長くなってしまいました。けど、書きたい時に書きたいだけ書くのが楽しいので、仕方ないですよね!
皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m
「貴方達、なに私の大切な
正義で人を裁かなければならない私の口から、私怨で殺害という言葉が出たコトに自分自身で驚いた。
そして、レディ・ナガンのことを“大切な
例え初恋が無残に終わろうとも私にとっての“愛しい
例えレディ・ナガンの容姿が私の
そう思いながら、抱きかかえたレディ・ナガンに視線を落とす。彼女は私がやって来た事に安心したのか気を失っていた。
先ほどまでの子供達を守る為に立っていた凛々しい姿はもう無い。血に塗れ傷ついた姿が、私の中にある“正義の心”以外のナニカを刺激する。
ギロチンの刃を形成した右腕が、ズキズキと痛む。まるで『ギロチン』という個性自体が、私の中から不要なナニカを切り落とそうとする現象を理解しながらも、私がギロチンの刃を収めることはない。
レディ・ナガンを抱えたままでは戦えないので、取り合えずレディ・ナガンの傍に居た七色の髪を持つ女性に声を掛ける。どうやら彼女は
「そこの貴女。ええ、派手な髪の貴女です。しばらくの間、彼女のことをお願いしてもいいですか?」
「あ、は、はいっス‼姉御の彼氏さんッ‼姉御のことは此のレインボーローズが責任をもってお預かりするっス‼」
「…彼氏などでは、ありませんよ。それは彼女に失礼というものです。私は只の…、ええ、只の仲間なのですからね」
何処か緊張した面持ちで面白いことを言った後、それ否定すれば何か言いたげにしている七色の髪を持つ女性、レインボーローズにレディ・ナガンを預けた私は改めてレディ・ナガンを倒した者に向き直る。
“脳無”と呼ばれた脳みそが剥き出しの黒い大男は、私に拳を弾かれたことでピタリと動きを止めていた。しかし、それは私が何者かを推し量っているというよりも、次の命令を待っているかのような無表情だった。
そして、私の予想は的中していた様で、死柄木が次の命令を脳無に与える。
死柄木は首を掻きむしりながら、苛立ちを含んだ声で言う。
「お前は…知ってるぞ。ムーンビースト、強キャラだ。クソ…、同じ
「私が貴方達の味方などと、妄想ですねえ。貴方達からは、“濃い血の匂い”しかしません。逆十字を少しでも知るのなら、これから殺されると言う事くらいは理解していただきたい。ねえ、死柄木君」
「あ…?俺の名前、何で知ってんだ?」
「我々の目的は、最初から貴方でした。貴方を捕らえて、貴方のバックに居る存在についての情報を得ることが、我々の目的。その為にレディ・ナガンは“貴方を殺せない”という枷を背負い戦い、敗れた。悲しいことです。こんなことになるのなら、最初からまるでヒーローの様に“捕らえる”などと甘いことを頼むべきではありませんでしたねえ」
私は自らの未熟さから目を背けたくなり、左の掌で顔を覆う。
そして、指の間から覗く眼で死柄木を見ながらに言う。
「殺しましょう。ええ、それがいい。貴方は、血の匂いが濃すぎるのですよ。私の“
「クッ、マズい‼死柄木ッ‼脳無をッ‼」
「あ、あああ、脳無ッ、俺を守れエエええッ‼」
私は死柄木に対してギロチンの刃を振い、それを脳無に受け止められる。
それはまるで先ほどまでの焼き増しであり、私は思わず舌打ちなどと言う不良の様な行為をしてしまった。
私のギロチンと脳無の拳は金属同士がぶつかったかのような音を立てて弾き合う。
「やはり…斬れない。おかしなものです。濃い血の匂いがするのに、私のギロチンの切れ味が鈍らにまで落ちている。これは、どういうことなのでしょうねえ?」
私の疑問に、私に脳無が斬れないと気づいた死柄木が余裕を取り戻した顔で答える。
「あ、あああ、知ってるぞ。お前の個性は、人を裁くことに特化してるんだってなあ‼脳無は生きた人間じゃねえッ‼オールマイトを殺す為に作られた動く死体だッ‼それが、怪人脳無の正体なんだよッ‼」
「なるほど、疑問は解けました。なら、問題はないですね」
私のギロチンが青みを帯びる。淡く蒼くなったギロチンの刃は、先ほどまでが嘘の様に容易く脳無の腕を斬り飛ばしていた。
