ヴィランによる正義執行!   作:白白明け

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あけましておめでとうございます。
今年も私の駄文が皆様の暇つぶしになれば幸いです
m(_ _)m




個性『爆破』

 

USJ内の『倒壊ゾーン』にあるビルの一室が爆破された。

窓から流れ出る白煙を見ながら、()偉大なる英雄(オールマイト)の背中を想う。

幼い頃は、その背中に憧れた。

 

———僕の夢は、オールマイトの様なヒーローになること‼

 

昔から隣にいる奴から、何度、聞いたかも解らない言葉を思い出す。

皆が、そうだったと思う。誰もが憧れるヒーローが好き。それは、とても当たり前で、きっと()()()()()なのだと、()は、普段の立ち振る舞いからは考えられない聡明な頭で理解している。

しかし、人には、その正しさに唾を吐きたくなる時期というものが存在している。

厨二病(不治の病)と称されるその時期に、幼馴染を虐める様な、少し歪んだ心を持つ少年が大きな衝撃と出会ったとしたら、どうなるのか。

その答えが、在り得たかも知れない未来を映す。

 

誰もが憧れる偉大なる英雄(オールマイト)の前に(ただ)孤独(ひとり)立ち向かい正義を叫んだ反英雄(ダークヒーロー)が居た。

少なくとも()の眼には、そう見えた。

 

———復讐を。報復を。逆襲を。亡き者たちの無念を私が遂げる。

———何者にも流されない強き正義を私が示す。

 

———誰にも否定などさせないッ、完膚なきまでの正義ッ‼復讐こそッ、正義‼

 

()は、爆豪(ばくごう)勝己(かつき)は、その姿に憧れた。

 

だから、彼は(ヴィラン)を前に全力で拳を振るう。自身の個性である『爆破』の危険性を理解しつつも手を抜かない。殺したいとは思わないが、死んでも良いと思いながらに戦う。

故に、その言葉に嘘はない。

 

()()()ッ‼」

 

正義とは躊躇しないこと。奇しくもそれはムーンビーストが(かつ)何処(どこ)かで(だれ)かに言ったことのある言葉だった。

 

白煙が窓の外へと流れていく。

砂埃が晴れた頃には、爆豪の前に立っている(ヴィラン)は一人になっていた。

 

USJでの人命救助(レスキュー)訓練が始まって直ぐに襲ってきた(ヴィラン)達。爆豪を含めた数名の生徒は直ぐに(ヴィラン)達に立ち向かったが、(ヴィラン)の個性により広大なUSJ内に離れ離れに飛ばされてしまった。

 

爆豪は飛ばされた先で待ち受けていた(ヴィラン)の二人を目視した瞬間、瞬時に危険性を理解した。

特に毛皮の帽子を被り色眼鏡をした(ヴィラン)()()()と、爆豪の勘が告げていた。

後手を取れば瞬時に制圧されると感じ取り、だからこそ、初手から全力で爆破した。

その判断が(こう)(そう)して、(ヴィラン)の一人は爆破の衝撃で窓から外に飛ばされた様だったが、爆豪が()()()と感じた(ヴィラン)は爆破の衝撃から上手く逃れて部屋の壁際にほぼ無傷で立っていた。

 

「今の不意打ちを避けんのかよ。マジでガチじゃねえか…」

 

「…あんた、殺す気?」

 

爆豪は右腕に装着している手榴弾を模した籠手(こて)を一瞥する。それは彼のヒーローコスチュームの一部であり、内部に汗を溜める機構を持つ。

個性『爆破』は、掌から分泌されるニトロに似た成分を使うことで爆発を起こす。爆発の威力は汗の量に比例する。

初手の爆破で、籠手に貯めた汗は使い切った。つまり、再び汗を溜める暫くの間は初手の以下の威力の爆破しか出せない。

 

しかし、それでも爆豪は笑ってみせる。

 

「ハッ、殺す気かだと?最初に言っただろうが!死ねッ、(ヴィラン)‼俺の行く道の糧となりやがれッ‼」

 

そう言って(ヴィラン)に向けて突撃しようとする爆豪を、共に飛ばされて来たクラスメイトである切島(きりしま)鋭児郎(えいじろう)は止める。

 

「おい、待てよ!爆豪!止めとけ!あの爆発の威力はヤバい!ほんとに殺す気かッ‼」

 

「アアッ‼何を腑抜けたコト言ってやがるんだッ!テメエも見ただろーがッ、俺は全力だった‼その全力をアイツは涼し気に避けやがったんだぞ!広場に居た雑魚共とは違う、あのレベルの(ヴィラン)が居やがるのは、不味(マジー)ぞ‼とっととコイツをブッ倒して他の奴らを助けに行かねーと何人か死ぬぞッ‼」

 

「ッ!?」

 

切島は爆豪の迫力に押されて言葉を詰まらせる。爆豪の言葉には一理あった。彼は良く言えばストイックであり、悪く言えば自分本位だ。プライドも高い。しかし、それに見合うだけの能力も持っている。それは『爆破』という強個性だけでなく、目の前の(ヴィラン)‐レディ・ナガンの実力を一目で見極めた勘も本物だった。

