皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m。
レディ・ナガンからの連絡が途絶えた。
USJの入り口が見える位置にある大きな木の枝に腰を掛けながら、彼女からの連絡を待っていた私の煙草の吸殻は既に五本を超えていた。
どうしたのだろうかと考える。仕事の出来る彼女が、仮称・
だとすると考えられる可能性は二つ。
連絡できる状況に無いか。
侵入方法を知ったが私の侵入には使えないか。
レディ・ナガンの実力を考えれば可能性が高いのは後者であり、あり得そうだと私の勘が告げるのは両方だ。
「すなわち連絡をしにくい状況にあり、
既にバスで此処までやって来た雄英の生徒がUSJ内に入っていってから、それなりの時間が立っている。もしかしたら既に中で何か事態が動いている可能性もある。
仮称・
だとするなら、私がこうして外から建物を見ている間に既に仮称・
そう考えて耳を澄ませてみるが、意味は無い。流石は最新技術を集めて作られた雄英の施設。防音ばっちりだった。外から窺っていても何も分からない。
私はレディ・ナガンからの連絡があるまで待つべきなのかを考えて、悩んだ末に、もう少しだけUSJに近づいて様子を伺うことにした。
木から飛び降りて、茂みに潜みつつコソコソとUSJに接近する。そして、USJの入り口から十メートル程まで近づいた所で、雄英の生徒と思われる男子がUSJの入り口の扉を蹴破り飛び出して行くのをみた。
それを茂みから見送りつつ、首を傾げる。
「随分と急いでいるようですが、トイレですかねえ」
と———冗談を言って遊んでいられるのも、そこまでだった。
USJの入り口が開いた瞬間から、中から香る“濃い血の匂い”。
私の口角はつり上がった。
「
なら、もはや待つことに意味は無い。レディ・ナガンからの連絡が無い以上、未だに彼女は私がUSJ内に入るべきじゃないと考えているのだろうが、私は堪え性の無い男なのだ。
夜戦(意味深)ならともかく、昼間の私は彼女の思い通りになどならない。これは勿論、夜戦(意味深)への当てつけではない。ないったらないのだ。
「全ては正義の為ッ‼
私は扉を蹴破りながら、USJへの侵入を果たすのだった。
黒霧の個性で侵入を果たし、生徒達をUSJ内に散らす事で教師たちの意識を其方へ向けさせた。
そして、その隙をついて教師たち、ヒーロー名“イレイザーヘッド”と“13号”の無力化に成功した。
優秀な二人のプロヒーローを倒す事が出来たのは彼らが生徒達という“枷”を付けていた事と脳無の存在があったからだと黒霧は状況を見渡しながらに思う。
13号は自らの個性で背部に傷を負い倒れ、イレイザーヘッドは脳無に地面に組み敷かれている。
“脳無”。それは“オール・フォー・ワン”が対オールマイトの為に用意した人造人間。
オールマイト並みの
プロヒーローとはいえ、人命救助で目覚ましい活躍を見せている13号と抜群の対人戦スキルを有しながらも“個性を消す個性”という性質上、素でオールマイト並みの
(13号はリタイア。イレイザーヘッドは脳無が抑えている。我々は優勢だ)
黒霧はそう思いながらも、“イレギュラー”を見る。
彼女はカエルっぽい風貌の可愛らしい女生徒を庇う様に立ちながら、スナイパーライフルの銃口を死柄木に向けていた。
銃口を向けられている死柄木は何も考えていないのか、首をボリボリと搔いている。
一見して余裕を見せているような態度だが、それが死柄木がストレスを感じている証拠だと知っている黒霧は“イレギュラー”の注意を自分に向ける為、あえて大仰に両手を広げながら彼女に語り掛ける。
「作戦は順調に進んでいます。誤算があるとすれば、二つです。情報によれば此処に居る筈のオールマイトが居ない事。そして、あなたが死柄木弔に銃口を向けている事です。
黒霧に声を掛けられたガンナ、もといレディ・ナガンは嘲る様に笑った。
「潜入は、失敗だね。もう少しうまく情報を盗るつもりだったのだけど、広場に来て早々にあんたらがこの子を殺そうとしたのを見たら、見逃すわけにも行かないさ」
黒霧は死柄木に狙われた女生徒を守る為に立ちはだかったレディ・ナガンに対して溜息を吐きながら、それならそれで良いと頭を回す。
「…あなたほどに優秀な人材が有象無象の輩の中に紛れていたのには違和感があったのですが、初めから、我々の仲間では無かったと言う事ですか。残念です。しかし、それならそれで構いません。この依頼が終わった後に用意していた
「妙な真似をすれば、即座に撃つよ。
「…私はなにもしませんよ。そして、ガンナさん。あなたは
黒霧がそう言った瞬間、死柄木が動き出す。
「なッ、チッ、馬鹿かよ!?」
無論、それをレディ・ナガンが許す筈が無い。
レディ・ナガンは死柄木の脳天に合わせていた銃口の位置を変える。
レディ・ナガンは死柄木を殺すわけにはいかない。欲しいものは命ではなく情報。死柄木は生かして“オール・フォー・ワン”の情報を吐かせなければならない。
故に放たれた銃弾は、死柄木の右足の甲に着弾する。
動きを止めるには十分。しかし、致命傷には至らない攻撃を受けて死柄木は叫んだ。
「