勝ち誇っていた死柄木の顔が、驚愕の表情に変わる。
「なん…だよ…。は?どうしてだ‼斬れねえんじゃねえのかよッ‼」
「貴方は、余子浜スタジアムでの私とオールマイトの戦いを見ていないのですか?確かに私の個性には、人を殺した人でなければ威力を十全に発揮しないという欠点が存在しますが、その枷を無視する方法は存在します。私は、その
私の
脳無はもしかしたら人を殺したことのない人間なのではないかという疑念が晴れたなら、ギロチンの切れ味を上げる為に使用を躊躇う必要は無かった。
「ああ…クソ…チートかよ。けどなあ、怪人脳無っていうバグキャラを舐めんじゃねえよ。言っただろ?コイツにはオールマイト並みのパワーと、複数の“個性”が詰め込んであるってなあッ‼」
脳無の切り落とされた右腕が断面から再生する。
「コレは『超再生』‼脳無は不死身の怪人だ‼」
死柄木の言葉にその場に居る私以外の全員が言葉を失っている。無理もない。オールマイトの
しかし、実際に脳無と拳をぶつけ合った私にはわかる。アレは、そこまでの脅威ではない。
オールマイト並みの
私は溜息を吐きながら、死柄木に可哀そうな者を見る眼を向ける。
「…あ?なんだ、その眼、苛つくなあ。俺の脳無の、何に文句がある?」
「いえ、文句などありませんよ。ただどうやら貴方が脳無とやらを与えた相手から、騙されているようなので、可哀そうだと思うだけです」
「ふざけんな。先生が俺を騙すわけないだろ」
「…
「なん、だよぉ。ごちゃごちゃうるせえなあ‼お前が脳無に勝てないっていう———
「そして、『超再生』と言う個性。これも
———あ?何言ってんだ?」
「私程度の攻撃を避けられもしないなら、脅威にはなりません。だって、殺しても死なないからと言って、殺し続けて死なない訳では無いのでしょう?なら、
私は両腕にギロチンの刃を形成して、脳無の前に立つ。
そして脳無の速度に胡坐を掻いたテレフォンパンチを弾きつつ、無数の斬撃を脳無に浴びせた。
「
脳無は272回殺されて、『超再生』を上限まで使い切り、死んだ。
最後の斬撃で脳無の首を死柄木の足元まで飛ばしてやれば、死柄木は意味が解らないという顔をしながら、脳無の首と私を交互に見ていた。
「…は?…はあ?」
私がその隙を見逃す筈もなく、呆然とする死柄木に突っ込み、そのまま右手で首を掴んで宙に吊り上げる。
死柄木の顔が苦痛に歪んだ。
「かッ…クソ…クソゲーがッ、殺してやる!舐めんじゃねぇぞ‼」
死柄木は藻掻きながら、右手で私の顔面を掴もうとしてくる。なので、左腕のギロチンで死柄木の右腕の腱を斬る。死柄木の右腕は、力を失いだらりと垂れ下がった。
「あ、アアアアアアアアア‼
「その手、何か嫌な予感がしますねえ。なにかの個性ですか?一応、左腕の腱も斬っておきましょう」
「アアアアアアアアア⁉黒霧、くろぎりイイいい‼」
死柄木の両腕は使い物にならない。死柄木を救う為、黒い靄のような
「し、死柄木ッ!」
それを視線で黒い靄のような
「ああ、死柄木ッ‼」
私は黒い靄のような
「さて、これから貴方は死にますが、最後に少しでも罪を償う道を示しましょう。貴方が“先生”と呼ぶ存在についての情報が欲しいのです」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「そうですか、では、いいです。やはり殺人という罪への贖罪は殺される事しかありますまい。天秤の傾きを正しましょう。正義執行ッ!」
私は死柄木の首を斬る為に、右腕のギロチンの刃を落とした。
“圧倒的”だった。まさしく
その時、爆豪勝己の網膜は強すぎる月の光に焼かれていた。
イレイザーヘッドと13号の二人のプロヒーローを打倒し、雄英ヒーロー科A組の面々を恐怖のどん底に落とした
その光景を見て、爆豪は自分の中にある心が強く揺さぶられているのを確かに感じた。
ヒーローが敵わなかった
『殺します』とムーンビーストは言った。その言葉は、ヒーローでは言えない言葉だ。
それを軽々しく口にして実行に移そうとしているムーンビーストは完膚なきまでに
「…ムーン、ビースト」