確かに爆豪の言う通り、レディ・ナガンクラスの実力者が他のクラスメイトが飛ばされた場所に居た場合、命の危険があるだろう。

現実にはレディ・ナガンクラスの実力者は(ヴィラン)連合には居ないし、レディ・ナガン自身にも雄英高校ヒーロー科の生徒たちを危険に晒す気はないのだが、それを知る由もない以上、爆豪の心配は(もっと)もだった。

 

「わかったらテメエも戦いやがれッ!出来ねえなら端に寄ってろ!邪魔だ‼」

 

「ッ、ふざけんな。お前一人に戦わせられる訳ないだろ!俺も戦う‼」

 

爆豪に促されて切島もレディ・ナガンに向けて拳を握る。

切島も爆豪と同じく人命救助(レスキュー)訓練が始まって直ぐに広場で死柄木たち(ヴィラン)連合に襲われた際、直ぐに立ち向かった生徒たちの一人だ。

他のクラスメイトたちが危ないと言われればヒーローの卵として立ち向かわない訳にはいかなかった。

 

 

 

 

 

両の掌を開きながら構える爆豪と上半身を個性で『硬化』させながら拳を握る切島を前に、レディ・ナガンは溜息を吐きたい気持ちでいっぱいになっていた。

 

彼女は罪もない青少年を傷つけることを(よし)としない。戦う気などなかった。

だから、やって来た彼らを適当に地面に転がして、この場を去りたかった。

けれど、状況がそうはさせてくれない。

 

「…流石は、雄英のヒーロー科だね。まあまあやる」

 

自分からすれば倍以上年の離れた彼らは、適当に戦うには高すぎる実力を持っていた。

『硬化』という個性はナイフ術で相手をするには相性が悪い。

『爆破』の個性は単純に威力が高く面倒だ。

加えて、この二人の相性も良かった。『硬化』の個性を持つ切島は爆発を気にせず『爆破』の個性を持つ爆豪のサポートに入る事が出来ていて、そのお陰で戦況は一見すれば彼ら優位にすら見える。

無論、それはレディ・ナガンが本気を出していないからだ。

そして、それを感じ取っている爆豪の怒号が爆発音と共に部屋に響く。

 

「テメエッ‼どうして個性を使いやがらねェんだッ‼」

 

左手から放たれる爆破の衝撃をナイフで受け流すという意味の解らない芸当を披露しつつ、レディ・ナガンは爆豪の背後を取る。

 

「なにッ!?」

 

「爆豪ッ!助けっぞ‼」

 

「遅いよ」

 

更に自分の背後を取って爆豪を助けようとする切島に回し蹴りを叩き込みつつ、レディ・ナガンは爆豪を背後から羽交い絞めにしつつ首筋にナイフを当てた。

 

「ガキ相手に個性を使う必要なんて、ないのさ。クスクス、雑魚(ざぁこ)

 

何処か艶めかしい声色で罵倒された爆豪はキレた。

 

「アアアアアアアアアッ!?誰が雑魚だッ‼糞ババアッ‼」

 

冷静さを失った爆豪。それは爆豪と切島の連携が完全に崩れることを意味していた。

戦闘開始から五分、爆豪の右腕の籠手にはそれなりの汗が溜まっていた。

レディ・ナガンに羽交い絞めにされている爆豪は、その拘束から逃れる為に右腕を後ろに回し籠手に溜まった汗を使って高威力の爆破を行う。

 

「死ねやッ‼」

 

「だから、ガキなのさ」

 

レディ・ナガンはニヤリと笑いながら、後ろに回された右腕を両腕で絡めとると背負い投げの要領で爆豪を地面に叩きつけた。

 

「かッはあッ」

 

「爆豪ッ!?おい、やべえッ‼爆破止めろッ‼」

 

レディ・ナガンの回し蹴りにより壁際まで蹴り飛ばされていた切島には、レディ・ナガンの狙いがわかった。

レディ・ナガンは爆豪の右掌をビルの床に向けて当てていた。

 

切島の言葉も虚しく、爆破は急には止まれない。

 

「普通にあぶないから、受け身は取りなよ」

 

そんな心配をレディ・ナガンが口にした所で、ビルの床は爆破され、『倒壊ゾーン』にある倒壊しそうなビルは倒壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

倒壊したビルの残骸の上にレディ・ナガンは立っていた。倒壊したビルから逃げ出しながら、果たしてどうやったら出来るのかは謎だが、その身体には砂埃こそ付いてはいるが傷はない。

そして、両手にはそれぞれ気絶した爆豪と切島の手が握られていた。

倒壊したビルから二人を助けつつ無傷で生還したレディ・ナガンは、彼女自身がビル爆破の下手人であることに目を瞑れば、まるでヒーローの様だった。

 

その様子を見ていたレインボーローズは目をキラキラとさせながら、叫ぶ。

 

「姉御、マジでカッケーです‼」

 

「あんた、無事だったんだね」

 

「はいッ!ビルの窓から飛ばされた時はビビりましたがッ、隣のビルにぶつかったんで、そのまま壁を走って地上まで降りたんです。すぐに戻るつもりだったんスけど、それより姉御がコイツら倒す方が早かったスね」

