性を聞いた黒霧の頭部にかかる黒い靄が蠢く。何やら考え込んだ後、黒霧はUSJ内では二人が一緒に行動することを提案してきた。
「お二人とも、近距離から中距離が得意な万能型の様ですので、戦闘が混みあいやすい『倒壊ゾーン』を任せたいと思うのですが、どうです?」
「ウチは姉御と一緒なら、どこでもいいっスよ!」
「…あんたの指示に従うよ」
「ありがとう。では、それでよろしくお願いすることにします」
黒霧はそう言って去っていく。
レディ・ナガンの偽りの個性である『ハンドガン』は兎も角、レインボーローズの個性『バイク』は、聞いただけでは建物内での戦闘が予想される『倒壊ゾーン』との相性が良くないように思えるが、撤退の事まで考えるなら、悪くない判断だった。
一連の出来事。集まった
レディ・ナガンはそれに勘付きながらに思う。“オール・フォー・ワン”に繋がっている黒霧と死柄木に近づけるのは良い。しかし、目を掛けるとは言うまでもなく、見られていると言う事だ。
「やり辛いな」と小さな声で呟いて、レディ・ナガンは自分の隣で「黒霧さんって、姉御に気がある気がするっス」と意味の解らないことを言っているレインボーローズを見る。
そして、ため息を吐く。
問題は山積みになってしまった。公安時代の様なスマートな潜入捜査は行えない。
それでも時は進む。黒霧から準備が終わったと言う報告を受けて、死柄木が有象無象達を扇動する。
「じゃあ、ゲームスタートだ‼みんなで世界をひっくり返そう‼」
「「「「おおおおおッ‼」」」」
黒霧の出す黒い靄が周囲を包む。
そして、次の瞬間にはレディ・ナガンとレインボーローズはUSJ内の『倒壊ゾーン』にあるビルの一室に居た。
「やっば。やっぱヤバいっスね。黒霧さんの
「…あんたは、子供を殺したいの?」
「気は進まないっスけど、姉御がヤレっていうなら、ヤルっスよ。姉御の判断に任せます」
「…わたしの目的は、あくまでオールマイトさ。ガキに構ってる暇はないし、死柄木や黒霧たちだけが、良い所どりするのも気にくわない。だから、殺さない。気絶させるだけでいいさ。終わったら、オールマイトの所に行くよ」
「了解っス‼」
本当なら、雄英高校ヒーロー科の生徒など相手にせず、直ぐに死柄木達の元に向かい情報収集をしたいレディ・ナガンだが、曲がりなりにも今の彼女の立場は
だから、雄英高校ヒーロー科の生徒たちには最小限のダメージだけを与えて気絶させる。
それはレディ・ナガンなりの優しさであり、最善の策だったのが———予想外だったのは、『倒壊ゾーン』に飛ばされてきた生徒が、予想以上に
部屋の空間に黒い靄が広がる。それは黒霧の個性の発動を意味する。
中から出てきた少年は、レディ・ナガンと眼が有った瞬間に、ヒーロー志望とは思えないことを口走りながら、殺意マシマシで拳を振り下ろした。
「
「なっ!?」
『倒壊ゾーン』にある倒壊しそうなビルの一室が、爆発した。
レインボーローズ 。オリキャラ。
個性『バイク』。足にバイクのようなタイヤとエンジンを生やして高速での移動が可能。飯田君との違いは、発動型の個性であるということ。
七色の派手な長い髪に特攻服を着ている。
恰好だけのイメージはゾンビランドサガのゾンビィ2号。