気が付けば自然と名前を呼んでいた。その小さな爆豪の声に反応して、ムーンビーストが爆豪の方を向く。思わず身構えてしまった爆豪とは対照的に、ムーンビーストは赤い眼鏡の下の瞳を優し気に細めていう。
「お礼がまだでしたね。ありがとう」
ムーンビーストは右手で死柄木の首を締めたままに、レディ・ナガンを助けようとした爆豪と他の二人の生徒にお礼を述べる。
「君と、緑髪の子、そして可愛らしいお嬢さん。私の仲間を助けようとしてくれて、ありがとう。貴方達の善意の行動に心よりの感謝を申し上げます。そして、もう少し離れていてください。その場所では、血飛沫が掛かってしまいます。これから、
ムーンビーストはニッコリと笑いながら、死柄木の殺害を確定的なモノとして告げる。
その場に居る生徒達の何人かが、小さな悲鳴を漏らしていた。その中で爆豪は唾を飲む。
首から下げている逆十字のペンダントが、まるで熱でも持ったかの様に熱く重く感じた。
有無を言わせない絶対的な意志。それを正義と呼ぶのなら、確かにこれ以上のものはない———と、爆豪が思いかけた所に、それを阻止する声が飛ぶ。
「止せッ!ムーンビーストッ‼」
「ハァ、ハァ、俺の生徒の前で、人殺しなんてさせて堪るか」
「これは、私の個性が消されてしまいましたか。これでは首は斬れませんねえ」
ヒーロー名、『イレイザーヘッド』。相澤消太の個性は『抹消』。眼で見た相手の個性を消す事ができる。
ムーンビーストの腕から、ギロチンの刃が消える。ムーンビーストはそれを詰まらなそうに見ながらに言う。
「自分を殺そうとした相手を助けるとは、相変わらずカッコイイですねえ。相澤先生」
「黙れ。お前に“先生”と呼ばれる理由は、もう無いぞ。ムーンビースト」
イレイザーヘッドからの明確な拒絶の言葉を聞きながらも、ムーンビーストは少しのショックも受けていない様子で言葉を続ける。
「確かにッ!しかしッ、私は貴方の授業が嫌いではありませんでしたよ!ですので、願わくば再びの授業でも望ませて頂きたいッ!教科は法律ッ‼私が最も得意とするものです‼」
ムーンビーストのふざけた言葉にイレイザーヘッドは“ふざけるな!”と声を張り上げたい気持ちで一杯だったが、此処でムーンビーストを刺激する訳にはいかなかった。
社会では善人は殺さない
彼はプロヒーローであるからこそ、ムーンビーストの怒りが生徒達に向けられるという最悪も想定して動かなければならなかった。
更に言えば、イレイザーヘッドは既に戦意を喪失しているだろう死柄木達の命を守らなければならない立場でもあった。
だから、ヒーローは難しいのだが、その心労を知る筈もないムーンビーストの笑い声は続く。
「題目は、『殺人が法で裁かれない場合について』です。真っ先に挙げられるのは責任能力の有無でしょうねえ。此の国では犯罪にあたる行為をしても、責任能力が無ければ犯罪は成立しないのです。人を法的に非難するにはッ、して“良い"事と“悪い”事の区別が出来てッ、その区別に従って自分をコントロールできることが前提と成るのですッ‼…言っている意味がわかりますか?つまりッ、
「ふざけるな‼」と、イレイザーヘッドは今度は声を張り上げた。張り上げなければならない程に、ムーンビーストの言葉は聞き捨てならないものだった。
暴論どころのものではない。ムーンビーストの言葉は司法の全てを馬鹿にしていた。
それは断じてこんな所で声高に叫ばせていい言葉ではなかった。
「殺人は、どう考えても非合理の極みでしかない‼」
イレイザーヘッドはムーンビーストを止める為に動く。両腕が折れていても関係が無かった。満身創痍の傷を負いながらも、走り出すことの出来た強靭な肉体がムーンビーストに迫る。
ムーンビーストは死柄木を乱雑に投げ捨てて、イレイザーヘッドと対峙する。
イレイザーヘッドが首を軽く左右に動かした。その動作によってイレイザーヘッドの首に巻かれていた“
普段ならギロチンの刃で切り落とすだけの捕縛布を、個性を消されているムーンビーストは何故か笑いながらに受け入れた。
身体を捕縛布によりグルグル巻きにされて拘束されたムーンビーストを押し倒しながら、イレイザーヘッドは真正面から彼と向き合う。
「憎しみは憎しみを生むだけだ。だから、人は法に託す。憎しみもッ、怒りもッ、全ての思いをだッ!