死柄木の命令で怪物は動き出す。イレイザーヘッドを地面に組み敷いていた脳無は、目にも留まらぬスピードでレディ・ナガンに迫る。常人の眼には映らない速度で動く脳無に対してレディ・ナガンが放った銃弾は三発。その全てが脳天、心臓、肝臓の全てに着弾するが、脳無の動きに陰りは無い。
脳無は死柄木の命令でしか動かない。死柄木に必要だったのは、脳無に命令を下す僅かな隙だった。
そして、目の前まで迫った怪物を前にレディ・ナガンは背に庇う女生徒を守る為、脳無の攻撃を避けることなく受けることとなる。
「かッハッ‼」
何本もの骨が折れる、乾いた音がした。
次の瞬間、脳無の動きにまったくついていけていなかったレインボーローズの元にレディ・ナガンの身体が吹き飛んでいた。
「あ、ああ、姉御ッ!?嘘ッ、なんで、なんなんスかッ‼」
「うる、さい。騒ぐんじゃ、ないよ。だい、じょうぶさ」
「大丈夫じゃないっスよ‼血が、それに腕が、に、逃げなきゃ。姉御を連れて、此処からッ‼」
レインボーローズにとって今一番大切な人はレディ・ナガンだった。雄英の生徒や教師たちなんて、正直に言えばどうでもいい。だから、彼女は即座にレディ・ナガンを連れて、その場からの逃走を選択する。
レインボーローズは両足にバイクの車輪を形成すると、レディ・ナガンの手を取る。
レディ・ナガンはその手を振り払った。
「どうしてっスか!ガキどもなんてどうでもいいじゃないっスかッ‼姉御はヒーローじゃないんだから、守らなくても、姉御の目的はガキどもを守る事じゃ無いんでしょうッ‼」
レディ・ナガンはレインボーローズの言葉を無視して立ち上がる。
脳無に折られたのは左腕だったので、戦闘に支障はない。
肋骨が何本か折れているが肺には刺さっていないので、戦闘に支障はない。
ぼやける視界に広場に駆け付けてくる数人の生徒達の姿が映った。
黒霧によって飛ばされた場所でそれぞれ
「…あんまり、あいつに憧れる子供に格好悪い姿を見せたくないのさ。わたしはあいつの、女だからね」
「…ッ」
“あいつ”が誰かを、レインボーローズは知らない。だから、レインボーローズは何も言えなくなってしまった。
状況は此処に混乱極まる。
プロヒーローの13号は
イレイザーヘッドは脳無の拘束から解かれたが、両腕を折られ、まだ立ち上がれないでいる。
死柄木は右足の甲を打ち抜かれ、満足に歩ける状態ではない。
黒霧と脳無は五体満足。正し脳無は死柄木の命令無しでは動けない。
レディ・ナガンは強がっているが戦える状態ではない。
レインボーローズは脳無を前に心が折れかかっている。
そして、広場の戦いを見ていることしかできない雄英高校ヒーロー科A組の生徒たち。
彼らの大半は動けない。彼らの眼に映る味方は13号とイレイザーヘッドのみ。レディ・ナガンたちと死柄木たちの戦いは、突如として起きた仲間割れにしか映らなかった。
だから、彼らの中で動ける者は一部のみ。
即ち、レディ・ナガンが自分たちの敵ではないと知る者のみ。
混乱極まり、一度は止まった状況を黒霧が動かす。
「死柄木。先ほど、飛び出していった生徒が
「ああ、解ってる。流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ…
死柄木の言葉により場の空気は一瞬だけ緩む。
死柄木の目的はオールマイトの殺害。
生徒の一人に逃げられ、オールマイトもいない状況で長居する意味は無かった。
だから、撤退する。実に合理的な判断だ。
しかし、言葉は続く。
死柄木は目を細めながら、レディ・ナガンを見る。
「ただし、裏切り者は殺す。
死柄木の言葉で怪物は再び動き出す。その瞬間、レディ・ナガンは笑っていた。
レディ・ナガンは死柄木の殺意の矛先が自分に向いて良かったと心底、思っていた。
オールマイトを殺害することの出来なかった死柄木が、せめてオールマイトの矜持だけはへし折ってから帰ろうと生徒たちにその殺意を向ける可能性は十分にあった。
だから、レディ・ナガンは血に塗れた命が、最後に子供達の命を守る役に立つことを笑う。
そんな彼女を守ろうと動いた者は
一人目はレインボーローズ。
二人目は爆豪勝己。
三人目は蛙吹梅雨。
そして、四人目は———レディ・ナガンを
しかし、彼らは間に合わない。
脳無がオールマイト並みの
眼にも留まらぬ速度で動く怪物を前に、彼らでは"役不足"だった。
それは
ヒーローでは無いのなら、そこまで堕ちなければならないという事だ。
【脳無】。
“オール・フォー・ワン”と彼の協力者が創り出した人造人間。死体を弄び、
ソレは“人間”ではない。故に———彼のギロチンは、レディ・ナガンに向けて振るわれた拳を寸での所で切り落とすのではなく弾いて見せた。
まるで金属同士がぶつかり合う様な音が広場に響いた。
「おやおや、
ふざけたことを言いながら、既に彼の顔から普段は浮かんでいる胡散臭い笑顔は消えていた。
金眼は既に開いている。それはつまり、彼の怒りが既に最高潮であることを示していた。
右腕のギロチンで脳無の拳を弾きながら、左腕でレディ・ナガンを抱える様に抱くもう一人の
「貴方達、なに私の大切な
原作部分は概ねカット。
人物が増えると状況描写が難しいです。