 

「あっそ。…まあ、無事でよかったよ」

 

「アザーズ!姉御のツンデレ頂きましたッ‼(イタ)ッ!?」

 

尻尾を振って近づいておきながら、ふざけたことを言うレインボーローズに蹴りを入れて、レディ・ナガンは爆豪と切島を地面に投げ捨てる様に転がす。

 

その衝撃で爆豪は意識を取り戻した。

爆豪は地面に這いつくばり、レディ・ナガンを睨みつけるように見上げながら言う。

 

「テメエ、…なんで殺さねえ。…なんで助けたッ!(ヴィラン)が情けなんてかけてんじゃねェよッ‼気持ち悪りィなあ‼」

 

「ああん?姉御に助けて貰いながら、何言ってんだガキ」

 

レインボーローズが爆豪を頭を踏み付けにする。

その時、爆豪の首に架けられていたアクセサリーが外れてレディ・ナガンの足元に転がっていた。

 

「………足、どけてやりな」

 

「はいッス」

 

レディ・ナガンはそれを拾いつつ、爆豪に近づくと、拾ったアクセサリーを爆豪の目の前に置く。

 

「これを持ってるってことは、わかるよ。裁くべき悪に情けを掛けられるなんて、そりゃ許せないよね」

 

「ッ!?うるせえ!俺を馬鹿にするんじゃねえッ‼」

 

「馬鹿にしている訳じゃないさ。私も好きだよ。()()()

 

爆豪は目を見開く。レディ・ナガンはその様子をみて小さく笑った。

 

「たしか、爆豪って呼ばれてたね。爆豪、もしも本気であいつの力に成りたいって思っているなら、今は生きていることに感謝しな。何時か、あいつの為に何か出来る時が来る。…わたし達の敵は強大だ。力は、いくらあっても足りないのさ」

 

「テメエは、なんなんだ?広場にいた雑魚共の仲間じゃねぇのか?オールマイトを殺すとか、ふざけたことを言ってた奴らの仲間じゃねぇのか?」

 

爆豪の問いかけに答える前にレディ・ナガンは横にいるレインボーローズの様子を窺う。

仮にも(ヴィラン)連合の一員として、この場所にやって来たレディ・ナガンとしては同じ(ヴィラン)連合の一員であるレインボーローズの前では、オールマイトの打倒が目的だという建前を崩す訳にはいかないのだが、———レディ・ナガンは小さな賭けにでることにした。

 

「なあ、レインボーローズ。あんたは死柄木やオールマイトと、わたしのどっちが好き?」

 

“オール・フォー・ワン”という巨悪を倒す為、力はいくらあっても足りないとレディ・ナガンは考えている。

 

『正義とは信仰するものでなく、成すものである』という考えの下で自らの信奉者(シンパ)との積極的な関わりに乗り気ではなく、“灰色勢力”なんてウキウキで格好を付けていながらも勢力拡大に貪欲ではないムーンビーストに代わり、勢力拡大に意欲的なレディ・ナガンはレインボーローズのことも、仲間に引き入れようと考えた。

その上での質問。答え次第ではレディ・ナガンの個性が火を噴く結果となるのだが、その心配を余所にレインボーローズは弾けるような笑顔で即答した。

 

「モチのロン!姉御っス‼死柄木のファッションセンスは好きになれねーし、筋肉マンは趣味じゃねーっス!ウチはカッコいい女の人が大好きなんスよ‼」

 

「そう。ありがと。わたしは普通に男が好きだけどね」

 

「ガーンッ!?姉御に相応しい男とかいるんスかッ!?」

 

ショックを受けるレインボーローズは置いておいて、レディ・ナガンは再び爆豪に向き直る。

変なコントを見せられて真剣な顔から若干、微妙な顔に変わっている爆豪に向けてレディ・ナガンは言う。

 

「“死ね、(ヴィラン)”だっけ。躊躇しなかった。あんたのこと、あいつはきっと嫌いじゃないよ。正義に、欠片の優しさもあっちゃならない。少なくとも、あいつが語るのはそういうものだよ。あれば、それは妥協に変わるからね」

 

「…アンタは、あの人の仲間なのか?」

 

「それは自分で立ち上がって確かめな。わたしはこれから広場に戻る。知りたいなら、友達を安全な場所に避難させてから、来ると良いよ。知る事ができる」

 

レディ・ナガンは、いたずらっぽく笑う。

 

「あいつは、イカレてるってね」

 

 

 

こうして在り得たかも知れない未来は、明確な悪意をもって強引に開かれた。

“大・爆・殺・神‐ダイナマイト”というヒーローに成る筈だった少年が、(ヴィラン)に墜ちる。

その未来は、あまり遠くない。

 

 

 





かっちゃんのヴィラン堕ちを書きたかった。
後悔はしていません。

逆十字のアクセサリーをして、雄英の試験を合格した一人は爆豪君でした。
でも、ムーンビーストに情報を流している生徒が、もうひとりいて…やべーなA組(^_^;)
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