イレイザーヘッドに見下ろされながら、ムーンビーストは言う。
「…普段は冷めて見えるのに、熱い方です。やはり、貴方は格好いい。そんな貴方であるからこそ、私は問いたい。…死柄木弔。彼は見たまま真面ではないのでしょう。死体の手を全身に身に着けているのですよ?アバンギャルドどころの話ではありません」
イレイザーヘッドの『抹消』は、目で見ている間しか発動しない。そして、彼はドライアイだった。
次は地面に転がるイレイザーヘッドをムーンビーストが見下ろしながらに言う。
「ヒーローの学校を襲撃など、馬鹿としか思えない行動です。彼は正常な精神状態になく、圧倒的な妄想下で犯行に及んだ可能性があります。そうすれば、精神喪失は必ず争点となるでしょう。…相澤先生。私は今から、
ムーンビーストの殺意が再び死柄木へ向けられる。既に死柄木の傍には黒霧が駆け寄っていて、撤退の準備を始めていたがそれよりも早くムーンビーストのギロチンが死柄木に迫る。
「止せッ!これ以上の非合理を重ねるなッ‼まだお前を、生徒と思っている者もいるんだぞ‼」
「それは本当に…心が痛いですねえ‼」
イレイザーヘッドが再び『ギロチン』を『抹消』しても、既に足に形成したギロチンの刃を落とす反動で跳躍した後では関係がない。
ムーンビーストの拳には死柄木を撲殺できる程度の威力が込められていた。
「アアアアアアアアア‼黒霧ッ、急げよおおおおお‼」
既に今の死柄木からは戦意が失われている。握る拳を解いたなら、殺害ではなく捕らえることも出来るだろうが、ムーンビーストにその器用さは無い。
そうしなければ、とんでもないことになる気がした。
だから、止まらないムーンビーストの拳を止めたのは———やはり、黄金に等しき英雄だった。
ムーンビーストが迫るよりも
「もう大丈夫。———私が、来た」
———『私が来た』。
その一言だけで善人に安心を与え、悪人に恐怖を与える英雄は古今東西に唯一だと私は胸を張って言えるだろう。
そして、オールマイトの登場により“貴方なら来ると思っていた”と安心し、死柄木という悪を裁けないことに恐怖している私は善であるのか悪であるのか、その疑問が浮かんでは消える。
考える暇はない。オールマイトの登場と共に既にタイムリミットを迎えていた。
私がUSJ内に侵入する際にすれ違った男子生徒は驚くべき
そうなれば流石の私でも逃げられなくなる。そして、私は数分でオールマイトを倒せるなどと驕りはしない。
「…どうやら、此処までの様ですねえ。オールマイト、貴方が来たばかりの所を悪いですが、私達は引き上げさせて頂きましょう。レインボーローズ。レディ・ナガンを抱えて私の身体にしがみつきなさい。跳びます」
「は、はいっス」
オールマイトの目の前で堂々と撤退を宣言する私に対して、オールマイトの貫くような視線が向けられる。
「逃がすと思っているのかい?」
「この場で私と戦いますか?余波で何人の生徒が傷つきますかねえ。考えたくはありませんが、最悪も想定しなければなりますまい。貴方が相手では、私とて余裕がないのですよ?」
「脅しているのだろうが、彼らを甘く見てはいけないな。彼らはヒーローの卵。余子浜スタジアムでの野次馬達の様な、一般人とは違うさ。私達の戦いの余波が届かない場所に逃げることくらいは出来るよ」
「おやおや、随分と彼らの様な子供を信頼しているのですねえ」
「当然さ。彼らは雄英のヒーロー科。身体も心も、
「………いいでしょう。どうやら、脅しは通じない様だ。では、次善の策と行きましょう。レインボーローズ。レディ・ナガンを連れて逃げなさい。見れば、貴方は移動系の個性をお持ちのようだ。逃げ切れると信じますよ」
「か、彼氏さんはどうするんスか?」
「
「そ、そんなの無茶っスよ!お、オールマイトに、他に何人もプロヒーローが来るんスよね!勝てる訳ない!負けちゃいますよ‼」
「私にとって負けは敗北を意味しません。私が敗北する時、それは己の矜持が折れた時です。つまり負けを認めない限り負けではない。ええ。“象徴”とは、そうあるべきなのです。ねえ、オールマイト。そうでしょう?たとえ己が敗れようと、“
私は
金髪のツンツン頭の少年の首には、逆十字のペンダントが揺れていた。
緑髪の地味目の少年は強い意志を持つ目でオールマイトを見ていた。
そして、相変わらず愛らしい
「オールマイトにとってのそんな誰かが何処かに居るように、私にとっての誰かも何処かに居るのです。なら、今の瞬間に優先すべきはレディ・ナガンです。流石に血を流し過ぎている。さあ、早く行きなさい」
「…はいっス!サンキューです!ほんと、カッコイイ彼氏さんですね‼これなら、姉御を任せても良さそうっス‼」
「だから、私は彼氏などでは…それと、貴方はレディ・ナガンの何なのですか?」
私の疑問を聞き終わる前に、レインボーローズは個性『バイク』のエンジンを全開にして、その場から走り出して行った。
オールマイトが追おうとしても、私がそれを全力で阻止する。
それを理解しているからこそ、オールマイトは追おうとする仕草も見せなかったのだろうが、そこに少しだけ違和感を覚えた。
オールマイトの力を考えれば、レインボーローズを追いながらに私の相手をする事もできる筈だ。その場合、私との決着が長引くだろうが、生徒達が居るこの場所から戦闘地点を遠ざけられるというメリットがあり、長引いている内に他の教職員たちも到着するだろう。
その選択をしなかったという事は、オールマイトは私との短期決戦を望んでいるのだろうか。
まるで、
理由は解らない。しかし、そうであるなら、取れる手はある。
そんな事を考えている私にオールマイトは願っても無いことに、言葉を投げかけてくる。
「“後継者”、か。君は、本当にどこまで知っているんだい?」
私は適当な返事する。
「今朝も言いましたが、何もかも。私の情報量は多岐に渡ります。貴方達の良き隣人が、私に善意を向けてくれている。“正義の象徴”は、確実に社会に受け入れられつつあるのです」
「そうかい。それを誇ってしまうんだね。…なら、私が君に言うことは、もうあまりないんだけどね。でも、あと一つだけ言わせて貰いたいんだ」
オールマイトは哀し気な眼に、輝くような意思を宿しながら言う。
「君が復讐を正義と信じることは、もう私には止められない。…だが、“
「アハハ‼それを貴方が言いますかッ、“平和の象徴”なんてッ、少年少女が憧れずには要られない存在になってしまった貴方がッ‼貴方の後継者なんて、それこそ何より荷が重いでは無いですかあ‼」
気が付けば、目の前に拳を振りかぶったオールマイトの姿があった。
私は咄嗟に両腕のギロチンで相殺しようとするが、威力をズラす事もできずに吹き飛ばされる。
やはり脳無の拳とは訳が違う。ズラすことなど出来ない芯のある拳。これこそ
そして、オールマイトが勝負を急いでいることを確信する。
なら、私がするべきことはそれに応える
私はクラウチングスタートの姿勢を取る。
余子浜スタジアムで見せた必殺技の構えに、オールマイトも両足を開きながら右腕を大きく引く。
これより起こるは余子浜スタジアムでの決戦の再現。そう思わせてからのカウントダウン。
「三、二、一ィィイイ‼」
そして、ゼロ。
私は大きく上空に跳躍した。まさしく全身全霊を込めた前ではなく上への特攻。
「なっ、なんだって!?」
地上からオールマイトの驚きの声が聞こえてきたが、その頃には既に私はUSJの屋根を突き破った場所に居た。勿論、オールマイトが直ぐに追って跳んでくるだろうが、何故か
運が良ければ私は逃げられるだろう。
私は眼下にレディ・ナガンを背負いながら、法定速度を遥かに超えた速度で走り、雄英高校の敷地外に出て行くレインボーローズの姿を捕らえたので、追手を撹乱する為に、彼女たちとは逆方向に逃げ出すのだった。
ムーンビーストとオールマイトの戦いが始まった隙にUSJから逃げ出した死柄木と黒霧は神野市にあるアジトに居た。
“死柄木弔はオールマイトに救われた”。
それは誰が見ても明らかな事実だった。ムーンビーストが死柄木を殺そうとした時、オールマイトが登場しなければ彼は死んでいた。
その事実に苛まれて彼は自分の首を掻きむしる。皮が裂け血が流れ、肉を抉ってもまだ止まらない痒み。
「あああ、アアアアアアアアア、アアアアアアアアッ‼」
「死柄木!いけません‼それ以上は喉が裂けてしまう!」
黒霧が必死に止めても止まらぬ衝動に身を焼かれながら、死柄木は呪詛の言葉を零す。
「殺す。殺す殺す殺す殺す。オールマイトも、ムーンビーストも、この“痒み”の全てを、俺がぶち壊してやる‼…力だ。力が要るんだ、…なあ、先生」
薄暗いバーのカウンターに置かれたテレビが映る。
砂嵐混じりの画面には、いくつもの管が繋がった生命維持装置を身に着けた顔の無い男が映っていた。
《うん。わかっているよ。その為に、僕がいるんだ》
彼こそが“オール・フォー・ワン”。かつて裏社会に君臨した闇の帝王。
オールマイトの宿敵にして、ムーンビーストにとっての巨悪は、死柄木を介して遂に動き出そうとしていた。
家の傍にある公園で、爆豪は外した逆十字を掌に載せると、握りしめて爆破する。
そして、僅かに罅割れて煤けた逆十字を口に放り込んだ。
「…当然だが、クソ
爆豪は実際にムーンビーストに出会い理解した。
“
もし本気で彼と同じ場所に立とうと思うのなら、口の中に広がる血の味を飲み込まねばならない。
噛み砕いた逆十字を飲み込み、食道を傷つけながらに見上げる月には何もない。不毛な大地が広がるだけだ。
しかし、目指した先で何もかも失うことになろうとも、憧れてしまう場所がそこに確かに存在していた。
「ムーンビースト、あの人は、
ムーンビーストの後継者。“正義の象徴”を継ぐもの。
その可能性が、一人の少年の運命を狂わせた。
奇しくもオールマイトが危惧した通り、ムーンビーストに憧れた少年は道を見誤り、踏み外す。
しかし、爆豪はその過ちを理解している。
「———なんて、驕る気はねえ。あの人の目に写ってやがったのは、逆十字のアクセサリーだけだ。それだけを見て、あの人は俺をそこらに居る端役共と同じに見やがった」
だから、“憧れ”は棄てたのだ。
輝ける未来を見誤りながら、見据えるのは憧れの先にあるもの。
法で裁けぬ悪があり、悪でのみ貫ける正義があるとするのなら、例えそれが
「まずはあの人に、俺を見せてやる」
血の味は飲み込んだ。憧れは消化した。
幼い頃、オールマイトが勝つ姿に憧れた少年は、人々の頭上に燦然と輝く不毛な世界へ踏み出すことを決めた。何もないからこそ、誰にも縛られることのない世界。
無法者たちの世界に踏み込みながら、“正義”を成す為に爆豪は
脳無。原作キャラ。
個性『ショック吸収』を見せることなく細切れになりました。次は対ムーンビースト用を連れて来た方が良いでしょう。
死柄木弔。原作キャラ。
ムーンビーストにボコボコにされた挙げ句、頭がオカシイ扱いをされたのでガチギレしています。
そして、倒すべき相手であるオールマイトに助けられた事で精神に大ダメージを受けてしまいました。
爆豪勝己。原作キャラ。
ヴィランルートが開放されました。
蛙吹梅雨。原作キャラ。
ムーンビーストの愛らしい内通者。レディ・ナガンと面識があり、助けられたのが二度目なので好感度が上限解放しています。
緑谷出久。原作主人公。
直接見たムーンビーストにビビリつつも、オールマイトとの因縁を感じて二人のやり取りに聞き入っていました。
そして、幼馴染みである爆豪の変化に気が付きつつあります。